ようこそ実力至上主義の教室へ~もしも坂柳有栖に幼馴染がいたら?   作:ソラたん

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実力至上主義

「あれ? 偶然だね」

「あ。葉桜くん」

 

 僕はぶらぶらと学校の敷地を歩いていると、平田くんと軽井沢さん、そして、松下さんと森さんの四人の集団を見つけて声を掛けた。

 

「四人とも何しているの?」

「これからどこに遊びに行こうか話をしていたんだ」

「へえー、僕は適当にブラブラしていたよ」

「あ。そうなんだ。だったら、僕たちと一緒に遊びにいかない?」

 

 本当は既に答えは決まっていたが、一瞬だけ考える素振りをした。

 

「うん、じゃあ一緒に行こうかな」

 

 こうして五人で行動することになったわけだが、少しして櫛田さんと出会った。どうやら池くんたちと遊びに行くらしく、良かったら僕たちも来ないかと誘ってくれた。

 これは僕の予想だけど、おそらく池くんたちは僕たちが来ることを良しとしないだろうと思っている。でも、断る理由もないので、そのお誘いに乗ることにする僕と平田くんたちであった。

 そしてしばらく歩くと、池くんたちの姿が見えてきた。そのメンバーの中には綾小路くんの姿もある。

 

「遅くなってごめんね。お待たせっ!」

「うおお、待ってたぜ櫛田ちゃん! って、何で平田たちが居るんだよ!?」

 

 池くんは櫛田さんを見るなり飛び跳ねたあと、後ずさり大げさに転んだ。随分と忙しい。

 そして綾小路くんも呆れたような顔をしているが目に入った。

 

「あ、途中で一緒になってさ。折角だから誘ってみたの。ダメだった?」

 

 櫛田さんがそう言うと、池くんは近くにいた綾小路くんの首に腕を回して何かを耳打ちしている。

 何を言っているのはだいたい予想ができる。おそらく平田くんや僕を追い返す方法を聞こうとしているんだろう。綾小路くんの表情を見る限りでは、別に僕たちはいても良いとは思ってはくれてはいるみたいだ。

 

「あの、もし僕たちがお邪魔なら別行動するよ?」

 

 僕の隣にいた平田くんが遠慮がちにそう言った。おそらく池くんたちがコソコソ話しているのが気になったのだろう。僕も邪魔だと思われて一緒にいるのは申し訳ない気持ちがあるから、平田くんが言わなかったとしても僕が言っていた。

 

「べ、別にいいんじゃね? なあ山内っ?」

「お、おう。一緒に遊ぼうぜ。賑やかな方が楽しいし。な、池っ?」

 

 随分とわかりやすい。二人とも本当は邪魔だ!と、言って僕たちを追い返したい気持ちがある筈なのに、櫛田さんの好感度を下げない為に無理して僕たちを歓迎している。

 

「つーか、当たり前でしょ? なんであたしらがこの三人の顔色窺わなきゃいけないわけ?」

 

 軽井沢さんの意見はもっともだけど、そこに綾小路くんは入れないで上げて。たぶん彼はこの三人の中だと何倍もマシだと思うから。

 そんなことを思いながら、僕は綾小路くんと同じで、やや後方で皆についていく。

 池くんと山内くんは平田くんを両サイドで囲んでいた。人間って不思議なものでなんだかんだ言いながらも、男子は男子、女子は女子で固まることが多い生き物だ。そして池くんも山内くんも平田くんが邪魔だと思っていても、こうやって両サイドで囲んで話をしている。

 

「ぶっちゃけ聞くけどさ、平田。お前、軽井沢と付き合ってんだよな?」

 

単刀直入に池くんは平田くんにそんなことを聞いている。これはあれだろうか? 敵かどうかの確認だろうか?

 

「え……。それ、どこで聞いた話?」

 

 流石に驚き、慌てた様子だ。これは結構出回っている噂だから、そんなに驚くことでもないとは思うけど。平田くん自身は広まって欲しくなかったのかもしれない。

 

「ほら、やっぱりバレてたみたいよ? あたしらが付き合っていること」

 

 平田くんが肯定、否定する前に軽井沢さんが平田くんの腕を取ってぎゅっと挟み込んだ。そして苦笑して頬を人差し指で掻きながら付き合っている事実を認めた。

 そんな二人を見て、僕は目を細め観察する。

 この二人何かが引っかかる。確かに恋人同士に見えなくはない。ないのだが……。なんだろうか? 違和感がある。まるで、作り物の恋人を演じているような感じがする。

 いや――流石にこれは考え過ぎか、この二人が恋人同士を演じるメリットがない。

 

「マジかよー! 軽井沢みたいな可愛い子と付き合えて超羨ましいぜ」

 

 心底羨ましそうに山内くんが言った。これはどっちなんだろうか? 本当に羨ましいと思っているのか、それとも嘘で言っているのか。嘘を嘘と思わせず口にするのは結構難しいものだ。

 

「櫛田ちゃんは、彼氏とかいんの?」

 

 池くんが櫛田さんに話題という名のバトンを渡す。

 

「私? 私は残念ながらいないなぁ」

 

 その言葉に池くん、山内くんは顔をニヤけさせていた。もう少し隠す努力をしてもいいとは思ったが、とりあえずスルーする。

それに櫛田さんが彼氏が居るのを隠している可能性もあるだろう。だけど概ねフリーなのはこれで決まったも同然だ。綾小路くんも少しだけ嬉しそうな顔をしていた。

 

「ねえ、葉桜くんは、どうなの彼女とか?」

 

 今度は櫛田さんが僕にバトンを渡してくる。

 

「僕? 僕も居ないよ」

「そうなんだ。でも、図書室とか、コンビニの前で女子と仲良く話しているの見たって言っている子とかいたよ?」

 

 おそらく、それは有栖と椎名さんのことだろう。有栖は幼馴染で椎名さんとも友達なだけだ。どちらかが彼女というわけではない。

 さて、どういったものか。

 

「あーコンビニの前で話していたのは僕の幼馴染だよ」

「へー、幼馴染の子もこの学校に通っているんだ」

「うん。偶然にもね」

「じゃあ図書室では?」

「あの子は同じ趣味を持っている友達だよ」

「そうなんだ。じゃあその子も本が好きなんだね」

 

 その言葉に内心驚く。まさか僕の趣味を覚えていてくれていたとは。

 

「そうだよ。僕ともすごく話が合うんだ」

「ふーん。じゃあ、誰かと付き合いたいとか思ったことはないの?」

 

 何故か櫛田さんは質問攻めをする。しかし……誰かと付き合ってみたいと思ったことか。

少し考える。僕は今まで誰かと付き合ってみたいと思ったことはない。何故か? それはとても単純明快。周りに僕と釣り合う人が居ないから。

 僕に言い寄って来る女性は沢山いた。だが、その全てが醜い理由で近づいてくる人ばかり。だから、誰とも付き合いたいとは思ったことはない。

 

 

 

「僕も男だからね。一度くらいはあるよ考えたこと」

 

 心にもないことを言う。

 

「そうなんだ!」

「さて、この話は終わりにして。何か別の話をしようよ!」

 

 無理やり僕はこの話を終わらせる。そして再びみんなで雑談をしながら歩く。平田くんと軽井沢さん、山内くんと池くんは露骨に櫛田さんを囲んでいて、森さんと松下さんは僕を囲んでいる。そのさらに後ろは綾小路くんが一人でいた。

 

「なぁ池、どこに行くんだ?」

 

綾小路くんのそんな質問に池くんは鬱陶しそうに振り返って不愛想に答えた。

 

「俺たち、まだ入学してそんなに経っていないだろ? 敷地内の施設を見て回るんだよ」

 

 つまり、明確な目的地がないということだ。チラリと肩越しに綾小路くんの方へ眼をやると、少し居心地が悪そうな顔をしていた。そろそろ流れ変えようかな。

 

「ねぇ、松下さん、森さん。二人はどこか見に行ったりした?」

 

 僕を囲んでいる二人に話を振る。

 

「え? あ、えーっと、どうかな。映画館には一回いったかな。ね?」

「うん。学校が終わってから二人で」

「そうなんだ! 僕も行ってみたいとは思っていたんだけど、まだなんだよね。軽井沢さんたちはデートで何か特別な場所には行った?」

 

僕は3つのグループを繋ぐための行動をしていると、櫛田さんがジッとこちらを見ていることに気が付いた。そしてその目を見た時に背筋に寒気が走る。

 

「どうしたの櫛田さん?」

「何が?」

「いや、なんかジッと見てたから……」

「あー、葉桜くんコミュニケーション能力高いなって」

「そ、そうかな? 普通だと思うよ? それなら櫛田さんの方が高いと思うし」

「私なんて全然だよ。葉桜くんの方が高いと思うよ?」

 

 手を前に出しブンブンと振る。

 いや、それは無い。間違いなく櫛田さんの方がコミュニケーション能力は上だ。彼女の今までの行動を見ているとわかるが、人をよく見ている。無駄に話題を振っても困ってしまう人がいても、しっかりとその人の性格や考え方に配慮している。だけど、けして無視をしているわけではないと目で伝えたりしている。僕でも意識しないとできない。

しかしなんだろうか。彼女から威圧感に似た何かを感じるのは気のせいか?

 そんなことを考えていると、辺りが騒がしくなってきた。どうやら敷地内のブティックで足を止めたようだ。

 僕も何回かは来たことがあるため、中に入ろうとする。しかし、そこで足を止めて後ろに振り返る。そこには綾小路くんがいる。

 

「綾小路くんここに来るのは初めて?」

「あ、あぁ」

「せっかくだし、私服でも買ったら?」

「そうだな。そうしよう」

「綾小路くんは何が似合うかなぁ?」

「まさか俺のを選ぶつもりか?」

「そうだよ? 自分のは何着か持っているから、綾小路くんの選んであげようかと」

「なんだその理屈……」

「気にしない、気にしない。さぁいくよ」

 

 そう言って綾小路くんの後ろに回り込み、背中を押して店の中へ入る。

それから、程ほどに洋服をチェックした後、カフェに足を運んだ。

 そして平田くんは袋をたくさん持っている。これは全て軽井沢さんの選んだ洋服だ。しっかりと会計しているところを見てないが、3万は使っているのではないかと思う。

 

「皆はもう学校には慣れた?」

「最初は戸惑ったけど、もうばっちりだぜ。つか、夢の国過ぎて、一生卒業したくなねー」

「あはは、池くんは学校生活を満喫しているって感じだね」

「あたしとしては、もっとポイントが欲しいって感じ? 20万……30万ポイントくらい? 化粧品とか洋服とか買ってたら、もう殆どポイント残らないっつーの」

「高校生で毎月30万も小遣い貰ったら異常じゃね?」

「それを言うなら、10万でも相当だと思うよ。僕は少し怖いよ。このまま生活を続けていたら、卒業した時困るんじゃないかって」

 

 平田くんがそんなことを言う。確かに金銭感覚が狂うかもしれない。軽井沢さんや池くんみたいにもっと欲しいを思う人が居れば、平田くんみたいに先の事を見据えている人もいる。どちらが正しいかなんて野暮なことは言わないが。僕はどっちらかと言えば、平田くんに賛成派だ。

 

 「金銭感覚が狂うってこと? それは、確かに怖いかもね」

 

 櫛田さんも同じ考えの様だった。

 

「綾小路くんはどう? 10万ポイントは多いと思う? 少ないと思う?」

 

 ずっと聞き専だった綾小路くんに櫛田さんは話を振る。実は僕も同じ話題を振ろうかと思っていたのだが、さっきの事が頭に引っかかっていたのでスルーした。

 

「どうかな……まだ実感がないっていうか、良くわからない」

「なんだよそれ」

「僕は何となく、綾小路くんの言うこと分かるよ。ここは正直、普通の学校とはかけ離れ過ぎているから。どこか宙に浮いた感じが抜けきれないんだ」

 

 そんな会話をしながら僕たちは雑談をしていった。

 

☆☆☆

 

 

 5月の最初の学校開始を告げる始業チャイムが鳴った。程なくして、ポスターの筒を持った茶柱先生がやって来る。

 

「ん?」

 

 茶柱先生の顔がいつもより険しい。それは他の生徒達も気が付いたのだろう。池くんが「生理でも止まりましたー?」と酷い冗談を言っている。

明らかにいつもと雰囲気が違う。僕はこれから何かが来ると予想して心構えをしておく。

 

「これより朝のホームルームを始める。が、その前に何か質問はあるか? 気になることがあるなら今聞いておいた方がいいぞ?」

 

 まるでみんなが何が気になっていることがあることが、わかっているようなセリフを言う。

 

「あの、今朝確認したらポイントを振り込まれてないんですけど、毎月1日に支給されるんじゃなかったんですか? 今朝ジュース買えなくて焦りました」

「本堂、前に説明しただろう、その通りだ。ポイントは毎月1日に振り込まれる。今朝も問題なく振り込まれたことは確認されている」

 

「え、でも……。振り込まれてなかったよな?」

 

 確かに今朝は僕も確認した。ポイントは変動していなかった。今この時までもしかしたら何かの不手際があったのかもしれない、と。思っていたわけだが、それすら打ち砕かれる。

 

「……お前らは本当に愚かな生徒たちだな」

 

 不気味な気配をまとう茶柱先生にDクラスの生徒たちが騒ぎ出す。

 本堂と呼ばれていた生徒が、、聞いたことも無い口調に腰が抜けて椅子に収まった。

その後、再びポイントは振り込まれた、その事実を伝えた。その時に僕は教室を見渡す。そして一人の生徒が笑い出す。

 

 

「ははは、なるほど、そういうことだねティーチャー。理解できた、この謎解きがね」

 

 そう――笑い出したのは、高円寺だ。足を机の上に乗せて、偉そうな態度で本堂を指さした。

 

「簡単なことさ、私たちDクラスは1ポイントも支給されなかった、とうことだよ」

「はぁ? なんでだよ。毎月10万ポイント振り込まれえるって……」

「私はそう聞いた覚えはないね、そうだろ?」

 

 ニヤニヤしながら茶柱先生に指先を向ける。

 

「態度には問題ありだが、高円寺の言う通りだ。全く、これだけヒントをやって自分で気がついたのは数人とはな。嘆かわしいことだ」

「先生、質問いいですか? 腑に落ちないことがあります」

 

 平田くんが手を挙げる。それは自分のためではなく、クラスメイトを心配しての挙手に見えた。

 

「振り込まれなかった理由を教えてください。でなければ僕たちは納得できません」

 

 もっともな疑問だと思う。茶柱先生の先ほどの説明で10万が毎月振り込まれるわけがないと言う事はわかった。だけど、1ポイントも振り込まれなかった理由はいまだ不明だ。

 

「遅刻欠席、合わせて98回。授業中の私語や携帯を触った回数391回。ひと月で随分とやらかしたもんだ。この学校では、クラスの成績がポイントに反映される。その結果お前たちは振り込まれるはずだった10万ポイントを吐き出した。それだけのことだ。入学式の日に直接説明したはずだ。この学校は実力で生徒を測ると。そして今回。お前たちは0という評価を受けた。それだけに過ぎない」

 

 この学校に来てからの疑問がここに来てからの疑問が解決していく。最悪なタイミングではあったが。

 しかし、全てを数えられていたとは……。

 有栖はこの学校のシステムを知っていたのだろうか? いや――たとえ知らなくても彼女ならどこかで勘づくことができただろう。

  この状況を冷静に判断して行動しないと不味いことになりそうだ。流石にポイント節約していたとはいえ、毎月0ポイントになるといずれ底が尽きる。

 その後は平田くんが奮闘していたが呆気なくあしらわれてしまった。挙句の果てに、今月をマイナスポイントを0にできたとしても、ポイントは増えることがないので、いくら遅刻しようが、授業を欠席しようが全く関係がないという。ありがたくもない話まで始めた。このままだと、私語などを控えようと考えている生徒たちの考えが変わってしまう。

 これは茶柱先生の考えなのか、それとも学校側がそう言うように仕向けているのか……。どちらにしても、不味い状況なのは変わらない。

 

「どうやら無駄話が過ぎたようだ。大体理解できただろう。そろそろ本題に移ろう」

 

そう言って手にした筒から白い厚手の紙を取り出し、広げた。それを黒板に磁石で張り付けた。

 あの紙が何なのか、解釈に困るところだが、これはおそらく各クラスの成績だろう。

下からDクラス0。Cクラス490。Bクラス650。Aクラス940。となっている。これらが全てポイントなら1000ポイントが10万円に値する、ということだろう。

 Aクラスがほとんどポイントを下げていない。有栖が仕切ったからか?

 そして、各生徒たちに目を向けると、阿鼻叫喚している生徒もいれば、文句をいまだ言い続けている生徒もいる。

 

「何故……ここまでクラスのポイントに差があるんですか?」

 

 どうやら平田くんは気が付いていたようだ。このポイントの奇妙な点について。そう――このクラスのポイントを見るとよくわかるが、綺麗にポイントの差が付いている。

 

「これってもしかして……」

 

 目を細め、小さく独り言をいう。

 

「段々理解してきたか? お前たちが、何故Dクラスに選ばれたのか」

「俺たちがDクラスに選ばれた理由? そんなの適当なんじゃねえの?」

 

 各々が友人たちと顔を見合わせる。

ここまで来ると、嫌な予感がしてくる。僕たちがDクラスに選ばれた理由――

 

「この学校では、優秀な生徒たちの順にクラス分けされるようになっている。もっとも優秀な生徒はAクラスへ、ダメな生徒はDクラスへ、と。ま、大手集団塾によくある制度だな。つまりDクラスは落ちこぼれが集まる最後の砦というわけだ。つまりお前たちは、最悪の不良品というわけだ。実に不良品らしい結果だな」

 

 やっぱりそういうことだったみたいだ。さらに茶柱先生は生徒たちに追い討ちをかけるように、次のことを言い放った。「1ヶ月で全てのポイントを吐き出したのは過去のDクラスでも初めて」と。

 そしてここで初めて無料のモノがある理由が判明する。つまり、アレはポイントを使い過ぎた人のための救済処置ではなく、ポイントが全く入らない人のための救済処置だったのだ。そしてものの見事に僕たちのクラスはその救済処置にお世話になることになるだろう。

 今まで贅沢三昧の生活を送っていた生徒たちにとってた地獄のような日々になるだろう。

 

「……これから俺たちは他の連中にバカにされるってことか」

 

 そう言いながら、ガン、と机を蹴る。減るポイントがないから影響はないが、今の行動も減点対象になるのだろう。

 そして、その後の茶柱先生はクラスのポイントは金額と連動しているだけはでなく、クラスのランクにも反映されると説明してくれた。つまり、仮に500ポイントを所有できていれば、DクラスはCクラスになることができたという事だ。

 

「さて、もう一つお前たちに伝えなければならない残念なお知らせがある」

 

黒板にもう一つの紙を追加する。そこにはクラスメイトの名前がずらりと並んでいる。そしてその名前の横には数字が書かれていた。

 

「この数字が何か、バカが多いこのクラスの生徒でも理解できるだろう」

 

 カツカツとヒールを踏み鳴らし、生徒達を一瞥する。

 

「先日やった小テストの結果。揃いも揃って粒ぞろいで、先生は嬉しいぞ。中学で一体何を勉強してきたんだ? お前らは」

 

 目の前の小テストの点数が書かれている紙を見ると、見るも無残な結果が書かれている。一部の上位の人を除き、殆どの生徒が60点前後しか取れていなかった。須藤くんの14点。そして池くんの24点と茶柱先生の言った通り、中学で何を勉強してきたのかと言いたくなるような点数を出している生徒もいた。

 

「良かったな、本番だったら7人は入学早々退学になっていたところだ」

 

 その言葉に辺りが騒がしくなる。もちろん僕も表情には出していないが驚いている。

 

「なんだ、説明していなかったか? この学校では中間テスト、期末テストで1教科でも赤点を取ったら退学になることが決まっている。今回のテストで言えば、32点未満の生徒は全員対象と言うことになる。本当に愚かだな、お前たちは」

 

 驚愕の声を上げるのは対象の7人。7人で一番点数が高いのは菊池くんの31点、その上に赤い線が引かれている。つまり菊池くんを含めそれ以下の生徒は赤点と言うことだ。

 

「ティーチャーが言うように、このクラスは愚か者が多いようだねえ」

 

 先ほどから爪を研ぎながら机に脚をの乗せていた高円寺くんが偉そうに微笑む。

 

 その偉そうな態度に皆が、お前も赤点だろう!と言うが、残念ながら彼はあの難問を1問解いて90点を取った者の一人なのだ。

 そしてその後は茶柱先生がこの学校が国の管理下にあること、そして高い進学率と就職率を誇っていることを説明をして、最後に進学先が叶う恩恵を受けることができるのは、Aクラスだけと言い放った。

 中間試験まであと3週間、か。

 僕はしっかりと1ヶ月は過ごせるポイントが入れば、DクラスでもAクラスでもどちらでもいい。

 みんな頑張ってね。そう思いながら、みんなのこれからの行動を見守ることに決めた。

 しかし、この学校は実力で生徒を測る……か。有栖が言っていた僕がもう一度『牙』を見せてくれると確信しているというのは、このことだったのだろうか? 確かに少しは退屈しのぎにはなるかもしれない。だけど――まだ足りないな。

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