「うん、今回の件は残念だと思っているよ。俺も会えるのを楽しみにしていたよ」
俺は、姫柊雪菜を社長室で待っていると、子供の頃からの知り合いから、スマホへに電話がかかってきた。
一週間ぶりの連絡だったので、久しぶりに声が聞けるとウキウキ気分で、電話に出ると何故か馬鹿! 怒鳴られた。
どうも、監視役が婚約者候補を兼ねていることに驚き、俺が何かまたやらかしたのではないか? と思って連絡してきたらしい。
「うん、だから、さっき言った通り、婚約者候補は三聖の悪ノリだ。もちろん、監視役にそういう意味合いが全くないわけではなかっただろうけれど、俺の悪戯に三聖がのっかった結果だよ」
少し冷静ではない電話相手の愚痴を聞いて、落ちついたところでこちらの事情を説明すると、彼女も信じてくれた。
「あと、俺は監視役の選定にも関わっていない。関わっているなら、監視役は二人になっているはずだよ? 理由? そんなの二人とも可愛いからに決まっているからじゃないか」
俺の言葉に、電話の相手が呆れたようにため息をついた。
子供の頃から、俺のことを知っているから、しょうがないなぁ。という感じだ。
「それに、忘れてほしくないのは、第四真祖の立場ってものすごく危うい。親族がいない、孤児を監視役にするのは、ある意味当然だよ? 死んだときもそうだし。上手くいった場合も考えればね」
俺の言葉にどういう意味? という雰囲気を感じたので、彼女に教えておく。
「単体で国を一つ滅ぼせる戦力の妻になる。そうなった場合、その妻の親族達は甘い汁を吸いやすくなるよな。個人的にあのおじさんがそういうことをする人でないと分かってはいるけれど、家柄と親族のことを考えると、おじさんの立場上、何らかの事情で動かないといけない場合が起きるかもしれない、例えば妻を人質にされた場合とか」
俺の言われて、電話の相手は「あっ」と声をあげた。
昔からあることだ。
「そう、つまり今回の監視役はそういうところも、気を使わないといけないんだ。三聖は若いし、上の方は放任主義だし、政治的な後ろ楯は馬鹿ばかりだし、今ごろ三聖は胃薬でも飲んでいるんじゃないかな? 一ヶ月前にこちらにちょっかいかけて痛い目を見せた政治家って、たしか獅子王機関の支援者の一人だったし」
俺の言葉を聞いて、電話の相手は「わかったわ」と呟いた。
「個人的に、会いたかったのは本当だ。だから、今度会いに行っても良いかな? うん、ありがとう。それじゃあ、またねゆーちゃん」
俺が通話を終えて直ぐにストブラのメインヒロイン、国家公認ストーカー、姫柊 雪菜が到着したようだ。
さて、気合いをいれますかね。
俺と俺の大切な人たちを守り、ハッピーにこの世界で暮らすために!
☆ ☆ ☆ ☆
社長室の扉がノックされ、俺は「どうぞ」と扉に向かって、声をかける。
一流企業の無駄に広い社長室に比べて、俺の会社の社長室は、広いがまだ常識的な範囲だ。
「失礼しますニャ」と声が聞こえ、ガチャリと社長室の扉が開く。
まず、目に入ったのは執事服を着たアイルーが体をスイングさせながら、扉を器用に開けている姿だった。
うん、秘書の子は今全員出払っていたんだった。
俺は直ぐに椅子から立ち上がり、扉に足早に近づくと、セバスニャンの体を持ち上げて、床に下ろしてやる。
「迎え、ご苦労だった。セバスニャン」
「いえいえニャ」
「叶瀬にお茶を頼んできてくれ」
「かしこまりましたにゃ」
セバスニャンはそう言うと、姫柊に綺麗な一礼をしてみせてから、社長室を出ていく。戸惑っている姫柊に「扉閉めるから」と告げると姫柊は慌てて、社長室の中に入る。
「あ、そこに座ってくれ」
「は、はい」
来客用のテーブルと椅子に向かい合って、座り。
俺は自己紹介をした。
「俺が暁古城、本業は高校生兼農家、副業で第四真祖をやっている者だ」
俺がそう言うと姫柊も自己紹介をした。
「姫柊雪菜です、えっと貴方様の監視役を」
「大丈夫、緊張しないで、と言っても無理だろうけど、言葉遣いとかは君の普段通りでいいよ。三聖から君の話は聞いているから」
「え、あの、三聖の方々とは・・・・・・?」
「子供の頃からの知り合いだよ。・・・・・・俺が第四真祖になる前からね」
「え?」
驚く姫柊に今後のために、俺は元人間だったことを教えてやる。
「今年の春に俺は先代の第四真祖から、力を引き継いだひよっ子真祖だよ」
「力を引き継いだって」
驚いた顔をしている姫柊に俺は、分かりやすく説明した。
「食べたんだよ。第四真祖を性的に」
「・・・・・・え?」
俺の言葉の意味が理解できず、一瞬固まる姫柊、しかし直ぐにその意味を理解して。
「え、えええええええええええ!!!!!」
「ま、嘘だけど」
「なっ!?」
顔を真っ赤にして叫んだ姫柊に、俺は直ぐに嘘だと言うと、からかわれたと思った姫柊の顔が更に赤くなったが、姫柊が怒鳴る前に俺は先に口を開いた。
「守れなかったんだ」
「え?」
「俺が甘かったから・・・・・・アヴローラ・フロレスティーナから、第四真祖の力を奪う羽目になった」
自分でも驚くほど、低く獣のような声で、俺はそう言っていた。
あの時の事は、完全には思い出してはいない。
けど、保険で俺達を撮影させていたアイルー達の映像で大半の事は思い出している。
「あ、すまん。驚かせた」
「い、いえ、大丈夫です」
俺の無意識のオーラで、姫柊の顔色が少し悪くなっている。
少し休ませるかと思っていると、扉がノックされた。この気配は、叶瀬か。
俺はちょうどよいと、思いながら「どうぞ」と扉へ声をかけると、扉が開けてティーセットを乗せたカートを押しながら、叶瀬が入ってきた。
「お兄さん、お茶お持ちしましたです」
「ああ、ありがとう叶瀬。それと姫柊、彼女は姫柊と同じ彩海学園に通っている。さらに俺の妹の凪紗の友達でもある。仲良くしてやってくれ」
「え、あ、はい」
「叶瀬夏音です。よろしくおねがいしますでした」
「姫柊雪菜です、よろしくお願いします」
「じゃあ、叶瀬。この後仕事の話があるから」
「はい、分かりました。お兄さん」
その言葉に、叶瀬は直ぐに社長室から出てく。
俺は椅子から立ち上がり、叶瀬が持ってきたティーセットで、紅茶を入れる。
「あ、あの」
「あ、先にいっておくけど。妹の凪紗には俺が第四真祖だということは、内緒にしてくれ。渡された資料に書かれていただろう?」
「あ、はい。書かれていました」
「なら、良い。その辺を気を付けてくれるなら、監視役は受け入れるから」
「えっと、受け入れるんですか?」
「ああ、婚約者候補だしな」
「あっ、そうです。それはどういうことですか!」
「どういうって?」
「お見合い写真や私が婚約者候補って!」
慌てる姫柊に、俺は微笑ながら、姫柊にこう言っておいた。
「姫柊が好みのタイプなんだよ」
「え、ええっ!?」
うん、嘘は言ってないけど、今の一言で視界の左上に開いていた、フレンド欄の姫柊雪菜の好感度(ラブの方)がレベルが1上がった。
チョロいん過ぎるだろう、この子。
毎日、ネコマタングッズを一日一回あげていれば、三ヶ月くらいで、結婚可能なんじゃないか? と思うくらいに。
「ま、何はともあれよろしくな。あ、俺のことは社長ではなくて、先輩と呼んでくれ」
「え、はい。構いません。えっと先輩」
「ありがとう。ここ数年、学校の連中も俺のことを社長呼ばわりで、少し寂しかったんだよね」
「そ、そうですか・・・・・・」
「それじゃあ、姫柊の引っ越し先へ行こうか。こっちで部屋は用意してあるから」
「え?」
驚く姫柊に、俺は言った。
「安心しろ、俺が住んでいるマンションで、部屋は俺の家の隣だ」
俺がそう言うと姫柊は更に信じられないという顔で俺を見た。
「監視がやり易いだろう? お礼は?」
「え、えっとありがとうございます?」
「いえいえ、どういたしまして」
「・・・・・・先輩って、変な人ですね」
「よく言われる」
俺はこの後、姫柊と共に家に帰り。
その日の夕食は、凪紗と叶瀬、俺と姫柊の四人で鍋を食べることにした。
原作より数日早めに姫柊と合流したので、ロタリンギアとの戦闘はなかった。というか、まだあの男は絃神島に到着していない。
ま、あの男に関しては、二度と外を出歩けないようにするけれど、人種差別は嫌いなんでね。
三ヶ月くらいで結婚。これは牧場物語系の力です。
かなり凶悪な力です。
基本的に贈り物は、渡されたら拒否せず。
好きなものを渡せば、必ず好感度が上がる。
三聖と友好的な関係な理由の一つです。
ただ、監視役兼抹殺の命令を出せる程度には、お互いに公私を分けられるレベルの好感度で、古城は止めていたけど。
原作で通りに姫柊が来たので、またプレゼント攻勢(矢瀬の彼女さん除く)が始まります。
少しずつ、獅子王機関内が親第四真祖の組織に、彼女さんの胃痛が加速します。