【完結】IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜ここから、そしてこれから〜   作:シート

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第十七話―幕間―彼と迎えた六月の終わり

 彼と臨んだ学年別トーナメント。

 常々思っていたことだけど、正直本当に私が学年別トーナメントに参加するなんて思ってもみなかった。

 元々専用機のことで辞退するつもりだったし、出たところで私なんかとペアを組んでくれる様な相手なんているわけないと思っていた。

 でも、彼がいた。

 きっかけこそは本音だったけど、彼からちゃんと誘ってくれて私はそれを受けた。彼となら出来る限りのことが出来ると思えたから。

 

 そして始まった約一週間ちょっとの練習期間。

 練習というよりかは彼に教えることの方が多かった。

 それについては仕方ない。彼はISに関わってまだ半年にも満たない。なのに、そこまで動かせるなんて短期間で凄い頑張っている。

 でも正直歩みは遅い。織斑さんみたいに才能があるわけない。どこまでも平均的。

 

 けれど何があっても諦めず、一生懸命ついてきてくれるところ。

 ただ教わるだけじゃなく、自分でもたくさんのことを考え試しながら、積極的に教わろうとしてくる姿。 

 とても些細な事で、当たり前のこと。でも、それは私にとって凄く嬉しかった。

 頑張る彼の姿があったからこそ、私は励まされ自分も頑張ることができた。

 

 人に教える難しさや教えが実った時の喜び。時には休みながらでもいい、いろいろと試しながら物事を続けていくことの大切さ。ゆっくりでも想いを交わす意味も。

 全部全部彼が教えてくれた。彼と知ることが出来た。

 それだけで今回のことは私にとって充分すぎるほど充実していた楽しく実りあった日々。

 沢山悩んで、沢山落ち込んで、沢山笑った。

 

 実際彼もこの一週間で大きく成長していて、私も自分を今一度見つめ返すことが出来た。

 その最たる結果が織斑さんとデュノアさんとの模擬戦。

 そして学年別トーナメント。結果から言うと私達は準決勝敗退。所謂三位。

 優勝は織斑さんとデュノアさんペア。二位の準優勝がオルコットさんと凰さんペア。私達はオルコットさんと凰さんペアに負けた。

 このペアは元々出ない二人だったけど、本番当日の第一回戦。織斑さんとデュノアさんは、ボーデヴィッヒさんと篠ノ之さんペアと当り、そこで起きたトラブルによって学年別トーナメントは一時中断。

 その後一般生徒のトーナメントは行われたけど、専用機持ちのトーナメントは後日というこになった。

 それがあって機体トラブルでトーナメントに間に合わなかった二人が間に合うようになり、出場することに。

 正直、当りたくない二人だったけど、このトーナメント。特に専用機持ちのブロックは国の威信とかいろいろなものがどうしても絡んでくる。

 機体に問題ないのなら、普通出場しないわけにはいかない。

 そうしてトーナメントを勝ち進んだ私達は、準決勝でオルコットさん達と戦った。

 

 結果から言えば、負けてしまった。

 救いがあるとすれば、ただ一方的にやられたわけじゃなかったということ。

 備えあれば憂いなしとはよく言ったもので。やっぱり、二人の対策を練っていたことが功を成したのかもしれない。

 オルコットさんと凰さんをエンプティー間近まで追い詰めることが出来た。

 

 彼と私はトーナメントで周囲に競技者としての実力を見せることに成功した。

 ほとんど通常仕様の打鉄でもここまで出来るのだと我ながら自負している。

 しかし、彼は兎も角、私は日本の筆頭代表候補。専用機持ち。

 

 いくら競技者として実力が高かろうが、私はまだ専用機すら完成させてない未熟者。

 当然、トーナメントを見に来ていた関係者に突かれた。

 

『とても素晴らしい結果です。まるで全盛期の織斑千冬を思い起こさせるような活躍。しかし、貴女は我らが日本国の筆頭代表候補。専用機持ち。今回のことで打鉄弐式が完成していないことが完全に露呈しました。ドイツほどではありませんが、これではドイツの様に無様な姿を世界に晒し続けることになる。貴女がいくらかの更識家ご令嬢、御当主の妹様だとしても……分かってますね?』

 

 遠まわしで嫌味ったらしい。

 今回これぐらいの結果は残せて当たり前だと言われているような嫌な気分。

 しかし、私は言い返せなかった。言い返す資格はない。言っている内容は正しい。誰にも否定させないし、否定できない。ただ頷くのみ。

 

 私は結局、専用機を完成させなければならない。それが絶対的な命題。

 いくら他の道があるんだと知っても、こうでなくてはいけないだなんてことはないと分かっても、ヒーローがいなければ自分がなると思っても。

 その命題を達成しなければ、私に価値なんてない。何も出来ない無能なまま。

 

『期待してますよ。御当主様、御姉様のように最高のISを完成させて下さい』

 

 その言葉が耳を劈き、胸を引き裂き、重石の様に心を深く沈めていく。

 

 成し遂げなければ、絶対に。

 早く早く追いつかなければ、あの人に。

 打鉄弐式を完成させて必ずあの人を越えなければ。

 

――でも、本当にそれだけで追いつけるの?

 

 私でない私が問いかける。

 うるさい! うるさい! 追いつける。追いつくんだ、何としてでも。

 私だってやればできるんだ。今回のことがその証拠。

 だから、だから――!

 

『無理しなくていいのよ、簪ちゃん。貴女まで無理することないの。私が全部してあげるから』

 

 こんな時否が応でも蘇る幼い日、あの人に言われた忌々しい言葉。

 あの人は何も出来ない無能な私を気遣ったつもりで言ったのだろう。

 でも、思い出すたびに私は気が狂いそうだ。

 

 やめてやめて。違う違う違う。

 私は、私は――

 

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