【完結】IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜ここから、そしてこれから〜   作:シート

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第二十三話―幕間―私と彼の距離

 部屋に戻った私は荷物をいつものところに置き、ベットの脇に眼鏡を置くとベットに仰向けで倒れこむ。

 たった今いきなり本音に連れて行かれた勉強会から戻ってきた。

 本当にいきなりだった。勉強会のこともそうだけど、そこに彼がいるということも。

 連れて行かれてる最中、それを聞いて正直戸惑ったけど、私が渋ったなんて本音が余計なこと言うから、彼は凄いショック受けた顔してた。

 それだけじゃない。他にも……。次々と彼を傷つけて悪いことをしたことが脳裏に蘇っていく。

 

「……う、うっ、うわああ!」

 

 嫌な気持ちいっぱいで居てもたっても居られなくなった私は枕に顔を押し付けながら叫ぶ。

 そしてジタバタと身悶える。

 

 やっぱり、感じ悪かったよね。

 本音が言ったことは嘘だったけど、彼がショック受けていたのは私にそう思わせてしまうところがあるから。

 それに今日は話さなさ過ぎた。そのせいで彼を気まずくさせて、辛い時間を過させてしまった。

 まあ普段からたくさん話すほうではないけど、今日は特に話さない時間が多かった。

 隣に座れて緊張してたのもあるけど、さっきみたいなのは今日だけじゃない。最近ではもう前みたいに話すことが出来なくなってきていた。

 別に話し方を忘れたとかそういうのじゃない。今までどう話してたかは覚えている。

 でも、いざ話そうと思うと緊張からなのか上手く話せない。何をどう話したらいいのか分からなくなる。

 原因がなんなのかは分かってるつもり。臨海学校一日目の夜、彼を好きだと自覚してから私はこうなってしまった。

 

「……」

 

 私は彼のことが好き。一人の男性として好き。

 好きだと自覚できたのはいいことなのかもしれないけど、おかげで意識しすぎてしまう。

 自覚してから余計彼と一緒にいると感じるドキドキといった胸の高鳴りが激しい。うるさくて苦しい。でも、嫌じゃない。

 むしろ、不思議と何処か楽しい気もする。

 

「――っ、うぅぅ~っ!」

 

「もぉ~かんちゃんうるさ~い。何やってるの~」

 

 恥ずかしさみたいなものがこみ上げきてヘッドの上でまたジタバタと悶えていたら、本音に注意されてしまった。

 そう言えば、一緒に帰ってきたんだったけ。すっかり忘れてた。

 

「どうせ大好きな彼のことでも考えて恥ずかしくなったんでしょ~恋する乙女も結構だけど夜なんだから静かにしてよね、もう~」

 

「なっ!? そ、そんなんじゃないから! 変なこと言わないで! そもそも本音が……!」

 

 図星を突かれた様でムッと来て声を荒げてしまったけど、グッと堪える。

 ダメ、こんなの。

 

「かんちゃん?」

 

「……やっぱり、何でもない。ごめん、騒いで」

 

「う、うん。大丈夫だよ~」

 

 そこまで本音は気にしてないっぽいのが助かる。

 もう少しで私はつまらない八つ当たりをしてしまうところだった。

 図星つかれて悔しいけど、本音の言っていることは大体その通りなのでもう大人しく認めるしかない。

 これ以上騒いで八つ当たりするのが一番情けない。

 いつまでも誰かのせいにして八つ当たりなんてやっていてはダメだ。少しは成長しないと。

 

「勉強会のこと怒ってるならごめんね~?」

 

「……勉強会……ああ、席のこと……? まあ、あれぐらいなら……よくはないけど、あれぐらいならまあうん」

 

「何その曖昧な返事~もしかして嬉しかったとか~?」

 

「……どうだろうね」

 

 言葉を濁して私はまた枕に顔を埋める。

 絶対言わないけど、嬉しいかと聞かれれば嬉しかった。

 もう自分からは彼の隣には座れない。意識してから最近、一緒に食べているのにご飯の時も離れて座ることが多かったから。

 

 でも、このままじゃだめ。

 会話できなくて気まずくなることもそうだけど、私は彼を避けてしまっている。

 物理的にとかそういうのじゃなくて、私と彼との間には妙な距離感が出来てしまっている。

 これもどうにかしないと。なるべく早く。

 だって……。

 

「……勉強会、明日もやるんだったよね……」

 

「そーだよ~もしかして行きたくなくなった~?」

 

「ううん。行くよ。心配しないで」

 

「よかった~行かないなんて言い出したら、引きずってでも連れていかなきゃいけないところだったよ~」

 

「そういうのいいから」

 

 正直乗り気じゃないけど、彼の前で行くと言った手前今更行かないわけにはいかない。

 これで行かなかったら彼は気にするだろうし、彼に会いたい。

 でも、行ったら彼の隣に座れるんだろうか。明日からまたたくさんの人が来るみたいだし、出来れば知っている人、彼か本音が近くの方が気が楽。……彼の隣なら嬉しい。

 だけど、彼の近くになったらまた緊張してまた気まずい空気を作ってしまいそうで……。

 

「ん~そういえば、かんちゃん」

 

「何……?」

 

 突然の問いかけに私は枕に半分顔を埋めながらもう半分だけ顔を本音の方へ向ける。

 

「かんちゃんって彼と最終的にどうなりたいの~?」

 

「最終的に?」

 

「好きだけど気持ちを仕舞い込んで友達のままでいるのか~それとも好きだと伝えてお付き合いして恋人になりたい?」

 

「恋人っ!?」

 

 とんでもないことを言うものだから寝転んでいた私はガバっと起き上がった。

 この子はいつも突然だけど、本当に突然すぎる。

 

「折角好きな人ができたんだからアピールしなきゃ。かんちゃんが友達関係大切にしたいって考えてるのも分かるけど、どうせ恋するなら結ばれたいって思わない?」

 

「それは……」

 

 珍しく真面目なトーンで話す本音の言葉に私は何も言えない。

 ただただ迷う。

 

「……まあ、かんちゃんの恋はまだ始まったばかりで恋ばっかりにかまけられないと思うけどちゃんと考えておいても損ないと思うよ」

 

「そう、だね……」

 

 本音の言うことは理解できるし、もっともだと思う。

 好きな人が出来たのならアピールしたほうがいい。アピールするなら、結ばれた方がいい。

 

 好きになった彼とどうなりたいか。私はどうしたいのか。

 友達のままでいたいのか。本音が言うように告白でもして交際したいのか。

 そんなこと考えたことなかった。いや、考えよとすらしなかった。

 どうしたらいいのって思って迷うばかり。そこで止まる。

 今回も同じこと。いつも同じこと。思考停止。考えなし。

 

 自分のことなんだ。もっと自分でもしっかり考えないと。

 彼のことは好き。でも、だからって告白して付き合いたいのかと言えば、分からない。

 そもそも告白したところで成功するなんて保障はどこにもない。

 失敗したらしたらで、今以上に気まずい関係になってしまう。もう友達ではいられないかもしれない……。

 だったら気持ちを抑えて友達のままでいたい。そう思うのと同時にのか、それはそれで違うような微妙な感じもする。

 

 今日の今考え始めたばかりで当たり前だけど、その夜は結局答えは見つけられないまま時間だけが過ぎていく。

 

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