悪役にされた俺の末路 作:盾長
左翼をひたすら前進していた戦車部隊は遂に勇者の先遣隊と接触した。突出してきた三人の勇者を迎え撃つのは20両のティーガー戦車重隊。先頭を行く3両のティーガーは本作戦の初戦を飾った。
ティーガーの正面装甲はおよそ100m。俺の勝手な予想では、この分厚い装甲によって彼女らの持つ武器は簡単に弾かれてしまうだろうと……慢心していた。
「戦車前進! パンツァーフォー!」
交戦開始の情報を得た俺は、左翼で戦う全戦車に対し前進を命じた。目標は神樹と呼ばれる巨大な樹木の一歩手前。そこを約20分占領し続ける事が出来れば此方の勝利となる。そのため今回は陸路と艦隊の空路で神樹を目指す。
青嵐作戦一番の難所はやはり陸路であろう。勇者との接敵が一番多く、その分損害も甚大になる。そのため、戦車の主力は装甲の固い重戦車が選ばれた。
速度の速い豆戦車も本作戦に参加予定であったが、貧弱なその装甲が参加を阻み断念した。豆戦車は……そうだな、陽動や裏工作。そして妨害や偵察ぐらいなら使えるだろう。だが、無駄死にはさせないぞ。
「壇上、勇者達の陣容だが……全員左翼に集中しているみたいだぞ?」
「……何?」
俺は高台から戦場を見渡すと、確かに爆煙の多くが左翼で揚がっている。中央や右翼の戦線には未だに戦闘の火蓋は切られていない。
これは……右翼の艦隊を前進させるチャンスなのでは……?
「おい神様、今艦隊を右翼から前進させて一路神樹に向かわせようと思うんだけど……どう思う?」
「それは壇上に任せるわ、戦術とか戦略とか全く知らないし」
「やっぱ神様より誰かロンメルかメッシを連れてきてくれ」
そんなやり取りを交えつつ、俺はおそるおそる艦隊を前に前進させた。一応、秘密兵器である小惑星郡が10個盾としてついている。
「……ダメじゃな。艦隊は側面から攻撃を受けておる。どうしたんじゃ、壇上、あの小惑星モドキ全く役に立っておらんぞ」
「クソッ、神樹は囮だったか。艦隊前面を左翼に向けろ! 応戦する!」
弓や槍のような攻撃が前へと進む艦隊を迫真の演技で妨害する。その損耗率は幸いにも10パーセント未満で済んだが、撃沈された艦は少なからず存在した。
戦艦トリオンファンや戦艦ナイルもそのうちの一隻。
撃沈数は総計で約6隻に及び被弾した艦は総計11隻。
が、幸いにもその殆どが小破で済んだ。全く耐久性を上げておいて良かったぜ。
「小惑星郡は艦隊正面に展開! 艦隊はその隙間から攻撃をしろ、出来るだけ弾幕を張るんだ!」
俺の指示通り、艦隊は小惑星郡の隙間から砲撃を開始し濃密な弾幕を形成した。その間、数十隻の巡洋艦を旗艦とした突撃部隊がひっそりと戦列を抜け神樹を目指す。
戦車部隊も自走砲や駆逐戦車の支援を受けつつ前へと進み、損害に躊躇する事なくひたすら前線の突破を目指した。
これに乗じて列車砲も無作為に砲撃を開始。敵の注意を逸らせる作戦に出て、小惑星郡も素早く展開した。
既に二つほど失っている小惑星郡だが、まだその壁は厚い。
「押せッ! そのまま押せッ! 目指すは神樹と呼ばれる巨大な樹木の占領だ!」
艦隊からこっそりと離脱した巡洋艦鞍馬を旗艦とした突撃部隊は、低空飛行にて一路神樹を目指した。
離脱できたのはこの鞍馬と随伴する突撃駆逐艦が僅かに7隻。
この8隻が無傷で神樹周辺を約20分占領する事が出来れば、俺の勝利は無事に確定し元の世界に帰還する事が出来る。
だが、俺は慢心しすぎた。
なにせ、その声が聞こえるまで俺は彼女達の存在に気がつかなかったのだから。
「見つけたぞ……大将……」
「……ゑ?」