暁古城になりました。チート能力付きで   作:迷走中

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俺と叶瀬と姫柊

 叶瀬が待つ部屋に俺と姫柊は入る。そこは会議室用に作られた広い部屋だ。

 叶瀬は肩が少し出たスタンダードなウェディングドレスを着て、椅子に座っていた。

 

「お、お兄さん、雪菜ちゃん」

「待たせたな。叶瀬」

「か、叶瀬さん……綺麗です」

 

 少し緊張した様子の叶瀬。その叶瀬を見て思わずというふうに姫柊が呟いた。

 叶瀬の傍に控えていた護衛と世話役のアイルー達は、俺に一礼をして部屋から出て行く。

 

「事情は聞いているな?」

「はい、島が危ないと聞いていました」

「俺に血を吸われることの意味も?」

「はい。お、お兄さんのお嫁さんになる。ということですよね? 大丈夫です。お兄さんに助けられてからずっと、わたしは恩返しがしたいと思っていました。孤児院と院長先生、兄妹達。みんなを助けてくれたお兄さんの力になりたい、です」

 

 叶瀬は真っ直ぐに俺を見つめながら、俺に力を貸してくれると言ってくれた。

 叶瀬の実家のことを考えると色々と問題が起こるだろう。

 少なくとも、ヴァトラーとはどう頑張ってもガチバトルを一度はするはず。

 そのことを考慮すると、アルディギア王国との関係は原作の市民感情も含めて考えればそこまで悪くはならないはずだ。

 

「分かった。……姫柊」

「は、はい。先輩」

 

 俺に声をかけられて、ビクリとする姫柊。

 

「すまないが、席を外してくれ」

「え……?」

「流石に人前で、血を吸うのは恥ずかしいからな」

「……あ」

 

 俺が姫柊にそう言うと、彼女は悲しげな表情になった。

 あの止めて下さい。俺が悪者みたいじゃないですか。

 とは言え、複雑なのだろう。監視対象が完全な第四真祖になるのをただ黙って見ていないといけないことが。

 それから五秒ほど、姫柊は何か迷う様な素振りを見せてから口を開いた。

 

「せ、先輩は」

「ん?」

「先輩は、とても強いと聞いています。ほ、本当に第四真祖の力が、叶瀬さんの血を吸うのが必要なのですか?」

 

 その問いは、既に俺が何度も自問自答を繰り返した物だった。

 俺の持っているチート能力のことを考えれば、いくらこの世界用にある程度弱体化や調整されているとはいえ、本当に第四真祖の力が必要か? と問われればNOと答えられる。

 実のところ、水の女神アクアなどの神の力も限定的ではあるが使用可能だ。

 だから一時期は、別に眷獣の力なんて必要ないんじゃないか? と真剣に考えもしたのだ。

 

「今回のことはきっかけに過ぎない。俺が吸うのは眷獣達の暴走を食い止めるの為でもある」

「眷獣の……暴走?」

「そうだ、姫柊。俺が受け継いだ眷獣達には意思がある。彼女達は俺に完全な第四真祖になるように発破をかけている。その上で自分達を使えと、俺を促しているんだ。けれど、第四真祖の眷獣の力は強大だ。だから、普段は別の力を使う。すると眷獣達は段々機嫌が悪くなる」

「き、機嫌ですか……」

「で、今の眷獣達の気持ちを一言でいうなら」

 

 

 ――我々に出番を!!

 

 

「は、はい?」

「そうしないと、俺の意思とは無関係に眷獣達が俺の身体から飛び出て、あちらこちらで迷惑をかけるだろう」

「いや、あの、迷惑どころの話ではない気がするのですが……」

 

 原作以上に、眷獣達(コイツ等)が暴れん坊!

 

「どの道、眷獣を掌握しないと島が沈む。割と本気で」

「で、でも、だからって叶瀬さんの血を吸えば、今後の叶瀬さんは。第四真祖の……そのお嫁さんになったら、叶瀬さんの身に危険だって」

「大丈夫です、雪菜ちゃん」

「か、叶瀬さん?」

「覚悟は、出来ています、です」

 

 叶瀬は本当に聖女の様な慈悲深い、全てを受け入れる様な頬笑みを浮かべて姫柊を安心させようとした。

 その結果、姫柊が更にうろたえた。

 

「姫柊は、俺が叶瀬の血を吸うのに反対なのか?」

「え、あ、はい! もちろんです! か、叶瀬さんが犠牲になることなんてないと思います!」

 

 姫柊の言葉に、俺はこの流れならいけるか? と素早く考えて、姫柊に問いかけた。

 

「……それは獅子王機関の剣巫としての意見か?」

「はい! か、叶瀬さんが第四真祖のお、お嫁さんになったら、叶瀬さんが危険な目に、狙われることが多くなるはずです」

「……ふむ、かと言って、血を吸わないという選択肢はない。仮に今血を吸って眷獣を掌握することなくあの坊主とアスタルテを撃破したとしても、俺が遠くない未来にこの島を沈めてしまう」

 

 よし、誘導できたかな? と思い、姫柊を見ると、「ど、どうしよう」という顔をしている。

 

「やはり、今叶瀬の血を吸わないと駄目だな。他に候補者もいないのだし」

「――っ!?」

 

 俺が小さく溜息を吐き、叶瀬を見る。

 叶瀬はちょっと困惑していた。けれど、俺が右手を叶瀬の頬に触れさせると、叶瀬は頬を紅くして俺の右手に両手を伸ばしてきた。

 

「叶瀬」

「は、はい。お兄さん」

「正式な結婚式などは、もっと先になる。俺が叶瀬の血を吸えば、形式上は第四真祖の、俺の婚約者と言う形になるが、いいか?」

「は、はい。お、お兄さんのお嫁さんに、してください」

 

 叶瀬は目を伏せ、俺の右手を両手でしっかりと掴みながら俺に大きく一歩近づいてきた。

 俺は叶瀬の背中に左腕をまわし、優しく抱き寄せる。

 叶瀬を抱き寄せると、ふわりと苺のショートケーキの様な甘い香りがした。

 それと、叶瀬はうっすら汗をかいていた。

 緊張しているみたいだ。無理もない。

 

「叶瀬……」

「お、お兄さん」

 

 頭に血が上るのが分かる。俺はじっくりと叶瀬を眺める。

 美しい目や唇。形の良い眉に鼻筋。中学生なのに色気のある、綺麗な肩。

 呼吸が少し、荒くなる。

 

「いくぞ、叶瀬」

「は、はい。お兄さん」

 

 普段隠している牙が伸びる様な錯覚をおぼえる。叶瀬が少し、身体をこわばらせる。

 そして、俺が叶瀬の血を吸おうとした瞬間。

 

「や、やっぱり駄目です!」

 

――ザクッ! と肉を切る様な音共に、俺の脇腹に激痛が走った。

 

「いだっ!!」

「きゃっ、お、お兄さん!? だ、大丈夫ですか!?」

 

 突然の脇腹への不意打ちに、思わずそのまま床に倒れ込んでしまう俺。

 見ると、脇腹から結構な血がピューッと飛び出ている。

 ヤバッ! この量は直ぐに血を止めないと危ない!

 

 俺は慌てて、傷口を再生する為に吸血鬼の能力をフル稼働させる。

 で、いつの間にか雪霞狼を装備して俺をぶっ刺した姫柊へ視線を向けると。

 

「ゆ、雪菜ちゃん」

「……めです」

「な、何だって?」

 

 叶瀬と俺が驚いていると、姫柊は左目から一雫、涙を流しながら叫んだ。

 

「わ、私は先輩の監視役です! だから、一般人の血を、第四真祖が吸うのを見て見ぬ振りをするのは駄目なんです!!」

 

 血に塗れた雪霞狼を構えながら、追いつめられた表情で叫ぶ姫柊。

 叶瀬はそんな姫柊を見てオロオロしている。

 あー、これなら……いけるかな?

 とりあえず、狙ってみるか。

 

「だが、時間がないぞ? ここで、叶瀬の血を吸わなくても坊主には勝てるだろう。けど、眷獣の暴走のことも考えれば、どの道俺は血を吸わないといけない。現状、俺に血を吸わせてくれるのは叶瀬だけだぞ」

 

 俺が姫柊にそう言うと、姫柊は破れかぶれと言う感じでこう叫んだ。

 

「わ、私の血を吸えばいいじゃないですか、先輩!!」

 

 よっしゃっ、良く言った!

 俺は内心ガッツポーズをとった。

 

 獅子の黄金は、姫柊と相性が良いとヴァトラーも言っていた。

 そのことを考えるなら、姫柊の血を吸うのが一番良い。

 無理だろうと諦めていたけれど、まさか姫柊から血を吸えと言ってくれるとは。

 

「それは嬉しいけれど、叶瀬にウェディングドレスまで着せて何もしないというのは」

 

 恥をかかせてしまう。と俺が言うと叶瀬が慌ててこう言ってきた。

 

「だ、大丈夫です。それよりも雪菜ちゃんのことをお願いします」

「え?」

 

 俺が姫柊に視線を戻すと、姫柊は床にぺたんと女の子座りをして項垂れていた。

 静かにちょっとだけ泣いている。

 

「あ、あー、っとこれは……」

「お兄さん」

「な、なんだ。叶瀬」

「雪菜ちゃんのこと、お願いしますね」

 

 叶瀬は少しだけ悲しそうな表情でそう言うと、部屋を出て行く。

 俺は少し迷ったが出て行く叶瀬にこう声をかけておいた。

 

「埋め合わせは必ず」

 

 俺がそう言うと、叶瀬は振り向いて笑顔を見せてくれた。

 ただ、少しだけ拗ねている雰囲気だ。

 埋め合わせは気合を入れないと駄目だな。

 

「姫柊」

 

 俺が声をかけると、ピクッと姫柊の身体が震えた。

 さて、ここからが勝負だ。

 

 

 もし、失敗したら、叶瀬に土下座して血を吸わせてもらおう。

 

 

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