夏休みは終わりまでかけてるのでよろしくお付き合いください。
それでは、連続投稿二日目。
ちょっと気になる男の出現に心揺れる小学生たち。
じゃあどうぞ。
「八月どうすっかなー」
「どうするって、何かあるんですか?」
「逆だよ。何にもねーの。美神さんはザンス王国でおキヌちゃんたちは妙神山。隊長越しになら依頼を受けてもいいって言われたけど、忙しいみたいで連絡つかないし。タイガーは?」
「エミさんも同じく海外行っとりますケエの。ワッシも予定がありませんです」
「一文字さんは?」
「魔理さんは八月後半の臨海学校に向けて、弓さんと課題を片付けるとか」
「あー、おキヌちゃんも妙神山に課題持ってってたな」
「それなら、二人とも八月前半は予定無しということでいいですか?」
「まー、そーだなー」
「それでしたら、三人でこれに参加しませんか? 多分隊長が忙しいのこれに関わっているからだと思います」
「これは……オカルトGメンとGS協会の共同企画ですかい?」
夏休みは心霊現象が増加する時期である。
怪談で盛り上がり、行ってみようぜと肝試しをする。
世間が怪談などで霊のことを意識することが多くなると、悪霊雑霊問わず霊の活動が活発になる。
被害が多発する。
この悪循環は毎年問題になりつつも止められた試しはない。
自治体や学校は被害の未然防止として、夏に入る前にGSやオカルトGメンに警戒や除霊処置を依頼する。だが、結局のところ夏になってしまえば、大小含めて霊障被害が無い日はほとんどといっていいほど無い。
霊障被害が増えるその最高潮の期間は、言わずもがな学生の自由時間が増える夏休みである。
『夏季休暇期間中における多発霊障への共同対策』と題された書類がある。ページ数は数十枚に及んでいる。
部屋へ通された後、目を通すように雇い主の母である美熟女から渡されたのだが、一枚目から読んでいる右隣のイケメンヴァンパイア・ハーフほど真面目にも、ペラペラとページをめくる左隣のテレパス虎男ほど効率いいようにも読む気が起きない。
結局二人とトリオで行動するのは間違いないだろうから、わからないことがあれば二人に聞けばいいのだ。
そう考え、見ているふりでもしようと一番見やすい項目である、終盤にある名簿へと目を走らせた。
ズラリと並んでいる名前の中には、どこかしらで目にしたことのある名前がチラホラと見えたのだが、GS一覧、オカG実働要員一覧には目的の人物たちが見つからない。
だが諦めることなく名簿を読み込んでいき、とうとう目的を発見した。
霊能科学生一覧に、明らかに女子生徒である名前と年齢が複数あった。情報が足りないのが残念だが、うら若き女性、しかも同年代、さらに言えば後輩である。
うまく行けばオフィスラブ、エレベーターでキスも夢ではない。
名前から容姿を想像するのは、さすがの横島でも難しかったが、発奮するのには最高の材料であった。
「くそっ、水着写真とは言わなくとも顔写真くらいは載せとけよ。せめてスリーサイズくらいは調査しとくもんだろ」
「のうピートさん」
「なんだいタイガー」
「横島さんが載せるはずのない項目を探して尋常でない様子で名簿を見とるんじゃが」
「……放っておこうよ」
「その方がよさそうじゃノー」
先述した通り、夏はオカルト関係が忙しくなる。被害の未然防止のため自治体や学校が真っ先に依頼するのは、公務員であるオカルトGメンだ。
危ないところへ近づかないなど幼稚園児ら低年齢層への啓蒙から予測危険霊域のパトロール、様々な仕事が待ち受けており、オカルトGメン勤務員は楽しい夏休みなどと誰も思わないという。
しかしながら、仕事は多くとも霊障に対応できる実働要員が非常に少ない。パトロールしても見つけた霊障に対応できませんでは話にならない。
そこで、オカルトGメン日本支部はGS協会と連携を取ることを決定した。GSは高給取りのイメージが強いが、全員が全員がめついわけではない。オカルトGメンとのコネを目当てにそこそこの依頼料で協力してくれるGSもいないではない。
とはいえ、それでも必要数の確保には足りなかった。なにせ仕事の規模が全国である。
頭を悩ませていた企画立案者に、とある重鎮からの連絡が入った。
「うちの娘たちを~使ってあげてくれないかしら~」
特徴的な口調でオカルトGメン特別顧問へ電話をかけてきたのは、日本で最高の霊能教育機関六道女学院の理事である六道家四八代目当主だった。
娘同士がGS試験の同期であり、さかのぼっては自らも見習い時代からも世話になっている付き合いが長く深い人物であり、のんびりした口調ながらも油断ならない人物。
曰く、今年GS試験を受ける三年生に現場の空気を味あわせたい、各種関係機関との顔繋ぎ、現場に出ている霊能者と触れ合わせ卒業後の進路を決める糧としたい、とのことではあるが、それだけではあるまい。
学園が費用など負担せずに三年生に修行の場を与えるいい機会である。オカルトGメンに任せればその点気にせずにすむのだから。
そういった意図が見えつつも、六道女学院だけでなく全国の霊能教育機関全てに声をかけてくれたので人数の問題はクリアできた。
最も、まだ問題は山積みだったのだが。
「来てくれてとても助かるわ」
一通り資料を読み込んだ後、この部屋の主であるスーツを身に纏った美熟女が対面に座る。今回のプロジェクトを立ち上げたオカルトGメン日本支部特別顧問美神美智恵である。
「人数は足りていたんだけど、どうしても実力的に不安が残ってね」
続いて、道楽イケメン公務員西条輝彦が入室し、美智恵の後ろに立つ。オカルトGメン日本支部が日本に進出してきた際にはトップの立ち位置であったはずであり、現状後から来た師匠に追いやられた形になるのだが、本人の性質が中間管理職に向きだったためか、むしろ生き生きとしているようにさえ見える。
「資料には一通り目を通してもらえたかしら? 簡単に言えば不眠不休で街中駆け回って除霊してきてねって話なんだけど」
と、にこやかにトンでもないことを言ってくる美智代の言葉に顔を引きつらせる面々。
冗談ですよねと質問するも、ふふふとにこやかに笑う。ここで横島らは本気だと気づく。
一般企業ならば耳を疑うところだが、ある種オカルト業界はブラック企業である。
特に眼前の女性は強欲で人使いの荒い女性の母親であり、彼女自身は強欲でこそ無いものの輪をかけて人をこき使うお方である。何せ高校生に世界制覇を狙う組織への単身スパイ潜入を命じるのであるからして。
「君たちの運用方法だけど、三人一組で広い範囲を割り当てるのと、別々のチームに入ってもらって戦力の底上げを図るかと考えたんだけども」
「はいはいっ! バラけるほう! 学生の娘たちの面倒は俺が見る!」
「って言うと思ったから、三人で街一つお願いね」
横島は勢い込んで挙手するも即座に却下。
なぜ部下の勤労意欲を潰すのだろうか。上司の所業ではない。などとうな垂れるも無視され、話は進んでいく。
霊能教育機関でみっちり学んだ三年生ともなると、下手なGSやオカルトGメンよりも戦闘力が高い者もいる。
とはいえ、霊能が強いこととと戦闘力が高いことは必ずしもイコールで結ばれない。感応、霊媒などの戦闘に関与しない能力もまた霊能であるからだ。
募集に応じた学生はGS試験に向けての最終調整で参加しているので戦闘力にはおおむね問題は無い。
しかし、未成年を預かる以上監督者がいる。しかも能力はあっても経験がない子女を任せられるほど人格者で、突発事案に対応できるほど応用が効いて、事故が起きても責任がとれる立場の者が。
霊能の種類もあって後方支援に回ってもらわざるをえない者達も多数いる。さらに言えば学生を長時間拘束するわけにもいかない。
人数は足りていても、信頼できるベテランを配分しなくてはならない。どうしたものかとさらに頭を悩ませていた美智恵に、急報が入ったのは企画が動き出そうとしている最中であった。
とある街にオカルトハザードの予兆あり。
昨年起きた“大霊障”の終盤、全世界の都市を悪霊や妖怪が襲う事件が起きたが、その際に記録されたものと規模は小さいものの同質の霊的磁場の乱れが観測された。
つまり、かつて霊障多発区域に規定されたその街で、悪霊や妖怪が大量発生する予兆が認められたのだ。
ことは一刻を争うが、動き出した企画も放置できず、その街へ向かうはずだったチームでは対応できない規模の可能性が高い。
どうしてこんな時にと歯ぎしりする美智恵に、タイミングよく朗報が舞い降りた。件の“大霊障”を終息させたメンバーの内三人が参加することになったのだ。
ヴァンパイア・ハーフながら神父に師事していることにより聖魔双方の力を使えるピエトロ・ド・ブラドー。
世界最高峰の精神感応能力者であり頑強な肉体を持つタイガー・寅吉。
そしてGS業界最優とうたわれる事務所に所属する、“大霊障”を終わらせるのに大いに貢献した横島忠夫。
それぞれ、師の元を離れた修行や、雇い主が日本にいない間のアルバイト気分だったりしたが、吉報だった。
オカルトGメン隊員やGSだけでは人数と負担率に不安があった。学生の参加では深夜帯や緊急時の対応の問題を解決できなかった。
しかし彼らの参加で解決策が見えた。
能力に関しては全く問題は無いし、特徴も把握している。気心も知れているしこき使える。最も有効な彼らの使い方は、大事に酷使することである。
数日中にプロジェクトを開始させなければならない時期の訃報であったが、予定の変更は最小限ですみそうである。
「君達にはさっき顧問が言った通り、町一つを担当してもらうよ。範囲としては他のチームとそれほど変わらないのだけれどね」
「ってことは、なんかがあるってことだろ」
普通に仕事ができるならばそれが一番良い。だが、オカルトに関わるようになり相当面倒ごとに巻き込まれてきた身としては、期待するほうが間違っているといわざるをえない。
「うん、そうだね。横島君でもわかるのだから二人もわかると思うけど」
「ンの野郎……」
「まあ、細かいことはおいといて。君たちに担当してもらいたいのは、この……」
横島の言葉を完璧に無視し、西条が地図の一点を指し示す。
東京の中心部から離れ、繁華街でもありベッドタウンでもあり、山や遺跡などもあるという、市や区でないのが不思議なほどの自治体。
美智恵が西条の後を引き継ぎ、口にしたその町の名は
「童守町よ」
童守町の空き地に小学生の男女が三人、物憂げに柵に寄りかかっていた。茹だるような暑さにへばっている様子は無いが、ぼうっとした表情でアイスキャンデーをかじっている。
その小学生三人組、広、郷子、美樹は、それぞれが昨夜の出来事を思い返していた。
広は郷子を危険な目にあわせてしまったことを後悔し、昨夜出会った霊能者への嫉妬と少しの憧れを抱いていた。
郷子は広と美樹を止められなかったことを後悔し、昨夜出会った霊能者への感謝と少しの憧れを抱いていた。
美樹は自分の安易な考えで友達を危機にさらしたことを少し後悔し、昨夜出会った霊能者への多大な興味を抱いていた。
美樹が最初にアイスキャンデーをかじり終わり、棒を咥えたまま空を見上げてポツリと呟いた。
「横島さん、か」
美樹の言葉に、広はアイスキャンデーではなく棒をかじり、郷子は最後の一塊を地面に落とした。
その反応に、美樹は声を上げて笑うのをこらえるのに相当な苦労をした。とはいえ、顔がにんまりと笑みを作っていたので、二人にはじとっとした目で見られてしまったのだが。
実にわかりやすい反応だった。
広は郷子が頼りになる年上の男性に弱いことを知っており、憤慨しつつも自分が頼りないことを悔しがっている。
郷子は助けてもらいながらもすぐに別れてしまい、ちゃんとお礼を言えなかった横島のことを気にしている。なんだかんだ言って郷子は広にベタ惚れなので、ほんの一時的なものではあるだろうが焦っている広はそれに気づけない。
などと思う美樹であるが、自分も横島のことを考えると冷静ではいられない。何せ、久々に好奇心を引きつけられ、楽しい話題を振りまいてくれそうな人材である。会って話したいと切に思う。
なんとも面白い見世物である。二人の親友であると自負している美樹であるが、それはそれとして面白いものには目が無いのだ。
美樹は堪えきれずに笑いをこぼすと、さらにジト目を向けてくる二人から目をそらした。すると、空き地から離れた交差点を曲がる一人の男の姿が映った。
「あ、横島さんだ」
「もう、美樹! いい加減にしなさいよね」
「いや、ホントだって」
「あ、コラ美樹! ゴミ捨てていくんじゃないわよ!」
ほんの数十メートル先を歩いていたのは、まさに昨夜出会った若きGS横島忠夫であった。遠目ではあったが、見覚えのある背丈格好にトレードマークのバンダナがあるとなれば間違いは無いだろう。
横島の姿を見た美樹は、アイスキャンデーの棒を捨てとっさに駆け出していた。
「どうする、広? 追ってみる?」
「……ああ、そうだな。昨日は礼をしてなかったしな」
郷子は美樹が投げ捨てて行った棒を拾い、広に向き直る。今日初めて顔を合わせたことに気づいのだが、気まずそうに顔をそらしていた。
昨夜は気づけなかったが、郷子は広が横島に対してあのような態度をとった理由についてうっすらと察していた。嫉妬してくれるのはうれしくもあるのだが、根が真面目な郷子は恩人に対して失礼な態度をとるのは、例えどんな理由があろうとも許せるものではない。
ともあれ、美樹が駆けていった角へと歩いていったのだが、美樹の後姿が塀に隠れてすぐのことである。
「きゃあああっ!!」
絹を裂くような悲鳴が聞こえ、郷子と広は顔を見合わせ慌てて駆けだした。
角を曲がると地面にへたり込む美樹の姿があった。そして美樹の前に立ちふさがる壁のような大男。
広や郷子は同年代と比べても小柄ではなく平均的な身長ではあるが、その二人が縦に並んでようやく届きそうな位置に目つきが鋭く隈取のある顔があった。縦に大きく横にも太く、しかし肥満体ではないようだがとにかく威圧感がある。
「う、うわあああっ!」
「お、鬼っ!」
壁の曲がり際に出くわしてしまった美樹や、不意に見てしまった広や郷子がへたり込んでしまうほどに。
「なんだなんだ、どうしたタイガー?」
「よ、横島さん。いきなり小学生が……」
「そら小学生がお前の顔見たら怖がるだろうよ、って」
へたり込む広らを見て慌てていた大男は、後ろからの声に振り向く。大男の影からひょっこりと出てきたのは、誰あろう横島忠夫だった。
「あれ、昨日の子らか?」
「あ、横島さん! よ、妖怪、退治して!」
という美樹の叫びに横島はキョトンとした表情をした。そして美樹が指差す先を辿り、大男と顔を見合わせ、そして大爆笑した。
同じくキョトンとしていた大男は怒るでもなく悲しむでもなく、苦笑していた。
「いや、懐かしいなこの反応。最初のころはみんなそうだったよな」
「そうですノー」
ひとしきり笑い、横島は座り込んでいる美樹と郷子に手を差し出した。
「こいつはタイガー寅吉っつってな。人間離れしてるけど、俺の同級生だよ」
二人を助け起こした後横島は広にも手を差し出したのだが、広は少しためらうようにしながらもその手をとり立ち上がった。
「タイガー、昨夜言った除霊現場で会った子達だよ。美樹ちゃんと郷子ちゃんと広、だっけ?」
「ああ、洋館で悪霊に襲われてた子たちですカイ」
「あ、あの……すいませんでした。失礼なこと言っちゃって」
「慣れとりますケエ、構わんです」
言って頭を下げた郷子だが、大男タイガーの顔をよく見てみれば恐ろしいものではないことがわかる。というより、一度慣れてしまえばあくがなく、影の薄い顔かもしれない。
「えーっと、ところで横島さん達はどうしてここに? また悪霊退治?」
「いんや、今んとこ悪霊の反応も目撃情報もないんで、夕方からだな。ってか、ワクワクした顔しない。ホントにこりてねえな、美樹ちゃん」
「美樹? いい加減にしないと本気で怒るわよ」
「は、はは……それで、実際のとこ何してるの?」
「行くとこあったんだけど、道に迷っちゃってさ。ちょうどいいや、童守病院ってどこ?」
横島とタイガーそれに郷子ら三人を加えた一行は、連れ立って童守病院へと向かっていた。
横島もタイガーも怪我や病気をしている様子は無いが、そこの医者から呼び出しを受けたというのだ。
「もう一人、連れがいるんだけどさ。そいつがそこの先生にお世話になってるって連絡してきてな。なんて先生だっけ?」
「確か……タマモ先生とかいいましたかノー」
「ああ、そうそう。うちの狐娘とおんなじ名前の先生だ」
という会話があり、二人を呼び出した医師玉藻京介の知り合いである美樹らが案内することになった。
童守病院とは童守町内でも中堅規模の総合病院である。
一通り外科内科と揃っている他、救急病棟もあり常に人で溢れている。天才と評判の外科医も所属しており、わざわざ町外から訪れる患者もいる。
駅からは少々距離があるため専用のバスが出ているのだが、横島たちは金がもったいないとわざわざ歩いていたらしい。
「霊能力者って儲かるんじゃないの?」
「そんなん一部の凄腕だけだって」
昨夜美樹が横島は金と女に縁がなさそうとは言ったが、最初の印象は裏切らず片方は事実だったというわけだ。
「ところで、横島さんたちどうして童守町に? やっぱり悪霊退治の依頼を受けてきたの?」
「依頼っつーかなんつーか……タイガー頼む」
「話聞いてないからですケエ、全く」
頭をぼりぼりとかきつつ、横島は説明を全てタイガーへと丸投げした。苦笑しつつもタイガーがすんなりと応じているあたり、毎度のことなのだろうか。
タイガーは少し考えた後こう語った。
「夏休みは悪霊とか妖怪とかの活動が活発になるので、オカルトGメンとGS、そして霊能学校の有志の生徒による共同パトロールが企画されたんジャ。ワッシと横島サンと病院にいるピートさんの三人のチームで、童守町全体担当ですがノー」
「確かに、最近悪霊に襲われたって話よく聞くからね」
「でも、噂好きの美樹でやっとわかるくらいでしょ? 私はあんたに言われなきゃ知らなかったわよ」
「襲われたのだって、ぬ~べ~がいなくなってから始めてだよな」
「人気のないところに出てきてるのと、あんまり強くないからパパッとやっちまえるからじゃねえかな」
「横島さんの目撃情報が町外れに向かってたのも理由あるの? 辿ってったら横島さんに会えたんだけど」
「そうなん? ただ俺たちが寝泊まりしてる民宿が町の真ん中にあるからそう見えただけじゃねえかな」
「そうなんだ。私ドヤ顔で法則見つけたとか言っちゃったわよ。恥ずかしい」
担任教師が霊能力教師だったこともあり、生徒の中でも特に親しかった三人は霊障に関わることが多かった。除霊を見るだけでなく、当事者となることも多かった。
しかし、ぬ~べ~、鵺野鳴介が九州へ転任した後は、めっきりその機会も減ってしまった。学校は鵺野が念入りに霊障封じを行ったし、町内でも危ないところには近づかないことという教えを守っていたからだ。
噂話すら聞くことも少なくなっていたのだが、それがここ最近で目撃情報が多発するし、襲われるしと、なるほど活発になってきているようだ。
「その、ぬ~べ~って先生、どんな人なんだ?」
「気になる?」
「まあ。ちょいちょい話は聞いたけど、その人のことぜんぜん知らんし」
なんとなく似てるとも言われたしな、と横島が呟くと、広が露骨に嫌がる顔になる。どうにも横島への嫉妬が再燃してきているようだ。
「ぬ~べ~は本名鵺野鳴介。日本で唯一の霊能力教師で、悪霊に取り付かれた子供がいるとすぐに駆けつけて除霊してくれたんです。子供たちを守るため命がけで悪霊と戦う正義の霊能力者。去年私たちの担任だったんですけど、九州に転任したんです」
「唯一なのか? 俺の知り合いに霊能者で教師やってるやついるけど」
「ああ、聞いたことありますノー。確か、GS免許を持っていながら教職を優先している人がいるとか。鬼道先生は霊能力を教える教師ですケエの」
「なるほどな」
と、父親に人生を狂わされ、紆余曲折あって教師をしている男を思い出す。
「あとぬ~べ~の左手はね、なんと“鬼の手”なのよ! 昔、ある生徒にとり憑いた鬼を除霊するときに、ぬ~べ~は自分の左手に封印したの。どんな悪霊も切り裂く最強の手よ。まあ、今はその鬼とも和解したんだけど」
「ほー、なんかすげえ人なんだな」
「そうだよ。ぬ~べ~はすげえんだ。金目当ての霊能力者とは違ってな」
「広!」
広の暴言に郷子が怒るが、広はどこ吹く風とふてくされている。そんな広の態度に横島やタイガーが気を悪くするのではと、様子を伺った美樹が見たのは予想に反して苦笑している二人であった。
「金目当ての霊能力者の代表は横島さんの雇い主ですケエの」
「まあ、その人はすげえ霊能力者ではあるけどな」
挑発するつもりは無いのだろうが、嫌味に対し何も反応が無かったことに広はよりイライラを募らせたようだ。それに郷子が怒るという悪循環が美樹の後ろで起こっていた。
「それにしても“鬼の手”ねえ」
「うん、すっごかったのよ。どんな悪霊でも妖怪でも“鬼の手”の前じゃ敵なし!」
「俺の知ってる鬼にそんなとんでもねえ奴がいなかったから、どんだけすげえのか今一ぴんとこないな」
「へえ、どんな鬼がいたの? ぬ~べ~の左手の鬼は地獄最強の鬼って言われてたらしいけど」
興味をそそられ聞いてみると、横島は指折り数え始めた。
「えーと、修行場の門番してる暇そうで影の薄い鬼門と、工場の中のお菓子を食いつくそうとする餓鬼」
「この間、除霊で相手しましたケエ」
「子供と尻子玉をかけてミニ四駆で勝負した娑婆鬼、そのリベンジにゴルフで勝負に来た美人のねーちゃんの夜叉鬼、そのリベンジに来た兄貴二人。ああ、そういやグーラーも一応鬼か」
「け、けっこういるのね」
「勝負しかけてきた鬼一家なんかは、やってることはしょうもねえけど霊力自体は強かったんかな、今にして思えば」
色々と話をしながら歩けば、いつの間にやら病院へと到着していた。ちょうど昼時であるが、入院患者や外来に訪れる人が見受けられる。
受付前のロビーは診察待ちの人で溢れかえっていた。とはいえ、玉藻から呼ばれているわけだから、診察待ちをする必要もない。
受付へ行き、その旨伝えれば案内してもらえるのだろうが、病院という場所で横島がじっとしているはずも無かった。
「こんにちわ、僕横島っていいます!」
「え? は、はあ……横島さん、初診でしたらこちらの紙に記載を」
「お姉さん、今晩ご飯一緒にどうですか?」
「失せなさい」
受付の女性職員をナンパする横島の姿がそこにはあった。女性職員も慣れているのだろうか、笑顔でバッサリとナンパを断ち切った。
断られれば早々に諦めるのが横島のナンパである。ガックリと肩を落としながらも、横島は玉藻に呼び出されたことを伝えた。
「玉藻先生? ああ、確かに訪ねてくる人がいたら個室に通すようには言われてるけど、本当にあなたなの?」
「ちょ、ちょっとすいません」
「あら、あなた達は玉藻先生の」
「ええ、教育実習のときにお世話になったんです。この人は本当に玉藻先生のお客さんなんです。私が保証します」
「……まあ、そういうことなら」
美樹の説明にようやっと職員は納得してくれたようだ。何とか職員は部屋番号を教えてくれたのだが、騒ぎを起こすなと釘を刺すのも忘れない。
個室へ向かうが、足取りが重い。
「なんでいきなりナンパとかしちゃうわけ?」
「そりゃ美人のお姉さまがいたら声をかけるのは男の義務だろ。例え断られるのがわかっていようとも、僅かな可能性に俺は賭ける」
「言葉だけはカッコいいけどさあ。タイガーさんも何とか言ってよ」
「そもそも今晩も仕事ですが、言っても無駄ですジャ。殴られたって横島さんは行動を変えませんですケエ」
横島に反省の色は見られない。タイガーももはや諦めの境地のようだ。後ろの方では郷子が面白くなさそうな顔をしており、広がそれに不機嫌な顔をするという先ほどとは別の悪循環が起きていた。
そんなこんなで教えてもらった階へ来たのだが、とある部屋の前に人だかりができている。どうやら玉藻が待っているという部屋のようだが、看護師たちが集まっていた。
「どうしたんですか?」
「あら、あなたたち玉藻先生の? ちょうどいいわ。あなたとあなた、後学のためにも堪能していきなさいよ」
「え? 何ですか?」
顔見知りの色気過多の看護師もその中におり、美樹と郷子を手招きしていた。横島らもついていったのだが、
「あら、男の子は知らなくていい世界よ。そこでいいコにしててね」
との言葉に、飼い主からエサをもらった飼い犬のように尻尾を振っていた。タイガーはともかくとして、実質恋人の広や気になる異性として急上昇の横島がだらしなく顔をにやけさせていたものだから、郷子が以下略。
ともあれ、手招きされていった場所は病室の入り口である。周りの看護師や女性の入院患者が集まる中、先頭に配置された。気のせいではなく、皆頬を赤らめ上気した顔をしている。いったい何事なのだか。
見てみなさい、と指差された先は病室の中。そこには見覚えのある後姿があった。
すらっとした体格であるが痩せているという印象は無く、女性から見てもうらやましい長くサラサラの髪。正面に回らなくても端正な顔立ちはわかる。横島たちを呼び出した医師玉藻京介である。
そして、彼の前にはベッドに腰掛ける男性がいた。金髪で西洋風の整った顔立ち、こちらは一目見てわかる鍛えられた体。というのもその男性は上半身が裸だった、というと語弊があるが、ケガをしているようで玉藻により包帯を巻かれていたからだ。
「さあ、包帯を替えますよ」
「お願いします。優しくお願いしますよ、先生」
「ふふ、何を言っているんですか。強くしないと意味が無いでしょう?」
「あ……っぐぅ……せ、先生……キツい、ですよ」
「我慢しなさい。しばらくすれば楽になりますよ」
「そうはいいますけど……うくっ」
「全く、子供じゃないんですから我慢なさい、よっ」
「う、ああ……」
会話だけを見れば医者と患者の会話である。だが、二人のルックスと会話内容とシチュエーションが、絵に描いたような美男子が半裸で、ベッドのある場所で、同じく美男子から与えられた苦痛に喘ぐという光景が、その筋の人たちにはこれ以上ない着火剤となっていた。
集まっていた女性たちは一様に赤面し、中には鼻血を出しそうな人までいた。そして、今までそういったモノに接点がなかった美樹や郷子はというと。
「こ、これは……」
「うん……アリね」
顔を真っ赤にしながらも興味津々で、若干はまりそうになっていた。
「なあ、何してんだみんな?」
「あー、いや広くんは知らなくていいことですケエ」
「腐ってやがる、早すぎたんだ」
「何がだよ」
「この部屋に来るのが、美樹ちゃんと郷子ちゃんには早すぎなんだ。いや、遅ければいいってわけじゃないけどな」
「だから、何なんだよ?」
離れた場所にいつつも中の様子は把握できた横島たちであるが、広には何がなにやらわかっていないようだ。横島はそのままわからないままでいてもらいたいと切に願った。
それはさておき、腐海に浸かりそうになっていた郷子と美樹を救出し、病室へと入室した横島たちは負傷している友人ピートと、自分らを呼び出した医師玉藻京介と初対面した。
会話が聞こえてきたときに気づいたが声がとてもよく似ていて、まるで同一人物のようだ。だからというわけではないが美男子であり、しかも医師という職についているので金も持っているだろう。ガタイもいいからスポーツも万能だろうし、性格は知る由もないがここまで条件がそろっていればいいに決まっている。
となれば横島のとる行動は決まっている。
「チクショー! チクショー! チクショー! なんだかとってもドチクショー!」
「うっ! ぐわあ!」
呪いである。どこからか取り出したワラ人形を、どこからか現れた木に添え釘を打つ。
実は何気に相手の髪の毛を手に入れずして相手を呪うという高等技術なのだが、唐突過ぎる上に明らかに嫉妬によるものであるので全員がだああっとこけた。
「こ、この私を呪うとは、さすがはGSということか。だが、なめてもらっては困る。はっ!」
「ぬわっ!」
呪いを受けた玉藻が印を組むと、今度は横島が胸を押さえて苦しみだした。呪い返しである。こちらも印一つで行う高等技術だ。タイガーの師匠である女性が見れば、高等呪術の競い合いに驚いたのかも知れないが、この場にいる誰も知る由もなかった。
いきなり暴れだした横島が大人しくなったため、これで落ち着いて話ができる。だが、横島の奇行を一気に見てしまった美樹たちは、言葉を発する気力を奪われていた。
「僕のときと同じリアクションじゃないですか。何してるんですか、全く」
「話聞いとったから想像はついたけど、それでも妬ましいものは妬ましいんじゃい!」
「気持ちはわかりますが、ピートさんが世話になった先生に失礼なことしちゃいかんでしょうが」
立ち直りが早かったのは付き合いの長い友人らであった。無論呆れてはいるのだが。
「騒がしさは鵺野先生と同等ですね。ピートくん、彼が?」
「え、ええ、横島さんです。そしてこっちがタイガー。僕の友人たちです」
「それに、広くんたちか。なぜ君たちが彼らと一緒に?」
「昨夜、悪霊に襲われていたとき、その、助けてもらったんだ。で、今日会ったとき玉藻先生に呼ばれたって言うから、案内してきたんだよ」
「なるほど。それはありがとう。こうして連れてきてくれたからにはもう用は済んだわけだが、どうする?」
玉藻はベッド脇のイスに腰掛けながら、答えのわかりきった質問をした。彼らの性格から考えれば、帰るとは口にしないだろう。
想像通りに、少年たちは首を横に振りイスに腰掛けた。
「あー、まあいきなりスンマセンした」
「ふっ、大したことではありませんし、忘れることにしましょう」
「そらどうも」
横島は玉藻に謝罪をしたのだが、その返事は気障の一言に尽きた。ロンゲのイケメンてのはみんなこうなのか、ととある公務員を思い出さざるを得ない。
ゲンナリしながらも、他の皆と同じくイスに腰掛けたのだった。
「えーと、結局のところよく状況がわかってないんだけどもよ、ピート。いったい何があったんだ?」
「ええ、お話します。昨夜何があったのか」
昨夜、ピートは自分の割り当てである童守町北部の霊障発生予測地域のパトロールにあたっていた。横島とタイガーも同じく童守町内の他の地域を巡回している。
なぜチームを組んでいるというのに別々に行動しているのか。それは数日前から拠点としている公民館に設置された見鬼くんが、数箇所の悪霊の活動が活発になっている場所を感知していたため分散せざるを得なかったためだ。
そして、ピートは空き家となっていた廃屋に巣食っていた悪霊を聖霊の力を借りて除霊することに成功していた。
付近の乱れた霊波はもう感じられず、追加の霊障発生報告もなかったことから今夜はこれで終わりだろうと、伸びをしながら道を歩いていたそのときだ。
ピートの前に一人の男が現れた。年のころは二〇代半ばといったところか。身長はピートより高く、体格は中肉、Yシャツを着ており、その左手には黒い手袋をしていた。
咄嗟にピートは体勢を整えていた。男の雰囲気が怪しかったこともあるが、何よりその左手から漂う怪しげな妖気を感じ取ったからだ。
「こんばんわ、どちらさまですか?」
『……』
ピートの問いに答えることなく、その男はニヤリと笑い、そして手袋を取り外した。
「っ!」
その手は手首から先が見えなかった。手袋をし、動いていたことを考えればその中には確かに手が存在していたはずなのに。
「エビル・アイ!」
感じる妖気から霊障の類と判断し霊視を試みる。だが、左手の妖気の強さは相当なもので、かろうじて見てとれるのは異形の手をしていることだけであった。
「どういうつもりかは知りませんが、敵対する意思があるとみなしますよ」
『……ナム……キュウ……ビャクエ……ゼオン』
「む、なにを?」
不意に男が口にした言葉は、聞きなれない言葉でありながらもどこかで聞いたことのある言葉だった。男が呟くような声を出したのでうまく聞き取れなかったが。
『わが左手に封じられし鬼よ。今こそその力を示せ』
「っ!」
その言葉と同時、禍々しかった左手の妖気がさらに勢いを増した。今までは封印されていたのだとわかったのは、男の左手がその正体を現したからだ。
皮膚がなく太く節くれだった指をむき出しの骨が覆っており、鋭い爪はナイフのごとく。一目見てわかる異形の手である。男のセリフをそのまま信じるならば、“鬼の手”ということになるのだろう。
だが、ピートの知っている中に、これほどの妖気を持った鬼はいない。それどころか、まるで上級魔族並の妖気を感じ取れる。
男は無言で“鬼の手”を振りかぶり、殴りかかってきた。咄嗟に防御したピートだが、あまりの衝撃に吹き飛ばされてしまう。
「っく! 何て力だ」
腕にまだ痺れが残っている。ただの衝撃ではなく霊撃で、それも相当な威力だ。男の攻撃はただのパンチで、溜めをしている様子もなかったのにである。ピートは警戒を強め構えた。
男はやはり不適に笑っており、得体が知れないことこの上ない。普通の格好であるが会話が成り立たず、何よりも左手が異様に過ぎる。だが、確実に言えることは敵対する意思を示していることである。
男は左手を振りかざし、追撃を仕掛けてきた。
「ダンピールフラッシュ!」
その男の眼前へ霊波砲を撃ち込む。牽制が目的ではあったが、腕の一振りで吹き飛ばされる。もっとも、足止めが一瞬できれば体勢を立て直すのには十分だった。
「はっ! せいっ!」
男の懐に蹴りで飛び込み、腹部へ拳を叩き込む。そして体勢を崩した男の顎を体ごと伸び上がるようにアッパーをくらわせた。
「ヴァンパイア昇竜拳!」
渾身の手ごたえ。常人ならば立ち上がれないだろう攻撃だが、男はたたらを踏んだだけですんでしまったようだ。ダメージがないわけではないようで、口から血を流していたが。
その血が赤いことに違和感を感じる。男は人間で間違いないのだろうか。
ピートは左手の攻撃が来る前に、さらに追撃をと構えたのだが男は左手を振りかざす。ピートと男の距離は離れており、どうしたところで攻撃があたるとは考えられない。
『“鬼の手”解放』
だが、なんと男の左手は長く伸び、先端に斧がついた形へとその形を変えた。変化と同時に妖気がさらにあふれ出す。
「な、なにっ!」
男の攻撃の間合いが急に伸び、ピートの腹を薙ぐ軌道を描く。
「くっ、ヴァンパイア・ミスト!」
斧が薙ぎ払う直前体を霧に変え、“鬼の手”が変化した斧を回避する。霧と化したヴァンパイアに通常の攻撃は通じないが、魔族や高位の妖怪ならば可能である。
「っぐぅ……!」
無論ピートはそれを把握しており、“鬼の手”による斬撃のダメージを回避することはできないだろうと覚悟していた。覚悟していれば耐えられるとは思ったのだが、想像以上のダメージに膝が崩れ落ちてしまう。
『“鬼の手”解放』
距離をとらなければと立ち上がるが、出血こそないものの内臓ををかき乱されたかのような痛みがある。そんなピートよりも男の行動の方が早かった。今度は“鬼の手”を鋭い刀に変化させたのだ。
再度ヴァンパイア・ミストを使おうにも痛みで集中できない。走ろうにもすぐには動けない。
ピートに打つ手はなかった。
「がふ……っ!」
“鬼の手”がピートの腹を貫く。腹を貫かれたくらいではヴァンパイア・ハーフは戦闘不能になることはないが、このまま続けてもジリ貧になるのは目に見えていた。ピートは戦闘続行を諦め撤退を決めた。
痛みをこらえ、瞬時に力を溜める。
「ダンピール・フラッシュ!」
不適に笑っている男に零距離から霊波砲を放つ。と同時に霧に変化し、空を飛び撤退を図った。
霊波砲の効果があったのかどうか、男は追撃をしてくることなく、ピートは撤退に成功したのだった。
「そして離れた場所で気絶してしまったところ、玉藻先生に助けられたわけです」
「私も、乱れた霊波は感知していましたのでね。最も、このような展開になっているとは予想外でしたが」
「お前また腹抜かれたんか?」
「は、はは。面目ない。ただ、玉藻先生のヒーリングを受けられましたからね。もう大丈夫ですよ」
「相変わらず頑丈ですノー」
戦闘に慣れている横島たちには負傷などよくある話であるし、ヴァンパイア・ハーフであることも知っているので反応に困ることもない。
だが、霊障なれしているとはいえ、小学生の広たちにすぐに理解できる話ではなかった。もっとも、広らが驚いていたのはそのことばかりではなかった。
「何があったのかってのはわかったけど、何なんだその男? それに、鬼って言ったのか?」
「ええ。それにやつが左手を使う前に呟いていた言葉について、玉藻先生に聞いてみたんです。心当たりがあるということで」
「おそらく、間違いないとは思います。その男はおそらく、『南無大慈大悲救苦救難広大霊感白衣観世音』と言ったのでしょう」
玉藻の言葉に、広らが立ち上がった。それは、到底聞き逃せる言葉ではなかったからだ。
「ちょ、ちょっと待てよ! それ、白衣観音経だろ」
「男の人の特徴を聞いて、まさかとは思ったけど」
「で、でもありえないでしょ! そんなことすんのよ!」
「ど、どうしたんジャみんな?」
それまで静かに聞いていた広らが急に騒ぎ出す。その反応は予想していたのか、玉藻は座るように促す。
納得のいかないような表情ではあるが、素直にイスに座りなおした広が口を開いた。
「玉藻先生、本気で言ってるのかよ?」
「ああ。いかに考えづらいことではあっても、状況証拠は全てそう語っている。何より、現場に残った鬼の霊気は間違いない」
広らは玉藻の言葉の意味がわかるのだろうが、横島らには全くわからない。顔を見合わせるばかりだ。
「昨夜ピート君を襲った男は、鵺野鳴介、鵺野先生に間違いない」
クロスオーバーもので〇〇VS〇〇! って本当に戦うのって少なかったりしますよね。
最初誤解で戦って、険悪になりながらも和解していくパターンが多い印象。Vシネで戦隊シリーズがよくやってます。
お互いの技術で強化されるのとかクロスオーバーの醍醐味です。一個しかない強化パーツを複製して全員がスーパー化とかお祭り騒ぎには最適です。
この話ではどう影響を与えられるでしょうか。
次話は翌朝八時に。
じゃあまた。