GS横島 Step by step   作:カシム0

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 連続投稿五日目。
 現れた黒幕との戦闘が始まる。

 じゃあどうぞ。


夏休みアニメフェスタ5

 

 

 

 

 

 一方その頃、いずなの案内で童守町の乱れた霊的磁場の発生地点、童守遺跡へ訪れていたピートとタイガーは、()()()()ことに違和感を覚えていた。

 

「確かに霊波が乱れているのを感じる。けれど妖怪も悪霊もいない」

「ですノー。いずなさん。見鬼くんの反応はどうですカイ?」

『変わらずこの近辺に反応が集中してる。どういうこと?』

 

 どことなくギャルっぽい管狐がクネクネと頭をひねる。戦闘能力ではないが、表現能力としては腕前は上がっているのだろう。

 

「これみよがしに怪しいストーンサークルがありますが、これも特に怪しいところはなし」

「これはひょっとして、誘い出されたんですかいノー」

『でも町中に管狐飛ばしてるけど、平和なもんよ? あ、何か接近……敵じゃないけど嫌な奴が来た』

「? それはどういう」

「おや、ゴーストスイーパーの諸君も来ていたか」

「玉藻先生?」

 

 付近を探っていたピートらの前に現れたのは、昼に世話になった医師玉藻京介であった。

 いずな狐がガルルと歯をむき出しにして威嚇するが、どこ吹く風と受け流す。

 

「どうしてここに?」

「霊波の乱れを感知したので様子を見に来たのですよ。未熟者がここにいるのは予想外でしたが」

『誰が未熟者よ!』

「君のことだ。さておき、君達も同じ理由でここに来たのだと思いますが?」

「ええ。いずなさんが協力者として町の霊波検知をしていてくれたのですが、ここに集中していると連絡がありまして」

「ですが、特に何もないので困っていたところです。玉藻先生、ここはいったい?」

「ここ、童守遺跡は超古代文明の遺跡です。科学ではなくオカルト技術が発達し、気を用いた文明を築いていたのですが、何らかの理由で滅びたようです」

 

 付近を見やるが、やはりストーンサークルに異常はない。

 さてどうしたことかと頭を捻る。

 

「そういえば、あの騒々しい彼はどうしたのです?」

「横島さんのことですか? 彼は郷子ちゃんが鵺野先生の姿をした何者かに連れて行かれたとかでそちらに向かっています」

『鵺野? 郷子? それって童守小の?』

「いずなさん、知っとるんですカイ?」

『まあ、ちょっとね。それより鵺野って帰ってきてたの? 連れてかれたってどういうこと?』

「ええと、それは」

 

 カクカクシカジカとタイガーがいずなに説明している横で、非常に似た声の二人が情報共有をしていた。

 

「そうですか。何やら後手に回っているのが気に入りませんね」

「ええ。残念ながら」

「恐らくですが、私や君達をここに集めたのは陽動とかまとめて始末しようとか、そういった類なのではないかと」

「そうですね。こちらでもその推測に至ったところです」

「誰が何の目的で、は不明ですが、何のためには想像がつきます」

「霊能を持つものをここにまとめておきたかった、ですか?」

「おそらく。この場にいない横島くんと君たちの拠点で見張りをしている未熟者を除けば、この街にいる霊能力者はこれで全部でしょう。となれば、何がしかリアクションがあるかと思いますが……、来ましたね」

 

 気配を感じ見やれば、森の木陰から現れる白シャツの男。左手に黒い手袋をした鵺野鳴介の姿をした何者かが現れた。

 

『あ、0能力教師』

「管狐越しとはいえ感知能力を働かせたまえ。あれが鵺野先生に見えるのか君は」

「あれは、昨日僕に襲いかかってきた男と同じに見えますが、何でしょう。違和感が」

「ピートさん。ワッシのテレパシーに何も感じません。あれは見た目は人でも中身は空っぽですジャ」

 

 何者かは不明だが敵であることは間違いない。

 玉藻は刺股を構え、ゴーストスイーパーは霊力を集中させた。

 それを待っていたかのように、男はニヤリと笑い、手を挙げる。

 すると、全く反応の無かったストーンサークルが光だし、続々と妖怪が現れ出した。

 

「これは、普通なら絶望的状況ですが」

「ですノー。見た目より霊力が弱い。言ってしまえば雑魚ばかり」

「かと言って油断は禁物ですよ、ゴーストスイーパー諸君。とりあえず蹴散らし、鵺野先生の姿をした奴を抑える。これでどうでしょう」

「異議なしです」

『何であんたが仕切んのよ』

「まあまあいずなさん。こっちは何とかしますので、町の警戒をお願いしますジャ」

『……わかった。一応言っておくけど怪我しないでね』

 

 鵺野鳴介の姿をした男が手を振り下ろす。正に号令だったのだろう。妖怪どもが一斉に襲いかかってきた。

 

「行きましょう」

「ええ!」

「やったりますジャ。フンガー!」

 

 規模は違えど一大決戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絶鬼は“鬼の手”を振り被り、横島に殴りかかる。

 込められた妖力は強いが、恐れるほどではない。話に聞いた絶鬼本来の姿ではないからか。

 

「ふんぬっ!」

 

 横島は“栄光の手”で振り払い、絶鬼の腹へ蹴りを繰り出すが防御した絶鬼は続け様に左手を開き振り下ろす。

 

「のわった!」

 

 爪を“栄光の手”で受け流し、体勢を崩したところを左手の“栄光の手”で殴りつける。

 首を傾げてかわした絶鬼は距離を取り、“鬼の手”を斧に変えて伸ばす。

 

「こなくそっ!」

 

 対して横島は“栄光の手”を伸ばして弾く。

 

「どわああっ!」

 

 手を戻した絶鬼が妖力波を放てば、横島は“サイキックソーサー”で防御し、そのままソーサーを投げつけ、左手を刀に変えた絶鬼が撃ち落とす。

 数秒の邂逅でまるで特撮ヒーローのような戦闘が行われた。

 

「すっげー。横島さんが強えのは知ってたけど、何か、とにかくすっげー。掛け声は変だけど」

「あんたもうちょっと言葉を選びなさいよ。でも、確かにすごいわね」

「うん。でも、絶鬼ってあんなもんだっけ? もっと力まかせに蹂躙する、って感じじゃなかった?」

「そうね、確かに。ぬ~べ~の姿をしてるから、なのかな?」

 

 かつての鵺野鳴介と絶鬼との絶望的な戦闘を知っているからか、広らは違和感を感じる。

 横島が鵺野鳴介より格段に強いのならばよいのだが、そうでないのなら何かを絶鬼は隠していることに他ならない。それが不気味で仕方ない。

 

「あの吸血鬼よりも強いかな」

「ピートのこと言ってんなら大間違いだぜ。ヴァンパイアハーフだから防御を疎かにしがちだけど、次やったらあいつは負けねえぞ」

「昨日はうまく逃げられたが、一期一会の戦闘に次を考えるのならなっちゃいないな」

「生きてるんなら次があるんだよ。あいつは経験を活かせるやつだ」

「ふん」

 

 絶鬼は何かを確かめるように“鬼の手”を何度か握りしめ、構える。

 

「君は不思議だね。武術を修めているようには見えないが攻撃も防御も適格。まるで反射神経や本能だけで戦っている獣のようだ」

「うるへー! こちとら攻撃くらわないように必死なんじゃい!」

「立ち居振る舞いは到底戦士ではない。むしろド素人なのに」

「大きなお世話だ」

「君も命がけで人を守り強くなるタイプかと一瞬思ったが、そうではない」

「そらそうだ。ウンコ食って生きられるなら食うぞ」

「……プライドもない。いや、生存本能が強いのか。獣というよりゴキブリだな、君は」

「じゃあゴキブリの戦い方を見せてやるぜ」

「むっ!?」

 

 守勢に回っていた横島が先んじて動く。

 “栄光の手”を霊波刀に変じ間合いを詰める。

 

「蝶のように舞い!」

 

 反応した絶鬼の攻撃をヒラリとかわし、

 

「ゴキブリのように逃げる!」

 

 そのまま走り去る。脱兎のごとく、蜘蛛の子を散らすように、一目散に駆け抜ける。

 見ていた広らもだああっとずっこける。

 呆気にとられて横島を見送った絶鬼だが、接近する霊波に慌てて身をかわす。

 横島の身体に隠れて“サイキックソーサー”が絶鬼に迫っていたのだ。

 

「と見せかけてハチのように刺ーすっ!」

「ちぃっ、無駄に器用なことを!」

 

 体勢を崩した絶鬼に霊波刀で斬りかかり、刀に変じた“鬼の手”と鍔迫り合いをする。だが、“栄光の手”は両手から発動できる。

 

「隙ありじゃ!」

「くっ、この、なめるなっ!」

 

 左の“栄光の手”の突きが絶鬼を打ち抜かんとするが、絶鬼は身を捻り、さらに“栄光の手”を受け流す。

 隙を晒したのは、横島だった。

 

「あ、やべ」

「隙ありだな」

 

 無防備な首元に刀を振り下ろし、横島を切り裂いた。

 

「横島さんっ!」

 

 ()()()()()()()()

 

「何っ!?」

「隙ありだ」

 

 横島は手からではなく、絶鬼に晒した首元から“サイキックソーサー”を出し防御に成功していた。

 手を振り切った絶鬼に回避の余裕はなく、

 

“栄光の手”(ハンズオブグローリー)!」

「グアアアッ!」

 

 霊波刀が絶鬼の胸元を貫き、苦痛の雄叫びを上げる。広らは恩師の姿をした男の悲鳴に顔をしかめるが、まごうこと無き勝利に笑みが浮かぶ。

 

「やったぜ、横島さん!」

「ぐ、おぉ……な、なるほどな。生きるため、死にたくない想いでも力は発揮されるのか」

 

 姿を保てないのか、輪郭がグニャグニャと歪み崩れ落ちる絶鬼。

 

次がある(・・・・)のだったね」

 

 そう言い残し、スライムのように溶けていった。

 

「え、えっと……勝ったの?」

「でも、こんなにあっさり?」

「そう、第一楽章は君たちの勝ちで終わりだ。次はどうかな?」

「何っ!?」

 

 絶鬼の消えていった場所を見ていたが、頭上からの声に驚愕する。先程現れたのと同じ場所から絶鬼が同じく鵺野鳴介の姿で現れたのだ。

 

「ど、どうなってやがんだ?」

「他の妖怪と同じエクトプラズムで出来てるから再生産も簡単ってか。本体が別にいてお前を操っている、とかか?」

「見た目の割に勘がいいな。いや、それとも経験なのか?」

「まあ、触手ウネウネのダミーを本体が操ってた魔族とやりあったことがあるんで。っつーか見た目の割にとか余計なお世話だ」

「お察しの通り、本体はそこだ」

 

 絶鬼が指差すのは壁に設置された機械。三つの巨石が光球を支えるように立っている。

 

「あれはオロチの核となる子供の魂を集める機械だったようだが、今は僕の本体がそこにあり、分体を操っているのさ。本体を破壊すれば分体も停止する」

「どういうつもりかわからないけど、本体を倒せばいいのね」

「わざわざ位置を言うなんて、余裕なの?」

「できると、させると思うのか?」

 

 絶鬼はニヤリと笑い、“鬼の手”を掲げる。すると、ストーンサークルから現れたのは、

 

「え、うええっ!」

「ぬ、ぬ~べ~がいっぱい!」

 

 広間を埋め尽くすほどの鵺野鳴介だった。

 絶鬼の意思が無く人形のようで、全てが一糸乱れぬ動きで“鬼の手”を構えて包囲している。

 

「第一楽章は独奏者、第二楽章は指揮者に役割を変えるとするよ。さあ、再演と行こうか!」

「よし、逃げるぞ!」

 

 言って横島は広らを抱え、一目散に逃げ出した。

 だああっと絶鬼がコケたため、操られている多数の鵺野鳴介も一斉にコントのようにコケた。

 

「な、貴様! この期に及んで逃げるか!」

「とりあえず郷子ちゃん助けたからな! ピッチピチの水着のねーちゃんならともかく、おっさんの大群の相手なんかしてられるか!」

「何言ってんのよ横島さん!」

「いや、俺たちが邪魔になってんだし、一旦引くのもいいんじゃねえか?」

「水着の律子先生が大量に出てきたら横島さん喜んで突撃しそうよね」

「後でその律子先生紹介してくれな!」

「くっ、させるか!」

「うおっ!」

 

 絶鬼が手をかざすと、横島が向かっていた通路からも鵺野鳴介(人形)がわらわらと現れる。

 

「えええっ!? ストーンサークルないのに出てくるとかどういうことよ」

「この館は妖怪博士の記憶から再現したものだ。やろうと思えばどこからでも出現させられるのさ」

「エクトプラズムって何でもありかよ」

 

 部屋の中央から移動したおかげで包囲されつつあった状況から変化はあったが、今度は袋の鼠であった。

 

「妖怪博士の記憶に、君たちも子供ながら侮れない胆力を持っているのはわかっていたからね。無力だろうと油断はしないのさ」

「ちぇっ、こんときばかりはあの時頑張りすぎたのが恨めしいぜ」

「行け、人形ども!」

 

 絶鬼の号令で鵺野鳴介(人形)が襲いかかる。

 

 

 

 

 さらに一方そのころ。童守遺跡では、

 

「火輪尾の術!」

「ダンピールフラッシュ!」

「フンガー!」

 

 玉藻、ピート、タイガーが多数の妖怪を蹴散らしていた。

 しかし、一匹が減ればその分ストーンサークルから新たな妖怪が現れ、膠着状態となっていた。

 

「切りがありませんね」

「一匹一匹は大したことはないが、奴への接近をさせないように動いている。ここは大技で一気に数を減らし、新たに出てくるまでの隙に仕掛けるのがいいか」

「いや、ちっと待ってつかあさい。ワッシに考えがありますジャ」

「ほう。勝算は?」

「さっきの感じからすればそこそこ。ワッシが道を開きますんで、二人は一気に奴のところへ」

「わかった。合図はタイガーに任せる」

「ほう」

 

 これまでの戦いで玉藻はピートの戦闘力を高く評価していたが、タイガーは霊力を込めた肉弾戦闘しかしておらず、戦闘力は低く見積もっていた。

 だが、ピートの全幅の信頼を寄せた発言に評価を修正する。

 

「フンヌっ!」

 

 タイガーの気合とともに精神波が広域に発せられ広がる。

 テレパシーの類とわかったが、何故今、と疑問に思うもいつでも飛び出せるように体勢を整える。

 

「今ですジャ!」

「行きますよ玉藻先生!」

「承知!」

 

 タイガーの合図にピートが何の疑問も抱かず突進し、玉藻も続く。

 このままでは妖怪の群れに飲み込まれるだけではと思うも束の間、前線にいた妖怪が反転し他の妖怪へと襲いかかったのだ。

 タイガーの精神感応により、自我の無い妖怪が洗脳されこちらの手駒となり、形勢は一気に逆転する。

 

「はああっ!」

「むんっ!」

 

 鵺野鳴介の姿をした男への一本道が形成され、距離を詰めた二人の攻撃が男を貫く。

 男は悲鳴すらあげず、無言で身体を溶解させて消えていき、同時に妖怪も消えた。

 

「……増援はなし。状況終了といったところか」

「そのようですね。タイガー、お疲れ様」

「ワッシの得意分野ですケン。大したことはないですジャ」

 

 警戒を解かず観察するが変化はなし。この場における妖怪大発生は終わったものと判断したが、問題はこの後だ。

 

「私は近くにある遺跡を調べていた学者の屋敷へ向かうが、君たちはどうする?」

「そうですね。そこに黒幕がいる可能性は高いですが、町の方も心配ですし」

「いずなさんが戻ってきましたので確認しますか」

 

 戦闘の余波に巻き込まれないよう離れていた管狐が三人の元へ飛んでくる。

 様子がおかしく、慌てているようだ。

 

『状況に変化あり! あいつが帰ってきた!』

 

 

 

 

 

 押し寄せる鵺野鳴介(人形)は弱く、横島の一撃で倒れていくがとにかく数が多い。戦いは数だと過去に言われている通り、攻め寄せられた横島らは壁際に追い詰められていた。

 

「こいつは、ちっとやばいな」

「くっそー。わかっちゃいたけど、やっぱ足手まといだよな」

「横島さん。私たち置いてってどうにかできる?」

「正直わからん。とにかく手が足りない」

「でもこのままじゃジリ貧よ? 一か八か、やっちゃって!」

「危険ってわかってて来たんだ。少しのケガくらいは覚悟の上だぜ。郷子と美樹は何とか守るつもりだけど」

「広……」

「数に余裕はないけど仕方ないか。広、さっき渡した珠よこせ」

「お、おう。これか」

「んで郷子ちゃんと美樹ちゃんにはこれ」

「何これ、ビー玉?」

「中に何か文字が」

 

 横島が手をかざすと広が持っていた珠の文字は“照”から“銃”に、同じく美樹の珠も“銃”の文字が、郷子に渡された珠の文字は“守”がそれぞれ入っていた。

 

「郷子ちゃんはそれ持って“守”りたいって思って、広と美樹ちゃんは壁の内側から近寄ってくる奴らをぶっ飛ばす。それでどうにかなる」

「どうにかって」

「今さら信じないなんてことないけど、大丈夫なの?」

「子供ケガさせたら上司に折檻されちまうからな。なんとかするよ。どりゃっ!」

 

 横島の気合とともに伸びた霊波刀が鵺野鳴介(人形)を薙ぎ払い、跳び上がり人形の頭や肩を足場に本体へ駆け、置き土産とばかりに指揮者への“サイキックソーサー”も忘れない。

 出来た空隙に人形が殺到するが、横島に言われたとおりに郷子が“守”りたいと珠を握り願う。すると、円形に見えない壁が現れ人形の接近を阻む。

 

「な、何これ!?」

「結界ってやつ? さっきの珠が光ってる」

「なら美樹、俺たちもやるぞ! ぬ~べ~の人形どもをぶっ飛ばす!」

「そ、そうね。おんどりゃー!」

 

 珠を構え念じると、二人の手にボヤけてはいるが“銃”の形をした光が現れ、引き金を引くと銃弾が飛び、人形を撃退していく。

 

「ゲーセンのガンシューと一緒だ! どんどんぶちかますぞ」

「リロードがないからイージーモードね」

「これ、横島さんの能力なの? すごいなぁ」

 

 敵は阻み攻撃は通すという高度な結界なのだが、霊能に詳しくない広らに違いはわからず、トリガーハッピーのごとく撃ちまくり人形を撃破していく。

 横島は人形の頭上を通り過ぎて壁に到達し、“栄光の手”を使い筋力だけで重力に逆らいオーバーハングを登りきっていた。

 

「よっしゃ! 本体、トドメじゃー!」

「甘いね。“鬼の手”!」

「んなっ、どわあっ!」

「横島さん!」

 

 本体へ攻撃を仕掛けた横島の後ろから人形、いや指揮者が現れ、肥大化させ網状にした“鬼の手”を放つ。

 咄嗟にガードした横島は吹き飛ばされ、その懐から珠が転がり落ちる。

 

「ええい、ちくしょうめ!」

 

 壁に叩きつけられ落下する横島は、不格好ながら着地し鼻血を拭う。顔面を壁にぶつけたダメージしかない様子に広らは胸を撫で下ろすが、横島は殺到する人形に飲み込まれていく。

 

「なぜ本体の位置をわざわざ伝えたのかと言っていたな。隙をつくために指揮者を移動させておいたのさ」

「くっ、卑怯者め!」

「さんざん振り回されたんだ。意趣返しくらいするさ。さて、厄介なのは封じた。奴の能力も強力が故に長続きはしないだろう。チェックメイトだ」

「お、おい郷子。壁が狭まってきてないか」

「すっごい押してくるの! まだ押し返せてはいるけど、この珠の力がなくなっちゃったら……」

「やば、心なしか威力が落ちてきているような」

 

 正確には横島がやられて弱気になったため威力が落ちているのだが、やはり霊能のない広らには理由がわかるはずもない。

 ジワジワと攻めたてられ、どんどんと壁に追いやられていく。

 

「くくっ。袋の鼠だな。命乞いでもしてみるか?」

「ふざけんな! お前みたいな悪党に、死んでもやってたまるもんかよ」

「そうよ! ぬ~べ~クラスは絶対に諦めないのよ」

「私達はぬ~べ~からそう教わってるもの!」

「ふん、せめて心だけは、か。身体がボロボロになっても同じ台詞を吐けるのか、試してみようか?」

 

 人形が“鬼の手”を刀に変え、結界に突き刺していく。広と美樹が撃ち抜いていくが、知ったことかと後から後から湧いてくる。

 

「くうっ、感覚でわかるけど、そろそろダメそう」

「ちくしょう、ぜってえ諦めたりなんかするもんか!」

「あっ、“銃”が!」

 

 結界があちらこちら綻び、“銃”が明滅し連射ができなくなり、珠の力が残りわずかになっていくのがわかる。わかってしまう。

 

「ちくしょう、ちくしょう!」

「“守”る、“守”るんだ!」

「気合いいれなさいよ、横島さんの珠!」

「くっ、とっておきだけどしゃーねえか!」

 

 結界を刀の先端が貫き、弾はもう出ない。

 絶体絶命の状況に横島は策の要の珠に“爆”の文字を込め、吹き飛ばそうとする。だが、間に合うのか。

 

「ちくしょう、誰か」

「誰か、助けて」

「助けて……」

 

 困った時に、助けが欲しい時に現れるヒーロー。特撮番組で現れるような正義の味方。

 いつも優しく、厳しく、どんな時も体を張って町の平和を、子供たちを守ってくれた五年三組のヒーロー。

 広たちが呼ぶのは、

 

「「「ぬ~べ~!」」」

 

 目の前にその姿はある。しかし敵の下僕として危害を加えてくる。本物はいない。

 たった今までは。

 

「“鬼の手”!」

 

 今まさに結界を食い破らんとしていた人形が、編みのように広がった異形の手に一気に吹き飛ばされる。

 手にした力尽きた珠が溶けるように消え、広たちはその先を見た。

 

「あ、ああ……」

「来て、くれたんだ」

「まったく、遅いのよぉ」

「じゃあ、あれが本物の?」

 

 指揮者は減った人形を補充するのを止め、()()()を向く。

 

「は、はははっ! とうとう来たんだね!」

 

 人形が溢れ塞がれていた通路から人影が現れる。

 身長は成人男性として大柄でガッシリとしていて、黒髪にゲジゲジ眉毛。白いシャツにいつもしている黒い手袋は無く、“鬼の手”がすでに見えている。普段はだらしのない緩んだ顔もキリッと引き締まっている。

 間違うはずもない。こんどこそ本物の、

 

「「「ぬ~べ~!」」」

「久しぶりだな、郷子、広、美樹。怪我はないか?」

 

 鵺野鳴介の姿がそこにあった。

 

 

 

 




 あと一話で終わりです。
 クロスオーバーと言っときながら主人公同士(GS美神の主役は美神、主人公は横島と思ってます)の絡みが終盤のみ。2時間映画なら1時間半くらいで登場という。
 声が同じピートと玉藻のほうが絡んでるし、タイガーは影薄いし。
 ここは私の力不足。でも終盤でバーンって登場した方がらしいと思っちゃったんです。

 残すところあと一話。よろしくお付き合いください。
 じゃあまた。
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