ポケットモンスターセイバーズ   作:宙の空、響く声

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22.護る者、奪う者

朝、火野の自室。

火野は起きると、誰かが来ている事を察し扉を開ける。

火野「おはよう…東さん!?」

東「おはよう、火野くん…」

火野「だ、大丈夫ですか!?その腕…」

東「実はね…」

東はその境遇を火野に話す。

火野「そうだったんですか…ごめんなさい…ううっ…」

火野は俯き、涙を流し始める。

東「や、止めてよ!私は大丈夫だから…」

火野「僕がいけないんです!…守る為の力はあるのに、上手く使えないから…僕が弱いから…うぅ、うっ…」

対応に困る東、そんな中、

羽剣「ほら言ったろ?行くなって…」

羽剣が入って来た。

東「すみません…しかし!」

火野「いえ、僕が悪いんです…僕が、駄目だったから…」

羽剣「火野…ちょっと来い。」

火野「えっ?…はい。」

羽剣は火野の肩を掴むと、そのまま火野の自室から出る。

東「あー、行っちゃった…」

 

羽剣の自室。

羽剣「火野、優しすぎるぞ。」

火野「えっ、でも…」

羽剣「全部抱え込もうとするな、疲れるだろ。」

火野「でも…」

羽剣「綺麗事は聞き飽きた。後は以…」

火野「待ってください!」

羽剣「?…何だ?」

火野「僕の…相手を、してくれませんか…?僕は、強くなりたいんです…皆さんの…気掛かりにならない為に!」

羽剣「…俺が、お前の相手?ハハッ、俺じゃかなわねぇよ…。永留にお願いすれば?」

火野「永留さんは…相手してくれないんです、僕が弱いから…」

羽剣「何臆病になっているんだよ!強くなりたいんだろ!?」

火野「!…そうですよね、強くなりたいのに、臆病になっては!僕、行ってきます!!」

羽剣「おう、行ってこい!」

 

ホウエン地方・人工島。

火野「僕は…あの人に勝つんだ!」

そう言うと、扉の前に立つ。

火野「大丈夫だ、扉の前で立ってさえいれば…」

火野の予想通り、扉のアンロックを知らせるブザーが鳴る。

それと同時に扉が開く。中で永留が待っていた。

永留「よぉ、久しぶり…でもないか。やっぱり、俺じゃないと駄目か?」

火野「はい、同じ能力を持っている同士でやれば、何か掴めると思ったんです。」

永留「…厳しく行くぞ?」

火野「はい、お願いします!」

永留「覚悟は出来ているな、見んでも分かるぜ。じゃ、ついて来な。」

火野「はい!」

 

人工島・地下3F大ホール。

火野「以前、紗奈さんと戦った所ではないんですね。」

永留「まあな、互いに高い能力を持つ都合だ。前は、お前がそんな力を持っていると思わなくてな…見くびったぜ。」

火野「所で、紗奈さんは?」

永留「エレメンター交流会に出かけているよ、じゃ始めようか!」

火野「はい!」

火野&永留「アーマー・プットオン!」

 

火野:ウルガモス

永留:マフォクシー

 

永留「ふっ、行くぜ!」

火野「はい!」

二人の戦いが幕を上げると、遠距離戦を展開する。

互いに近寄れず、弾幕を張り合う。

火野「くっ、近寄れない…」

永留「ちっ、俺が少し見掛けなかっただけで…成長が早い…!」

先に動いたのは火野だった。エレメンター能力を発動させ、バリアを張りつつ距離を詰めていく。

永留「攻めて来たか…いいねぇ、いいよっ!」

しかし、バリアは途中で消滅する。

すると、

火野「…読めた!」

永留が放つ弾幕を、次々と避けていく。

永留「おっ…!」

火野「行ける…!」

火野は遂に永留の眼前に近づき、

火野「うおぉぉっ!!」

片手銃を瞬時に変形し、斬りかかった。

 

永留「駄目だって…斬りかかる時に雄叫びなんか上げちゃ。」

火野「うっ…くうっ…!」

永留は片手剣を手で掴み、エレメンター能力を発動させて、火野に金縛りを掛けていた。

永留「後、切り札は最後にとって置くものだからな…もう少し学習してから来いよぉっ!!」

剣を掴んだまま、空いている腕で火野の腹部を突く。

火野「うわあぁっ!?…うぅ…」

ダメージが大きく、口からは血が垂れていた。

永留「はい、俺の勝ち。壁にでも寄りかかって休んでろ。」

突いた手を離し、今度は腹部に蹴りを入れる。

火野は飛ばされ、背中を壁に叩き付けられる。

火野「あぁっ…!うっ…くぅ…」

火野は立とうとするが、立てずうつ伏せに倒れる。腹を抑え、痛みに耐えていた。

永留「…やりすぎたか。まあ、こうなるよな…」

火野「まだだ…まだ負けていません…!」

壁に寄りかかりながらも、火野は自力で立つ。

永留「おいおい、口から血なんか出しちゃって…更に戦おうなんて。死にたいのかい?」火野「無論死にたくありません…それに、無茶している訳でもないんですよ!永留さん…見てください、僕の力を!」

火野は全身に力を込める。腕が赤熱し、アーマーは展開する。

永留「ふっ…制御したか。だが、それだけなら!」

火野「これだけではありませんよっ!」

胸部装甲に紋章が浮かび上がる。

すると、紋章から外に向かって結晶が伸びる。

形態変遷が終われば、赤い結晶がアーマーを飲み込んでいた。

永留「まさか、あの力を…」

火野「制御には成功しました、ですが…それだけではありませんよ!」

そう言うと、火野は瞬時に姿を消す。

永留「消えた…!?」

永留が辺りを見回すと、

火野「こっちですよっ!」

火野は永留の背中に蹴りを入れる。

永留「ぐぉっ…やるな!」

火野「永留さん、先程は殴ってくれてありがとうございます、お陰でアーマーの強化に繋がりましたからね!」

永留「なん…だと!」

火野「勝たせてもらいますよ!」

火野は高速で攻撃を叩き込む。

永留は反撃もままならず、膝をつく。

火野「はあ…はあ…、どうですか…僕の…」

永留「ちっ、悔しいが俺の負けだ…但しな、ラティオスでやらなかったと言うハンデがある…負け惜しみだが。」

火野「はい、それに…僕も、体力は…はあ…ギリギリでした。」

永留「とりあえず、能力を使いこなせる点で合格だな。一旦此処で休んでから、出るといい。」

火野「永留さん…ありがとうございます!」

火野は壁に寄りかかり、座り込む。

すると、永留は何かを察する。

永留「おっ…早いな。どれどれ…」

永留は紗奈を見に階段を上る。

火野は自らの拳を見つめて、

火野「そうだ…思いを無くさなければ、僕は…戦える。戦えるんだ…!」

と呟いたのだった。

 

人工島・地下1F。

永留「紗奈、おかえり。」

紗奈「お兄ちゃん、ただいまー!楽しかったよ!」

永留「そっか、それは何よりだ。」

紗奈「ねぇ、頬の傷どうしたの?」

永留は慌てて頬を触る。手に血が付くのを見ると、笑みを浮かべる。

永留「ちっ…あの野郎。やるじゃねぇか…」

紗奈「え、お兄ちゃん何で笑顔なの?」

永留「いや、別に…」

紗奈「嘘だ、何かあったんでしょ?」

永留「隠しても無駄、って言いたいのか?敵わないな…今日、火野と手合わせしたんだ。」

紗奈「へぇ、童顔来ていたのか…結果は?」

永留「負けたよ。あの野郎、判断力だけじゃ説明出来ない強さがあるんだよな…」

紗奈「そっか…で、何処にいるの?」

永留「地下三階にいるぜ…って、どこ行った…」

紗奈「じゃ、行ってくるね!」

永留「迷惑かけんなよ…」

 

鮫島の実家、竜の石碑。

鮫島「ごめんな父さん、俺は強くならなきゃいけねぇ…力は貰って行くぜ。」

鮫島は石碑に手を当てる。すると、石碑から紫色のオーラが発され、石碑の上にはギラティナの形を模した何かが浮遊していた。

?「貴様、力を欲する者か?」

鮫島「はい、ですがまずお名前をお伺いしたいのですが…」

?「そうか、我の名を知る者は人には居なくなったか…我が名はファバノーグ、竜の力を統率する者。貴様は…」

鮫島「鮫島亮です。」

ファバノーグ「鮫島の一族か…我を守る(もる)のに飽きたようだな。良いだろう、貴様には力が有ることは知っている。キーエレメンターの力、持っていくがよい!」

鮫島「い、良いのですか?」

ファバノーグ「ああ、我もこの退屈な世界に飽き飽きしていてな…特例として、試練無しで授けようぞ…!」

そう言うと、鮫島の目へ紫色のオーラが入っていく。入り終わると、鮫島の瞳は紫色に光っていた。

鮫島「ファバノーグ様…恐れ入ります。」

鮫島は感謝の意を口にすると、対馬へ通信を入れる。

対馬「鮫島様、どうしました?」

鮫島「だから様を付けるな…何の試練も無く頂いた。あっちも飽き飽きしていたとかで。」

対馬「ほう…成功、お見事です!」

鮫島「すぐ戻る、俺からは以上だ。」

対馬「はい、通信切りますね…。」

 

PMSイッシュ本部・自室棟。

火野が自室に戻ろうとすると、

羽剣「よっ!お帰り。光田の兄ちゃんから聞いたぜ、格好良かったってな!」

火野「い、いや…まだまだですよ、この程度じゃ、ポケモン達を救うなんて夢のまた夢です…まだまだっ!」

羽剣「お、おう…」

 

火野の自室。

火野はパソコンを起動、レシラムとの対話を始めていた。

 

レシラム>火野くーんっ!!お帰り−!!!

火野>えっ!?ちょ待ってよ…

レシラム>偶には、大袈裟にお帰りって言いたいよ!だって、僕にとって大切な存在だから…!

火野>あ、あぁ…た、ただいま。

レシラム>お帰り、火野君!どう、最近は?

火野>うん、充実しているよ。大変な事は有るけど、君や皆のお陰で戦えているよ!

レシラム>良かった!でも君の事だから大丈夫かな、とは思ったけど。

火野>うん…でも、ちょっと心も痛いよ…鮫島さん…

レシラム>ごめん…悪いこと聞いちゃった?

火野>ううん、これは僕が乗り越えないといけないんだ…でも、つらくなったら手を貸して。

レシラム>当たり前だよ!

火野>ありがとう!じゃ、僕は寝るね。お休み。

レシラム>お休み!

 

火野は、パソコンの電源を切ると、ベッドに腰掛ける。

火野「僕は…生きるんだ、絆を守る為に…」

 

続く。




NEXT

赤き瞳と紫の瞳は相対する…想いと力の争いの中で。
片や戦いを拒み、片や戦いを望む。

23話「神、竜を弄す」

紫の瞳、自らの力が神の手に有ることを知らず。

次回もお楽しみに!
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