お茶を飲んだ後、姫柊と叶瀬と三人で車で家まで送ってもらう。その途中にコンビニで凪沙の好きなアイスを購入してから、二人を俺の家へ案内する。
俺の家に入る前に一応、隣が姫柊の部屋だと教えておく。
「鍵は後で渡すから」
「は、はい」
原作だと獅子王機関が部屋を用意しているが、今回は俺が部屋を用意したので俺がその鍵を持っている。
後で忘れないようにしないと。
「ただいま」
家の玄関の鍵を開けて中に入ると、凪沙の気配がする。そういえば、今日は部活がないと言ってたな。
「あ、おかえり古城くんって、夏音ちゃんだ! もー夏音ちゃんが来るなら教えてよね。てっ、古城君、その後ろにいる子は?」
また拾ってきたの? と言わんばかりの目だ。
うん、今回は違うぞ、妹よ。
「この子は友人の攻魔師のお弟子さんの姫柊雪菜。凪紗と叶瀬とは同学年だから、仲良くしてやってくれ」
「ああ、その子が前に古城君が言っていた女の子? うわ~改めてみると美人さんだね!」
「え、そんな、美人では」
「あたし、暁凪沙。よろしくね」
「は、はい、わたしは姫柊雪菜と申します」
「あはは、固いよ。あ、あたしのことは呼び捨てで良いからね」
家に帰ってきたときはリビングのソファでグデッとしていた凪沙だったが、俺が二人をつれてきたことで慌てて立ち上がり、姫柊の容姿を見てやや興奮していた。
その後は凪沙がグイグイと姫柊に質問をし始めて、姫柊がタジタジになっている。
叶瀬をはじめて連れて帰ったときも似たような感じだったな。
ま、あの時はまだ客を連れて帰ることが少なかったから、どちらかというと誘拐してきたんじゃないかと勘違いしていたが。
「それと、凪沙。姫柊はこっちに引っ越してきたばかりだから、色々と相談に乗ってやってくれ」
「うん、分かったよ。ところで、今古城君が持っているコンビニの袋はもしかして」
「俺に他社製品を買わせるとは良い御身分だな」
やや威圧的な笑顔でそういいながら、コンビニの袋を凪紗に差し出す。
「いやぁ、古城君の所も美味しいんだけどさ。なんというか、このアイスの安っぽい味が癖になってさ」
俺の言葉にあはははと愛想笑いをする凪紗。
最近、凪沙のお気に入りのアイスは、俺の会社の製品ではなく他社製品だ。
その他社製品を、家に帰ってくるときについでに買ってきて、と最近うるさいのだ。
「安っぽい味ね。気持ちは分からなくはないけど、せめて懐かしい味と言ってやれ」
「うーん、そうだね。あ、夏音ちゃん、雪菜ちゃんもこっち来て座ってアイス食べよ!」
「え、でも」
「姫柊、気にするな。アイスくらいなんてことないから。それくらいは稼いでいるから安心しろ。叶瀬も遠慮するなよ」
「はい、いただき、ました」
「あ、ありがとうございます」
叶瀬は目をキラキラとさせながら、姫柊はと少し戸惑った表情で俺からアイスを受けとる。
って、コラ凪沙。二つも持っていこうとするな。それは俺の分だ。
「それじゃ、俺は姫柊の歓迎のための鍋でも作りますかね。凪沙、鍋にするから部屋の温度少し下げてくれ」
「りゅ~かい、あたしも手伝うよ。・・・・・・アイス食べたら」
俺の横をすり抜けて、人数分のスプーンを持っていこうとする凪沙にすれ違いさまにデコピンを叩き込む。
手加減をしたが、それでも良い音がして、凪沙は「ぎゃん」とかわいくない悲鳴をあげて、その場にしゃがみこんだ。
今までにも何度も食らっているのに、大袈裟な。
「だ、大丈夫ですか、凪沙さん」
「うぅー、痛い」
「お、おでこ、真っ赤になってます」
「もう酷いよ。古城君!」
「良いから、食ってこっちを手伝え。あ、姫柊と叶瀬は座っていてくれ、お客さんだからな」
姫柊と叶瀬が手伝うと言いそうだったので、先手を打っておく。
普段なら別に良いけど、今日は姫柊の歓迎会だ。
手伝ってもらうわけにはいかない。
「二人ともそんな困った顔をするな。またウチで飯を食うこともあるだろし、手伝いはその時してくれれば良いからさ」
俺はそう言いながら、キッチンに端にかけていた俺専用の飾り気のないクリーム色のエプロンを身に付けて水道で丁寧に手を洗い、夕飯の支度を始める。
凪沙が普段よりも早めにアイスを食べ終えこちらの手伝いに入ると、話を振っていた凪沙が居なくなったことで姫柊が叶瀬と何を話せば良いのか戸惑っていた。なので俺が色々と話を振ってみると、姫柊は俺の助け船だと気づいて助かったという表情で話し始めた。
美少女の叶瀬と二人で、話をするのは初対面ではかなり難しいだろう。
出来るのはコミュ力が高い凪沙くらいだ。
あ、もちろん、凪沙は直ぐに野菜の下ごしらえをしながらも、会話に参加して話を盛り上げている。
「じゃあ、そろそろ良い頃合いだろう」
テーブルの上にカセットコンロを設置して、土鍋を置く。既に、スープは良い感じに温まったので、手早く順番に具材をいれ、コトコト煮込んだ自信作の鴨鍋が完成。
鍋の蓋を開けると、ふわっ食欲をそそる良い匂いが辺りに広がる。
「うわぁ、美味しそうだね」
「はい、美味しそうです」
「す、凄い・・・・・・」
「知り合いの鴨を育てている人から貰った、かなり良い鴨だ。味わってくれ」
凪沙と叶瀬はある程度見慣れているが、最高級の食材と俺の高い料理熟練度で作られた鴨鍋は、見た目からして涎が文字通り出るほど美味しそうだ。
「それでは、いただきます」
「「「いただきます(です)」」」
ウチの会社で作っている野菜は、天皇家にも献上している自慢の野菜だ。
前世の天皇陛下のこともあり、これだけの野菜ができたのだから是非食べてもらいたいと天皇陛下に献上したら、宮内庁の料理人の一番偉い人が献上して直ぐに俺のところへやって来て自費で野菜を購入するようになった。
そのお陰で、各国の要人に雇われている料理人達からも注文が殺到して、一時期大変な目に遭った。
恐るべし、牧場物語の土と野菜と肥料。
「鴨以外はウチの野菜だ。沢山あるから食べてくれ」
「古城君、鴨のおかわりは?!」
「ない。後は矢瀬と浅葱と叶瀬の義父さんとウチの母さんの分だ」
「あ、ありがとうございます。お兄さん」
「気にすんな。明日の夜まで行けるから、お土産にもっていけ」
申し訳なさそうにする叶瀬にそう言いながら、俺の分の鴨肉を凪沙の取り皿に入れてやる。
「あ、ありがとう、古城君」
「気にすんな。・・・・・・今日学校終わって会社で一息ついたときに、味見としてチキンステーキ食ったしな」
「ああっ! ズルい古城君! 何それ美味しそうなんだけど!?」
「今度、作ってやろう! 感謝するが良い!!」
「ははぁ~」
俺達兄妹のやり取りを見て呆気にとられている姫柊と、楽しげに上品に笑う叶瀬。
穏やかで楽しい歓迎会は、成功と言って良いだろう。
それから四人で話ながら食事をしていたのだが、やはり叶瀬には少し多かったようだ。
「叶瀬、辛いなら無理に食べるな」
「す、すみません。美味しくて食べすぎてしまいました」
一応、量は調整したのだが、まだ叶瀬には多かったようだ。
「あ、そういえば、デザートのプリンも用意していたけど、その様子なら持ってかえ「い、いただきま、した!!」
「あ、ああ、今持ってくるから、そんな親の仇をみるような目で見ないでくれ」
持って帰るか? と聞く前に叶瀬がキラキラではなくギラギラとした眼力を向けてくる叶瀬の圧力に、俺は思わず身体を引いてしまった。
俺が原因で、叶瀬は原作以上に甘いものが大好きになっていたな。
そういえば、最近ちょっとふっくらしてきたか? 原作だと細すぎる感じだったけど、今は良い感じに肉がついている気がする。
「あははは、夏音ちゃんすっかり古城君が作るスイーツのファンだね」
「え、先輩がプリンを作ったんですか!? 」
「そうだよ。古城君って、勉強以外は何でもできるけれど、料理は特に上手なんだ。一流シェフ並なんだよ」
姫柊は驚きながら、小声で「第四真祖がプリンって・・・・・・」と呟いていた。
それと凪沙。才能沢山あって不公平だよね。とぶーたれているが。俺はお前のコミュ力の方が羨ましいぞ。
会話だけで仲良く慣れるって、素晴らしい才能だと思う。
だって、俺が話し合うと必ず。
説得(物理)か、話し合い(肉体言語)になるからなぁ。
本当に羨ましい才能だ。
「不公平だと言われても、料理を始めたきっかけは凪沙、お前の為だぞ。それに文句を言われても困るな」
「分かってるって、感謝してますよ」
俺が苦笑い気味にそう言うと、凪沙もごめんごめんと軽い感じで謝ってきた。
「えっと、先輩が料理をって、どういうことですか?」
「ああ、俺の両親は共働きで、小さい頃は母さんもそれなりに帰ってきていたんだけど。家のことは基本的に自分達でやる必要があったんだ。母さんの部下の人が時々手伝いに来てくれたけど、そればかりに頼るわけにはいかなかったしな」
「最初の頃は酷かったよね。焦げた目玉焼き」
「生焼けのハンバーグ」
俺と凪沙が昔の家族の思い出を話すと、姫柊が少し寂しげな顔をしたので俺は話題を変えることにした。
「そういえば、叶瀬。ニーナ先生は元気か?」
「はい、元気ですよ。孤児院のみんなも元気です」
「そっか、なら良かった。ここ最近は顔を出せていなかったからな」
「あの、孤児院とは?」
俺と叶瀬の会話に姫柊が反応したので、ざっと説明する。
叶瀬と姫柊が仲良く成れるきっかけになることを祈りながら。
「叶瀬はニーナ先生という方が運営している孤児院の出身で、今は伯父さんに引き取られているんだ。それで時間を見ては孤児院の子供達と猫の面倒を見ているんだよ」
「へー、そうなんですか。・・・・・・猫ですか」
姫柊が猫に興味を持ったので、この日のためにスマホで撮り貯め集めておいた、叶瀬が世話をしていた猫達の画像フォルダが火を吹くぜ!
こうして、そこからは猫の画像で話が盛り上がり、今は叶瀬と姫柊が俺のスマホの猫画像フォルダを見ながらキャーキャー言っている。
そして、然り気無くタイミングを見て俺のとなりに移動してきた凪沙が、俺の耳元で囁いた。
「もしかして、雪菜ちゃんのご両親は」
「ああ、居ない。ただ、よくしてくれた人達が沢山いる。お姉さん代わりの人もいる。だから、その辺は大丈夫だ」
「そう、なら良かった」
第四真祖になる前から、俺は原作とは違い、訳ありの人間を助けていた。
もちろん、打算はあった。
将来力になってもらうためにだ。
俺の行動を凪沙は不快とは思っていないようだった。
「頑張ってね。古城君」
「ああ、頑張るさ。妹のためにも、カッコイイ兄貴を目指しているぜ!」
そうだ。
もう、ヘマはしない。してたまるか。
とはいえ、不安がないわけではない。
俺の原作知識も完全ではない。
単純に敵を、他の真祖を倒すだけなら、可能だろう。
だが、恐らく原作のラスボスと思われるカイン――初代第四真祖と戦うとなると、眷獣を掌握していない状態で倒せるかと問われれば首を傾げてしまう。
俺のチート能力は、この世界に合わせてバランス調整がされている。
それでも、強力な力だ。
サテライトキャノン、マクロスキャノンでも使えば国を滅ぼせるが、ラスボスに通用するか分からない。
もちろん、勝てるだろう。と思える戦力は保有している。
ガンバスターやイデオン、真・ドラゴン辺りを使えば、まず勝てるだろう。
その代わり、世界滅亡するけど。
他の強力な戦力、例えばポケモン達もいるが、ひんし状態で死ぬことのなかったゲームとは違い、この世界では一歩間違えると本当に死んでしまう。
なので、簡単には使いたくはない。
そもそも、現状ではアイルー達だけでも過剰戦力なのだ。
各モンスターに合わせて鍛えたアイルー達は、那月ちゃんも本気で警戒するほどガチな強さを持っていて「しっかり手綱を握っていろよ」と俺に念を押してくるくらいだ。
ま、マタタビで無力化できるとわかって、アイランドガードに何匹か本気でスカウトしていたけど。
「おっと、もうこんな時間か。叶瀬、伯父さんにお土産もっていけ、それとプリンも入れてやるから、明日二人で食べろ」
「あ、ありがとうございま、した」
俺は叶瀬を送る車を手配して、迎えの車が到着した後は全員で叶瀬を見送り、姫柊に家の鍵を渡して家に返した。
そして、夕食の片付けが終わった後、凪沙がリビングのソファで寛いでいるを確認して自室へ戻る。
所謂アイテムボックスから、錬金術で作った覗き防止と盗聴防止の道具を使い、更に専用の通信道具で部下の一人に連絡を取る。
「どうだ? あ、来たのか。では、手筈通りに頼む。ああ、無線封鎖を。渡した道具を使えば大丈夫なはずだ。
それと、くれぐれも戦闘はしないように、人形の方はB班がやる。だから、気を付けて監視してくれ。アスタルテの眷獣は厄介だからな。・・・・・・ああ、後は頼んだぞ、ジリオラ」
俺は通信を切って、覗きと盗聴防止のアイテムを手早くアイテムボックスに入れた。
さぁ、ドンドン、原作ブレイクしていくぞ! と気合いを入れた。
翌日、監視を邪魔されたせいか姫柊が拗ねていたが、些細なことだ。
というか、もう監視してたのかよ!
真面目すぎるだろ。
叶瀬の語尾ガガガガ。
難しいよぉ。
あ、次は那月ちゃんと放課後二人きりでお茶をします