転生して大魔導師になった男がTS転生して奴隷メイドになる話   作:息抜き用@匿名希望

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序章
プロローグ1(説明回)


「うわああぁぁああぁ!!仕事がぁ終わらんっ!!」

 

 このみっともなく喚き散らす男、何を隠そう転生者である。

 

「儂だって、儂だってぇ!魔法の研究が、したいのじゃぁっ!!」

 

 そして世界最高峰の魔法使いであり、この都市国家フェルミの国王でもある。

 

 

 

 

 

 

 何故この様な状況になったのか説明しよう。

 

 そもそもこの男、前世では平和な日本のごく普通の家庭に産まれた一般人であった。

 ただ男の家の近くにはサブカルチャーを取り扱う店が多くあり、物心がついたときにそれらは身体の一部になっていた。

 そのなかで大部分を占めていたのは魔法や竜といった超常のものが存在する世界を旅するファンタジーもの、そして宇宙や平行世界等を旅する未来の世を描いたサイエンスフィクションである。

 そういった文化にどっぷり浸かりつつ自らの知らない世界や技術に空想し男の小学生時代は過ぎていった。

 

 そして出会ってしまったのだ、空想を科学する読本に。

 如何せん時期が悪かった。中学二年生、所謂厨二病が発症する時期である。

 そして男は物語は物語として楽しみつつ、それとは別にその世界の法則を解析して楽しむという面倒臭い存在に成り果てたのだった。

 

 そのまま男は矯正されることもなく中学校、高校を卒業し、そのまま理系大学へと進んだ。

 科学から物理、物理から量子論、そして数学へと男の興味は尽きることなく、卒業論文もそれらを用いたものだった。

 そして卒論を書き上げ、提出した帰りに転生トラックによって地球の輪廻から弾き出されたのだった。

 

 

 

 男が転生したのは勇者や魔王、竜や魔法、冒険者ギルドといったものが存在する、日本人向けにローカライズされたこてこてのRPG型ファンタジー異世界だった。

 

 男はその世界に産まれて直ぐに両親に捨てられ、冒険者ギルドが経営する孤児院で幼少期を過ごすことになった。

 名も貰えなかった男はたまたま孤児院を視察に来ていたその地区のギルド支部長によってアルスヴェインと名付けられた。仰々しいが響きだが、かつて魔王を討伐し世界に平和をもたらした勇者の名にあやかったものらしい。

 

 男は生まれ変わり、両親に捨てられるという境遇にあって冷静だった。

 燃え尽き症候群というものだろう。

 自分の好きなことに全力で取り組み、卒論という形を遺すものを書き上げたので思い残す事は何も無く、現世に留まるはずも無い。

 

 しかし男はアルスヴェインとして生を受け、ある存在と邂逅することになる。そう、魔法だ。

 

 アルスヴェインは狂喜乱舞した。

 前世で夢にまで見た魔法だ。アルスヴェインはギルド所属の孤児としての立場を最大限に利用し魔法に関する情報を現役の冒険者やギルドが所有する書物から集めて回った。

 

 そして落胆した。

 この世界の魔法は全く体系化されておらず、それぞれの魔法が独立独歩の状況で基礎研究すらままならない状態だったのだ。

 

 現役の魔法使いに聞いても

「理論?なんだそりゃ?魔法ってのはこう、燃えろーって思って、ふんっ!てやればできるもんだろ」

 等といったフワッとしたイメージでもって行われていた。

 

 その時アルスヴェインはこう思ったという。

 駄目だこいつら…早くなんとかしないと…。

 アルスヴェインは前世の時から論理的では無いものが大の苦手であった。

 止めておけば良いものを、ファンタジーの代表格であり憧れでもあった魔法と、この世界の定義されていない曖昧な魔法との差に耐えられず全魔法の体系化に着手してしまったのだ。

 

 理想は誰が行っても同じ条件で同じ工程をたどれば同じ結果が発現する魔法で、尚且つ論理的に説明できて他の魔法と理論に矛盾が無い体系化されたものだ。

 

 男の長く険しい道のりの始まりだった。

 

 

 

 先ずアルスヴェインはそれぞれの魔法の発現までの工程を調べあげ数式化した。

 そしてそれらの数式をの間違いを関数でもって洗い出し、矛盾を無くしていった。

 偉い人は言いました、基礎なくして応用発展はあり得ない、と。

 

 アルスヴェインは途方もない工程を病的なまでの熱意でもって推し進めた。そして数十年後、冒険者として第一線に立つ頃にはほぼ全ての魔法を1つの理論、数式でもって矛盾なく説明できるまでになっていた。

 ついでに未発見の素粒子であったマナ(アルスヴェインにとって馴染み深い名前をつけた)を数式上で予測し、実際に発見、観測までしている。

 

 ここまで来るとただのクレイジー魔法バカである。

 

 

 そんなアルスヴェインを周囲は変人として見ていたが特に害は無く、街の冒険者としても役立っていたため特に問題は起こらなかった。

 ただ、アルスヴェインが提唱した理論を理解できる者はおらず、理解しようとする者もまた、いなかった。

 

 

 そんな異端者であったアルスヴェインは基礎を固めた事で発展へと手を伸ばす。

 前世のサブカルで出てきた技の再現である。

 好き勝手に研究したいがために辺境へと移り住んだアルスヴェイン、先ず再現したのはどこぞの弓兵で英雄の王様である金ぴか野郎の技である。

 その為だけに収納魔法を産み出し、空間魔法という新たな魔法体系をぶち建てた。

 射出する武器もただの鋼の剣では味気なく威力も足りないと魔法を用いた物造りであり、新たな技術体系でもある錬金術を産み出し魔法の剣や擬似的な宝具等を造り出した。

 

 この男、やり過ぎである。

 

 

 魔法の武具といった形の残る結果を目にした周囲の人間も流石に男の非凡さに気付いた様で、アルスヴェインの周りには志を同じくする者達が集まり始めた。数少ない理論派魔法使い達だ。

 アルスヴェインは魔法の神秘に取り憑かれ、魔法の深淵を探求する自らと同類を快く受け入れ、教化していった。

 

 いつしかアルスヴェインが住み着いた辺境の地は魔法使いの住まう街となり、魔法を研究する最先端の街へとなっていた。

 そして人が多く集まればどうなるか?答えは争いである。

 神秘の探求者等と言えば聞えは良いがその実ただの自己中の世捨て人である。魔法、特に自らの研究分野にしか興味を示さず他人などどうでもいいと考えている奴等が集まったところでろくなことはない。

 そんな状況を産み出してしまったアルスヴェインはその罪悪感と責任感から街の魔法使いを管理するルールを造り施行した。

 それを契機としてあれよあれよという間に街の代表を押し付けられた。

 

 魔法使いが集い研鑽する街として有名になってしまった事で他国からの干渉を受ける事になる。支配下に収まれだのなんだのと。もし頷いてしまえば好きに研究など出来なくなるに決まっている。

 何年か前に傍迷惑な勇者様が魔王を倒してしまったせいで協力しあっていた国家間の同盟が失効し、世界的に不安定になっているのだ。そんな世情でどこぞの配下になろうものなら軍事研究を強制されるに決まっている。研究自体は吝かではないが強制されるのは言語道断である。

 魔法研究の独立性を保つために外交、交易を一手に担い、綱渡りをしている内に内外から国王と目される様になった。

 そんな状況でも自分以外の魔法使いどもは自らの研究に明け暮れ、協力など何もなかった。

 

 

 そうして産み出されたのが最初の叫びである。

 




書いてて思い出したけどどっかで同じ様な設定のネット小説読んだことあるわ。何年も前に。やっぱデジャブかもしれない。

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