気がつけば、評価してくれた方が五十人。
日本語が下手で、誤字脱字が多い小説を読んでくれて、本当にありがとうございます。
次から、二巻分です!!
姫柊雪菜は監視役になる前、攻魔師見習い(当時)として自信を持っていた。
同世代で自分と同じくらいの実力者は数えるほどしかいなかった。
第四真祖の婚約者候補として、監視と抹殺任務の命令が来たときは驚いたが、同時に自信にも繋がった。
監視の技術は教わっていないので不安はあるが、
「はぁ……、このあとどうしよう」
大量のマヨネーズをかけて、古城に叱り飛ばされたのが昨日のことだ。
雪菜は古城から獅子王機関の命令書を渡され、定期的に監視に休みもらうことになった。
雪菜は第四真祖の監視を一時的とは言え休んでも良いのだろうか? と考え込んだが、古城に「常に気を張り続けては、何かあった時に満足に動けないぞ」と諭された。
とは言えここ数日で古城と共にいるのが当たり前になっている雪菜は、自然と監視が休みの日も古城と行動を共にするつもりだった。
けれど蓋を開けてみれば、そうはならなかった。古城が「凪沙と叶瀬と買い物にでも行ってくると良い」と、昨日の夜に四人で夕食を食べている時にお小遣いを雪菜達三人に手渡しながら言ったからだ。結果、凪沙が久し振りのお小遣いに喜び、叶瀬と雪菜の二人をテンション高めで買い物に誘ってそのまま三人で街へ買い物に行くことになったのだった。
この日、朝から雪菜達三人は買い物に来たのだが、昼食を食べ終えた午後一時過ぎに、叶瀬は父親の秘書の女性が迎えに来て仕事の手伝いで抜けた。
そのあとは凪沙に引っ張られるように、カラオケやゲームセンターを回っていたのだが、「ごめんね、雪菜ちゃん。秘書の人がお休みで家事が出来ないお母さんに呼ばれちゃった」と、申し訳なさそうにしながら凪沙も離脱していった。
雪菜は中途半端な時間に一人になってしまった。
そして、雪菜はふと「本当に、このまま自分が監視役で良いのか? 雪霞狼をわたしが使い続けても良いのか?」と自問自答をしながら街を宛もなくさ迷う。
暁古城、世界最強の第四真祖。
正直なことを言うと雪菜はお見合い写真を見せられた時も、初めて顔を会わせた時も、雪菜はいざというときは暗殺出来ると確信していた。
自分を案内しにきたセバスニャンの方が脅威だと感じていたほどだ。
けれど、殲教師とアスタルテとの戦いで、古城がアスタルテの一撃から自分を助けるために放った一撃は雪菜に衝撃を与えた。
古城の動きは素人の動きだった。
しかし、獣じみながら、利にかなった一撃でもあった。
普段の動きから、古城が武術の素人で武術の才能を有さないのを雪菜は分かっていた。
だが、戦っている古城の動きは強者の動きだった。
「結局、アスタルテさんを押さえられなかった」
古城に信用されてアスタルテを押さえを任されたのに、要石があるフロアでの戦いの時、雪菜は役目を果たせず、アスタルテが殲教師をかばうのを阻止できなかった。
古城が使った精神コマンド必中の効果で、アスタルテのただ体を強引に割り込ませるだけの"かばう"では効果がなかったが、それでも雪菜は気にしていた。
自分は監視役としてふさわしいのか? いざというときに暗殺なんて出来るのか? と。
「ねぇねぇ、お嬢さん。ちょっと良い?」
「結構です」
そんな時だった。チャラい男に声をかけられたのは。
どうやらナンパのようなので、雪菜は即座に断った。
この街に来て、凪沙や叶瀬と行動しているときにナンパされることは多い。
「えー、良いじゃん。こんなところを一人で歩いているのは、ナンパ待ちでしょ?」
男に言われて周り見回すと、古城から近づかないように言われていた治安の良くない場所だった。
雪菜は内心かなり焦った。
監視対象ではあるが、年上で世間知らずの自分の面倒を見てくれている相手が「近づくな」と言った場所にいつも間にか迷い混んでいたのだ。
また、古城に怒られると、雪菜は慌ててその場から離れようと踵を返したのだが……
「ちょっと待ってよ!」
と、男に手首を捕まれる。
雪菜が反射的に、男を投げ飛ばそうとした瞬間だった。
「馬鹿、止めろ!!」
「すみません、お嬢さん! コイツには良く言い聞かせるので、どうかご容赦を!!」
突然現れたナンパ男の仲間らしき二人のチャラい男がナンパ男の動きを止め、雪菜に謝罪した。
「あんだよ、二人とも邪魔すんなよ」
「止めろ馬鹿!」
「このお嬢さんは、暁さんが面倒を見てるお嬢さんだ!」
それを聞いた瞬間に男は凍りつき、雪菜から手をゆっくりと離して、流れるようにその場で土下座した。
「す、すみませんでした!! 勘弁してください!!」
「本当にすみませんでした!」
「俺達からもお願いします!」
「え!? え!?」
雪菜は混乱しながらも、「気にしないでください」と告げて足早にその場を後にした。見覚えのある場所に移動するまでの間、すれ違うチンピラやチャラい男、強面の男達から深く頭を下げられ、挨拶を受け続けた。
「おはようございます!!」
「御勤めご苦労様です!!」
「お嬢様、ご機嫌麗しゅう!!」
男たちの行動に、雪菜はかなり戸惑った。
身に覚えはないが、先程の男達の「暁さん」という言葉で、雪菜は古城が何かしたのだろうと察した。
「つ、疲れた」
「お疲れ様」
見覚えのある道まで戻ってきて何気なく呟いた言葉に返事がくるとは思ってもおらず、しかも突然現れた気配に雪菜は一瞬で戦闘態勢に入った。
「あぁ、ごめんなさい。驚かしたわね」
声の主はアメジストのような美しい髪を持つ、大人の魅力が溢れ出ている修道女だった。
「さ、遠慮しないで食べて」
「あ、ありがとうございます」
雪菜は最初こそ目の前の修道女を警戒していたが「古城に雇われている」と言われ、彼女が叶瀬や修道院の子供達、古城と写っている集合写真を見せられてので警戒心を解いた。
その後、修道女に話がしたいと引っ張られるかのように、雪菜は修道女の女性と近くのファミレスに入り、修道女に奢りだとお茶と軽食を頼まれてしまった。
雪菜は遠慮しようかとも思ったが、注文が済んでしまったのでご馳走になることにした。
「あ、自己紹介がまだだったわね。ジリオラ・ギラルティよ」
「わたしは、姫柊雪菜で……」
雪菜はそこまで言いかけて固まる。
目の前な女性が何者なのか思い出したからだ。
「クァルタス劇場の喜劇!?」
「あー、うん。自分で名乗っておいてアレだけど、やっぱりそれが印象的よね」
苦笑い気味のジリオラに雪菜はキョトンとする。
「あの一件はね。古城発案なのよ」
「――ファッ!?」
約五年前、古城がまだ人間だった時のことだ。
ジリオラというキャラのデザインがそこそこ気に入っていた古城は彼女をスカウトしに行った。
「ちょうど、馬鹿な皇太子と王族達が暗殺部隊を送り込んできてね。古城が全員蹴散らしたのよ。まあ、獲物を取られた私がお仕置きしようとしたら、モノの見事に返り討ちにあってね。そのあと雇われたの」
「そ、そうですか」
「それで、女性に優しい古城は私に喜劇を見せてくれたの。世界的にも有名な正義の団体――葉っぱ隊を結成させたわ」
「…………」
ニコニコと笑みを浮かべるジリオラと、強張った表情の雪菜。
本来なら惨劇となる出来事は、泥を被るなら王族だろうと男が泥を被るならべきだ、と判断した古城によって捻じ曲げられた。
仕返しとして、また同時に世界を平和にするための策として、葉っぱ隊の結成が古城発案で行われた。
皇太子を洗の……もとい教育して、護衛や暗殺部隊も含めてクァルタス劇場にて錬金術で作った特殊な葉っぱ型の装備品を股間に張り付けて歌わせ、躍り狂わせた。最後は世界平和を目指す慈善団体"葉っぱ隊"の結成を宣言させた。
そのまま、葉っぱ一枚を股間に身に付けて、皇太子と護衛、暗殺部隊は世界を平和にするために旅立った。
今現在はアフリカの武装勢力を蹴散らし、平和維持活動をしている。
葉っぱ隊の戦闘力はアルディギアの聖環騎士団に匹敵すると言われている。
当時、あのニュースには世界が仰天し、爆笑した。
ジリオラは彼等を紹介しただけで、某小国から更に恨まれたが罪には問われなかった。
皇太子達を教育した古城は姿を消し、獅子王機関などに怪しまれても知らぬ存ぜぬを通した。
その後ジリオラは古城に雇われて娼婦を辞め、表舞台から姿を消した。
ジリオラは今、叶瀬の居た修道院の護衛で、たまになんちゃって修道女になっている。その他には古城の指示で暗部(暗殺は無し)みたいなこともしている。
「それで、監視役のお嬢ちゃんは何を悩んでいるのかしら?」
監視役と言われて驚き、お嬢ちゃんと呼ばれて雪菜はムッとしたが、それを押さえて雪菜はポツリポツリと自分が古城の監視役で良いのだろうか? と、呟いていた。
もちろん、雪菜はさわり程度しか話すつもりはなかったが、元高級娼婦の話術にあっさり負けて、言うつもりがなかったことまで喋っていた。
「自信がない、ね」
「はい。本当に先輩の監視役は私で良いのかなって」
「うーん、大丈夫じゃないかしら?」
「何故、と聞いても」
雪菜の問いに、ジリオラは苦笑いを浮かべる。
「出来ることなら、初めて血を吸うのは姫柊が良い」
「……え?」
「古城が社長室で仕事しているときに言ったのよ。貴女が来る何日か前にね」
「……」
「一目惚れかもしれないわね~」
雪菜はジリオラの言葉を聞いて、顔を真っ赤にした。
お見合い写真は冗談だと思っていた。
けれど、
「あ、今なら古城は社長室にいるんじゃないかしら?」
「――っ」
「話してきたら?」
「は、はい」
ジリオラは、ファミレスを出る雪菜の背中を見てニヤニヤと笑いながら、「古城、早く作業終わらせないと大変よ」と、呟いた。
雪菜が走るのではなくてタクシーを使えばよかったと後悔したのは、暁カンパニーに着いたときだった。
渡された通行書を警備のアイルーに見せて裏口から中に入り、真っ直ぐ社長室へ向かう。
雪菜は汗だくになっていたので、社長室の前でハンカチで出来るだけ汗を拭き、深呼吸をしてからゆっくりと社長室の扉を開けた。
この時、雪菜は古城が自分に一目惚れしたかも、という言葉に自身が思っている以上に冷静さを失っていた。
普段の雪菜ならば、扉をノックしたはずだ。
まあ、仮に雪菜がここで社長室の扉をノックしても、このあと起こる出来事は大して変わらなかっただろうが……
「先輩、お話が――「スワニルダ! 尻をもっと高く上げろ」え?」
「命令受諾、こうでしょうか?」
「そうだ、それで良い見易いぞ。あと少しだから待っていろよナタナエル。あ、この尻はもう少し丸みがないと駄目だな」
社長室の扉を開けた雪菜の目に飛びこんできたのは、白銀のコルセット姿の美少女を床に四つん這いにさせ、手に持つ大型の白い人形の尻の熱心に紙ヤスリで撫でている古城の姿のだった。
古城の近くにスライムみたいなのが控えていたが、雪菜は目の前の衝撃的な光景が原因で気づかなかった。
「む、スワニルダ、もう少し上半身も反らしてくれ。背中のラインも拘りたい」
「命令受「しなくて良いです。そんな命令」諾」
雪菜の氷点下のような冷たさを含んだ声に文字通り凍りつく古城。
錆び付いたブリキのオモチャのようにギギギと、声がした方にゆっくりと顔を向ける。
「先輩」
「は、はい」
「何をしているんですか?」
この日、絃神島に悪鬼羅刹が降臨した。
「なるほど。つまりこの二人、二人? はアスタルテさんの姉妹ですか」
「うーん、腹違いの姉妹。いや、ホムンクルスではないから、従姉妹かな?」
雪菜は床に正座している古城の正面に仁王立ちしながら、今回の経緯を聞いた。
ちなみに古城の左頬は真っ赤に腫れている。
「スワニルダさんとナタナエルさんのお二人はこれからどうするのですか?」
「ウチか那月ちゃんに頼むつもりだ。ナタナエルは錬金粘土で身体のデータを作って取り込ませて、人の形にする感じだ」
なるほど、と雪菜が頷くと同時に、それまで黙っていた銀のドレスのスワニルダが自分をじっと見つめていることに気づいた。
「あ、あの何か?」
「質問があります」
「はい」
「貴女がマスターの奥様ですか?」
「えぇっ!?」
「す、スワニルダ!!」
「マスターが言ってました。姫柊は俺の大切な女性だと」
「待ってくれスワニルダ、オクチチャック!」
「――っ!?!?」
この後、国際的に指名手配されていた人形師の人形が街で暴れたと聞いた那月が古城の元に「何か知らないか?」 と聞きに転移魔術で社長室に顔を出すのと、顔を真っ赤にした雪菜が照れ隠しで古城の顔面に回し蹴りを叩き込んだのはほぼ同時だった。
後日。
「あの、姫柊と那月ちゃんに見られながら、ナタナエルの身体作るの恥ずかしいんだけど」
「私はナタナエルの身体のモデルのスワニルダの保護者だ。貴様が不埒なことをスワニルダにしないか監視する義務がある。それと教師をちゃん付けするな」
「わたしは、先輩の監視役です。……スワニルダさんにいやらしい事をしたら、刺しますからね」
古城は溜め息をつきながら、錬金粘土でスワニルダをモデルにナタナエルの身体の元となる人形を作った。無事にナタナエルは人の姿にもなれるようになり、スワニルダとナタナエルは那月の家で世話になることになった。
ジリオラ
調子に乗っていた時期の古城に何度もボコられ、Mの扉を知らずに開ける。
更に第四週真相になり仰天、記憶障害と凪沙とアヴローラの二人を守れなくて、八つ当たりでチンピラのチームやマフィアを潰して回る荒々しい姿にも胸キュン。
人形師
生け捕りにされたあと、島に集まっていた被害者遺族達に引き渡される。
古城から提供された治癒ポーションで、何度も治療を受けながら、長い時間をかけて復讐され、最後はミンチなる。
量産されていた人形は全て古城が回収。
技術書は原本は古城が、コピーしたものを那月ちゃんに今後の事件などの解決の為にと資料として譲った。
スワニルダ
すったもんだあって、古城が原因で自力でマスターを古城に書き換える。
古城が人形師を捕らえた後に、スワニルダの武装全て解除される。
現在は一人の女の子になるために勉強中。
たまに古城の家に遊びに来ては、夜に古城の部屋に忍び込んで、古城と添い寝をするようになる。
ナタナエル
姉と同様に古城と添い寝をするようになる。
スワニルダより小柄。
無口だがアスタルテ、スワニルダよりもアグレッシブ。
凪沙にはスワニルダとナタナエルは普通の少女と思われているので、ナタナエルは妹のように可愛がられている。