悪役にされた俺の末路   作:盾長

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冬の雄叫び作戦(終盤戦)

 砲弾は西からやってきた。5両の殲滅にかかる勇者達もこの砲撃に気づき皆が西の方角に視線を向けた。西はとても複雑な地形が広がっており戦車の進撃を大きく妨害する。

 

 勇者の誰もが此処を突破してくるとは思ってもいない。現にその方角から大量の重戦車郡がやってきたとき、皆の顔は愕然としていた。

 

 この重戦車郡は常に前進を続けていた第一重戦車大隊100両。

 

 生き残った中戦車5両を葬ろうとしていた勇者は僅かに五人余りだ。

 

 

 

「ちょ、ちょっと! 向こうから大量の戦車が溢れてきているじゃない!」

「……へ? 西から?」

 

 

 

 赤と黄色の勇者が何か揉め事をしているようだ。思い込みほど恐ろしい物はない。

 

 しかし俺はただ歴史の真似事をしたに過ぎない。モデルとなったのはかつてナチスが実行した「赤色作戦」である。

 

 赤色作戦とは、「アンデヌスの森」を戦車で突破するために発動された有名な作戦である。フランスは突破できないであろうと確信していたがナチスはこれを突破。マジノ線を越えて最終的にフランスを降伏させたのだ。

 

 当時、赤色作戦で使用された戦車はⅠ号戦車やⅡ号戦車などの快速戦車が主体であった。だが今回は厚い装甲を纏った重戦車ティーガーが中軸となっている。

 

 

 

「な、なんじゃ!? あの複雑な地形から大量の重戦車が!?」

 

 

 

 電話越しでも伝わる神様の焦り具合。良い感じだ。

 

 一方、勇者達は前進する重戦車に接近し各々の武器で応戦しているようであるが、撃破できているのは精々2両から3両といったところであろう。

 

 ティーガーの前面装甲は大変分厚い。

 

 その前面装甲は110mm。側面と後面は80mmで覆われている。

 

 一番薄い装甲は上面と下面の20mmであるが此処を攻撃するのは至難の業であろう。

 

 ティーガーはあの複雑な地形でも20キロを出し突破した。これが整地になると最大で40キロの速度が出せる。

 

 複数のティーガーが整地に入り速度を次第に上げていく。

 

 全長8.45m、車体長6.316m、全幅3.705m、全高3m、重量57tのティーガー戦車隊がパンツァー・カイルを築き106平野を目指して速度を上げていく。

 

 勇者はこれになす術もなくひたすら退却を繰り返す。

 

 逃げる勇者にティーガーは主砲の56口径8.8 cm KwK 36 L/56を用いて追い討ちをかける。最大で92発放つ事が出来るこの重戦車はまさに希望の光と言えよう。

 

 今の彼らにはパンツァー・リートが良く似合う。

 

 勿論、この100両全てがティーガーとは限らない。主力であるティーガーが合計で60両。しかし残りの40両はソ連製戦車である。

 

 後続に続くソ連製戦車はあの有名な「IS-2」だ。

 

 全長9.90m、車体長6.77m、全幅3.09m、全高2.73m、重量46tの重戦車である。あだ名はスターリン重戦車。速度は37キロを誇る。

 

 前面装甲は100から120mmで側面90mmに後面60mmだ。主砲は122mm戦車砲D-25Tを用いるている。

 

 ソ連戦車にはロシアのカチューシャかモククワ防衛郡の歌が似合うであろう。それともソ連国歌か?

 

 ともあれ、2種類の重戦車は迫る勇者をたやすく追い払いほぼ無傷の状態で106平野に進出する。やっぱりこの二国の戦車は格が違いますわ。

 

 増援に何人かの勇者が追加されたが、やはりその前面装甲に敵うはずもなく敗走を重ねる。

 

 

 

「やっぱり戦車は固い! 重い! 強いの三拍子が揃ってないといかんのぉ! ハハハハ! この重戦車郡に敵う勇者など、もうこの世には居まい! ハハハハ!」

 

 

 

 突然の逆転劇に神様がついに壊れた。

 

 106平野はティーガーとスターリン重戦車で埋め尽くされ生き残ったT-34とシャーマン1両は同地域で健在だ。

 

 100両近くの戦車が10分間、円形状に陣を引き耐え抜いたため106平野はようやく陥落。ようやく俺の財布に10万円が舞い降りた。

 

 占拠後、戦いは局地戦的な物になった。

 

 あの日本刀らしき物を装備した青い勇者が現れる事もなく樹海化が解け俺はようやく、あの戦場から解放されたのだ。

 

 冬の雄叫び作戦はこうして成功と言う形で幕を下ろした。

 

 戦車の損失は極めて高かったものの主力である重戦車郡はほぼ無傷の形で終結を迎えたのであった。




 ーおまけー

「ハハハハハ! 勝ったぞ! 我が軍勢がとうとうあの勇者達を超えよったわい!」

 冬の雄叫び作戦以降、自称神様は人が変わったかのように狂い始めた。毎日のように電話をかけてきては「次の作戦はまだか?」と問い詰めてくる。

 空中艦隊の方は以前として再建の目処は立っていないが神様の戦意は日々上がりつつある。こんなに元気な老人は初めてみた。

「ハハハハハハ! 壇上よ! ワシは今、上機嫌じゃ! よって、壇上。貴様に陸上巡洋艦『ラーテ』の使用権を与えよう! ハハハハハハ!」

「要らねぇよ! そんなデカ物!」


 このような電話が毎日のようにかかってくる。生活は多少楽になったが新しい悩みの種が出来上がってしまった。

 俺はあの戦いで勝利しても良かったのであろうか。
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