転生して大魔導師になった男がTS転生して奴隷メイドになる話   作:息抜き用@匿名希望

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5話 リア、メイドになる

 

 

 御主人様に連れられ玄関をくぐると広々とした玄関ホールがあった。高い天井にきらびやかなシャンデリア、正面には幅広の階段があり、そこにはめ込まれた大きな硝子窓からは中庭からの柔らかな光が差し込んでいる。

 美麗ながらもどこか神殿の様な厳かな雰囲気のある見事な造りだ。

 流石は歴史あるアーヴェルス王国の中でも初期から続いている伯爵家、下手な公爵や侯爵の屋敷よりも余程立派だ。

 イルディアナ家は昔から国に重用されおり、初期から変わらずにこの領地を治めて続けている。その領地運営の手腕は今の街を見ても明らかだ。長く安定した時代が続いたのだろう。大きく発展していながら道も効率的に張り巡らされており、市場等の重要な場所には広い道が通っており交通の不全からくる経済的ロスも少なくなっている。その経済規模はそこらの国の王都や首都にすら匹敵するだろう。

 何故未だに伯爵の地位に甘んじているのか、逆に謎でもある。

 

 そういった物事に思いを馳せながら惚けていると、ホールに控えていたメイド達の中から初老のメイドが進み出てきた。

 

「旦那様、お帰りなさいませ」

「あぁ、ただいま。この子が今日から働くことになるリアだ」

「リア、この人が家のメイド長をしているベネディクタだ。仕事の詳しい内容などはベネディクタに聞くといいだろう。挨拶を」

「初めまして、アルシュトリアといいます。リアとお呼びください」

 

 御主人様の言葉に続いてメイド長に自己紹介をする。

 一本芯の通っているかの様なその佇まい、歴戦の猛者の様な此方を見定めんとする鋭い眼光、柄にもなく少し緊張してしまう。

 

「……ふむ、まあいいでしょう。着いてきなさい」

「旦那様、奥様以外は皆様集まれる状況ではありません。この子の紹介は皆様が集まれる食事の時分がよろしいかと…。それまでにこの子の身なりも整えておきます」

「――確かにそれもそうだね、ベネディクタに任せるよ」

「リア、また後で」

 

 御主人様に深くお辞儀をした後、メイド長であるベネディクタの後ろに着いていく。

 後ろから見ていてもその確りとした姿勢とぶれることの無い足取りはメイドとしての矜持と年期を感じさせる。

 ……逆らったら怖そうだ。

 

「そうですね…先ずは貴女の部屋に案内しましょう。こちらです」

 

 表の顔である迎賓館を通り抜け奥の使用人用のエリアへと進んでいく。そこは流石に表と異なり装飾等は必要最低限で実用性を考えた造りになっていた。そのまま厨房や食堂、リネン室等を案内された後、使用人が寝泊まりするエリアの一室で足を止めた。

 

「この部屋が貴女の暮らす所になります。ここは相部屋で二人で一部屋を使っています。同室の者は今は仕事で出ていますのでまた後程紹介しましょう」

「貴女の仕事ですが先ずは同室の者に付いて共に作業しつつ一連の流れを覚えて下さい。一定の技術が身に付いたら、その後側仕えとしての仕事や身の振り方などの教育を受けてもらいます。何か質問はありますか?」

 

 想像していたものと大きな違いは無い。概ね想定通りだ。

 

「仕事については大丈夫です。…その、ベネディクタ様のことは何とお呼びすればいいですか?」

「それでしたらメイド長と呼んでください。皆もそう呼びます。あぁそれと、ハーロルト様のことは御主人様ではなく旦那様と呼ぶように。貴女の立場からいえばそれでよいのでしょうが、貴女もこのイルディアナ家のメイドの一員となったのです、呼び方は統一しておいた方が良いでしょう」

「はい、わかりましたメイド長」

「よろしい。では仕事着に着替えましょうか。着方は分かりますか?」

 

 そう言ってメイド長は部屋に備え付けられている簡素なクローゼットから一着のメイド服を取り出す。見た目はごく普通のメイド服だが特別に誂えたのか、過去に自分と同じ体型のメイドがいたのか、二次成長も始まっていない小さな子供の身体でも着れそうなサイズであった。

 けしてみすぼらしいわけでは無いが、貴族の館で働くには不足な簡素なワンピースを脱ぎ、受け取ったメイド服を身に纏う。

 所々でメイド長から指摘が入ったが、修正しつつ何とかまともな形に着こなすことができた。少し大きいだろうか、若干袖が余る。まぁ、これから成長することを考えれば態々直す程でもないか…。

 

「着付けですが慣れない内は同室の者に手伝ってもらうといいでしょう。決してみっともない格好で人前に出ないよう、注意するように」

「はい、わかりました」

 

 

「さて、そろそろ旦那様方がお食事を取られる時間ですね。貴女を紹介しますので着いてきてください」

 

 いつの間にか、かなりの時間が過ぎていた様だ。挨拶回りを兼ねた施設の案内で結構時間を使ってしまったのもあってか、外も大分暗くなってきている。

 これから御主人様、いや旦那様か…の家族に会うことになるのか。やはり初めての人と顔を会わせるのは緊張する。前世ではいくらでもその様な機会はあったし、なんなら会ってすぐに舌戦を始めた事すらあった。だが自らの始まりが日本人なこともあってか、良い悪いは置いておいて、役を演じる様に自身をその時々の型に当てはめて動いてしまう。

 何が言いたいかというと、国王を経験していたとしても今の自分の立場は奴隷であり、その慣れない条件下ではどうやっても不安になるということだ。

 

「準備はいいですね?」

「……はい!」

 

「では……」

「旦那様、リアの準備が整いました、紹介させていただいてもよろしいでしょうか?」

 

「あぁ、入って来てくれ」

 

 そうして大きな扉が開いていき、中の様子が見える様になっていく。

 リアは深呼吸をしてからその光景に向かって歩き始めた。

 

 




一家との対面まで進めたかったけど内容が思い浮かばなかったのでとりあえずここで切ります。

そういえば同じ人物が連続して喋る時に途中からその話相手が変わる場合や話題が変わった場合、以下の内どれが分かりやすいでしょうか?今は暫定でAを採用しています。

A
「☆☆☆」
「★★★」

B
「☆☆☆」「★★★」

C
「☆☆☆。―★★★」



最後になりましたが、誤字報告ありがとうございました。助かります。

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