25.英雄、覚醒
PMS本部。
火野の命に別状こそ無かったが、体力を消耗していた。
羽剣「くそっ、あの馬鹿…」
東「私たちが弱かったから…火野君、ごめん…」
羽剣「俺達もまだまだ…しかし、あれをどうすれば!」
黒曜「火野…俺は…」
アーマー装着者の面々が暗い空気になる中、突然全員のブレスが鳴る。しかし、ネガビースト出現の通知では無かった。
司令室。
羽剣「はぁ!?虚無の脅しだと!?」
内海「えぇ、それもなかなか恐ろしい物よ。」
東「それで、その内容って?」
月読「とあるポケモンを渡せ、すればネガキマイラを分解する、というものだ。」
黒曜「ネガキマイラって、あのやけに強かった奴?」
月読「しかし、そのポケモンが特殊なものでな。今、我々の中に持ち主が居るかどうか…持ち主だけで来いとは言われていたが…」
羽剣「すみません。俺…心当たりがあるんです。」
月読「ほう…」
羽剣「レシラム…でしょうか?」
月読「…何故分かった!?」
羽剣「火野が、持っているんです…」
月読「火野が…回復し次第…」
羽剣「いや、応じないと思います…」
月読「此方も対策をとらないとな…」
謎の空間。
見渡す限りの暗闇、火野はその真ん中で佇んでいた。
火野「此処は…早く皆さんの所へ…!?」
突然光が広がり、闇に覆われていた真っ白な空間が姿を現す。それと同時に、火野の目の前に1人の少年が姿を現す。白くて長い髪、青い瞳…火野には見覚えがあった。
火野「あなた…もしかして?」
?「そう、僕だよ。驚いた?」
火野「そりゃそうだよ…所で此処は?」
レシラム「うーん、説明し辛いな…まあ、精神世界って所かな。僕が何故この世界で人間なのかは分からないけど。」
火野「えっ、じゃ僕は…?」
レシラム「寝ているよ、体力を消耗してね。ってか、心配したんだよ!」
レシラムは火野に抱きつく。目に涙を浮かべて。
レシラム「死んじゃうと思ったんだよ!!」
火野「う、うん…」
レシラム「まあ…生きてたから良かったけど。」
火野「ごめん…」
レシラム「もう…」
火野「えっと…レシラム?」
レシラム「えっ?…!?」
突然、火野は強くレシラムを抱く。
火野「もう…絶対離れない、何処へも一緒だよ。」
レシラムは顔を赤くして、
レシラム「も、勿論だからね!」
と火野の頭を撫でる。
その時だった。
火野のブレスが光を放つ。ブレスは白くなり、側面には「L」の字が刻まれていた。
火野「こ、これって…」
レシラム「わ、分からないよ!だけど…」
火野「うん、確かに…」
レシラム&火野「僕たちの心が、繋がった気がしたんだ!!」
PMS、治療室。
火野「はっ!…ゆ、夢…?」
火野は手首を恐る恐る見る。ブレスは外されており、手首には巻いていた跡がついていた。
火野「そうだよね、やっぱり夢だよね…ん?」
ノック音がする。
黒曜「火野、起きてるか…?」
火野「あ、はい…起きています。」
黒曜は戸を開け、火野の隣に座る。
黒曜「火野、俺…」
火野「ごめん、黒曜君…」
黒曜「火野…?」
火野「心配かけちゃったよね、本当にごめん…」
黒曜「い、いや…謝るなよ。それと、お前に聞きたいことが…」
火野「えっ…僕に?」
黒曜「虚無が、お前のレ…」
火野「渡すもんか…!」
黒曜「だ、だよな…」
火野「当たり前だよ、大事な仲間の手なんて…何があっても離しちゃいけないんだ…!」
黒曜「んでも、お前1人で来いって…」
火野「僕1人でやる。」
黒曜「おい、無謀だ!お前1人で…」
火野「良いからブレスを寄越して!これは、僕の戦いなんだ…」
黒曜「お、おう…」
黒曜はブレスを渡す。火野がそれを腕に巻きつけると、急いで治療室を出ていった。
通路。
東は火野を見つけ、声をかける。
東「火野くーん!」
しかし火野は、
火野「東さん、ごめんなさい…今、急いでいて…」
と言うと東とすれ違い、司令室へ向かっていった。
東「火野君…」
司令室。
火野「内海さん、遅れてすみません…」
内海「火野!?大丈夫なの!?」
火野「はい、大丈夫です。それと、虚無の件ですが…」
内海「レシラムは…?」
火野「無論です、僕がキマイラを倒します。」
内海「そんな、無茶だわ!第一、あなたの力で…」
火野「分かっています!無茶な事くらい…でも、行かせてください…必ず、帰りますから。」
内海「火野…しかし!」
月読「行かせてやれ、男の覚悟に水を差すな。」
内海「…行きなさい。」
火野「内海さん、月読所長、ありがとうございます!」
話が終わると、火野は司令室を急いで出た。
直後、黒曜から話を聞いた羽剣が司令室に入る。
羽剣「所長、火野は!?」
月読「生憎、1人で行った。」
羽剣「あの馬鹿…」
月読「しかし、信じてやろう。我々にはそれしか術は無い。」
羽剣「ちっ…」
タワーオブヘブン、最上階。
拓人「暇だな…ん?」
ネガキマイラの正面に、火野が現れる。
拓人「ほう、まさか君だったとはね…」
火野「だから何ですか…?」
拓人「まあいい。さてと、君の目を見るに戦うつもりだな?それほど死にたいのか?」
火野「死ぬ積もりなんてありません…貴方を倒すだけです。」
拓人「ほう…それならネガキマイラを倒してから言ってほしいな!」
拓人が指を鳴らすと、ネガキマイラは臨戦態勢に入る。
火野「ごめん、いつも迷惑かけて…でも、今は手を貸して…ウルガモス!」
火野は、ブレス側面のスイッチを押し、アーマーを纏う。
拓人「さて、私は見物としますか…」
火野「行くよ…ウルガモス!」
PMS・司令室。
モニターには火野とネガキマイラの戦う様子が映っていた。
羽剣「何で火野を一人で行かせたんですか!?月読さん!!」
月読「…」
羽剣「俺、助けに行きます!放って置けません!」
月読「無理だ、結界が…」
羽剣「だったらなんで行かせた!?」
月読「…」
火野はネガキマイラに押され、防戦一方だった。
火野「き、きつい…!くっ!?」
疲弊し、膝をつく火野。ネガキマイラは攻撃のチャンスを見逃す筈も無く、毒の奔流で火野を捕らえ、地面に叩きつける。
火野「あぁっ!!…うっ…」
火野はアーマーを解除され、地面に倒れる。
拓人「ふっ…いい加減、諦めて渡し…!?」
火野のブレスが光を放つ。
火野「まだ…まだ終わっていない!!」
火野はゆっくりと立ち上がると、ブレスに手を当てる。
火野「僕は…守らなくちゃいけないんだぁっ!!」
光は溢れ、火野の身体を包み込む。
拓人「なんだ…これはっ!?ぐっ…」
光が収まると、ブレスはあの空間で見た形になった。
火野「レシラム…力を貸してくれるんだね!行くよ…!!」
火野はカードケースから光り輝くカードを取る。そして、ブレスに挿した。
火野「アーマー、プットオンッ!!」
火野は側面の起動スイッチを押す。
拓人「やらせるか…行け!!」
ネガキマイラは毒の奔流を放つ。しかし、突如広がる光に押し返される。
拓人「ちっ…!?」
光が収まった時に拓人が見たのは、髪が白くなり、瞳が澄んだ青色に染まった火野と、その後ろにいるレシラムの形をしたエネルギー体だった。
拓人「…何だ一体!?」
火野「これは、僕とレシラム…二人の絆の力だぁぁっ!!」
レシラムの形をしたエネルギーは火野に覆い被さり、アーマーとして形成されていく。そして、アーマーの装着が終わると光を放つ。
PMS・司令室。
この一部始終を見た三人は、呆然とした。そして、一番最初に口を開いたのは、羽剣だった。
羽剣「火野が、まさかあんな手を持っているなんて…へへっ、あんたには敵わねぇな…!」
拓人「ちっ…やれ!」
ネガキマイラは毒の奔流を放つ。しかし、火野はそれを左手で掴むと手前に引き寄せネガキマイラを殴る。
ネガキマイラは凄まじい勢いで吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられる。
拓人「ば、馬鹿な…こんな事!」
火野「これでもまだ一割以下だ、行くよっ!」
火野は右腕を一を書くように動かす。軌跡は光り、剣を生じさせる。
火野「フライゴン、お願い!」
剣のスロットにフライゴンのアーマーカードを挿す。スロットを押すと、剣の刀身が砂嵐を纏う。
火野「行くよっ!」
火野が剣を振るうと、砂嵐は巨大な剣を形成し、ネガキマイラを切り裂く。
拓人「なんだこの力…!」
火野「貴方には分かりませんよ…!心は一つだといつでも感じられる…そう思えば、不思議と力はみなぎるんですよ!!」
火野はブレスのアーマー技起動スイッチを押す。
火野ブレス「アーマー技発動、10ゲージ消費…エクス・ブレイジングトゥルース!」
火野の両腕に、炎の剣が形成される。
火野「うおぉぉっ!!」
火野は敵に猛スピードで接近し、連撃を叩き込む。
ー 何故だ…この我が…! ー
火野「これは、僕とレシラムの…絆だあぁぁっ!!」
火野は一度下がると、ネガキマイラに再接近し、すれ違いざまに切り裂く。
ネガキマイラの胴体は、「X」の字に切り裂かれていた。
拓人「何!?しかしこの程度…!?」
ネガキマイラは爆発を起こす。ネガキマイラがいた所には、二つの…ノズパスとヤブクロンのチップが落ちていた。
火野「…勝った?」
拓人「ちっ…撤退だ!」
火野「!?待って!!」
拓人は、姿を消した。
一方、火野は疲れて仰向けに転がる。しかし、笑顔を浮かべて。
火野「レシラム、僕は君を守れたんだ!僕にも、守る力があったんだ!」
そう喜ぶ最中、羽剣が火野の近くに降り立つ。
羽剣「火野!?大丈夫か!!」
火野「羽剣さん!?なんでここに…」
羽剣は、疲弊した火野に肩を貸す。
羽剣「当たり前だろ!?お前の事だから、余計に心配だったんだ!!この、馬鹿野郎!」
火野「ご、ごめんなさい…」
羽剣「とは言え、お前すげーな!!伝説のポケモンのアーマーだなんて!」
火野「い、いや…これは…その…」
羽剣「それにしても、お前…途中絆絆言っていたよな?俺痛すぎて見ていられなかったぞ!!」
火野「止めて下さい!それ、僕も恥ずかしいです…!」
火野は赤面する。
羽剣「ははっ、お前可愛いな!でも、それが有ったから勝てたんだろ?誇っていいんじゃねーか?」
火野「は、はい…」
羽剣「じゃ、帰ろうか!」
火野「はい!」
PMS・帰還用ポート。
火野が戻ったポートには、東が待っていた。
東「おっ、お帰り!」
火野「た、ただい…」
東「聞いてないよー!火野君にそんな友達がいるなんて!!」
火野「あっ、その…ごめんなさい。」
東「まさか、私を遠ざけていたのって…!」
火野「ち、違います!別に、僕は遠ざけるなんて…」
東「まあ、いいわ。いずれその座を…」
火野「ごめんなさい、僕用事あるんで。」
火野は足早に去った。
東「え!?ちょっと待って~!」
研究室。
火野「すみません、貴水さん…」
貴水「おっ、話は聞いているぞ。お疲れ様。」
火野「は、はい…」
貴水「んで、ブレスは?」
火野「それが…」
ポートに着いた際にブレスは元通りになっていたのだ。
貴水「…しゃあねぇな、研究は止めだ。絆とか奇跡とか介入して夢を壊したくないし。」
火野「いや、僕は別に大丈夫ですけど…」
貴水「まあ、どっちにしろ研究出来るかも分からんし。後はゆっくり休めよ!」
火野「はい!」
火野の自室。
いつも通りパソコンを点け、レシラムとの対話を始めた。
レシラム>お疲れ~!そして、ありがとう!
火野>いや、こちらこそだよ!君が居てくれたからね。
レシラム>やっぱり、僕達は最高のコンビだね!
火野>いやいや、まだまだこれからだよ!
レシラム>所で、そろそろクリスマスだよね?角と赤いボール着けて来ようかな…?
火野>えっ、それって…
レシラム>君は…お察しだよね。
火野>いやいや、恥ずかしいよ…
レシラム>ふーん、似合うと思うんだけど…まあいいや。一応、人間の言葉話せるし、みんなとお話したいな~。まあ、パソコン経由で話すのは君の自室のスペースを割きたくないだけなんだけど。
火野>そうなんだ…でもやっぱり衣装着るの恥ずかしいな…!
レシラム>えぇ…嫌?
火野>うーん…帽子だけなら、何とか…
レシラム>じゃ、そうするよ!
火野>じゃ、僕はこれで。お休み!
レシラム>お休み~!
数日後・クリスマス。
自室棟・エントランスにて。
羽剣「火野の奴、おっせーな…」
東「なんか準備しているんじゃない?火野君は遅れるような人じゃないし…ん?」
噂をすればなんとやら、火野が急いで来た。
火野「はあ…はあ…ごめんなさい、遅くなりました。」
黒曜「火野、遅いぞ!何やってんの!?」
火野「す、すみません…」
羽剣「まあまあ、全員揃ったし。互いに話す事も無かったから、束の間の休息といきますか!」
ヒウンシティ・外周。
メンバーにとって、討伐以外での外出は久しぶりの事だった。
羽剣「さて、後は各自自由って事で!但し、ネガビースト出たら強制終了な!」
黒曜と東は喜んで行きたい所へ行く。
一方、火野はぼーっと空を見ていた。
羽剣は火野が気になり、声を掛ける。
羽剣「おーい、火野!何してんだ?」
火野「す、すみません!」
羽剣「い、いや謝る事じゃねぇよ…それより、何で空を見ていたんだ?」
火野「今頃みんな無事かな、って……うっ…」
火野の頬を、一筋の涙が伝う。羽剣は、火野の肩を優しく叩く。
羽剣「ったく、お前って優しいよな…俺なんかあっちでなんとか上手くやってんじゃねーかって考えてるよ。」
火野「そうなんですか…」
羽剣「しっかし幸せ者だよな…火野のポケモンは!何時でも主人が心配してくれて!」
火野「い、いや…そんな…」
羽剣「ま、元気だせって。いずれ俺達の手で取り返すんだからな!」
火野「…はい!」
火野は涙を拭うと、リュックに入れていたプレミアボールを空高く投げる。
レシラム「もう…湿っぽい話は止めようよ!」
レシラムは旋回しながら地上に降りる。
羽剣「しゃ、しゃべった!?」
レシラム「へへっ、ポケモンだからって侮らないでね!」
羽剣「お、おぉ…ってか、トナカイ装束か?可愛いじゃねーか!」
火野「まあ、赤いボールと角付けただけですが…あっ、忘れてた!」
火野は咄嗟に帽子被る。
羽剣「おっ、火野がサンタか!2人揃って可愛いな!!」
レシラム「えへへ…」
火野「羽剣さん、僕1人じゃアレなので…」
羽剣「分かってる、ついて来いよ!」
火野「はい!」
火野はレシラムをプレミアボールにしまうと、羽剣について行った。
虚無會。
拓人「はあ…問題山積みだっ!」
洋子「せっかくのネガキマイラでも、伝説の前ではね…困ったわ。」
琉聖「くっそ、あのリア充次会ったら倒してやる…!」
続く。
今回から次回サブタイの発表になります。申し訳御座いません。
次回サブタイ
26話「神意の行く先」
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