虚無會。
拓人「ふう…」
洋子「どうしました?あなたらしく無いですよ…」
拓人「後日教えるとか言ったが、まだなのか、と思っていたのだ。」
洋子「さあね、ともかく様子見だ。無理に行った所で、あの少年に勝てっこないさ。」
琉聖「ちっ、戦力不足とは歯がゆいな…!」
拓人「ボスの事だ、何か考えはある筈…!」
朝、羽剣の自室。
羽剣は起きて早々、準備を進めていた。
羽剣「何故だか知らないが、嫌な予感がするぜ…ん?」
そんな中、ノック音がする。
?「羽剣さん、朝早々失礼します。」
羽剣「火野か?今顔洗っているが、それで良いなら入れよ。」
火野「はい、失礼します!」
羽剣「火野、話でもあるのか?」
火野「はい…本当に曖昧ですが…何か、嫌な予感がして…レシラムも反応していたから…」
羽剣「そうか…奇遇だな、俺もそんな気はしていた。」
火野「そうだったんですか…やはりエレメンター同士、通じる事があるのかもしれませんね…」
財団・能力観察スペース。
鮫島「…これで14体か、対馬。」
対馬「はい、鮫島様。」
鮫島「もっと強いの居ねぇか…?ヌルすぎるぞ…。」
対馬「ヌルいですか?現段階で最高レ…」
鮫島「もう良い、神の力にはまだ貴様は及ばないからな…同じ力同士ぶつけねぇと鈍っちまうよ。さてと…奴らが送り出すのを待つか。」
対馬「は、はい…」
PMS・通路。
2人は訓練棟に向かう最中であった。
そんな中、火野が突然足を止める。気付いた羽剣が声を掛ける。
羽剣「火野…?おい、火野~!」
火野「…!ご、ごめんなさい…」
羽剣「ったく、ぼーっとするな!何か気になるのか?」
火野「はい…え~っと…」
羽剣「鮫島の事か?あいつの事は忘れろ…な?」
火野「忘れられませんよ!鮫島さんだって、何か考えがあったんじゃないですか!?」
羽剣「だが今はどうだ?現に俺らの敵だ!そんな奴の事を気にするのかよ?」
火野「気にしますよ!…悲しすぎますよ、このまま戦わないといけないなんて!」
羽剣「綺麗事は程ほどにしろよ!第一…」
内海「はいはい、二人ともストップ。」
火野&羽剣「内海さん!?」
内海「火野君が言っている事も分かります。しかし、まず目の前の事から。ね?」
火野「す、すみません…」
内海「ううん、謝る事じゃないわ。じゃ、私はやる事があるので。」
羽剣「は、はい…」
2人の仲裁を終えると、内海は去って言った。
火野「羽剣さん…すみません…」
羽剣「お、俺こそ悪かった…じゃ、行こうぜ。」
火野「はい…」
訓練棟。
黒曜「よっ、火野!」
火野「あっ、黒曜くん…おはよう。」
黒曜「火野、最近元気無いな…何かあったか?」
火野「だ、大丈夫だよ、あはは…」
黒曜「いや、心配だな…、トレーニング行くのか?」
火野「はい、羽剣さんと行く予定で…」
羽剣「…まあ、そういうことだ。後、火野の事は俺に任せておけ。」
黒曜「お、おう…」
火野「ぼ、僕は大丈夫ですから…心配なく。」
黒曜「わ、分かったぜ…」
羽剣「さて、やるか…対人戦。」
火野「僕と、ですか?」
羽剣「あったりめーだ!これから虚無會の幹部や財団の刺客との戦いも多くなる。それに、あんたがどれだけ強くなったか…いや、あんたに俺が付いていけてるかを確かめる為にな。良いだろ?」
火野「…はい!」
羽剣「手加減すんなよ?」
火野「はい…」
羽剣「心配すんな、俺は手加減無いから。手加減を無くさざるを得ないぜ?」
火野「…分かりました。負けませんよ?」
羽剣「おーっし、早速やるか!」
訓練棟・対人戦ホール。
羽剣「さ、行くぜ!」
火野「はい!」
二人「アーマー…プットオンッ!!」
火野:ウルガモス
羽剣:ボーマンダ
火野「メタグロスじゃないんですね…」
羽剣「まあな。火野と違って俺はキーエレメンターじゃない…中石って奴にあげたよ。」
火野「分かりました。行きますよ!」
羽剣「おう、来い!」
2人は、同時に接近し、斬りかかる。
互いの剣の刃がぶつかり合い、火花が散る。
火野「くっ、鍔迫り合いか…」
羽剣「要するに力比べか…勝ったなこの勝負!」
羽剣の瞳が水色に光り、火野を徐々に押していく。
火野「ぐ、うぅっ…」
羽剣「へへっ、力で負ける俺じゃないぜ!」
火野「(…それなら!)」
火野は剣を手放す。それによって羽剣が前のめりになった所を蹴ると、羽剣はうつ伏せに倒れる。
羽剣「ううっ!…やるじゃねぇの。」
火野「剣や銃だけが武器な訳が無いんですよ!」
プロメテウス財団・研究室。
鮫島「…始まったか。」
対馬「何が…ですか?」
鮫島「ふっ、この力を漸くまともに試せる…!」
訓練棟・対人戦ホール。
能力を発動させている羽剣に対して、火野は能力を発動しないまま互角に戦っていた。
羽剣「おいおい、舐めプはよしてくれ…」
火野「エレメンターは窮地まで取って置くもの…そう簡単には使えませんよ!」
羽剣「マ、マジかよ…」
火野「…!?来るっ!」
火野は羽剣を突き飛ばす。虚空より放たれた紫の光の刃は、火野の背中を斬りつけた。
火野「うわぁっ!!…ぐっ、うぅ…」
ダメージを受け、膝をつく。装甲は裂かれ、隙間から血が垂れる。
羽剣「火野!?」
火野「大丈夫です、僕は。それより…何をしに来たんですか、鮫島さん!」
羽剣「!?」
空間が割れ、1人の男が姿を現す。鮫島「流石に気付かれるか…エレメンターの力、舐めていたものだ。」
鮫島:ガブリアス
火野「一体、何をしに来たんですか!?」
鮫島「ふっ、力試しとデータ収集…って感じだ。財団の創りモンじゃ、つまらなかったんでね。」
火野「創りモン…?いくら創られた命だって、粗末にしないで下さい!」
羽剣「火野!落ち着け…」
火野「す、すみません…」
羽剣「んで、それ以外は?」
鮫島「特にない。この力、試させてもらう!」
火野「もう貴方は、僕の知る鮫島さんじゃない…なら、手加減する理由は無いっ!!」
火野は剣を拾い、鮫島に突き出す。
火野「羽剣さん…後方支援、お願いします。」
羽剣「はぁ!?俺が?まあ良いけどさ…怒ったお前の怖さを知っているからな…」
火野「黙って下さい…行きますよ!」
羽剣「やっぱ怖ぇ…」
鮫島「んじゃ、楽しむとしますか!」
火野「うっ…うわあぁぁっ!!」
雄叫びを上げ、火野が勢い良く斬りかかる。しかし、軌道を察知した鮫島は難なく火野の腹を殴る。
火野「く…!!」
吹っ飛ばされ、地面に転がる火野。痛みの余り腹を押さえてうずくまっている。
鮫島「おぉ…もうこのレベルの力が…ったく、もっと早く渡して貰っても良かったのだが…?」
鮫島は何かに気付いたのか、右腕を振るう。腕に付いた刃から、紫の光が放たれ、遠くで援護していた羽剣に命中する。
羽剣「ぐはぁっ…」
壁に叩きつけられ、ぐったりとする羽剣。
鮫島「はあ…この程度か…」
火野「まだだ…まだ負けていない!」
火野はゆっくりと立ち、キーエレメンターを発動させようとする。しかし…
火野「くっ…」
一瞬瞳が赤く光ったものの、瞳はすぐに元の状態に戻り、火野は疲れて膝から崩れた。
火野「うぅ…ま、まだ…」
火野は横向きに倒れ、意識を失った。
鮫島「ふう…この程度かよ。さて、あいつ等を自室に転送するか…」
鮫島は火野と羽剣の頬にタグを付ける。
鮫島「転送先、自身の自室…これでよし。じゃあな、強くなったらまた相手するぜ。」
鮫島は本拠地にワープする。同時に、火野と羽剣もそれぞれの自室に転送されたのだった。
羽剣「火野…火野!」
火野「…?羽剣…さん?そして、何故僕は自室に…」
羽剣「鮫島の奴だな、転送の設定した所を見ていたからな。」
火野「…うぅっ!」
火野はベッドを叩く。彼の頬を一粒の涙が伝う。
火野「駄目だった…救いたかったのに!うぅっ…うぅ…」
羽剣「泣くなよ!はあ…お前優しすぎるぞ。」
火野「うぅ…ひぃっ…ひっく…」
羽剣「ったく、可愛いよな…真面目で。全部自分で抱え込んじゃってさ…失礼したぜ。」
羽剣は火野の自室から出た。
?「ねぇ…火野くん…」
火野「レシラム…何で出てきたの?」
レシラム「もう…黙っていられないよ。君がつらそうなのに、何も出来ないのは嫌なんだ。」
火野「レシラム…ありがとう。君は本当に優しいね。」
レシラム「そんな事無いよ…ん?カードホルダー貸して。」
火野「うん…いいけど。」
火野のカードホルダーを手に取ると、その中から白い無地の、しかし特殊な形をしたカードを取り出す。
レシラム「火野くん、これ借りるね。きっと、君の役に立てる…!」
火野「…はい!」
そう言うと、レシラムはボールに自ら戻る。
火野「あのカード…貰ったのはいいけど、一体何なんだ?」
火野は、カードが何なのか考える事にした。
虚無會。
拓人「まだか…」
そう愚痴を吐くと、タイミング悪くボスからのメッセージが届く。
洋子「おぉ、来たわ!」
琉聖「えっと…二体のネガビーストを合成させる装置を創った。其方にダイノーズとダストダスを送った、これを実践して欲しい、って。」
拓人「合成か…カムフラージュはやったが…それ以上は当然…面白くなったな!」
洋子「そうね。あの子供達に一矢報いられるなら…!」
続く。
ポケットモンスターセイバーズ第23話、いかがでしたか?
次回予告
希望は刹那の内に砕かれ、残るは血に濡れた弱き命。手を伸ばそうにも光には届かず、地に這うのみ。
第24話「届かない思い」
赤い瞳は、魔の巨神に届かず。
次回も、お楽しみに。