GS横島 Step by step   作:カシム0

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 エピローグ。
 年内に間に合った!
 ちょっと短いですが、どうぞ。


第十九話 妹なのだから助けるわ

 

 

 

 

 

 蛇龍の姿は影も形もなく、事の発端を考えると隠形して逃げている可能性もあるだろう。しかし、落ちていた遺産が撃破を示していた。

 

「雪之丞、あのフード野郎まで倒せたと思うか?」

「いんや。ああいうのはしつこいってのが相場だし、あいつを殴った手応えがなかった」

「だよなー」

 

 黒幕ないしその一味は逃がしてしまったが、持っていかれたものはないのだし、勝利と言っていいだろう。

 横島は遺産を拾うが何の遺産かはわからない。

 まだ回収されていない遺産は『変質』、『蒸留』、『接続』の三つ。今回の事件に関係していそうな能力とはどれも少し違う気もするが、毎度のごとく改造されているのだとすればどれでも当てはまるだろうから、考えるだけ無駄である。

 

「坊や、雪之丞。ボスたちに連絡ついたわよ。三十分後に迎えのヘリが来るってさ」

「おーう」

 

 特注の無線で美智恵らに連絡をしていた勘九郎が

陰念に目線を送る。

 

「それまでに身の振り方考えときなさいよ?」

「わかってるよ」

 

 陰念はこのまま白龍会の復興を目指すか、雪之丞らと共にオカルトGメンのお膝元で活動するかの二択を迫られていた。

 すでに袂を分かった雪之丞は元より、勘九郎も白龍会には昔世話になった場所以上の思いはない。そのため復興に手を貸すつもりはなく、やる気があるならオカルトGメンでの活動に推薦してもいいとは思っている。

 深い思い入れはなくとも、このまま魔族に操られた愚かな組織として歴史の闇に消えさせたくはない。しかしこのまま寺で一人修行して何かをなし得られるのか。

 現実問題、金銭にも限界があるし、一人での修行より兄弟子に稽古をつけてもらえるほうが効率がいい。

 どうしたものか━━

 

「陰念。お前の葛藤とか興味ないから好きにしろよ」

「な、てめえ横島! 言うに事欠いて」

「あ、俺もな。来るならちったあ面倒見てやるけど、好きにしろよ」

「雪之丞、この野郎。少なくともお前らが食い漁った飯代ぐらいは請求してやんぞ!」

「あら冷たいのね二人とも。陰念、あたしのおウチに……来る? ンフ」

「ぜってえ行かねえ! けどヘリには乗る」

 

 勢いのまま同行を求めた陰念は荷物をまとめにお堂へかった。陰念がどちらを選んでもどうでもいいのは事実だが、ウジウジしているより話は早いほうがよい。

 そして、残った問題はといえば

 

 

 

 

 蛇龍から引っこ抜かれた影響か、四肢に異常はないもののうまく動けず、また、裸のままでいさせるのは色々な意味でまずいと意見が一致し、お堂に唯一あった清潔な布を纏う美女がいる。

 横島が蛇龍から救い出した、メドーサとメデューサの霊基を持つ女性である。“分”断するにあたり、メドーサとメデューサにも分けられないか試したものの、双方の霊基が似ていたため、結局合成する形でしか救い出せなかった。分類するならば魔族ということになるのだろうか。

 その美女は、横島の知るメドーサよりも穏やかな瞳で、しかし幾度となく横島や美神を苦しめた女傑の面影を持っている。

 姉妹の再会だと言うのに、ステンノやエウリュアレの言葉に応じず、美女は言葉を発せず黙り込んでいた。

 重い空気の中、横島は我感せずとスタスタ近づいていった。

 

「なあステンノ、エウリュアレ。こちらさんなんて呼んだらいいと思う?」

『あなたね。最初に聞くのがそれ?』

空気(くーき)読みなさいよ』

「いや、放っとこうかと思ったけど時間制限できちゃったんでな」

 

 横島があと少しで迎えが到着することを告げる。さすがにワルキューレたちの命運がかかっている以上、ステンノとエウリュアレに美女を連れて行かせるわけにはいかない。

 復活後の立ち位置やら行動指針など、あれやこれやは早めに済ませておいたほうがいいのだ。

 横島は美女に視線をやるが。美女はそっぽを向く。

 

「んじゃ勝手にメドゥーサって呼ぶぞ?」

「……好きに呼びなさいよ」

「お前って自分の意識的にどっちが強いんだ? メドーサとメデューサ、もしくはどっちでもないのか」

 

 せっかく助けたのだから、消化不良で別れ別れなどもったいなさすぎる。

 というわけで、勝手ながら仲立ちを買って出たのである。

 

「その中なら、どっちでもない。……横島、美神……そして勘九郎、雪之丞、陰念。名前もわかるし、あんたに殺された記憶もある」

「お、おう」

「でも、姉さまたちと過ごした記憶も、ある」

『あら、そうなの?』

正直(しょーじき)忘れられててもおかしくないと思っていたけど』

『嬉しい誤算というのかしらね』

「っ、何でよ!」

 

 不意にメドゥーサが感情を爆発させたかのように叫ぶ。

 

「記憶はあるけど、別の人を見ているみたいで実感なんかないし! そもそも転生してるんだから、あんたらと血の繋がりなんかないでしょ!」

 

 吠えるメドゥーサに、ステンノとエウリュアレは優しく笑みを浮かべたままである。

 ふと、横島は姉というより母ではないかと印象を受けた。

 

『知ってるわよ、そんなこと』

「だったら何で……人界にまで来て、変なやつに襲われてまで、なんであたしを助けるのよ!」

 

 苦しそうに、吐き出すように吐露する。泣き出しそうな、というより涙はなくとも泣いているのだろう。自分のために危ないことをしてまで迎えに来てくれた。嬉しくもあり申し訳なくもあり、しかし、その対象は正確には自分ではない。

 

『私たちの妹は()()()()()()()()()(いもーと)が辛い目にあっているなら、助けるわよ』

「わたしは、あなたたちの妹じゃない」

『うーん、正直(しょーじき)そこら辺はどーでもいいのよ』

「え?」

『メデューサでもメドーサでもメドゥーサでも、生死問わず妹なのだから助けるわ』

「妹大好きお姉ちゃんだもんな」

『その通り(とーり)よ!』

 

 

 この場の誰よりも小さくて、しかし態度は最上級な妹のことが大好きな次女神エウリュアレは、誰に恥じることなくそう言ってのけた。

 

「何だよ、それ……私は、助けてくれなんて」

『知らないわよ。私が助けたいのだから、黙って助けられときなさい』

 

 どこまでも尊大にして高慢、優雅で上品で、そして妹のことが大好き。姉であり母でもある女神ステンノは、髪をかきながし言い放った。

 ツンデレのツの字もない、ただ無償の愛がここにはあった。

 

「私は……姉さまたちのことを、覚えているけど実感はない」

『そのようね』

「それでも、私を愛しているの?」

『当たり前でしょ』

「……そっか」

 

 メドゥーサはそう言うと、目線をそらし小さく呟く。

 しかし、感謝の言葉は聞こえていた横島等は笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 そしてヘリが到着する。

 つまり、再会した姉妹の別れである。 

 

「来ちゃったな」

『そーね。私たちもそろそろ限界みたい』

 

 エウリュアレの言葉に横島が見やると、エウリュアレの身体から粒子が吹き出していた。人界での端末の限界が来ていた。

 

「お別れか」

『お礼しなきゃね』

「お、そうだな! それ目当てで頑張ったんだからな!」

 

 横島は餌を前に待てをされた犬のごとく、尻尾を振って非常に情けない正座をする。エウリュアレは苦笑しつつ、

 

『もっと余裕(よゆー)持ちなさいよね』

 

 人形大から成人の姿に変身し、横島の腕を豊満な胸ではさみ、頬に口づけた。

 

「お、おおっ! ここまでしてくれるとは」

『おまけよ。本当の姿で会えたら、もっといいことしてあげる』

「マジか。今からでも魔族になろうか……いやいや」

 

 耳元で囁かれた言葉に鼻の下が伸びていく横島。眼の前にある誘惑に決心が崩れそうになってしまう。もし小竜姫がこの場にいたら呆れ果てることだろう。

 そんな横島に、今度はステンノが膝の上に乗り、もたれかかって、

 

『甘いわねエウリュアレ。上書きしてあげるわ』

 

 首に手を回し唇を合わせる。

 胸板に押し付けられるとにかく柔らかいもの、膝の上に柔らかいもの、舐るような情熱的な口づけ。

 一気に血があらゆるところへ周り回って、

 

『クス、この先はまた今度、ね』

『あーお(ねー)さまったら、ひどーい』

『後の先というのよ、覚えておきなさい。それじゃ、()()()横島、メドゥーサ』

『もー! またいつか会いましょうね!』

 

 美女が粒子と化して天に登る。幻想的な光景を見送る横島は目に入っていたが、フリーズしていた。

 そして、雪之丞らに、迎えに来た美智恵と西条。そしてメドゥーサ。

 

「美神の旦那とおキヌに言ってやろうか、武士の情けか」

「モテモテねぇ。カッコよかったし、ちょっとつまみたくなっちゃったわ」

「けっ」

「あの子の人外たらしっぷりは先が思いやられるわ」

「令子ちゃんにはちゃんと伝えておくよ。ククク」

「あれ、私も横島と……私の方が先に、うっ、頭が」

 

 横島は正座したまま地面に倒れ伏したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 肉々しい壁に囲われた一室。何らかの液体に満ちた巨大な試験管、培養槽というのが正しいか。

 まるでSF小説に出てくる悪の研究所で、フード男は遺産を台の上に置く。

 

『依頼の品だ』

「おお、記録はできているかな?」

『無論。ただその他は全て持っていかれたがな』

「構わん構わん。既に解析済みの中古品だ。デカブツを持ってこられても置いとけんし」

 

 フード男に背を向けたまま、老人が応える。不遜この上ないが、フード男は慣れたもので気にしない。

 

「そういや、戦闘になったのか?」

『記録完了前にGSどもに嗅ぎつけられたのでな』

「消耗しとらんか? 合成魂ならあるが」

『不要だ』

「さよか。次は同時に発生するが」

『心配無用だ』

「持ってくるのは二つまとめてで構わんよ」

『了解した』

 

 言って、フード男は姿を消す。立ち去るではなく、その場で空に溶けるように消えていった。

 

「さて、後は狼と冥界の巫女、いや、女神か」

 

 老人は自らの研究の成果に思いを馳せる。堪えきれない歓喜が溢れ出てくる。

 

「これが完成すれば……ククク、ハーッハッハ! ゲホゲホッ」

 

 高笑いから咽てしまい、水を飲む。オールバックを撫でつけ、邪悪に笑みを浮かべるのだった。

 

「ククク、待ち遠しいのお」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 本年中は遅筆な拙作にお付き合いくださりありがとうございます。
 以下言い訳タイム。
 プロットを作っているのに書きながら方向がずらていってしまう。
 筆が乗っていても詰まると書けなくなる。
 他の作品に手を出す。
 読者の皆さんにはどうでもいいことですね、はい。
 来年も本作をよろしくお願いします。
 じゃあまた。
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