【完結】IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜ここから、そしてこれから〜   作:シート

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第十六話 更識さんと共に模擬戦へ

 昼飯を食べ終えると、いよいよ模擬戦本番直前。

 ISスーツに着替え、機体の用意も済ませた。準備完了した更識さんと俺は選手待機施設と整備室を兼ねた訓練場脇にあるピットと呼ばれるところで現在待機中。

 一夏達の準備はもう少しかかるとのこと。

 

「……」

 

 隣でベンチに腰掛けるISスーツを着た更識さんは相変わらず静かだ。

 というより、何やら考え込んでいる様子。

 昨日からずっとこの調子。やはり、何か気になることでもあるんだろうか。

 自分の中で思い返しても思い当たるようなことは見つからない。しいて言えば、昼休みのことぐらい。

 これからもまた更識さんと昼飯を一緒に食べることになって俺としても嬉しいが実のところやっぱり、嫌であの雰囲気では断りたくてもとても断れなかったとか。

 だから、今になってどうするか考えているのだろうか。それはいくらなんでも考えすぎだろうが。

 

「あ……うん、そうじゃないよ。違う。嫌じゃない、私。まあ一人で食べる方が気が楽だし、織斑さん達と一緒にご飯ってのは騒がしいだろうけど、誰かと一緒に食べる方が楽しくなるってのは私にも分かる。実際、さっきちょっぴり楽しかった。それに貴方に誘ってもらえたのが嬉しい」

 

 ならよかった。

 誘ってみた甲斐があるというもの。断られた後に、もう一度誘うというのは結構勇気がいる。

 一度断られ俺は仕方ないと諦めていたから尚のこと。一夏みたいにもう一度誘うなんて考えなかった。

 

「私ももう一度誘ってもらえるなんて思ってもなかった。あんなきっぱり断ったのに……だからって自分から誘うなんて考えもなければ、そんな勇気もないけど」

 

 それはそうだろう。

 自分からは言い出しにくいことは多い。

 けれどそれもこれも一夏のおかげだ。ぐいぐい強引だったけども、あいつが場の雰囲気を作り誘うきっかけを作ってくれたことで誘うことができ、更識さんも誘いに乗りやすかった。

 俺では出来ないこと。当たり前のことを当たり前以上に出来てしまうのが一夏。無茶苦茶だけど皆を笑顔に出来る太陽の存在。

 本人目の前では言えないが、あいつが隣にいてくれてよかったと思う。

 

「太陽……言えてる。何だか今日のことで織斑さんがモテる理由分かった。ちょっとアレだったけどあんな風に明るく優しくされたら、好きになっちゃうね。ああいう人をヒーローって言うんだろうね」

 

 だろうな。

 もっともアレが一夏の素で天然の代物。誰に対してもああなのだから、ある意味での達の悪さは最凶。

 しかし、昼休みのことでないなら他は何だ。

 もう少し頭を捻らしてみるが、これ以上は思いつかない。

 この模擬戦には昼飯を一緒に食べてた人達全員と他数人が見に来ていることを気にしている訳でもなさそうだ。それについては織斑先生と山田先生方には許可貰っており、騒がしくならないようあれ以上人数が増えないよう規制もかけてもらっていることだし。

 だったら、一体何をそんなに考え込んでいるというのだろうか。この際直接聞いてみることにした。

 

「……それは……少し言いにくい。変なこと言うの間違いないから……今から言うことは他言無用。むしろ、忘れてくれるのなら……」

 

 かなり予防線を張ってくる更識さん。

 よほどのことなんだろう。言われたことを約束するように頷く。

 すると、更識さんは少し間を置いてゆっくりと言い始めた。

 

「ありがとう……その、貴方はデュノアさんと織斑さんの二人、どう思う? というよりも、デュノアさんのことどう思う……?」

 

 また急な質問だ。

 どう思うか……改めてあいつらについて思うようなことは特にない。

 デュノア一人にしてもそうだ。

 しかし、更識さんがこんなことを聞いてくるなんてまさかあのことを気にしているのか。そうなら一連の様子も納得できなくはない。

 そもそも更識さんこそ、どう思っているのだろうか。

 

「二人が仲いいのは見たら分かるんだけど、何と言うか……二人近すぎる気がする。物理的な距離とかいろいろ含めて」

 

 二人の最近の様子を思い浮かべて見たが、確かに最近あの二人はやけに近い。ベッタリだ。

 同性で同室。しかも、今回のトーナメントのパートナー。一緒にいる時間が増えたからこそ、仲が深まった。

 そう言えなくないし、俺にとってあの二人の近さは見慣れすぎて当たり前になっていた。

 一夏が元々距離感近いってのも関係してるが、それを踏まえても言われてみると不自然な気がしてきた。 

 最近のデュノアの一夏への凄まじい信頼っぷりとかが当てはまる。

 

「だ、だよね。ってことは、あれが男子の普通じゃないんだ……」

 

 あの二人の距離感が普通と思われるのはちょっと……。

 同性でああいう距離感の人達もいなくはないんだろうが、いても少数だろう。

 この学園で少ない同性とは言え、あんなベッタリするものなんだろうか。俺ならちょっと抵抗を覚える。

 それに目立つ。だから、最近女子達が変な賑やかさだったのか。だったら、騒ぎたくもなる。

 しかし更識さんは、そんなこと気にしてたんだ。

 

「だ、だってっ、へ、変……だもん。私が男子に慣れてないってのもあるんだろうけど……男子が二人いつもベッタリしてたら気になる。もしかして、あの二人はそういう関係……なのかなって……今時珍しくも何ともないけど、数的にはまだまだ少数の部類な訳だし。だからって二人については何も言わない。本人達の自由だから好きにするべき……でも、そういう関係なのに織斑さん、お昼休みみたいに女ったらししてるなら本当性質悪いなって思っただけで……その、えっとっ」

 

 真剣な顔して矢継ぎ早に言う更識さんは真面目だ。

 真面目だからこそ、気になったのはよく分かる。

 けれど、真面目すぎてるのがおかしく思えて俺はつい笑ってしまった。

 

「なっ!? わ、笑った~!……変だって分かってる。だから、言いたくなかったのに……! わ、笑う必要ないでしょ……!」

 

 可愛らしく怒った様子で抗議してくる更識さんに謝ってから笑いを堪える。

 笑ったのは悪かった。でも、二人がそういう関係だと思うって……まあ、そう思えてしまうのも分からなくないが、考えすぎた。

 

「か、考えすぎ……」

 

 本当にあの二人がそういう関係ならとっくに周りも気づいているだろうし、何より一夏は隠し事が下手くそだ。隠している気配もなければ、そういうことになった雰囲気すらない。

 後、極度の朴念仁。まず、相手からのそう言う意味合いの好意に気づくことはないだろう。そんな余裕ないはずだから、あいつには。

 

「……そう……はぁ~……」

 

 気が抜けてのか、更識さんは疲れた様子で脱力する。

 とりあえず気になっていたことは解決したっぽい。

 

「うん……とりあえず。実はね……前々からクラス、というか一年生の間であの二人怪しい、そういう関係なんじゃないかって噂あるの。聞いた時はくだらないって思ったけど昨日、アリーナの申請とかしに行った時、二人見て噂思い出して、ずっと気になってた。で……今日、お昼休みに二人の様子観察して確信してしまった……」

 

 噂まで立ってたのか。しかも、1年生の間って、結構な規模。

 事実無根ではあるが、今更識さんの話とか聞いた後だとそういう噂が立つのも当たり前なんだろうな。

 一夏からデュノアへの距離は変わってない。変わったと言えば、デュノアから一夏への距離感の方。

 何かあったのは間違いない。噂のような色恋たったものではなく、単純に仲が深まることがあったとかいろいろ。これも本人達に確かめたわけじゃないから、この噂と程度は変らないが。

 

 というか、更識さんはあの疑惑を忘れているんじゃなかろうか。

 

「どれ……? うん? ……うーん……あっ、ああ。あれ……?」

 

 思い出したような顔をしていた。

 やっぱり、忘れていたか……まあ、忘れようということにしていたから忘れていたのは仕方ない。

 俺も頭の片隅にあった程度で今回のことは聞かなければ、こうして思い出すこともなかっただろう。

 あの疑惑が真実だとしたら、他の人がどう考えるかは分からないが、一夏へのデュノアの信頼っぷりや近づいた距離感に納得がいく。

 そうでなくても、デュノアは外国人。外国人は比較的フレンドリーな人が多いから、信頼によるものと思えなくはないけど、あの疑惑が頭があるだけにそっちのほうが納得がいく。

 

「あ……うん、そうだね。でも、それだと余計に……う、う~ん……」

 

 更識さんが凄い複雑そうな顔している。

 無理もない。男と女が一つ同じ部屋に生活していて、あのデュノアの様子なのだから。

 だがしかし、俺から蒸し返しておいて申し訳ないが、これについてはこれ以上考えるのはやめておこう。

 あれこれ次々と気になってきて、模擬戦どころではなくなりそうだ。

 

「うん、そうだね。そうしよう……気持ち、切り替え……っ!?」

 

 ビクッと肩を震わせ更識さんと一緒に驚く。

 噂をしたら何とやら。一夏から連絡が来た。

 

『悪りぃ。今、こっち準備済んだ。今から始めようぜ』

 

 分かったと連絡をきる。

 狙ったかのようないいタイミング過ぎて怖い。

 けれど、気持ちを切り替えていかなければ。

 

「ん……切り替えは大事。行こ」

 

 気持ちを切り替え、俺達はピッチを出て、模擬戦へと向かった。

 

 

 

 

 ピッチを出て一夏達と模擬戦を始めてから、大体1時間以上が経っただろうか。

 更識さんと俺は、一旦休憩の為再びピッチに帰ってきた。

 

「……はぁ……」

 

 隣でベンチに腰を落ち着けた更識さんが小さく溜息つくのが微かに聞こえた。

 その溜息からは疲れは勿論、落ち込んでいるのが分かる。

 

「あっ……ご、ごめんなさい」

 

 俺が溜息を聞いたことに気づいたのか、更識さんは慌てた様子で謝ってきた。

 更識さんが謝ることはない

 溜息もつきたくなる。なんせ、数戦したのにも関わらず一夏達に一度も勝てなかったのだから。

 俺はかなり更識さんの足を引っ張ってしまったな。

 

「それはない……絶対に」

 

 しっかりとした口調で俺は更識さんに断言されてしまった。

 そう思うことを簡単には拭えないが、更識さんにそんな風に言ってもらえるのなら気は随分と楽になる。

 タッグマッチの模擬戦をして感じたのは難しさだった。

 

「うん、難しい……全然思うように動けなかった」

 

 同じだ。

 この日の為に向けて、訓練を積み重ねていたが、訓練通り動くのは全然だった。

 これも一重に経験不足。実機戦闘は久しぶり。そして、実機でのタッグマッチは今日が初めて。

 シミュレーターでは何度もやって、分かってはいたがアレは本当に何もしないよりかはマシのものだったんだな。

 

 全敗こそはしたものの、全部が全部酷い試合だったということはなかったはずだ。

 一夏を先に倒し、デュノアを後一歩というところまで追い詰めたりと何度か善戦することは出来た。

 それでも結局、全敗は全敗。一夏は思った通りの動きだったが……。

 

「デュノアさんだね。……本当、強い。デュノアさんが上手く織斑さんに合わせて堅実なフォローと後衛。一人になってからもしっかりと立ち回られて勝てなかった」

 

 一夏を落としてからは二対一だというのに俺達はしっかりと捌かれてしまった。

 あいつの技術力の高さや実力は授業で何度か見て知ってはいたが、こうして実際に戦うのは初めてに近い。今回、あいつの凄さを身を持って体験させられた。

 

「デュノアさん、強い。でも、あの強さって短期間で身についたものなのかな……?」

 

 どういうことなんだろうか。

 

「天性の才能って言葉もあるから、短期間であの技術の高さや強さを身につけたことってのはありえなくない。でも、試合してデュノアさんはちゃんとした長い期間訓練、それも高度なものを受けていた感じがした。それこそ半年とかその程度じゃなくて、1年2年といった長い期間。だから、そのデュノアさんは……」

 

 その先を言うべきか更識さんは迷った様子で、あえて更識さんははっきりとした言葉にはしなかったが、何を言いたいのかは分かった。

 代表候補生である更識さんがそんな風に感じたということはそういうことなんだろう。

 更識さんと俺との間であの疑惑の信憑性が増し、疑念が深まった。

 

「うん……本当はこれ以上蒸し返さない方がいいってのは分かるんだけど……」

 

 気にもなる。それは俺も同じだ。

 そういう目で見ているからそう思えてくるんだろうってことは分かっているが、それでもデュノアにはそう思わせるところが多すぎる。

 しかし、疑惑が深まったところで何かできるかといったら何も出来ない。藪をつついて蛇を出す、なんてことになったら怖い。触らぬ神に祟りなしだ。

 一夏を見捨てることにもなるが、一夏の場合は多分とっくに気づいているかもしれない。アイツは人からの好意には疎いが、それ以外には鋭い。

 デュノアも本当に悪い奴ということではないだろうから、大丈夫だろう。

 

 それにそういう疑惑関係なしにデュノアの技術力や強さは本物。

 俺もあんな風にISの操作を上手く、強くなりたい。

 このまま負けたままというのは悔しい。

 

「悔しいね……負けたこともだけど、今の自分が情けなくて悔しい。今までずっと弐式のことばっかやってて、私いろいろと怠りすぎてた。今回それが痛いほどよく分かった」

 

 更識さんは腰掛けたまま俯き、両手を一つにぎゅっと握りながら言葉を続けていく。

 

「私にとって弐式の完成は大切。でも、その為に他の事をあまりにも沢山のことをないがしろにしてきた。それが今回のこの結果。他の事をないがしろにして完成できていたらまだしも私は何も進んでない。このままじゃ私はいつまでもダメなまま。ヒーローに……変わりたいってずっと思っているはずなのに……」

 

 更識さんは落ち込んだ様子でもう変われないとでも言いたげだが、そんなことはない。

 

「え……」

 

 あれだけ負け続ければ、気持ちが沈むのも無理ないが何もこれでお終いというわけではないんだ。

 極論、今がダメでも本番当日に勝てばいいだけの話で、休憩を終えたこの後も一夏達との模擬戦は続いていく。

 今まで更識さんと考えた沢山の作戦を全て試せたわけではないんだ。これでなければいけないという勝ち筋は一つではないのだから、いろいろ試して勝ち筋を一緒に見つけていこう。

  そう、まだなんだ。俺たちはようやく前を向き始めたばかり。勝ちたいという思いが同じなら、諦めずにゆっくり地道だとしても更識さんと頑張っていきたい。

 こんな偉そうにも聞こえること俺が言えた口ではないことは承知。けれど、ほんの少しでいい。手を貸してくれたら。

 

「道は一つじゃない……そうだ……まだだよね。ごめんなさい、一々暗くなって」

 

 申し訳なさそうに。しかし、スッキリとした様子で笑みを見せてくれた更識さん。

 これなら休憩の後も頑張れそうだ。

 

「うんっ、私頑張る。諦めない……ありがとう」

 

 

 

 

 休憩が終った後も変らず一夏達と模擬戦をする。

 気持ちを改めたところで、再開初っ端からすぐに勝てるほど現実甘くはない。

 でも、休憩明けの3戦目。三度目と正直とでも言うべきなのか。

 ようやく。

 

『デュノア機、シールドエネルギーエンプティーを確認。そこまで! 勝者――』

 

 アリーナに試合結果を告げる織斑先生の場内アナウンスが流れる。

 

「……か、勝った……? 勝ったよっ、私達っ」

 

 俺達二人を照らす太陽の様に喜ぶ更識さんの笑顔は眩しい。

 

 俺達はついに一夏達に勝った。

 とは言っても結構ギリギリだ。俺は一夏と1:1交換で落ち、更識さんが粘りに粘ってもぎ取ってくれた初めての勝利。

 俺個人としては不甲斐無いばかりだが、そう暗くなってもいられない。

 

「本当によかった……貴方が落ちる最後までしっかりデュノアさん抑えて削ってくれてたおかげで勝てた。ありがとう!」

 

 感謝するのはこっちだというのに更識さんのこの喜びよう。

 人目を忘れているようだ。まあ喜びすぎて、一夏が悔しそうにしているのはいい気分ではある。

 いろいろ思うところはあるが、今はただ更識さんと共に初めての勝利を噛みしめる。俺も素直に嬉しい。

 

 しかし、いつまでも勝利の余韻には浸ってられない。

 初勝利だが、一回目の勝利。ここから俺は落ちされないようにしつつ、勝ちを安定させなければ。 

 時間的にまだまだ出来る。もっと精進しなければ。

 

「そうだね……まだまだ。私達はようやくここから……!」

 

 喜びでいっぱいの気持ちを引き締め、一夏達との模擬戦に再び望む。

 

 初勝利の後も勝ち続けられるほど一夏達は甘くはなく負けてしまった。

 だが、やはり1回勝てたことが俺達の中で自信のようなものになったのだろうか。

 勝ちの流れみたいなものを掴み、俺達は次第に勝ち星を増やしていく。

 そうしていると勝ちも安定してきて、ついに二人残ったまま勝つことも出来た。

 

「まあ、お互い凄いボロボロだけどね……」

 

 苦笑いを浮かべながら見る更識さんの視線の先にはエンプティー間近のシールドエネルギーの数値が表示されていた。俺も似たような数値が表示されている。

 連戦に一夏の集中力がもう持たなくなってきて、そこをついて今回の勝利。

 相変わらず、デュノアの粘り強さとスタミナの高さは凄まじいが、それでも二人残って勝つことが出来た。これは大きい。正直、嬉しすぎる。

 一夏を落としてデュノアを追い詰めるまでは最初の頃より安定してきたし、成長を実感できるのはいい。

 

 そうして時間ギリギリまで模擬戦は続き。

 

『馬鹿共! 時間だ。その辺にしとけ』

 

 織斑先生の言葉が聞こえ、俺達は時間を見る。

 後もう一試合ぐらいできそうな時間ではあるが、そろそろアリーナが使える時間が終る頃だった。

 流石に今日はここまでか。

 

「なっ!? 時間!? まだ出来るだろっ!」

 

「……いや、ごめんなさい。もう……無理……」

 

「そうだね……流石に僕も疲れた」

 

 時間だというのに一夏は納得できない様子だが、こいつ以外は皆バテバテ。

 小休憩こそはあったが、大きな休憩明けからガッツリ休むことなく連戦していたから当然だ。

 

「くそ~! 勝ち越しとかずるいぞ、お前ら!」

 

「まあまあ一夏。落ち着いて」

 

 デュノアが一夏を宥めてくれているのが助かる。

 ずるいのは認めよう。多分もう一試合していたら負けていたのは俺達のほう。

 ああは言うが一夏達のほうが多く俺達に勝っている。最後ぐらい花を持たせたほしいところだ。

 

「それもそうだ。しゃーねぇーな。じゃあ、本番当たったら覚悟しとけよ。俺達と当たる前に他のペアに負けんじゃねぇぞ」

 

 その言葉そっくりそのまま一夏に返す。

 本番で一夏に勝つのが楽しみだ。

 

「漫画みたいなやり取りしてる……男子って皆こういうの好きなの……」

 

「さ、さあ? どうなんだろうね? あ、でもこういうの日本男児って言うんだよね。僕はいいと思うよ」

 

 というわけで本日の模擬戦は終った。

 勝ち数こそは本当片手で数えられる程度だったが、それでも得られたものはとても多い。

 考えていた戦法もあらかた取捨選択がすることも出来てよかった。

 後は今日のことを本番でも上手く活かして、発揮できればベストだ。

 

 

 日曜日の夜。自室からの外出禁止時刻を過ぎた頃。

 結局今日は準備やら何やらと本番前日だというのに訓練一つ出来なかった。

 だからせめてもとメッセで更識さんの明日の最終確認をしていて、今一息ついたところ。

 

《いよいよ明日だね》

 

 明日はいよいよ本番当日。

 泣いても笑っても明日が最後。この約一週間ちょっとにやったことがすべて試される。

 やるべきこと。やれるだけのことはやった。大丈夫。

 

《そう言えば……そろそろ一週間経つんだよね。あっという間》

 

 短いようで長いこの1週間ちょっとにあった出来事の数々が脳裏に蘇る。

 IS学園に入学して一番濃い一週間。

 最後の最後まで更識さんにおんぶに抱っこだった感じは否めないが、それでも多くのことを学ぶことが出来、確かに成長できたことを自分自身でも実感できた。

 何より、いろいろな更識さんを知って、見ることが出来た。楽しくて充実した日々。

 

 更識さんがパートナーでよかった。

 と更識さんに伝えるのはメッセだとしてもクサすぎるというか、大げさすぎる。

 いや正直、文字でそう伝えるのを変に照れてしまい素直に伝えることが出来ず。ただただ、ありがとうと伝えるのが精一杯だった。

 

《お礼言うの気が早い。まだトーナメント始まってすらいないのに》

 

 と笑いを表す特撮ライダーのスタンプ付きで送られてきた。

 それもそうだ。恥ずかしいな俺。

 

《でも、この一週間ありがとう。貴方がパートナーで本当によかった》

 

 なんて恥ずかしいこと言ってごめんなさいと今度は恥ずかしそうに赤面する特撮ライダーのスタンプ付きで送られてきた。

 更識さんもそう思ってくれているのか。なら、ちゃんと伝えなければ。そう思い、さっきは照れて送れなかったメッセを送った。

 

《何だか照れくさいけど嬉しい。明日、頑張ろうね!》

 

 もちろん。

 最善の結果を残せるようにしよう。

 

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