悪役にされた俺の末路 作:盾長
グナイゼナウの砲撃が外れてから約30秒、俺はあれから青い勇者の日本刀を何とか交わしつつ、後方に展開する三隻の最新鋭戦艦と合流しようとしていた。
しかし……。
「させんッ!」
「なっ!?」
青い勇者は瞬きよりも速い速度で俺の背後に立ち、後方で展開する三隻のうち一隻をその長い日本刀で文字通り真っ二つにしてしまった。
戦艦ペンシルベニアは丁度、その中央部に日本刀で入れられた亀裂が入り爆発がそこから充満するように発生した。また、中央部には命とも言えるエンジンが添えつけられており爆発はさらにその勢いを増す。
ペンシルベニアは戦隊の左翼を担当していたが、その現場は炎に包まれ残りの二隻も動揺を隠せずに居る。
「クソッ……」
俺はつい三日前に就役した最新鋭艦の沈没を目の当たりにし、軽く舌打ちをした。神様曰く、ペンシルベニアの建造費は112万円に相当すると言う。
戦艦にしては意外と安い……やはり、その大きさが原因か。
「……しぶといな」
「ハハッ、それはお互い様だ、そっちこそそろそろ諦めて仲間の元に帰らないのか?」
「フン……笑わせるな」
一度刀を振り払ったかと思えば、再び俺に日本刀を向けた。銃の一つでもあれば応戦できたのだが、生憎今の俺にそんな護身用の武器はない。
武器らしい武器と言えば、この“21歳拳”だが正直目の前に居る女の子を殴りたくはない。出来る事なら自分の手に掛けず、後続で展開する二隻の戦艦で仕留める……もしくはご退場願いたい。
拳だって当るかどうかも分からないんだ。
「若葉ちゃーん!」
「……高嶋か」
「応援に来たよ……って人!?」
「……敵?」
しかも、状況は一気に一片した。“若葉”と呼ばれた勇者の奥からもう二人の勇者が応援にやってきたのだ。
一人は薄ピンク色の勇者服を身に纏った勇者。名前は“高嶋”と彼女たちの間で呼ばれている。
もう一人は赤紫色のような勇者服を身に纏ったクールぽいっ勇者。彼女の名前はまだ分からないが、彼女達の味方である事は一目瞭然だ。
対する此方は最新鋭戦艦二隻に俺一人。一応、奥に列車砲が控えているが近すぎて撃つ事が出来ない。
「君は一体何処から来たのー? 名前は?」
「……それは答える前提か?」
「へ?」
「……HE?」
何だこのやりとり。
「高嶋さん、彼は敵よ。現に、乃木さんと殺り合っているじゃない」
「そんな事ないよ郡ちゃん! だって、とても悪い人には見えないよ?」
「で……でも」
まさか高嶋と呼ばれている勇者は俺を味方だと勘違いしているのか?
後方で展開している二隻を無視して彼女は俺を味方だと断言しているのか? 天然か? それとも本気か?
だが、相手が本気と言うのならこちらとしては好都合だ。何せ、此処から離脱できるチャンスを窺えるからだ。
「ソウダヨ、オレハキミタチノミカタダヨ」
「じゃあ何故乃木さんと争っているの? 敵なら争う必要はないじゃない」
「ソレワネムコウカラ戦闘ヲシカケテキタンダヨ」
「……それは違うな。私達に攻撃を仕掛けてきたのはお前だ」
「ウゾダドンドコドーン!」
「なら……彼方は敵ね」
「ま、待つんだ! オホーツクババァ……いえお姐さん」
「斬る!」
弁明しよう、俺は焦ったあまり口を滑らせてしまった。あれはたまに発動してしまう滑舌の悪い俺がたまたま発した言葉であって……。
「斬るッ!」
「ぐ、郡ちゃん!?」
俺は、断じて悪くないんだーーー!
「危ないッ! 千影ッ!」
「郡ちゃん!!」
刹那、そんな俺のピンチを救うかのように何処からともなく緑色の長いビームが“千影”と呼ばれた勇者に真っ直ぐ吸い込まれるように突っ込んで行った。
それも一つではない。五つ程度のビームが同感覚で千影に迫った……が、反射神経が良いのかうち三発を華麗に交わした。
しかし、それでも残った二発は彼女を直撃しようとしていた。
だが間に割って入って来た若葉がその日本刀で残り二発のレーザービームを打ち払った。いや、その日本刀の耐久力はおかしいだろう。
「誰だ!?」
「若葉ちゃん! 郡ちゃん! あれを見て!」
「……あれは」
高嶋が言うように、俺は空を見上げた。
するとそこには、数え切れないほどの大群を率いてやってきた第三勢力の姿があった。それは彼女達が戦っていたと言うバーテックスではない。
緑色を白色を基調とし、そのデザインはとても独特な物だ。また、主砲に砲身はなく回転式でお皿のようにも見える。
地球艦隊でもないその第三勢力は、周る砲塔をさらに回して俺らに対し攻撃を仕掛けてきたのだった。