それはともかく、妙神山に到着。修行の始まりです。
じゃあ、どうぞ。
第十一話 お久しぶりです小竜姫さま!
岩肌が延々と続く山道で心癒される自然がない。
さほど標高が高いわけではない。
資源もなく交通の便も悪いので開発するメリットがない。
ないないづくしでハイカーにも登山家にも企業にも人気がない。つまるところ面白みのない山であると一般人には認知されている、それが妙神山である。
しかしオカルト関係者から見れば、人界に108箇所存在する神・魔族の拠点の一つであり、日本有数の霊場であり、世界でも数少ない神族が常駐する場所であるなど数々の特徴を持っている。中でも一番有名なのが、人界最後の修行場との呼称である。
神族でも指折りの武神が直々に指導により霊体を直接鍛えられ、修業を完遂すれば人間としてはトップレベルの能力を手に入れることができる妙神山は、霊能者達にとっていつかは行ってみたい場所である。しかし見返りに比例して代償もまた大きく、パワーアップを果たして生きて帰るか死ぬかの二者択一。
とはいえ、それは最難関コースを短時間でこなそうとすればの話であって、腰を据えて行う修業ならば危ない目に逢うことはないのであった。
ペラリ、と紙を捲る音がする。音がするごとにそわそわと落ち着きがない。
横島が美神に渡した書類は枚数こそ多くはないが、使い慣れないパソコンに向かい、集めた資料と睨めっこをし、必死に指一本でタイピングを行った。横島が報告書を作成したことは以前にもあったが、今回ほど綿密なものではなかったので美神の反応がどのようなものだか気になって仕方がないのだろう。
最終ページまで目を通した美神は一枚目に戻り、気になったところを確認するため流し読みをする。問題はないようだ。
ふうと軽く一息つき、美神は報告書を置いて横島を見る。美神の視線がスイッチになったかのように、横島が背筋をまっすぐに伸ばす。後ろではらはらと様子をうかがっていたおキヌも同様だった。
「まだまだ足りないところはあるけど、及第点はあげるわ」
「え、それじゃあ」
「合格。引率お願いね、横島クン」
「っ、よっしゃああ!」
「おめでとうございます、横島さん!」
力の限りガッツポーズをとる横島と諸手を挙げて祝福するおキヌ。大げさではないかと思えるが、横島は初めて自分一人で除霊を任された時のように緊張していたし、おキヌは横島の頑張りを見ていたからの喜びようである。
二人が手をつなぎ小躍りしている様を呆れた目で見ていた美神であるが、内心横島の事務能力に感心していた。
あの両親の子であり、横島の商才は美神が事務所を離れた際の実績が示している。
しかし高校生で移動方法や滞在についての報告書をうまくまとめられる者などそうはいない。実際のところ、横島は美神が作成した報告書を何度となく目にしていた門前小僧だったわけだが、そうだとしても横島の実力である。
報告書を見直す。複数での移動はもっぱら美神の車(おキヌが助手席、シロとタマモは動物形態、横島はトランク)だったが、今回は電車での移動となっている。シロやタマモに一般常識を教えるのにもいい機会だ。本音を言えば、二人をケージに入れて交通費削減できれば最善であるが、美神以外の誰もそれを許可しないだろう。
滞在はおキヌら三人だけらしい。横島は三人を送り届け、一泊の後帰宅する。横島は居残るつもりだったようだが、自分の修行につき合わせるのも悪いと思ったおキヌと、修業の成果を隠したいシロとタマモによって断られた。
横島もピートやタイガーと何やら夏休みに企画しているようなので都合は良かったのだろう。
「それじゃ、改めて横島クン、おキヌちゃん。私がいない間事務所は任せるわ。流石に依頼を受けるのは承認できないけど、ママ経由なら受けてあげて構わないわ」
「あれ、美神さん帰ってくるの一週間後じゃなかったでしたっけ? そんなに期間空きませんよ」
「あ、ごめん言ってなかったわね。オークションの後、ザンス王宮に呼ばれてるの」
「依頼か何かですか?」
「パーティーでもやってくれるんじゃないかしら?」
「あ、ズルイ美神さん」
とぼけてはみたが、ザンスからの招待はいいタイミングだった。美神自身もザンス王家には用件があったからだ。
「内容はわからないけど、ひょっとしたら長期滞在するかもしれないしさ。そうなったら連絡は入れるから」
「了解っス」
「わかりました」
横島は道具をあまり使わないが、精霊石の必要性と万能性、そしてその能力と比例して高騰する値段もまた知っていた。
今回のオークションも庶民の理解が及ばない高額での取引がポンポン飛び交うのだろう。それを考えればやはり横島が精霊石を使うことはないだろう。もっとも精霊石よりも貴重な文珠を持っているのだから、そもそも縁がないと言わざるを得ない。
そんなことを考えていれば飛行機が飛び立つ時間だった。空港までの見送りも考えたが、時間と金の無駄と美神にきっぱりと断られ、美神は冥子やエミらと連れだって旅立っていった。
横島はいつもの装備よりも簡易なザックを背負い、事務所で三人の準備が整うのを待っていた。とはいえ、荷物はすでに準備されていたし、電気、ガス、水道を確認するだけだから時間はかからない。
「お待たせしました横島さん」
「さあ、行くでござるよ先生!」
「準備いいわよ、横島」
山登りに適した格好、ということでおキヌは山での仕事と同じ格好に旅行鞄を持っている。シロとタマモはいつもと同じ格好なのは言わずもがな、しかし珍しく鞄を持っていた。
「お前ら個人的な所有物って持ってたのか?」
「失礼でござるな先生。乙女たるもの色々と持ってるでござるよ」
「へー、ちなみに何持っていくんだ?」
「セクハラよそれ」
「え゛、中身聞いただけで?」
「そうですよ横島さん。女の子の持ち物聞いちゃだめです」
「おキヌちゃんまで!?」
ねー、と笑いあう少女三人。
その仲の良さに疎外感を感じてしまう横島である。精々着替えぐらいしか持っていかない男にはどうにも理解のできない感覚であった。
気にはなるが聞いたところで教えてはくれないだろうし、嫌がられるのも本意ではない。
「それじゃ、行こうか。留守は任せたぞ、人工幽霊一号」
『承知いたしました。皆さん、無事のお帰りをお待ちしております』
事務所を出た面々は歩いて最寄りの駅へ。そこから電車で東京駅に向かい、さらに新幹線で妙神山のある県へ移動する。
道中、各駅停車の混みようと速度に軽く苛立ちを覚えていたシロだが、段々と自分以外の力での移動と、電車の外を流れる景色に興味を覚えたようだった。電車内で子供がやる姿勢、つまりシートに正座で座り景色を眺め、尻尾をパタパタと振り乗客を驚かせていた。
横島がたしなめ、苦笑しながらおキヌがシロの靴を脱がせる様はまるで小さな子ども連れの家族そのものであった。
タマモは、シロが先に行動に出たためか真似をすることはなかったが、そわそわと電車の外を気にしていた。外見上冷静をよそおっていたが、新幹線に乗り換えてからはその速度と車内販売の冷凍ミカンに驚きを隠せず、子供のようにはしゃいでいた。
新幹線からさらにローカル線へ乗り換え、妙神山近くの無人駅を降り、数時間に一台運行するバスに乗ってまるで人気のないバス停へ下りる。朝に事務所を出てから半日かけて、とうとう妙神山麓へと辿り着いた。
「やーっと着いたなー」
「久しぶりですね」
「空気に含まれる霊気が、町とは段違いでござる」
「そこらの山とも違うわね。空気が清浄というか」
バス停の近くに建物は全くないが、以前美神の運転する車で来た際に利用したさびれた駐車場が変わらずそこにあった。そして『ようこそ妙神山へ』と書かれた看板と、釘が甘くなって微妙に山道を向いていない矢印も変化が見えないあたり、実は時間が止まっているのだと聞かされても信じてしまえそうだ。
いざ山道へ、と登り始める。しかし、先に述べたとおり岩肌ばかりで道は悪いが、標高は高くないので山登りに慣れた面々は特に苦労することもなく、日が暮れる前には妙神山修行場を目前に控えていた。
「あれが修行場でござるか」
「ふーん、なんか懐かしい造りかも」
妙神山修行場の造形は中華風である。そびえ立つ門を前にしたタマモの感想は、ここの管理人やその上司が大陸出身であるから、タマモの前世が同郷であることを考えると間違いはない。
『おう、横島ではないか』
『それにおキヌか。見慣れぬ者らもおるようだが』
「おっす、久々だな」
「ご無沙汰してます、鬼門さんたち」
修行場の門には鬼面が二つ睨みを効かせている。門の横には筋骨隆々とした見上げんばかりの、首のない巨像がそびえ立つ。門の番人鬼門である。
「俺は付添だけどよ、おキヌちゃんと後ろの二人の修行に来たんだ。小竜姫様に取り次いでくれよ」
『お主な、我ら妙神山番人鬼門だということを忘れてはおらぬか? 右の!』
『応よ、左の! 我らがここにある限り、未熟者に足を踏み入れさせること能わずと知れい!』
鬼門の怒号と共に、門の横の巨像が膝立ちの姿勢から直立した。質感はどう見ても石である像が、滑らかに立ち上がり構えをとる様子には違和感を感じざるを得ない。しかし巨体であり、丸太のような四肢を持つ鬼門の威圧感は生半なものではない。
鬼門の怒号に応じるかのように、三人はそれぞれに構えをとる。
『さあて、一人づつ来るか? 三人まとめてでも構わんぞ』
『来ないのならばこちらから……どうしたのだ?』
一触即発の鬼門と三人の間に挟まれていた横島であるが、不意に手を広げる。その様はまるで鬼門から三人をかばっているようにも見えた。視線が横島に集まる。
しかし、どういうつもりなのか。横島は予想に反していつまでも声を出しはしなかった。
「あ、あの横島さん? どうしたんです?」
秒針が一回りするほどの沈黙に、ついにおキヌが口を開く。横島は当てが外れたかとばかりに頬を掻く。
「いや、パターンからして、ひょっこり小竜姫様が出てくるんじゃないかと」
だああぁっ、とばかりに耳を傾けていた面々がこける。思わせぶりなことをしておいて見事な空振りである。
「な、何を言うかと思えば……」
『思い通りにさせてなるものか! お約束など知ったことではない!』
『我ら鬼門がいる限り、そう易々と門を開かせはせん!』
気を取り直した鬼門が各々の身体に構えをとらせる。三人も得物を構え睨みあう。さすがに今度ばかりは横島も遮ろうとはせず、荷物を持って後ろに下がる。
一瞬の対峙、ちょっとした刺激で戦闘がはじまるのは横島にも予想がついた。相手が鬼門とはいえ、張り詰めた空気が漂う。
「あら、横島さんにおキヌちゃんも」
二度目のだああぁっ、である。場の空気も鬼門が宣言した門の守りも、いとも容易く前触れも無しに破られてしまった。
『『小竜姫様ぁぁぁっ!?』』
「時間差だったか」
開門したのは中華風の衣装をまとった少女であるが、頭部に見える小さな二本の角からわかるように人間ではない。赤い短髪にヘアバンドと意志の強そうな瞳、小柄ながらも凛としている。妙神山の管理人である小竜姫である。
「久しぶりですねえ。美神さんはどうしたんですか? それに、そちらの人狼と妖孤の娘たちは?」
「お久しぶりです小竜姫様! 相変わらずお美しい! さあさ、積もる話はお茶でも飲みながらゆっくりと」
「そうですね。立ち話もなんですし」
『お、お待ちくだされい小竜姫様、この者らは修業に参ったのですぞ!』
『試しをせずに通すこと、認めるわけにはまいりませぬ!』
そそくさと修行場へ入って行こうとした横島と小竜姫であるが、立ち直った鬼門らの言葉に眉根を寄せる。
「固いことを言うものではありませんよ。それにおキヌちゃんの能力は素晴らしいものだし、あなた達とは相性が悪いでしょう」
「それにお前ら、俺が修行に来た時にゃそんなことしなかったじゃねえか」
『お主がウルトラスペシャルデンジャラス&ハード修行コースを選んだからだ。あれの試しは中で行う決まりであったからな』
『ですが小竜姫様、人狼と妖孤の娘らの試しを行わぬわけにはいきませぬ。それが我らの存在理由であります故』
鬼門らの言葉にさらに眉間のしわを深める小竜姫であった。
その間にコケていたおキヌら三人は気を取り直して立ち上がっていたのだが、横島の態度にそれぞれ腹を立てつつ、思い思いの表情を門に向けていた。
(相性が悪い、か。やっぱり小竜姫様もそう思ってるんだ)
小竜姫の見立てはズバリ、おキヌの悩みと一致していた。おキヌの能力は特異で得難いものであるが実戦向きではないと、おキヌ自身理解していた。だが、改めて他者から口にされると秘めた決意が刺激される。
「さすが武神と称される方でござるな。隙が見当たらないでござるよ」
横島とにこやかに話す姿は到底武人とは思えないが、立ち居振る舞いに隙が見えない。仮にシロが打ちこんだとしても、容易くさばかれると想像がついた。
「隠してるけどすごい力を感じる。龍族か」
今小竜姫は力を抑えている状態なのだろうが、力を探るタマモの目には小竜姫は眠れる龍としか映らなかった。
小竜姫の見た目は嫋やかな麗人。しかして実態は神武を誇る龍神である。初対面のシロとタマモであるが、実力の一端を感じ取っているのは、さすが犬神といったところか。
「そうですね。確かに修行者として訪れた者の試しはしなくてはなりませんか」
「えー、やるんスか?」
『先程から言っておるだろうが。さて、人狼に妖孤の娘、かかってくるがいい』
『我ら鬼門が、ここ妙神山での修業を受けるに相応しいか試してくれよう』
鬼門の言葉に小竜姫へ意識を向けていたシロとタマモが改めて身構える。鬼門の見た目の威圧感は相当なものだが、小竜姫を見た後ではさして脅威に感じられなかったためか、幾分余裕が生まれていた。
「では」
「待ってください!」
開始の合図に手を振りおろそうとする小竜姫はおキヌの声に手を止めた。視線を向ければおキヌの顔はいつもの微笑をたたえたものではなく、苦難に挑む修行者のもの。
「修行に来たのは私も一緒です。私も試しを受けさせてください!」
おキヌの決意表明に小竜姫はしばし驚き、口の端をあげる。その顔は成長した子を見るかのようであった。
「折角やらなくてもいいって言ってるのに」
「いいじゃないですか横島さん、本人の意思を尊重しましょう」
小竜姫はおキヌに笑いかけ、おキヌはうなずく。意思の疎通はそれだけで十分だった。
『その意気やよし!』
『さあ、己が力全てを以てかかって来るがいい!』
「改めて、はじめ!」
手を振りおろす。幾度となく始まりそうになりながらも延期を重ねた試しの戦いが幕を開いた。
そして幕が下りた。
「開始から十秒。変則的な美神さんの時とは違って正攻法では最短記録ですね」
『う、うう……戦闘場面すら無いとは……』
『扱いが雑であることに……異議を申し立てる』
「だからおキヌちゃんとあなたたちは相性が悪いと言ったのに」
「え、あれってそういう意味だったんですか?」
鬼門の体が倒れ、振動が響く。
身体スペックではシロとタマモは美神や横島の上を行く。そんな二人を同時に相手にする上、おキヌまで参戦するとなれば鬼門に勝ち目など無かった。
開始の合図とともに二人は鬼門へと接近し、腕と足を振り上げた鬼門の攻撃をかいくぐろうとした時、おキヌの笛の音が鳴り響いた。
おキヌの吹くネクロマンサーの笛の音は悪霊を成仏させる力を持つ。だが、他にもおキヌの放出する霊波により、式神のコントロールを妨害、かつ奪い取ることすら可能である。鬼門の首が繋がっているならばともかく、離れていては身体の操作を奪いとることはできなくとも、妨害をすることは容易いことだった。
動きの鈍った鬼門の身体を通り抜け、顔へ跳び込んだシロの霊波刀が袈裟切りの軌跡を描き、タマモの幻影に惑わされ空を見上げた顎へ吸い込まれた蹴りにより、ものの十秒で鬼門たちは地面に倒れこむこととなった。
「おキヌちゃんと、そちらのお二人は初めてですね。妙神山管理人、小竜姫と申します」
汗をかくこともなく、試しを終えた三人の前に足を進めた小竜姫はやわらかく笑みを浮かべた。
「お久しぶりです小竜姫様」
「お初お目にかかる、犬塚シロと申します」
「タマモよ」
小竜姫が間近に来たためか、物腰や所作の洗練さ、抑えている霊圧の強大さをより強く感じている。おキヌは緊張しているシロやタマモが感じていることが理解できていた。おキヌ自身も肉体を持って始めて小竜姫と再会した際、五感全てで小竜姫の力を感じ取っていたからだ。
「さ、後は中で話しましょうか。どうぞ皆さん」
出て来た時と同様、小竜姫は軽々と修行場の門を開け中へと入っていく。横島らも後に続き、残されたのは鬼門たちだけだった。
『左の……』
『何じゃ右の』
『ワシら門番として役に立っていないとは思わんか』
『うむ……あの連中に関わるとだいたいそうなってしまうな』
揃ってハアとため息をつき、鬼門の体は再び門の両側へと戻るのだった。
妙神山修行場は、中華風の外観に反し中身は銭湯のような造りをしている。小竜姫に案内された修行場への入り口はまさにそのものであった。
最初に訪れた時横島は番台に座りこもうとしていたが、さすがにおキヌら三人に同じことをしようとはせず素直に修行衣に着替える。
中華風の修行衣を着るのはこれで3回目になる。
美神と幽霊時代のおキヌと共に訪れた時が最初で、横島が逆鱗に触れた小竜姫を収めるために死にかけた。
二度目はワルキューレに力不足と意識の甘さを指摘され、雪之丞と共に猿神との修行を受け死にかけた。
ひょっとすると三回目の今回も死にかけてしまうのではなかろうか。思い出しているうちに、それ以上は恐ろしくて考えるのをやめる。
銭湯の出入り口のような戸を開けると、室内であるはずなのに広い空間が広がっていた。見上げれば空、見渡す限りの不毛な大地。目の前には舞台がある。
くぐり抜けた戸を境に修行を行う異相空間へと移動したのだ。
そこにはすでに小竜姫が待機していた。横島を見て微笑む。
「あれ、みんなまだですか?」
「ええ、着替えに手間取っているみたいですね。それにしても、フフ、その修行衣姿も久しぶりですね」
「そっスね。これ着るの三回目ですか」
「横島さんほど何度もここへ修行に来る方はいらっしゃいませんからね」
「いや、俺は今回付き添いなんスけど」
ハハと笑う横島だが、小竜姫は笑みを消して申し訳なさそうな顔になる。
「横島さん、実はその話なんですけど……」
「小僧、お前はこっちじゃ」
「へ? っぐぇ」
不意に、襟が持ち上げられた。というよりは突き上げられたかのようだった。見れば横島の腰ほどまでしかない服を着た老猿が、棍を襟に伸ばしていた。
「サル、じゃねえ老師? ちょ、苦しいって!」
「小竜姫は女子どもの面倒をみなければならんからな。お前はわしが見てやる」
眼鏡をかけ、咥えタバコをし金箍児をつけた直立した猿、妙神山責任者斉天大聖老師だ。つまりは孫悟空である。
「いや、俺付き添いなんだって、ぐえ、首、絞まってるって!」
「まだ貴様の修行は終わっとらん」
「え? 俺文珠出したっスよ」
「貴様は雪之丞の限界に動揺したからの。まだ加速の余地はあるじゃろ」
「あるじゃろ、って予測!? しかもまた老師と戦わにゃならんの!?」
老師は棍を片手に横島を肩に担ぐ。横島がいくら暴れても相手が斉天大聖である。微動だにせず、悠々と運ばれてしまう。
「感謝しろよ。最難関コースを二回も受けられるのは、おそらく貴様が最初で最期じゃ」
「いやじゃーっ! そんな特別待遇いらん! っつーか、サイゴの字が違う気がするっ!」
ちなみに最後は一番後、最期は死に際をあらわす。
「うるさいのぅ、小僧」
「殺されかけとるんじゃから当たり前じゃ! 助けて小竜姫様―っ!」
小竜姫に助けを求めるが、頼みの綱は手を合わせて謝るばかりであった。ハヌマンは嬉々として横島を修行場から引っ張りだした。
しばし後、着替えを済ませた三人が修行場へ姿を現す。
「お待たせしました小竜姫様」
「あれ、横島はまだ?」
「でも匂いはするでござるよ? どこかに行かれたでござるか?」
犬神の流石の鋭さに小竜姫は苦笑する。ごまかす気はなかったが、すでに気づかれてしまっては仕方がない。
「横島さんは私の師匠が別の場所へ連れて行きました」
「え、老師様がですか?」
「ええ、サボっていないか見てやると」
「老師って、ハヌマンだっけ?」
「武神と称される方の師匠殿……ぜひともお会いしたいでござるな」
老師の修行を話には聞いていたおキヌは心配しているようだが、おそらくその予想は当たり、生か死かの修行になるだろうと小竜姫も踏んでいる。横島は乗り越えてくるだろうとも。
「さあ皆さん。皆さんは数日滞在しての修行となります。今日は軽く流して、本格的な修行は明日からにしましょう」
ならば小竜姫の役割は横島の心配をすることではなく、修行者の面倒を見ること。人界最難関の修行場に恥じない、最高の修行を提供することだ。
ハヌマンだったらソシャゲやってるでしょうか。それともまだコンシューマーだろうか。
昨今の 女体化にどう思うんでしょうかね。笑うのか呆れるのか。
とりあえず、FGOの三蔵ちゃんは可愛い。
じゃあまた。