あの後、マヒタケ(モンハンのアイテム)を念のために殲教師の口に突っ込んで、アスタルテと姫柊を連れてキーストーンゲート最下層からどこでもドアで暁カンパーニーの社長室へ移動。
移動後、アスタルテの眷獣を俺が掌握した。
原作のように姫柊を当て馬にするのは嫌だったので、事前にアスタルテと姫柊に説明をしてからアスタルテを抱き締めようとしたのだが。
「絵的に犯罪チックなので、わたしを使ってください」
と、姫柊が言ってくれたので、しばらく迷ったが姫柊を抱き締めて性的に興奮してからアスタルテの眷獣の掌握を行った。
途中で気づいたけど、社長室のドアから叶瀬が覗いていたけど、もしかして帰ってくるの待ってた?
それから那月ちゃんに連絡を入れて、アスタルテを引き取ってもらった。
「余計な仕事を増やしてくれたな」
ウチに来て開口一番がそれだった。相当ご立腹らしく。機嫌を直してもらうのに数日必要だった。
殲教師も監獄結界へ入れられ、ロタリンギア王国の方は国内に蔓延る西欧教会の過激な連中の排除に成功したようだ。
でも、それは同時に国内の防衛力が低下したことを意味するのだが、不思議なことにロタリンギアへちょっかいをかけていた吸血鬼などの魔族の一部が突然行方不明になったらしい。
不思議だね!
この幸運を無駄にしないために、ロタリンギアは今現在防衛力を高める為に色々と頑張っているようだ。
それと教育改革も行い始め、もう少し人と魔族が対立しないような社会を作ろうとしている。
どうなるか分からないが、影ながら俺も応援させてもらおう。
▼ ▼ ▼
殲教師のキーストーンゲート襲撃の翌日、放課後の屋上で矢瀬基樹は恋人の緋稲古詠に今回の事件について問いかける。
「予定通り、血の伴侶を得た暁古城は完全な第四真祖へと近づいた、か」
矢瀬の言葉を緋稲はなにも言わない。
ただ、じっと空を見上げ続けるだけだ。
「どこまでが、古城のシナリオだ? 兄貴まで引っ張り出して、島の上の連中はかなり慌ただしいぞ」
「六割は、後は色々と手伝った。とだけ」
彼は大雑把ですから。という緋稲の言葉に矢瀬は溜め息をついた。
「親友は、失敗したらそれはそれでどうにかしてしまうからな。しかし、これでますます手が付けられなくなったな。スタンドと呼ばれる謎の力。ローマのコロッセオを破壊した巨大な黒い影を操る力に、世界のどこにでも瞬時に移動できる摩訶不思議な道具」
「他にもありますよ。強力なアンデットを一瞬で浄化できるアクアと呼ばれる謎な神の力、何故か素材を入れて混ぜるだけで作りたいものが作れてしまう錬金術の釜」
他にもまだまだたくさんあるが、パッと思い付く古城の力を思い出して二人は溜め息をつく。
「・・・・・・第四真祖の力だけなら、どうにかなったのですが」
疲れた表情で、遠い目をする恋人に、矢瀬は古城にもう少し自重しろと言うことにした。
「あ、第四真祖からお野菜とお魚をもらったので、夕食作りに行っても良いですか?」
「もちろんです!!」
矢瀬はこのあと恋人と穏やかな至福の時間を過ごし、古城へ自重しろと言い忘れ、恋人がさらに大変な目に遭うことになるのだった。
▼ ▼ ▼
事件から三日が経った。
放課後、俺は暁カンパニーへ姫柊と叶瀬を連れて三人で向かい、書類仕事を終えてから三人でお茶を飲んでいた。
「あー、そういえば。太ももの具合はどうだ。姫柊」
「え、ええっと、もう大丈夫ですよ。先輩」
叶瀬がお茶のおかわりを取りに行って二人きりになったので、気になっていたことを聞く。
吸血衝動に飲み込まれた俺は、姫柊の太もも。
それも内腿の近くに噛みつきそこから姫柊の血を啜った。
かなりの激痛だったらしい。
吸血が終わり、正気に戻った後で姫柊に「ほっっっっっっっっっとに、痛かったです!!!!」と怒られてしまった。
怪我はポーションで直ぐに治したが、少ししびれた感じがするとあの時の姫柊が言っていたので、大丈夫か確認をとる。
「無理させてごめんな」
「いえ、その今にして思えば、そこまで悪い気はしませんでしたから」
「え?」
「あ、ええっと、痛いことは痛かったですよ。けど、ここ――じゃない。嫌じゃない痛みでした」
ここ? 嫌じゃない? どういう意味だ。
「訓練などの辛い痛みじゃない、先輩だから許せる痛みと言えば良いのでしょうか。と、とにかく大丈夫です!」
「そ、そうか。なら良かったけど」
「はい、血を吸われている時の雪菜ちゃん。とても優しい表情をしていました」
姫柊が顔を赤くして慌て出したので、俺も深く聞かずにお茶を飲もうとしたタイミングで、隣から叶瀬の声が聞こえてきて、俺は驚いてむせてしまう。
「あ、お兄さん大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だ。というか、いつの間に」
「お、おかえりなさい、叶瀬さん」
「はい、ただいまでした」
俺だけではなく、姫柊にも気付かれずに部屋に戻って来るなんて。
油断していたとはいえ、ずいぶん気配を消すのが上手くなったな。
後はすばやさの種を多めに食べさせた結果か。
「というか、優しげな表情?」
「はい、あのときの雪菜ちゃんは、聖母様みたいでした」
「あ、あの叶瀬さん?」
「血を吸っているお兄さんの頭を優しく抱き寄せ、髪を撫でる姿。とっても素敵でした」
頬を赤らめている叶瀬に悪いけど、端から見たら明らかに警察を呼ばれる状態だよな。
姫柊を押し倒さなかったみたいだけど、それでも女子中学生の太ももに顔を近づけている俺って・・・・・・。
うん、反省しよう。
「ところで、気になったんだけど。叶瀬」
「はい、どうしましたか、お兄さん」
「もしかして、姫柊の血を吸っている時、最初から覗いていたのか?」
「「「・・・・・・」」」
数秒の沈黙の後、叶瀬は逃げ出した。
しかし、姫柊に回り込まれてしまった。
「叶瀬さん、少しお話ししましょう」
「あ、あの、お、お兄さん!」
「女の子同士、親睦を深めてきなさい」
羞恥で顔を真っ赤にしている姫柊の迫力に涙目で俺に助けを求める叶瀬に、俺はそう言い残して社長室を出た。
『ご、ごめんなさいでした!』
『許しません! 覗きは犯罪です!』
扉の向こうから、姦しい声がしばらく響き渡った。
▼ ▼ ▼ ▼
キーストーンゲート襲撃事件の後、俺と浅葱はキーストーンゲートのケーキバイキングに来た。
放課後なので、制服姿の女子生徒たちのグループがいくつかある。
数は少ないものの男性の姿もあるが、どこか肩身が狭そうだ。
「んー、このイチゴショートのイチゴがクリームと良く合うわ」
「なら良かった。頑張って育てたかいがあったよ」
「え、このイチゴもしかして、古城のところの?」
「ああ、いくつかのフルーツを卸しているはずだよ」
「へー、やるわね。ここのお店って、素材に気を使っているんでしょう?」
なんてことのない、日常の会話。
仮にこの島が沈んでいたら、出来なかったこと。
今回は上手くいった。
けれど、今後も守り続けられるだろうか?
「古城?」
「ん、何だ?」
「難しい顔をしてた。悩みごと?」
「まあ、悩みと言えば悩みなんだろう」
「あたしに言えないこと?」
浅葱の言葉に俺は頷くと、浅葱は「そっか」と呟いた。
浅葱は俺がこの島に来て、荒れに荒れている時の姿を知っている。
修正力によって思考能力を極端に低下させられ、アヴローラを助けられず、凪沙を入院させる羽目になった愚かな自分と世界への怒りと憎しみに支配されているときの俺を。
「古城はさ、背負いすぎな気がする」
「・・・・・・」
「ドロスもさ、あれって戦闘を想定しているでしょう?」
「・・・・・・」
「ああいうのが、沢山必要なことが、この先起こるって教えているようなものだよ」
「すまん」
「ううん、古城のお陰で島が無事だった。けど、無理はしないで、それだけ。さ、食べよ! アンタの奢りだけどね!!」
このあと、俺は一口ケーキ七個、通常のケーキ五個で止めたのだが。
浅葱は回りが引くくらい大量にケーキを食べて、店を泣かせていた。
後日、監視役の姫柊が拗ねていたので、姫柊、叶瀬、凪沙を順番に個別でケーキバイキングに連れていった。
連日ケーキバイキングやキーストーンゲートの店を二人きりで回ったおかげで学園の生徒に目撃され、俺は四股かけている最低男と噂が流れた。
その結果、俺は教師達に生徒指導室へ事情を聞くために呼び出される羽目になった。
更に浅葱に誤解されて、横っ面をひっぱたかれた。
怒って立ち去る浅葱になんて声をかければ良いか迷っていると、姫柊が呆れた表情でこう言った。
「自業自得です、先輩」
俺は叩かれた頬を押さえながら、今後増えていくヒロインのことを考えて、深く溜め息をついた。