転生して大魔導師になった男がTS転生して奴隷メイドになる話   作:息抜き用@匿名希望

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4話 馬車に揺られて

 ドナドナドーナードーナー

 

 

 ―――うむ、やはりこの歌、一度位は口ずさんでみたくなる。

 対象が自分でさえなければの…。

 

 まぁ、乗っているのは荷馬車などではなく、美しく磨かれた木目と黒を基調としたシックな高級馬車だ。キャリッジと言うんだっけか?偏見ではあるが貴族といえば豪華絢爛なイメージがあったが御主人様であるハーロルト・イルディアナ様はこういった落ち着きのあるものが好みのようだ。

 サスペンションが備わっているのか道が良いのか、もしくはその両方か、それなりの速度が出ているはずなのにあまり揺れない。座席の座り心地も良く、リアの薄い尻でも痛くなったりはしていない。

 

 前世で冒険者をやっていた頃は馬車の揺れに慣れるまで大変だった…。いざ目的地に着いても長時間の旅で身体が思うように動かずクエストを失敗したり。若い頃は経験が全く無かったせいでむやみやたらと突っ走り色々な無茶をしたものだ…。

 

 御主人様もそういった経験をしたことがあるのだろうか?

 目の前で書類に目を通す領主としての姿に自分の国王時代が重なる。自分よりは幾分ましだろうが苦労話で盛り上がれそうだなぁ…。

 

 というかなんで同じ馬車の中で対面して座ることになったのか?日頃から綺麗にしているとはいえこの座席に座るのは場違い感があって少し緊張する。国王時代にもっと豪華な王座に座っていた記憶もあるのだが、ほとんど執務室に籠っていたせいでぶっちゃけどんな椅子だったかすら覚えていない。

 そもそもこの地域の領主様のはずなのに付人が少な過ぎじゃなかろうか?馬に乗った若手の騎手様一人に御者をしているセバスチャンだかアルフレッドだか執事っぽいのの二人だけ。自らが治める領地だとしても不用心だろう。まぁこの街自分みたいな子供が一人で歩いても大丈夫なくらい治安はいいけど…。

 そういった事実と自分がこの街を治めているっていう自負が有るからこそ出来るんだろうな。立派なもんだ。

 

 そうやってチラチラと御主人様を盗み見しているとそれに気付いたのか御主人が話しかけてきた。

 

「リア、大丈夫かい?疲れた様なら休息にするが」

「お気遣いありがとうございます。でも大丈夫です、これからの事を考えて少し緊張してしまっただけですので…」

 

 この人ホントに貴族なのだろうか?前世の貴族にはろくなやつがいなかったが、うちの御主人様は聖人かなにかなのだろうか。

 

「ふむ、確かにまだ詳しい話はしていなかったね。いい機会だし少し説明しようか」

 

 どうやら御主人様自らが詳しい話もしてくれるらしい。

 

「前にも言った通り君には私の息子であるアウレールの専属メイドとして働いてもらいたい。元々専属のメイドはいたのだが結婚することになり実家の方に返ってしまってね、代わりの者を探していたんだよ。歳は君より一つ上で10歳になる。君も息子もまだまだ子供だ、メイドとしてだけではなく友人としても息子を支えてやって欲しい」

 

 ふむ、要は子守り兼使用人といったところか。施設でも同年代以下の子供達の相手をしていたし特に問題はないだろう。やんちゃな子もいたが子供は嫌いじゃない。知らないことを知ろうとする純粋な知識欲は相手にしていて気持ちの良いものだった。

 御子息様も伯爵家の跡取りとしてそれなりの教育を受けているはず。他の貴族どもならともかくこの人の息子ならば大丈夫だろう。無理難題を吹っ掛けられたりたりはしないはずだ。

 

「それからまだ次男とその下に娘もいてね、そちらの方とも仲良くしてくれると助かるよ。外に出る機会をあまり作ってやれなかったせいか、どちらも他人との付き合い方をよく解ってないんだ。娘フィリーネはまだまだ幼い。成長すれば問題ないだろうが次男のディルクは少々やんちゃに育ってしまってね…。まぁ直接の雇用主は私だ、何が言われても気にせず叱ってやって欲しい」

 

 この人が言葉を濁す程とは…。次男坊はなかなか問題がありそうだ…。叱ってもよいと言付けをいただいたことだし、まぁ上手くやることとしよう。

 

「わかりました。精一杯やらせていただきます」

 

 

 

 少々早い門出になってしまったが、流石は貴族。給与もそれなりにあり、通常よりは早く自由になれそうだ。

 職場環境が良いようなら自由になった後も継続雇用して欲しいものだ。給与が全額支給されればまとまった金もできるし、それを元手に魔法の研究と洒落込みたい。

 前世と違い魔道具の有用性も周知されている。失敗作であっても市場に流すのは不味いだろう。それらを売って生計を立てようものなら面倒な事になりそうだ。

 前世の様に魔法研究の協同体を造るつもりはない。他から身を守るのには有用だろうがその運営のために魔法研究が出来なくなるというのは本末転倒だ。そもそもこの時代では協同体が大きくなる前に国から介入されそうで、余程上手くやらねばすぐさま囲い込まれてしまうだろう。

 といっても一度きりで効果が無くなるような物ならこの時代でも流通しているはずだ。魔剣の様な複雑なプロセスを踏むものならともかく使い捨ての御守りなら問題ないだろう。研究衝動は全く解消できそうにないがそういったもので小金を稼ぎつつやっていこうか。

 

 

 

 馬車が止まる。

 

「旦那様、屋敷に着きました」

 

 セバスチャン(仮)の声がして扉が開く。若干の眩しさに目を細めつつ外を見る。

 ここが、これから自分が生活する所…。目の前にある歴史を感じさせる宮殿を眺める。

 

「リア、手を出しなさい」

「…はい」

 

 何故か御主人様にエスコートされて馬車を降りる。

 

「先ずは顔合わせとして私の家族と会ってもらおうかな」

 

 その言葉に頷き、一歩を踏み出す。

 

 これから自分の新しい生活が始まるのだと、未来を思い描きながら。

 




主人公の口調がブレブレ過ぎてヤバい。

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