「居たぞ!捕まえろ!!」
繁華街の路地裏。華やかな表の世界とはうってかわり、その絢爛さのシワ寄せの様に負の雰囲気が漂う場所。汚れたノラ猫。誰が捨てたかもわからない食べかけのコンビニ弁当。空きカン。横たわったゴミ箱。中からは生ゴミが溢れ、鼻を刺す異臭を放っている。
そんな夜の、裏側の世界で生きる者達。
彼らは、何を思い、何故行動するのか。理由は簡単だ。「生きる為」である。原始的な渇望と、理性的な打算と暗躍で回る世界。
赤髪、耳につけたピアス、秀麗な眉目に、瞳の奥に危険な光を宿した男ーー
ーー「債務者」こと、天開司もその一人であった。
度重なる博打、博打、博打。その成れの果てに彼がいる場所が、光からは遠く離れたこの場所である。彼は今借金取り、特に闇金と呼ばれる機関の者たちに追われている。
「ハァ……ハァ……」
「居たぞ!!こっちだ!!」
「……ッ!!」
少し立ち止まっただけで直ぐこれだ。いかに彼が恨みを買っているかがよくわかる。借りてはそれを返す為に借り、そしてまたそれを返すためにーー
そうやって膨れ上がったのは、怨恨と利息。もはや個人で返せるような額ではない。自己破産しようにも、戸籍すらも金の為にとうの昔に売ってしまった。ギャンブルに取り憑かれたものの末路。いや、違う。彼は諦めようとはしていない。ここを「末路」にするつもりは無い。
疲れきって息は上がり、決して綺麗とは言えない路地裏を駆け回ったせいで、彼のジャンパーは少し黒ずんでおり、家すらも無くした底辺の底辺ーー所謂、浮浪者と見分けもつかない程になっていた。
だが、彼は気にも止めない。「今」さえ逃げ延びれれば、「今」さえ生き延びれれば、まだ希望はあるはず。一発逆転の大チャンスが、この底辺から抜け出すことが出来る大博打が、自分を待っている。そして、それを掴み取ることが出来ると信じて疑っていない。
金を貸してくれと頼み、そのまま縁を切った友人が何人いただろうか?
都合の良いことを言って、騙した人間が何人居るだろうか?
そんな事はもう関係ない。ただ自分が這い上がることだけを、賽を回す事だけを考えて生きている。
故に彼は、「クズ」
ーーそう呼ばれる事がいくつもあった。時には高利貸しに呼ばれ、時には家族にすらそう蔑まれる。
彼は債務者、彼は底辺、彼はクズ……!!
彼の名は、天開司。いずれ世界に名を轟かせる男。
これは、一端のクズであるこの男が底辺から再び、地上へ舞い戻る物語であるーー!!