GS横島 Step by step   作:カシム0

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 連続投稿六日目。夏休みアニメフェスタも今日で終わり。

 とうとう現れたあいつ。
 異形の手の最強タッグがここに誕生。

 じゃあどうぞ。


夏休みアニメフェスタ6

 

「「「ぬ~べ~!」」」

 

 広ら三人は現れた男性、鵺野鳴介の名を涙ながらに叫ぶ。絶望的な状況を吹き飛ばしてくれた恩師に駆け寄って抱きつきたい。

 しかしながら状況がそれを許さない。

 

「遅くなってすまない。話したいことはたくさんあるが、ちょっと待っていてくれ」

 

 鵺野も同じく元生徒たちに駆け寄り安心させたいところではあるのだが、郷子らを尻目に横島に駆け寄る。

 

「君が横島くんだね?」

「そういうそちらは鵺野先生で? 俺の名前知ってるんスね」

「ここに来る途中でいずなの管狐から一通り状況は聞いたよ。俺の生徒が世話になったようだね、ありがとう」

「結局危ない目に会わせちまって面目ねえっス」

「いや、君がいたから俺が間に合った。それと、図々しくも頼みがあるんだが、」

 

 言って鵺野は左手の甲を横島に向ける。

 

()()()()()()()()()()

 

 愛やら勇気やらは性に合わないが、男としてこのようなやり取りは嫌いではない横島は、

 

「俺の手で良ければ」

 

 ニッと笑い、鵺野の“鬼の手”に“栄光の手”を打ちつけた。

 

「すげえっ、“鬼の手”と“栄光の手”のタッグだ!」

 

 さらに、男の子としてそういうのが大好きな広も目をキラキラさせて大興奮しており、女子は呆れ顔でそれを見ていた。

 

 

 

 

 

「絶鬼!」

「鵺野鳴介! 貴様は、貴様だけは必ず殺す! ガアァッ!」

 

 鵺野鳴介の姿をした指揮者が吠えると、すべての人形が輪郭を崩し、エクトプラズムとなって吸い込まれていく。

 渦を成し吸収し尽くして、現れたのは冠のような角を持つ青い肉体、地獄の鬼の本性を表したのだ。

 膨れ上がった筋肉、鋭く尖った爪、頭部から生える角は節くれだち、怒りを表しているかのよう。

 かつて童守町で猛威を振るった絶鬼の姿だった。

 

「皆殺しだ! そして僕は僕を取り戻す!」

「え、絶鬼は鬼の姿になれないはずじゃ」

「元の姿に戻ったのに何言ってんの?」

「なれないんじゃなくてならなかったのよ」

「眠鬼ちゃん?」

 

 広らの前に現れたのはピンクの髪をツーテールにした少女、鵺野の転勤に付いていったはずの鬼の末妹眠鬼だった。

 

「どうしてここに?」

「戦闘の余波からあんたたちを守るためよ」

「……なんかよくわからないけど、後で話してくれる?」

「うん」

 

 わかっていて言っているのか、郷子の疑問に微妙にずれて答える眠鬼。事情があると察した郷子は追求を諦め戦闘を見守る。

 本性を表した絶鬼は妖力波を放ち、肉体のあらゆるところから爪を伸ばして二人に襲いかかる。

 絶鬼の力はかつてより大きく減退しているが、苛烈な攻撃はそれを感じさせない。しかしタッグを組んだ二人は、あらゆる悪霊、妖怪から生徒を守り抜いた最強の霊能力教師と、業界最優のゴーストスイーパーの丁稚である。

 妖力波を鵺野が防ぎ、爪を横島が弾く。歴戦のコンビのように息があっていた。

 

「貴様らのハーモニーは不快だ!」

 

 絶鬼は小技では埒が明かないと苛立ち混じりに“鬼の手”を薙ぎ払い、

 

「ふんぬっ!」

「南無っ!」

「ガアァッ!」

 

 横島が多重展開した“サイキックソーサー”で防ぎ、鵺野が強烈な一撃を絶鬼に食らわせる。

 

「ホントに息ぴったりだな。どうなってんだ?」

「横島とかいう退魔士、援護に慣れてるな。先頭切って戦うやつをフォローするのが多いんじゃないか。あと、嫌がらせがうまい」

「そう聞くと一気に小物感が」

「横島さんもともとそうじゃない?」

 

 信頼する二人が組んだこともあり広らは安心して観戦しているのだが、当人が聞いたら大きなお世話じゃと反論されそうなことを話していた。

 

「ぐ、うう……本調子ではないとはいえ、やはり強いな人間」

「もうよせ絶鬼。お前の状態は大体わかっている。だからもう終わりにするんだ」

「慈悲でもかけるつもりか。人間が鬼に! 鬼の威を借る人間がよくも」

「覇鬼と眠鬼が迎えに行く。そのために俺は帰ってきたんだ」

 

 事情は知らずともなんとなく状況を理解した横島と、事情は知っているがさっぱり状況を理解できない広らと、事情も状況も理解していて黙って見ている眠鬼が見守る中、怒りに震える絶鬼が咆哮する。

 

「地獄に落ちた僕を放っている兄妹に何を期待しろと言うんだ。ふざけるなぁっ!」

 

 ストーンサークルから直接エクトプラズムが絶鬼に流れ込み、姿を大きく変容させていく。巨体がさらに膨れ上がり、鬼の顔が龍のそれへと変じる。肩や肘、膝に龍が浮かび上がる。

 その様はまさに龍戦士。絶鬼オロチとでも言うべき異形の姿。

 

「なんてこった。オロチの力を取り込んだんだ」

「だったらケセランパサランを召喚しなくちゃ」

「あいつがストーンサークルから移動したら、一気に行くわよ」

「何しようとしてるかわからないけどやめとけ」

 

 かつて悪の究極妖怪として生み出されたオロチと対をなす善の究極妖怪ケセランパサラン。

 妖怪博士が未完成ながらオロチと生み出し、破壊を振りまいた事件を広、郷子、美樹と他二人でケセランパサランを召喚し終わらせたのは記憶に新しい。

 足を引っ張ってばかりだったのだからせめてもと動き出そうとした広たちだが、眠鬼に止められる。

 

「やめとけって何で?」

「力だけは膨れ上がったからお前らが動くと守れない。それに必要ない。お兄ちゃんたちがもう終わらせる」

「死ねぇ!」

 

 絶鬼オロチは全身の龍の口から炎を吐き出し、フロアが爆煙に包まれる。

 

「ぬ~べ~、横島さん!」

 

 子どもたちの叫びに答えるかのように、鵺野と横島は炎の中から飛び出し駆ける。

 炎、妖力波、爪、先程までの攻撃よりも激しく、しかし二人はさっそうとかわし見上げるような巨体の足元へたどり着く。

 

「鵺野先生、トドメは頼んます!」

「ああ!」

「ぶっ“倒”れろ!」

 

 横島の気合とともに拳が振るわれる。手の甲の珠に“倒”の文字が浮かび上がり光る。

 体格差からすれば殴られた程度で終わっただろう横島の一撃は、絶鬼オロチの足を掬い大きく大勢を崩す。

 

「何ぃ!」

「今は安らかに眠れ! “鬼の手”最大出力!」

「グ、ギャァッ!」

 

 倒れ込む絶鬼、鵺野はその胸に霊力を凝集させた一撃を放つ。

 霊核を貫き、エクトプラズムを霧散させた巨体からとさっと軽い音を立てて少年が倒れる。

 サラサラの髪をした、アイドルのような美少年。絶鬼人間態であった。

 

「ぐふっ、だがまだだ! 何度でもやってやる。次がある!」

「いいや終わりだ。往生しやがれ」

「何を……何故だ!? 何故新しい身体が造れない?」

 

 ボロボロになり倒れた絶鬼は、立ち上がれないままに驚愕する。まさに今までできていたことができなくなったように。

 

「鬼の僕が、また人間に破れるのか……納得などできるものか!」

「絶鬼、これで終わりだ」

「終わりになどっ」

 

 言い切る前に、絶鬼人間態は溶けるように消えていった。

 先程までならば次の絶鬼が現れていただろうが、その様子はない。

 つまり、鬼退治は終わった。

 

 

 

 

 

「「「ぬ~べ~!」」」

 

 そう判断して、子供たちは恩師の元へ駆け出した。

 

「ぬ~べ~、俺たち頑張ったんだぜ!」

「ぬ~べ~、本物のぬ~べ~だぁ」

「どこいってたのよ。タイミング計ってたんじゃないかってぐらいに出てきてさ!」

「遅くなってすまない。危ない真似をしたのはよくないが、お前たちは俺の自慢の生徒だよ。よくやった」

 

 鵺野はそれぞれの頭を撫でやる。それぞれの目には涙。

 サブイボが出そうなと横島は表現したが、愛や友情、絆はそこには確かにあるのだと思わせた。

 しばし歓談しているのを見守っていたが、実のところそれほど余裕があるわけではなかった。

 

「すんません、鵺野先生。こいつもいつまでも持つわけじゃないので、ケリつけに行きません?」

 

 横島はビー玉大の珠を示す。“隔”の文字が浮かぶ珠は輝いてはいたが明滅しており、すぐにとはいかずとも消えてしまいそうに見えた。

 

「それは文珠か。そうか、文珠使いが現れたとは噂には聞いていたが、君だったのか」

「ぬ~べ~、もんじゅって?」

「霊力を凝集させ、指向性を持たせて解放する技だ。簡単に言えば何でもできる」

「簡単すぎね。でも納得。横島さんの能力便利すぎよね」

「制限時間はあるけどな。そんなわけで、行きましょう」

 

 と、横島が指差すのは上。かつてはオロチ製造の核にして、今は絶鬼本体がいると思しき場所。

 

「そういや、本体がいるって言ってたけど何もしてこないのな」

「まあ、あれじゃ何もできないだろうな」

「横島さん、何か知ってるの?」

「うーん、見りゃわかるとしか」

 

 先程横島がほぼ垂直の壁を登ったが常人にはできない所業なので、メンテナンス用のハシゴを経由して本体へ向かう。

 

「そういえば色々聞きたいことあったんだけどさ、色々ありすぎてどう聞けばいいのかわからないくらい」

「そうだな。それじゃ最初から順を追って説明するか。情報共有といこう」

 

 鵺野を先頭に一同は歩きだす。

 

「去年の“大霊障”の時に絶鬼やオロチがいないことに気付いてはいたが、他の妖怪に対応している間に終わってしまったんだ。気になってはいたんだが」

「絶鬼がオロチと妖怪博士を食べたって言ってたぜ」

「妖怪博士って人間なのに妖怪と同じくくりで復活したのね」

「ロボットも復活してたしな。範囲は大雑把だったみたいだぜ」

「ロボット?」

「懐かしの敵キャラが大集合したんだよ」

「夏休みの初めに覇鬼と眠鬼が絶鬼の気配を感じると言い出して、俺も霊感に感じるところがあって昨日出発したんだ」

「誰かに連絡してくれればよかったのに」

「玉藻に空港で電話しようと思ったんだが、一人分キャンセルが出て急いで手続きしていたから暇がなくてな」

「童守町に来たら街全体に絶鬼お兄ちゃんの気配がうっすら広がってて、どこだかわからなかったんだけど狐が来て教えてくれたのよ」

「いずなちゃんの管狐か。町中に散らばって霊の発生を教えてくれたから鵺野先生に気づいたのか」

「横島さん、いずなのねーちゃんと知り合いだったのかよ」

「この街に住む霊能持ちで除霊のフォローをしてくれるっつーんで紹介されたんだよ。バイトみたいなもんだな」

「ところでさ、覇鬼も眠鬼ちゃんもなんで絶鬼と一言も話さなかったの? あんなんでも兄妹でしょ?」

「それはだな……横島くん。“大霊障”で復活した妖怪達は厳密には召喚であってるか?」

「ああ、わかるんスね。その通りです」

「召喚? どういうこと?」

「俺も詳しくわかってるわけじゃないんだけど、そもそも絶鬼って死んでないんだよな?」

「えっと、そうね。ぬ~べ~に地獄に送り返されたのよね」

「身体バラバラになってたけど、生きてんだよな。あ、眠鬼ごめん」

「ううん。いいのよ。確かに絶鬼兄さんは今でも地獄の最下層の無間地獄にいるはず」

「え、じゃああの絶鬼って?」

「美神さんなんつってたっけな。宇宙の卵から呼んだとか」

「パラレルワールド、並行宇宙とも言うが、そこから五体満足な状態で呼び出されたのだろう」

「んー、よくわかんねえ」

「復活した妖怪達や絶鬼は俺達が知っている連中とはよく似ているが違うということだけ理解すればいい」

「だから眠鬼ちゃんあいつと話さなかったの?」

「まあ、そんなもの。似てるやつのそのまたコピーと話しても仕方ないし」

「そういうもんかね」

「他の復活した妖怪達は召喚した鬼械をぶっ壊したら消えてったんだけど、なんだかんだで残ったやつもいるんだ。随分力は弱くなってたけど」

「絶鬼も弱くなってたのよね? 私らにはよくわかんないけど」

「ああ。だから妖怪博士の霊力収集装置で補完していたんだと思うが、それだけじゃないんだろう」

「どういうこと?」

「召喚された絶鬼が絶鬼であることが消えてしまう条件だった。ならば、絶鬼が絶鬼でなくなれば消えることはない」

「結局どういうことなの?」

「見ればわかるよ。ほれ、着いたから見てみ」

 

 話している間に装置の前に到着した。

 ストーンサークルが光の玉を支えるようにそびえ立つそこに、もう一つ存在しているものがある。

 

「えっ」

「これって」

『僕を憐れむか、人間』

 

 絶鬼の首が右手を伸ばした石像がそこにあった。

 身体も他の四肢もない、まさに地獄から抜け出そうとしている様を削り出したかのようであった。

 絶鬼の言うとおり、救いを求める様は憐れみを誘う。

 

「自らを石像とし、消滅を免れたのか」

『そのとおりだ』

「他の身体は?」

「伸ばした手の行き先は、地獄か?」

『そうだ』

 

 絶鬼の右手は空に伸びており、天井を貫いていた。

 その方向は、かつて絶鬼が地上に現れた“鬼門”のある公園の方角と気づいたのは鵺野だ。

 

「この世界の絶鬼を無間地獄から引っ張り上げようとしていたのか」

『鬼門に僕の身体が入れば無間地獄に引っ張られる。オロチの力とエクトプラズムを現世にしがみつく楔と、手を伸ばすのに使っていた。もう少しで届いた』

「だから僕を取り戻すとかわけわかんないこと言ってたのね」

 

 思考する頭部と伸ばす手以外を全て絶鬼の救出につぎ込んでいたのだ。

 自らを石像と化してまで行う執念に、子供たちは背筋を冷たいものを感じた。

 

「さっきまで分身を出してたのに今やらないのはどうして?」

「こいつ」

 

 言って横島が見せたのは、先にも示した“隔”の文珠。そして、石像の側に落ちている“離”の文珠だ。

 

「さっき吹き飛ばされた時置いてったんだ。二つ合わせて“隔離”。本体と霊力収集装置の繋がりをぶっちぎった」

「本当に便利なのね、横島さんの力って」

『貴様さえいなければ。排除しようと館に引き込んだのが失敗』

「ってか、さっきからなんか、絶鬼の様子がおかしくない?」

「ああ。なんかロボット的な感じ」

『思考は分体に任せていた。本体は手を伸ばす』

「おそらく、思考すらエクトプラズムで補完していたんだ。“隔離”されたから意思を保てなくなっている」

「そこまでして」

 

 ある意味自殺に等しい行為に全力を注いだ絶鬼の野望は防がれた。後を継ぐ者がいなければ何の意味もない。

 だが、この場にはその意志を持つものがいた。

 鵺野の左手がグニャリとうごめき、鬼の姿をとる。雄々しく天を衝く角、筋骨隆々の体躯、絶鬼の姿とよく似たその姿はかつて鵺野の左手に封じられていた鬼、覇鬼である。

 

「覇鬼兄さん」

「ガウ。別の世界の絶鬼。俺と眠鬼が迎えに行く うが。お前はもう寝ていろ うが」

『今まで……放っておいて』

「頭を冷やさせたかった うが。殺すよりも楽しいことがたくさんある うが」

「そうよ。絶鬼兄さんも楽しめるはず。だって、兄妹だもの」

『そうは思えないが……やって、みるが、いいさ』

 

 絶鬼から知性が消えていく。石像はそのままに、気配が薄くなっていくのを霊能を持たない広も感じていた。

 

『……また、みんなで……』

 

 その言葉を最後に、別世界の絶鬼は活動を停止した。最後に何を言いたかったのかはもはやわからない。

 だが、歩み寄りを見せてくれたのであればいいなと、広は思った。

 実際に天に昇ったのかはわからないが、誰もが空を見上げていた。

 

 

 

 

 

 こうして、童守町を襲った一連の霊障は終わりを告げた。

 絶鬼の意志が消え、感傷に浸る間もなく館が崩壊を始め、慌てて横島らが館を脱出したところでピートらと合流した。

 事の次第をオカルトGメンに報告し、朝まで様子を見た上でオカルトハザードの終結を認め、横島らゴーストスイーパーは任務を解除された。

 そして翌朝。童守町の一行はゴーストスイーパーの面々の帰還を見送る前に集合していた。

 

「霊の大量発生と絶鬼の妖怪創造は別というか、絶鬼の行動に悪霊が呼応した形ですね。町の霊力を集めて妖怪を造っていたことから、しばらく落ち着くでしょう」

「霊的磁場が落ち着いているのは見鬼くんでも確認したから、間違いないよ」

 

 公民館で横島らのフォローをしていたいずなも合流し、一行が向かうのは童守町内の公園。

 

「実入りのいいバイトだったし勉強にもなったんだけどなぁ。楽だったし」

「未熟者がサボるなど愚の骨頂ですよ」

「なんだとーっ!」

「まあまあ、現場の空気を吸うのも修行になると思うぞ」

「うるさい、0能力教師」

「おい、俺今フォローしたんだぞ」

 

 かつて絶鬼が地獄から地上に現れた、鬼門が存在した場所である。

 

「この公園何回か管狐で通ったけど、特に異常なかったはずなんだよな」

「見逃しただけでは?」

「いくらなんでも死にかけた縁の場所を見逃さないわよ!」

 

 そうこうしているうちに公園に到着する。霊能のない広らには以前と変わらない公園に見えるのだが。

 

「うっ、これは……」

「あー、こりゃよく見ないとわからないな」

 

 かつて鬼門があった場所は回転ジャングルジムがあったのだが、絶鬼が現れた余波で破損し、撤去の後固定式のジャングルジムが設置されていた。見た限りでは異常はなさそうだが、

 

「破っ!」

「うわぁ」

 

 玉藻が霊力を発すると、ジャングルジムの柱から伸びた絶鬼の腕が鬼門に飲み込まれているのがわかる。

 見るものが見ればわかる、といったところか。

 

「……未熟者なら、まあ、仕方ないことでしょう」

「うっさい! あんただって気づかなかったじゃないか!」

「私は医師としての仕事があったのだ。君のように監視をメインでやっていたわけではない」

「ぐぬぬ」

 

 今にも地団駄を踏みそうないずなを郷子と美樹が宥める中、鵺野の左手から覇鬼が現れ、眠鬼と共に鬼門の前に立つ。

 

「人間、俺と眠鬼は地獄に戻る うが」

「私達の絶鬼兄さんを迎えに行かないとね。何年かかるかわからないけど」

「ああ。今まで世話になったな。絶鬼が落ち着いたらいつでも遊びに来てくれ」

「がう。ところで、本当に手を残さなくていいのか うが。それくらいで俺の力は変わらない うが」

「いや。俺もいつまでも借り物の力に頼ってはいけないと思っていたし、それに昨日横島くんを見て思いついたことがあってな」

「何よ、それ」

「いや、まだ修行が足りないからできないが、お前たちが帰ってきた時には見せられるようにしておくよ。今はまだ、これくらいだ」

 

 言って、鵺野は左手を差し出す。異形の手ではなく、普通の人間としての手でもって覇鬼と握手をする。

 

「それは、陽神の術ですか?」

「ああ。気を貯めれば“鬼の手”を再現することもできるだろう。見本は目に焼きついているしな」

「今までのような力を発揮するにはしばらくかかるだろう うが」

「覚悟の上さ」

「それじゃ、がんばってねお兄ちゃん。狐と狐娘、広、美樹、郷子。またね!」

「いってらっしゃい!」

「絶鬼の石頭、どうにかしてこいよ!」

「土産楽しみにしてるわね!」

「誰が狐娘よ」

 

 腕を組み仁王立ちの覇鬼とにこやかに手を振る眠鬼は、笑顔で見送られ地獄へと帰っていった。悲壮感はなく、明るい未来が来るのを感じさせた。

 

「さあ、横島くん達を見送りに行くか」

「昼の電車に乗るってさ。疲れが溜まってたからゆっくり寝てから行くって言ってたけど」

「だったら一日くらい遊んでいけばいいのにな」

「別の場所の応援に行くって言ってたわよ。忙しいのね」

「夏は霊障が多いからな。かくいう俺もまだあっちに残している仕事があるし」

「え、ぬ~べ~もう帰っちゃうの!?」

「いや、童守小の先生や元五年三組のみんなに会う時間くらいはあるさ」

「昨日のうちにみんなに連絡しといたからね。横島さんたち見送ったら学校に行くわよ!」

 

 

 

 

 

 一方そのころ、件の横島たちはと言うと、

 

「こんにちわ、僕横島って言います!」

「(無視)」

「ランチでもいかがですか」

「立ち食いそばでも食べてれば?」

「あなたとの出会いに感謝します」

「鏡見て言いなさいよ」

 

 訂正。横島はというとナンパをしていた。振られても振られてもめげずに次へと行く様は駅前だけあってティッシュ配りの様であった。

 ピートとタイガーは離れた場所で知らない人のフリをして、昨夜約束した鵺野達の見送りを待っていた。

 ほぼ200%ないことだが、仮にナンパが成功したら約束を破ることになるのだが、それについてどう思っているのだか。

 そんな横島は現在、水色のショートカットのスタイルの良い同年代の美少女をナンパしていた。

 

「ここで会ったのも何かの縁。お昼ごはんでもいかがですか?」

「えっと、その、ごめんなさい。私、人妻なので」

「ええっ、その若さで!?」

「はい。夫を待っているんです」

「ほえー、そりゃ失礼しました」

 

 断られて怨嗟の声を上げることは多々あれど、誠実に断ってくる女性にまで暴言を吐くことはない横島だった。

 ただ、一つ気になったことがあった。

 

「あー、違ってたらすんません。あなた、もしかして雪女?」

「えっ、わかるんですか!?」

「やっぱそっか。前に氷漬けにされた奴と似ても似つかないけど、何となく雰囲気が」

「氷漬けって、よく生きてましたね。あなた退魔士の方?」

「退魔士っていうか、ゴーストスイーパーだけど」

「ひょっとして、横島さんってあなた?」

「へ? 何で俺の名を?」

「ピートさんやタイガーさんって感じじゃないし。あ、夫から聞いたんです」

「夫って、もしかして」

 

 話が弾んでいる様子の二人に驚愕するピートとタイガーが見守る中、見送りに来た鵺野ら一行が到着していた。

 

「あ、横島さんいた、けど、あれゆきめさん?」

「ゆきめもこっちに向かってたから駅に迎えに行く予定だったんだが、偶然だな」

「あ、やばいよぬ~べ~。横島さん、ゆきめさんナンパしてる」

「やばいって何でだ? ゆきめがナンパについてくわけないだろ」

「呪われますよ」

「何でだ!?」

「横島さんならやりそうだな」

 

 聞き覚えのある声に振り向く横島。一緒にいた女性が鵺野先生へと嬉しそうに手を振る。

 

(人妻、夫を待っている、嬉しそうにしている。つまり、この美少女は鵺野先生の奥さん? 年の差婚? 淫行教師?)

 

 思考が明後日の方向へ飛ぶ横島が鵺野の元へと歩み寄る。尋常でない雰囲気に郷子と美樹が前に出ようとするが、鵺野自身に止められる。

 そして、容易に殴りかかれそうな距離で相対する。

 

「鵺野先生、あの子奥さんってマジっすか?」

「あ、ああ。ゆきめから聞いたのか。本当だ」

「あの子、雪女ですよね」

「ああ。紆余曲折あったが、籍を入れているよ」

「そっスか」

 

 俯く横島の表情は鵺野からは伺えないので、郷子らはハラハラしていた。妙な雰囲気を察し近づいていたピートらもすぐに動ける態勢でいた。

 しかし、ボリボリと頭をかき、顔を上げた横島の顔は笑顔だった。

 

「人間と妖怪じゃ大変なことあると思いますけど、頑張ってください」

「……横島くん、君も……いや、そうだな。ありがとう。それと、本当に世話になった」

「いや、こっちこそ」

 

 横島の表情に何かを察した鵺野だが、深くを語らず、手を差し出す。それに応じる横島。にこやかに見守る面々。

 クロスオーバーの主人公同士の握手のようで、大団円の締めにふさわしい絵面である。

 だが、

 

「だけど、」

「むっ?」

 

 段々と力が強くなっていく握手に顔を潜める鵺野。周りで見ていた広らも横島の様子がおかしくなっていくのを感じていた。

 

「あの子おキヌちゃんと同い年くらいじゃねえか! このロリコン教師! 奥さんに先生って呼ばせてんのかよ、マニアック趣味か!」

「おキヌちゃんて誰だ!? そこらへんはもう言われ慣れてる! というか、人の妻をナンパしないでくれ!」

 

 そして始まる取っ組み合い。だああっとこける面々。

 

「ちょっと! なんでいい感じに終わりそうだったのにケンカになるのよ!」

「こうなる予感はしてたけどな」

「いいぞー、やれやれーっ!」

「煽らないでくださいよ。まったくもう」

「横島さーん、そろそろ電車の時間ですジャ」

「やれやれ、やはり似た者同士ですね」

「すかしてんじゃないわよ。あんたも止めなさいよ」

「貴様は昨日の猟奇殺人鬼か!」

「あ、昨日のお巡りさんだ」

「鵺野先生に何するんですかーっ!」

 

 こうして、童守町を襲った一連の霊障は終わりを告げた。

 だが、世の中にはまだまだ人に仇成す悪霊、妖怪がたくさんいる。

 人々の平穏な生活を守るため、愛と平和を守るため。

 戦え横島忠夫。戦えぬ~べ~。

 氷漬けになっている場合ではないぞ。

 

 

 

 

 




 というわけで、夏休みアニメフェスタ、地獄先生ぬ~べ~VSGS美神をお送りしました。
 以前の後書きで言った通り、当初は横島の同級生が夏期講習で通った塾がオカルト団体でトラブルがあり、HAUNTEDじゃんくしょんの聖徒会と横島、ピート、タイガーで解決する話でした。

 忘れてたので追記
 書いてる間に色々あって凍結。そこからNEOがあってやべぇダダ被りじゃんとマンガ喫茶で一気読みして補正して投稿。
 当初は覇鬼が左手置いてく展開でした。
 本当はタマモのことを玉藻先生に話して興味持たれて後々玉藻先生GSに出張とか考えたんですけど、本編はGSのみにしとこうと思ってやめました。
 今後はそれぞれの夏休みからの強化、遺産事件の終結に向けて進みます。
 遅筆ですが、今後もSTEPbySTEPをどうぞよろしく。
 じゃあまた。
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