次に那月ちゃん、もう一度雪菜で二巻へ。
「あー、やっと終わった」
キーストーンゲート襲撃事件の後、浅葱に破壊されたキーストーンゲートの警備システム復旧の仕事が舞い込んできていた。
普通の実力なら数日かかる作業も浅葱の手にかかれば数時間で終わるなんてことも多いが、今回は数が多かった為なかなかに時間がかかった。
「キーストーンゲートのケーキバイキングは延期かぁ」
本来なら日曜日にいく予定だったが、キーストーンゲート襲撃事件とその復旧の影響で、学校帰りに行くことになってしまったのだ。
次の日曜日だとケーキバイキングが終わってしまっているため仕方がない。やや不満だが古城と二人で出掛けられるのなら我慢はできる。
浅葱は当日に着ていく服のことを色々と考えていたのだが、ふと最近古城の妹の凪沙から借りた少女漫画で制服デートの話があったなと思い出し、頬を紅く染める。
二人で街を歩いて、クレープ食べてと妄想したのだ。
過去に古城と二人で放課後に街を歩いた時、大食漢な浅葱は大量のアイス、クレープなどを食べ歩き、古城に「原作で知っていたけど、フードファイターみたいだ」と引かれていたことを知らない。
更に古城は、今回のケーキバイキングにいくにあたり、店側に事前の注意喚起をしていた。
過去のバイキングで浅葱が食べまくったおかげで料理不足が起こったことがあり、古城が気を使ったのである。
魔族には人間以上に食べる種族もいるので、魔族特区であるこの島の飲食店はその辺りも考慮している。
それはバイキングを行う店でもだ。
だが、暴食の女帝と影で非公式の呼び名をつけられている浅葱が来店すると知った店側は大忙しである。
「まあ、制服だから長居は余りできないけど、こ、今回こそは、古城に、あ、あーん、とか、で、出来たら良いなぁ……」
古城にあーんをする瞬間を想像して悶える浅葱。
古城の周りにいる少女の中で、一番ピュアなのは浅葱なのかもしれない。
後日のキーストーンゲートでの制服デートは、少女漫画のような、とはいかなかったが、学生らしいデートと言えなくもなかった。
ケーキバイキングが終わった後に、追加でクレープとアイスも食べた浅葱を見た古城が、「相変わらず凄いなぁ」と若干引いていたことに、浅葱は気づかなかった。
▼ ▼ ▼ ▼
叶瀬夏音にとって、暁古城という人物の第一印象はヒーローだった。
五年前、修道院が異形の何かに襲われた時、助けてくれたのが古城だった。
妖艶な女性を連れた古城は連れの女性にニーナ・アデラードと孤児院の子供たちの護衛を任せると、異形と戦い勝利した。
戦いの一部しか見ていない夏音だったが、異形に襲われ、死が目前に迫ったときに助けてくれたまだ幼さを残していた古城の横顔を、今でも鮮明に覚えている。
ちなみに、この襲撃事件が起こった日。
絃神島から北西に二百キロ離れた上空二千メートルの地点で、巨大な天使が海へ目掛けて高エネルギー波を叩き込んだ。それにより偶々近くで活動していた国際海洋生物研究グループの船が津波に巻き込まれ、危うく沈没しかけた。
後日、グループの船が持ち帰った映像が原因で、世界中の政府要人、軍関係者、宗教関係者が大混乱に陥ったりもしたが、諸悪の根源は何食わぬ顔で夏音が暮らす修道院の子供たちへの差し入れを作っていたそうな。
「お兄さん」
「ん? どうした。叶瀬」
「次、あそこが見たいです」
「分かった」
今日は、学校帰りに先日ウェディングドレスを着させておいて放置したお詫びに、夏音と古城は二人でキーストーンゲートに買い物に来ていた。
ケーキバイキングで古城に甲斐甲斐しく世話をされながら食べたケーキはとても美味しかった。
夏音は幸せな気持ちで、店を出ることが出来たのである。
そのあと、古城と夏音はいくつかの店をまわることにした。
「叶瀬、次は何処か行きたい所はあるか?」
「あ、それなら」
ケーキバイキングの次に二人が、向かったのは所謂猫カフェだ。
「いらっしゃいませ。あ、社長! それに夏音ちゃん」
「久し振りだな。人も猫も元気か?」
「はい、元気ですよ!」
ピンク色のロングヘアのウェイトレスの少女は、アホ毛をギュンギュン動かしながら、元気よく返事をする。
「頑張っているようでなによりだ」
「はい、ノノは頑張って、社長に恩を返してみせます!」
「ああ、期待しているよ」
古城はカフェ店内を見て、なかなか賑わっている様相に内心ホッとする。
この店にいる猫たちは、全てではないが夏音が拾ってきた猫たちが多い。
修道院と兄妹たちが無事ではあるが、やはり捨て猫を見捨てられなかった夏音は猫を拾ってきてしまい、大人たちが困っているのを見た古城が資金援助をしてこの店を作った。
猫と触れ合える猫カフェと、犬や鳥たちと触れ合える動物カフェ。現在二つの店が営業し、共に里親募集も行っている。
「みんな元気そうでなによりだ。……だからな、もう少し寄ってきてもバチは当たらないと思うんだよ」
「お、お兄さん」
夏音は猫たちに好かれやすい。
今も五匹近くが夏音にすり寄っている。
だが、古城には一匹も近づかない。
前世で動物に好かれていた古城には地味にダメージが大きいが、これは古城の中にいる眷獣が原因だ。
大人しくしていても、動物たちは敏感に感じとってしまう。
最近ではチート能力を扱う古城自身の力も上昇したことで、猫たちは古城自身も強者だと察し、余計に近づかないようにしているのだ。
「ま、叶瀬が嬉しそうにしているから良いか」
古城はそう呟きながらも、自分を見ている猫に必死に猫じゃらしを振る。
夏音はそんな古城を見て、可愛いと微笑んだ。
猫カフェを出た二人は、そのあと古城の家に向かった。
今日は義父の叶瀬賢生が仕事で家を空けるため、夏音は古城の家に泊まることになったのだ。
夕飯後、来客用に空けた部屋のベッドに夏音は横たわっていた。
「今日も楽しかったです」
夏音は、今の幸せを噛み締めていた。
五年前の事件、もしも古城が助けに来なかったら、自分は今頃死んでいたかもしれない。
「……お兄さん」
約十分ほど夏音はベッドに入っていたが、静かにベッドから起き上がり部屋を出ると、古城の部屋に向かった。
「叶瀬?」
「お、お兄さん、こんばんはでした」
古城の部屋をノックする直前で、夏音の気配を感じた古城が自室の扉を開けた。
「どうしたんだ?」
「あ、あの、一緒に寝たいです」
何かあったのか? と疑問に思っていた古城は、夏音の言葉に固まった。
「だ、駄目でしたか?」
「……いや、分かった。頑張る」
古城は夏音が寂しいのだろうと思い、今日は一緒に寝ることにした。
「お兄さん」
「ん?」
「幸せでした。お義父さんとお兄さん。院長先生、凪沙ちゃん、雪菜ちゃん。皆と会えて」
「それは良かった」
夏音の頭を優しく撫でる古城に、夏音は決意を込めて伝えた。
「儀式頑張ります」
その言葉に古城の顔が強張る。
けれど、夏音は古城に責めていないと伝えるために、両手を伸ばてしっかりと古城の両頬を包み込む。
「わたしに必要なことだから、お義父さんは儀式を、お兄さんは耐えてくれている、です」
「叶瀬、……辛いなら」
「わたしは、大丈夫でした」
だから、と夏音は古城を抱き締めた。
明日からも頑張れるように。
「すまない」
古城の言葉に、夏音は微笑みで返した。
翌日、明け方までに起きて凪沙に見つかる前に密かに夏音を部屋に帰そうとしていた古城だったが、夏音の癒しオーラが原因なのか古城はグッスリ寝てしまった。
目を覚ました古城を待っていたのは、般若の表情の凪沙と能面のような表情の雪菜の二人から徹底的に痛め付けられることだった。
そんな三人を見て夏音はオロオロしていたが、古城が柔らかな声音で夏音に大丈夫だと告げながら笑うと、夏音もホッとしながら笑顔になり、今日も一日頑張ろうと思うのだった。
夏音の
原作を知っていて、でも血を吸うため、完全な第四真祖に成る為に、古城の夏音への罪悪感半端ない状況。
けど、夏音はそこまで気にしてません。
古城とニーナのおかけで、原作より人体実験の負担は低めとなってます。
ニーナは腸煮えくり返っていますが、古城宥めている状態です。