【完結】IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜ここから、そしてこれから〜   作:シート

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第十五話 更識さんと皆で昼飯を

 更識さんと仲直りが出来、彼女が部屋に戻った後。

 寝るまでの時間いつも通り一人自室で勉強をしながら、片手間では更識さんとメッセでやり取りしていた。

 話してる事は作戦会議についてが主だが、時々アニメや特撮の話もしたりしている。

 それに今日はぎくしゃくとしていたわだかまりのようなものがなくなったおかげなのか、いつもより一段と会話が弾んでいる。

 

《話変わるんだけど模擬戦ってどうなってる? 土曜日にするのは聞いてるけど場所と時間まだ知らない》

 

 そう言えばそうだった。

 土曜日にするというのだけが確定事項で他がどうなっているのかは俺も知らない。

 やるとしても土曜日は午前授業だけの日なので昼からだろうと思って聞いてすらいなかった。

 この際一夏にしっかり確認したほうがいい。まだアイツはこの時間起きているはずだ。

 

《お願いします》

 

 その後、一夏にメッセを飛ばし聞いてみた。

 

《時間は昼飯食ったらの予定だけど、場所は決まってねぇ。というか、場所すら取ってない》

 

 誘ってきた割りには適当だな。こいつ。

 まあアリーナは数あるから、ここって決めてない限りは埋ることは早々ないからいいけども。

 と言うことは織斑先生達にもまだ模擬戦することは伝えてないな。

 

《? 必要ないだろ別に》

 

 必要でない言えばそうだ。

 トーナメントまで禁止されているのは私闘の一切だけで模擬戦は好きに出来るが、それでも俺達が黙ってやって何かあった時、先生方に伝えているのといろいろ伝えてないとでは変ってくる。

 特に織斑先生には伝えておくべきだろう。

 オルコット達のボーデヴィッヒ達の喧嘩があったから余計に。後は野次馬対策とか諸々。

 嫌なら俺の方でトーナメントの使用申請と先生方に伝えるのはするつもりだ。

 

《いや、俺達も行くよ。皆で使用申請しにいこうぜ。その方がいろいろといいだろ》

 

 それはその通りなのだが。

 ふいに嫌がってる更識さんの顔が思い浮かんだ。

 まあ、その時は俺だけ行けばいいか。

 

《じゃあ、明日の放課後に行こうぜ。更識さんにも伝えておいてくれよな。じゃ、おやすみ~》

 

 キャラクターが布団で寝てるスタンプ付きで送られ、一夏とはそれきっきりだった。

 とりあえず、更識さんに今のことを伝えなければ。

 

《大丈夫。分かった。じゃあ、明日授業終わったら連絡するね》

 

 随分あっさりと了承してくれて驚いてしまった。

 本当にいいのか。

 

《いいも何も貴方一人に任せるわけにいかないでしょ。私達はペアなんだから》

 

 それもそうだ。杞憂だったな。

 アリーナの申請と模擬戦のことを先生に伝えるのはすぐ済むだろう。

 後は変わらず、いつも通り訓練だ。

 

《本番まで後三日だからね。頑張らないと!》

 

 と某アニメキャラがガッツポーズしているスタンプ付きで送られてきた。

 更識さんはやる気満々だ。

 ここまでやる気になってくれてよかったけど、後3日で本番。やっぱり、練習期間は思った以上に短い。まだまだ甘いところや詰め切れてないところは多い。

 最後まで気は抜けない。やれることはやりきらねば。

 その後もう少しメッセで更識さんと作戦会議をしつつ、たわいのない話をしてその日は日をまたぐ前に眠った。

 

 

 

 

 約束の放課後。

 時間が少しばかり押して、漸く今ホームルームが終った。

 スマホを見ると数分ほど前に。

 

《今ホームルーム終った。どうしたらいい? 先に職員室行ってたほうがいい?》

 

 とのメッセージが来ており。

 そしてつい数秒ほど前には。

 

《とりあえず教室の前で待ってる》

 

 とメッセージが来ていた。

 教室の外に目をやると更識さんが待ってくれている。

 待たせてしまった。一夏とデュノアを連れてさっさと教室を出て更識さんの元へと行く。

 

「ごめんね、更識さん。待たせちゃって」

 

「ちょっとホームルーム長引いちゃってさ」

 

「……う、ううん。大丈夫……」

 

 更識さんはどこか居辛そうにしている。

 やっぱり、デュノアと一夏。男子二人から一辺に話しかけられるの慣れてないからなのかと思ったが。

 伏せ目がちに辺りをチラチラと見ている更識さんの視線を追えば、俺達を興味ありげに見るクラスメイトや同級生達の視線が集まっていた。

 男子三人の中に女子一人は普通に目立つ。特にこの学校なら尚更こうなって当然。

 しかし勝手な思い込みかもしれないが、集まる視線が少しばかり刺々しい。これは居辛い。

 さっさと職員室へ行こう。

 

「よし、そうだな。行こうぜ、皆」

 

 気づいたデュノアとは違い視線に気づいてないのか平然としている一夏を先頭にして歩き出す。

 一夏の隣ではデュノアが歩き、二人を追うように後ろでは俺と更識さんは歩く。

 一夏達はなにやら話しているが、俺と更識さんには会話がない。いつものことだ。

 というか、周りの視線が気になってなのかと思っていたら、更識さんが気にしているのは一夏とデュノアの姿。

 疑い深そうに二人の後姿を見つめている。何か気になることでも。

 

「あ……う、ううん……何でもない」

 

 何でもないようには見えないが、更識さんがそういうんだ。

 ここは気にしないようにして、そっとしておこう。

 

 職員室に着くと、一言声をかけながら中へ入る。

 すると、織斑先生の姿は見えない。

 別に織斑先生でなくても今いる他の先生方でもいいけど、言うなら織斑先生のほうがいい。

 それに一夏が予め、今日のことを伝えておいてくれているらしいし。

 

「千冬姉……織斑先生ならすぐ戻ってくるだろうってさ」

 

 なら、先にアリーナの申請を済ませるべきだな。

 名前や使用用途など必要事項を書いていると、職員室のドアが開いた。

 織斑先生と山田先生が入ってきた。

 

「遅いぜ千冬姉。言っただろ。話があるって」

 

「すまんな。生徒に捕まってしまってな……後、織斑先生だ。学習しろ馬鹿者」

 

「いってぇっ!」

 

 一夏の脳天へと凄い綺麗な一発落とされた。

 出席簿で叩いたとは思えないほどスパーンという透き通った音が逆に痛々しさを感じさせる。

 まだ一度も叩かれたことはないのだが痛そうだ。だからなのかデュノアと更識さんは、痛そうな顔してそっぽ向いている。

 先生、一夏に容赦ないというか。かなりの頻度でポンポン叩く。まあ、何度言っても学習しない一夏が悪いんだろうが、それでも本当にポンポン叩く。

 

「で、話ってのはなんだ? まあ、大体察しはつくがな」

 

 だろうな。

 トーナメント前に、この人数で職員室に来ているとなると用件は限られてくる。

 今アリーナの使用申請書を持っているのなら尚更。

 俺達は掻い摘んで土曜日の昼から模擬戦をすることを伝えた。

 

「そうか、なるほどな。確かに禁止したのは私闘の類だけだが、知らんところでお前達に模擬戦されてトーナメント前日に問題や騒ぎを起こされても困る」

 

「デュノア君や更識さんがいますから大丈夫でしょうけど……その、お、織斑君は目立ちますし……。あっ! 悪い意味でとかではないですよ。ただいろいろと」

 

「山田先生の言うことは最もだ。普通にやったらお前達は人を集めすぎる。そういう意味では伝えてくれるだけでもこっちとしてはありがたい」

 

 織斑先生は微笑交じりにそう言ってくれた。

 やっぱり、伝えておいて正解だった。

 

「山田先生、少し」

 

 しかし、織斑先生と山田先生は二人だけで話している。

 模擬戦するのはよしたほうがいいのだろうか。

 折角の機会粘るだけ粘ってはみるが、それでダメなら諦めるしかない。無理やってもアレだろうし。

 

「いや、その心配無用だ。止めはせん。トーナメント前にいろいろと試したいだろう? 好きにしたらいいさ」

 

「流石千冬……じゃなくて織斑先生! 話が分かる!」

 

「一夏お前って奴は……今はまあいい。しかし、場所の指定と一応監督役の教員はつけさせてもらう。私と山田先生で交代になるが。それでいいな」

 

「分かりました」

 

 更識さんに続いて俺達は頷いて了承した。

 場所の指定は先生達が交代しやすい為のもので、ここでないとダメってわけではないからよかった。

 先生達がいれば、ひとまず野次馬云々も安心だ。

 

「失礼しました」

 

 申請をし直すとそう言って俺達は職員室を後にする。

 アリーナの受付に提出しておかなければならない書類は一夏達が今から出しに行ってくれるとのこと。

 これでやるべきことは済んだ。後は明日模擬戦をして、トーナメント本番に備えるのみ。

 

「だな。明日が楽しみだ!」

 

「じゃあ、そろそろ僕達行くね。行こう、一夏」

 

「おう! また夕飯にな~連絡入れるから携帯見とけよ」

 

 デュノアに連れられ、一夏は行った。

 用件は済んだ。いつもみたいに時間があるわけじゃないが、時間はまだある。

 残りの時間、今日も訓練するか。

 

「あ、うん……そ、そうだね」

 

 声をかけると更識さんは、ハッと我に返った様子だった。

 何か気になることでもあるのかと思ったが、アリーナのほうへ行く一夏達の後姿をジッと見つめていた。

 そんなに気になることでもあるのか。一夏達は普段通りだし、変なところはないと思うが。

 

「た、大したことじゃないから気にしないで。ごめんなさい……訓練やろう」

 

 逆に気になるが、何だか聞けない。

 まあ、よほどのことならその内言ってくれるだろう。

 気を取り直して、訓練へと向かった。

 

 

 

 

 日付変わって土曜日。

 この日は午前授業だけでISの実技授業のみの日。

 それも先ほど終わり、今から昼飯を食べにいこうかというところ。

 

「あっ! そうだ! 昼飯食ったらその後模擬戦するだろ?」

 

「そうだけど……それが?」

 

「だったらさ、更識さんも混ぜて一緒に飯食うってのはどうよ?」

 

 突然一夏はそんなことを言い出した。

 何を言ってるんだこいつは。それは嫌がるだろ。

 

「何でだよ。聞いてみないと分からないだろ。気遣ってるのも分かるけどさ、お前は決め付けすぎ。のほほんさんに聞いてみたら、まだ四組と三組の合同授業も終わったばかりみたいだしさ、今なら片付けとかでまた近くにいるだろうって」

 

 まさか、向こうのアリーナまで行って直接聞く気なのでは。

 

「そのまさかだよ。こういう時は兎に角動いてみるに限る。それに沢山の人と一緒に飯食えば楽しいって。仲良くもなれる」

 

 相変わらずだな、こいつは。

 デュノアはずっと微笑ましそうに見守っているがいいのか。

 

「僕? 僕ならいいよ。気にしないで。一夏がそうしたいなら協力するだけさ。更識さんってあんまりよく知らないけど一夏が誘うぐらいならきっといい人のはずだしね」

 

 こいつも相変わらずだ。

 一夏に絶対的な信頼を寄せてる。最近は特に。

 誘うなら二人だけでいけばいい。後で更識さんにはフォローいれるが、俺は……。

 

「お前も行くんだよ。ってか、シャルルと二人だけで行ったら説得に時間かかるだろ」

 

「だね。君がいれば更識さん、案外誘いに乗ってくれるかもしれないよ」

 

「ということだ。分かったろ。時間が惜しい。行くぞ」

 

 肩を抱かれ強引に連れて行かれる。

 力強くガッチリ抱かれていて振りほどけない。

 なすすべもなく三組と四組が合同授業していたアリーナに連れてこられた。

 片付けが終ったところらしく、まだ多くの生徒がいた。

 

「突然で悪いんだけどさ……四組の更識さんってまだいる? いるなら悪いけど呼んで来てほしいんだ」

 

 何と躊躇いもなくその辺にいた適当な女子に声をかけ、お願いする。

 度胸あるな。ただでさえ俺達が来たことでちょっとした騒ぎになっているし、更識さんの名前を聞いてひそひそ話までしてる。居心地悪い。

 

 少し待つと更識さんが来た。

 俺達の姿を見るなり、案の定驚いている。

 

「な、何で来たの」

 

「何でって今日俺達この後さ模擬戦するだろ? だったら、昼飯も一緒にどうかなって」

 

「は……?」

 

 思わず更識さんは聞き返す。何言ってるんだこいつってのが何となく分かる。

 というか、今のに少しばかり威圧感を感じたのは気のせいか。

 

「嫌よ」

 

 ばっさり一言で断ってきた。

 言うと思った。無理もない。

 更識さんは今、凄い嫌がってる。一夏に待ったをかけ、止めに入る。もういいだろ。

 

「いや、でもよぉ」

 

「というか、その……えっと……ぞろぞろ押しかけてこないで。織斑さん達は目立つ……巻き込まれて目立つの私、嫌……」

 

「あ~……それはそうだな。それについては素直に謝るよ。悪い、更識さん。すまん」

 

「えっ……あ、うん」

 

 一夏があまりにも素直に謝るものだから、更識さんは呆気にとられて頷く。

 

「でも、俺達は更識さんと一緒に昼飯食いたいんだ。模擬戦するわけだし、仲良くなりたいし。あっ! 女子なら一組のセシリアとか箒とか、二組の鈴とかもいるから大丈夫。女子の方が多い。のほほんさんとかもいるから」

 

「う……本音……」

 

 察したんだろ。

 この話、誰が最初に思いついたのか。俺もたった今気づいた。布仏さんだ。

 

「な、どう? こいつも勿論いるから。な、お前も更識さんと一緒にご飯を食べたいよな」

 

 断れない流れにもっていこうとする一夏は卑怯だ。

 嫌とは言わないが、嫌がっている様子を見るとここでいいとも言えない。適当に言葉濁すのが関の山だ。

 

「……」

 

 更識さんは視線をふと下の方へと落とし、何やら考えている様子。

 そして数秒後。

 

「分かった……行けばいいんでしょ」

 

 思ったより、素直に誘いを受けてくれた。

 よかったのか。

 

「よくはない……でも、仕方ない。断ってるとこの人、ずっと誘ってきそうだから。でも織斑さん、こういう誘い方は今後これっきりにしてほしい。……お願い」

 

「おうっ! 分かった! いや~よかった~」

 

「よかったね、一夏。彼を連れてきて正解だった」

 

「まったくだ。お前様々。ありがとよ」

 

 ニカッと太陽の様に眩しい笑みを向けるのはやめて欲しい。

 女子達が騒がしいので。

 

「はぁ~……」

 

 更識さんは心底深い溜息を一夏達には気づかれないようについている。

 これは後でちゃんとフォロー入れつつ、昼飯の席ではこれ以上迷惑かけないように気をつけよう。

 

「模擬戦で100倍にして返すからいい。私、模擬戦楽しみ……」

 

 皮肉か嫌味、何かのつもりなんだろう。

 しかし、怒るわけでもなく笑う訳でもなくいったいつも通りの口調で更識さんは怖い。

 

 

 

 

 いつものメンツに加えて、今日は布仏さん達までいるからかいつも以上に賑やかな食堂と俺達のいるテーブル。

 そんな中でも更識さんは物静かだ。

 何を話すわけでもなくただ黙々と昼飯を食べている。

 もっとも話に参加しないわけではなく、俺と同じ様に話を振られれば適当な返事をするし、受け応えもしっかりとしている。

 特にこの状況を嫌そうにしている様子はないから安心した。

 

「なあ、更識さんっていつもの感じなのか? 大丈夫だよな? というかお前、更識さんと少しは話せよ」

 

 しかし、気になる奴に気になるようで一夏はそう聞いてきた。

 そんなこと言われても特にこれといって話すようなことはない。更識さんとなら話したくなったらいつでも話せるし、無理に話す必要はない。

 折角こうして来てくれたのに話題ないのに話しかけて気まずくなっても嫌だ。

 

「お前って奴は本当相変わらずだな。話題がないなら俺に任せろ」

 

 自分から話しかけるつもりになったらしい。

 それはいいが、一夏のことだから変なこと言いそうで心配だ。

 

「変なことってなんだよ。んな心配しなくても大丈夫だって。なあ、更識さん?」

 

 一夏は更識さんに声をかけてしまった。

 

「ん、何……?」

 

「いや、さ。今日はこうして一緒に昼飯食べてる訳だけど、もしよかったらこれからも一緒に昼飯食わないかなって」

 

 突然の言葉に更識さんの手は止まり、食べるのをやめる。

 

「夜は最近、こいつと食ってるみたいだけど、昼はそうじゃないみたいだし。たまにのほほんさん達と食べてるらしいけど、一人で食べてること多いってのほほんさんから聞いて。折角だからな。ほら、一人ぽつんと食べるのは寂しいじゃんか」

 

 変なことは言わなかった。

 でも、もう少し聞き方ってものがあるだろう。一夏の聞き方は結構失礼な気がする。

 

「まったくですわ。まあ、一夏さんらしいですけど」

 

「こういうところ一夏は相変わらずよね、本当」

 

「え? 何が?」

 

 頷くオルコットと凰に一夏は分からないのか不思議そうにしている。

 一方更識さんはと言えば。

 

「本音……?」

 

「ごめんなさい~っ睨まないでぇ~」

 

 問い詰めるように布仏さんに睨んでいた。

 

「……その、さ、誘ってくれたのは嬉しい。でも、私昼休みは用事があるから……」

 

 そう言えば、そうだった。

 更識さんの用事と言うのは専用機開発を少しでも進めること。

 トーナメントのこの時期にも昼休み、ほぼ毎日やっているらしい。だから以前、昼飯に誘った時、都合があい難く悪いからと断られた。

 

「お前、ちゃんと誘ってたんだな」

 

 それはもちろん。

 

「なら、もう一押しだな」

 

 もう一押しって前に断られたの忘れてないか。

 

「断られてもそれは前のことだろ。また誘えばいい」

 

 無茶苦茶だ。

 

「用事なら仕方ないし、毎日じゃなくてもいい。今日は一緒に食べれそうとか気が向いた時でいいから、よかったら一緒に食べようぜ。やっぱり、こうして誰かと食べる方が飯は旨くなる。一緒に食べる人が多ければ多いほど旨くなる。大勢が苦手なら、こいつをいつでも貸してやるよ。それなら安心だろ。だから、更識さん」

 

 物扱いされてるのは嬉しくないが、一夏の言うことも一理ある。

 都合があわないとかは気にしなくていい。一人で食べたい時は一人で食べればいいし、更識さんの気が向いた時には一緒に食べれると俺も嬉しい。

 ほら誘えと横から肘で軽く脇腹を小突かれながら、もう一度更識さんを誘ってみた。

 

「……分かった。たまにでいいなら……お昼ご飯一緒に食べる」

 

 更識さんはそう了承してくれた。

 よかった。そう素直に思う。

 

「本当~よかったよ~おりむーにお願いして正解。大きなお世話だけど、かんちゃんと皆と一緒に食べてほしかったから」

 

「……やっぱり、本音が。まったく本当に大きなお世話。でも……本音……まあ、その、ありがとう」

 

 嬉しそうに笑う布仏さんと更識さんとのやり取りを見て、釣られてこの場の皆にも笑顔が生まれる。

 思い返せばなんだか大げさなことになってしまったが、まあこういう昼休みも悪くない。

 

「だろ。ってか、お前も嬉しいなら笑えって。このこの」

 

 横から脇腹小突いてくるのはやめろ。

 でも、一夏様々というか何というか。こいつを中心に皆笑顔で昼飯を食べる。

 本当に太陽のような奴だ。

 


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