あまり知られていないかもしれませんが、少年陰陽師というとても面白い作品があります。
もし読んだことがない人は原作を一巻でいいから読んでからこれを読む事をお勧めします。
そして原作好きの皆さん、こんにちは!
なるべくキャラ崩壊がないように頑張ります!
第1話
秋の野原に、淡い色の髪と目をした17、8の少年が一人。否、もう青年と呼ぶべきだろうか。
「ニャンコ先生ー、どこだー?」
小さい頃から、変なものを見た。
他の人には見えないらしいそれらはおそらく、妖と呼ばれるものの類。
祖母、夏目レイコも妖をその目に映していたという。彼女がいびり負かした妖の名前を集め、決して逆らえないようにした契約書の束、友人帳。今は夏目が持ち、妖達に名を返して回っている。
「おーい、ニャンコ先生ー、どこ行ったんだ?そろそろ帰るぞ…ってうわっ⁉︎」
地面の感覚が急になくなった。暗い。頭上の光がみるみる小さくなっていく。
「うわぁぁぁぁぁぁぁあ………!」
どこまで落ちていくんだ?
そんな疑問を抱いた時、体に衝撃が走った。
「…め、夏目…きろ!おい、夏目!」
目の前にあったのは、見慣れたブサにゃんこの顔。
はっと、何が起きたのかを思い出す。そうだ、穴に落ちて、それから…
「全く、世話をかけさせおって…。お前、気絶しておったのだぞ。何があった?」
「ああ、先生を探していたら穴に落ちて…その後は分からない。」
って。
「待て待て待て待て、何で先生までここにいるんだ?どっか行ってたよな?」
「阿呆。」
先生は呆れたように言う。
「もっと重要な事があるだろう。穴に落ちてどうしてこんなところにいるのか。」
まあ________とにゃんこは続けた。
「私も落ちたんだがな。」
******
「…で?ここはどこなんだ?」
夏目がひとしきり爆笑し、ニャンコ先生に猫パンチを食らわせられた後_2人…いや1人と1匹(?)は取り敢えず現状把握をする、という事を決めた。そして、森を抜けた所にあった開けた高台から、下を見下ろしていた。そこで、冒頭の台詞だ。
…見えた景色はどう考えてもおかしかった。巨大な___50mはあるだろう幅の、見渡す限り続く何もない土地。その端にはこれまた巨大な、屋敷と呼ぶのが相応しい建物が並んでいる。そのくせ作りがお粗末に過ぎて、木造の建物しかなかった。遠くに見える歩行者は小さくて見えにくいが、どうやら一人の例外もなく、皆着物を着ているようだった。
_____どう見ても、おかしい。
「先生、ここって日本だよな?」
「…これは。」
先生の様子がおかしい。まるで__そう、信じ難い事があったかのようだった。
「先生?どうしたんだ?何か…」
「…此処は、」
ニャンコの癖に重々しく口を開いた先生は、衝撃の言葉を口にした。
「此処は京の都、恐らく__平安時代中期、藤原道長の時代だ。」
…え?
「はああああああーーーー⁉︎」
******
「平安時代ってこんなんだったんだな…もっとなんか…優雅だと思ってた。」
都の北の入口にあたり、先程見た広い空き地___朱雀大路という、都の真ん中を南北に走る道___の端に出る事ができる門、羅城門(と、先生は言っていた)から京都に入る。羅城門は屋根が青緑、柱が朱色の荘厳な__小学校の時の修学旅行で行った日光東照宮のような雰囲気の漂う佇まいで、嫌が応にも夏目に、平安の優雅な都を期待させた。
…しかし、実際は。
「いや、確かに建物は羅城門?だっけ?とおんなじような感じで結構凄いけど…なんか土にそのまま建物の柱が刺さってるし、道端は草ボウボウだし…」
大きな水溜りがあり、更に蚊が湧いている。夏目は既に10ヶ所以上刺されているだろう。何より…
「なんか妖が多くないか、先生?」
「まぁな。」
そうなのだ。ここ京は、人々の念が多く集まる場所だ。おまけに外からの妖が入ってこられないようにした際、元々この場所にいた妖が出られなくなってしまったため、更に妖は多い。
ときに。
「夏目お前、相当悪目立ちしていることに気づいているか?」
「えっ?」
確かに。洋服を着ている上、ニャンコ先生と喋っているのは普通の人には見る事ができないため、周りを歩く人々には夏目がぶつぶつと独り言を呟いているように見えるのだった。避けられるのは自明の理だ。夏目もそんな奴には近寄りたくない。
「そうか……取り敢えず服を調達しなきゃな。…といっても金がないのか。平安時代の貨幣って何だっけ?」
「阿呆。歴史の授業で習わなかったのか?あのな、この時代にはまだ物々交換が成立していたんだぞ。」
「へぇー…つまり、なんかと引き換えに着物を手に入れればいいってことか。…でも俺、平安時代で交換できるようなものは持ってないぞ?カバンはこの時代にはないだろうし…スマートフォンもだめだろうし…うーん後は制服と着物を交換する位しか…」
「阿呆、ないなら盗めばいいだろうが。」
「いやいや先生それはだめだろう。さすがにいくらお巡りさんとかがいないといってもだなぁ、知ってるか、ものを盗んではいけないんだぞ、先生。」
「いいではないか。平安時代なんてそんなものだ。不用心だったなら、盗まれても文句は言えないぞ。何なら私が盗んでこようか。私は猫だから、何か盗んでも求められることはないからな。それならお前の倫理観にも抵触しないだろう?」
これに関しては先生の言う通りだった。が、流石にものを盗むのは良くない。それは確かだ。というか当たり前だ。常識以前の問題だ。人間としての最低限のマナーと言っても過言ではない。
「ではどうするのだ?このままの格好でずっとうろつくわけにもいくまい。帰る方法を見つけなければならないし、たとえ妖に聞いてわかるとしても、隠れ家は必要だ。食事も調達しなくてはならないし、なんにしても金が必要だ。それかどこかでかくまってもらうか。それが不可能ならどこかから盗むしか。そうだな、盗賊にでもなるか?」
「待てよ、先生!」
夏目は思う。
「ここの人たちにも、ここの人たちの生活があるんだ。…本来なら、俺達が異物で。だから、ダメなんだ。___迷惑をかけちゃ。」
例えば、俺を拾ってくれた、心優しい藤原夫妻に、知らない奴が、どこかからやってきた奴が危害を加えたら__俺はきっとそいつを赦さない。赦せない。
「多分、そう言う事なんだ。信頼っていうのは。」
「ふん。」
ニャンコ先生はきっと、またこう言うのだろう。きっと、俺のわがままに過ぎないのかもしれない言葉に。
「お前は相変わらずお人好しだな。___仕方あるまい、どこか泊まれる所を探すぞ。」
うん、ニャンコ先生はいいニャンコかもしれない。
******
はあ、はあ、はあっ…
「ニャンコ先生、こっちで合ってるんだよな?」
「合っている筈だ。こちらからさっきの妖の匂いがする。」
妖に友人帳を奪われた。
ニャンコ先生が付いていながらあまりにも酷い、とどこか他人事のように思う。
友人帳を奪った妖は狼に似ていた。金色に輝く毛並みに、額に生えた一本の角、そして異様なのは、八本の足。
ふと鞄が軽くなった、と思って振り返ると、そこにあの妖がいたのだった。
「しかし、何で友人帳を…この時代は誰も知らないはず…だよな?」
それの返答は、酷く嫌なものだと、聞くと同時にわかってしまった。
「ここに私達を連れてきた奴がいるはずだ。そいつの差し金か何かだろうな。あるいはあれがそいつ自身か。」
つまりは、そいつは私達を1000年以上の昔に飛ばすだけの力があるという事だ、とニャンコ先生は言った。
******
ズシャッ。
誰かに曲がり角でぶつかる。
「うわ、ごめんなさい…大丈夫ですか?」
「ああ、うん、大丈夫。」
こういう時は、美少女とぶつかるのがお約束なはずだった。けれどその人は。
変な生き物を連れた、小柄な少年だった。
続く
お読み頂きありがとうございます。
続いて第2話。
第2話までは書きだめしてあるんですけどね…