【完結】IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜ここから、そしてこれから〜 作:シート
部屋に戻ると真っ先にシーツを取り替え、それから簪達にお茶を出す。
山田先生方の報告通り部屋にはやはり誰もおらず、貴重品は中身共に無事。あさられた形跡とかもなかった。
見間違いだったのか。
「……話せそう?」
一連の挙動不審な行動を問いただしてくることなく簪達は待ってくれていた。
そして今も話出すのをゆっくり待ってくれている。
ありがたい。俺はゆっくりとさっきあったことを話した。
「え……何それこわ……」
「うぁ~……」
簪も本音もドン引き。
当然か。むしろ、信じてくれたのか。
「信じる。あなたがその手の嘘言うわけないし、怖いぐらい目が真剣だったから」
そんな風に見られていたのか。
「だね~おかげでいろいろ納得いったよ~あそこに居たこととかシーツ変えてたのとか」
「何もなかったなかったのはよかったけど……おかしいよね。今は外部の人の出入りなんてほぼほぼないだろうし、侵入者が出るような場所でもなければ、カードキーないと入れない部屋の作りなのに」
その通りではある。
まず外部からの侵入者はぼぼありえない。となると内部の侵入者。しかし、それもどうなんだろうか。
そもそもやっぱり見間違いなんじゃ。
「うーん……」
「そうだ~顔とか覚えてない~? 何となくでいいから~」
覚えてはいる。
本当に何となくだけど。
けれど、なんと言えばいいんだ。
「何かあるの……? 言いにくいそうだけど」
簪本人を前にしては非常に言いにくい。
かと言って他の言い方も思い浮かばない。
はっきり言うのが一番だがそれだと簪を傷つけてしまいかねない。
「……私に関係してる? なら、大丈夫。覚悟はしてる。言って」
そこまで言ってもらえたのなら、おもいきって言ってしまう事にした。
「私に似てる……」
小さく呟き簪は考え込む。
淡々と事実を受けとめている。
傷ついたり驚いたりといった様子はない。むしろ。
「あっ……!」
本音のほうが驚いていた。
というより、何か思い出したような気づいたような様子。
「やっぱり、そういうこと。本音……今気づいたことを言いなさい」
「な、何も気づいてないよ~やっ、やだなぁ~かんちゃん」
下手クソか。
隠すにしてもあからさま過ぎる。
「もしかしなくても、帰ってきてるんでしょ」
「え……あっ、う、うん……」
「やっぱり……」
そう言って簪はスマホを取り出す。
簪達の知り合いが関係しているのだろうか。
「知り合いと言うか……多分だけど犯人、私の姉かもしれない……」
簪のお姉さん。というと生徒会長だったはず。
確か今は仕事か何かで休学中だと聞いた。
「うん、そう。復学するかは知らないけど、今の時期なら丁度家の行事終わった頃だから少しは時間作って来たのかも知れない」
なるほど。
時間を作って学園に戻ってきた。そして、俺の部屋に来ていた。だから、簪と見間違えたのか。
話を聞いて、そう考えると納得はいく。
仮にそうだとしてどうしてこんな変な事をしてきたんだろうか。
「多分、あなたを試したんだと思う。前に話したと思うけど私の家は代々日本を影で支えてきた特殊な家系で姉は家の現当主。影から支えるものとして男でISを使えるあなたを試した」
大分ぼかしていたが簪が何を言いたいことは大体分かった。
そういう家系なら俺のような厄介な人間を試してくるのかもしれない。
ハニートラップ的なのをどう対処するのとかそういう意図があったんだろう。
「おそらく。でも、それは多分建前。実際のところは私とあなたの仲を知って興味を持ったからからかいに来ただけだと思う。お姉ちゃんは昔から本当に人を喰ったような人だから」
そう言った簪からはいろいろ募ったものを感じた。
「どう……これが正解でしょ、本音」
「うっ……」
非常に言いにくそうな顔をしている。
こんな本音を見るのは初めて。
簪とお姉さんの間で板ばさみになってしまっているみたいだった。
しばらく迷った本音は、その後観念した様子で口を開いた。
「ごめんなさ~い。その通りだよ~楯無様が帰ってきたのは昨日。その女の人が本当に楯無様なのかは私にも分からないけど~彼に接触するって言ってたから」
そんなことが。
となるとあの女の人がお姉さんだったという線は濃厚になってきた。
「やっぱり……はぁ……」
「か、かんちゃん。お、怒らないの~?」
「本音に怒っても仕方ないよ。というか、私や彼のこと本音があの人に報告したんでしょ」
「はいぃ~……」
身近な本音から聞くのが一番細かく知れて手っ取り早い。
家柄からして本音に拒否権はなさそうだ。こればっかりは仕方ない。
嘘をつけるタイプでもないだろうし。
「まあ、ね……でも、今後あの人に何聞かれてもなるべく言わないように。私がそうしろって命令されたって言っていいから」
「りょ、了解!」
しかし、どうしたものか。
あの女の人が簪のお姉さんだという確率は高まり、動機や目的も予想ついたが完全に確定したわけではない。
決め付けるのは早計だ。
「それはそうだけど……でも、やっぱりあなたの証言といい本音の証言といい姉で間違いないと思う。姉ならいくらセキュリティーが頑丈でも難なく部屋に侵入できるし、居た痕跡をなくすことも朝飯前。間違ってたとしらその時はその時」
簪に確固たる自信があるのは分かった。
ここまでくると確かめないと気がすまないんだろう。
自分の姉が関わっているかもしれないと思えば当然かもしれないが……。
「……余計な、お世話だよね……」
決してそうではないが、正直なところあまり気は乗らない。
簪達に話して怖かった気持ちが楽になった。でも別に犯人探しをしたいわけでもなければ。犯人を見つけてどうこうしたいというのもない。今回のようなことはこれっきりにしてほしいけども。
あれが誰だったのか分かればそれに越したことはないが、その為にこちらからお姉さんを問いただすようなことは避けたい。
今まで話を聞いた限り、簪とお姉さんの仲はよろしくない。今以上に二人の仲をこじれさせるなんてこはしたくない。
簪だってこんなことでお姉さんと連絡取りたくはないだろう。その証拠にスマホを取り出しはしたが、握ったままだ。
「そう、だけど……」
簪は納得がいかないみたいだ。
自分の身内が関わっているのかもしれないと思ったら、いてもたってもいられないんだろう。一度疑い始めるとそう簡単には疑いを晴らせない。
それでも今はこちらに任せてほしい。元々は俺の厄介ごとなんだ。
また何かあれば必ず話すし、必要なら簪の力も借りる。だから、今は今一度気持ちを落ち着け、冷静でいてほしい。
「分かった。勝手なことしない。でも、本当に一人で抱え込まないで。本当の本当にだからね」
念を押してくる簪に俺は苦笑いするしかなかった。
信用ないな、俺。
「信用も信頼もしてるけど……あなたが困ってるのに何もできなかったなんて私は嫌だよ。これも自分勝手だとは分かってるけど……それでも」
簪の気持ちにはただ感謝するしかなかった。
そうだな。逆の立場なら俺も簪と同じようにしていた。
心得ておこう。
でもまあ、織斑先生やコンシェルジュの人達には話して警戒してもらっている。
お姉さんがその手の家系の人ならその情報はとっくに伝わっているだろうし、次はそうそうない。
これきっきりだろう。
…