悪役にされた俺の末路   作:盾長

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青嵐作戦は次の局面へ

「高嶋さん! 今度はそっちに行ったわ!」

 

「へ? うわうわ、何か一杯来た!?」

 

「後続の二隻は上空に展開する多数の艦艇に対し砲撃を開始! 指示あるまで各個撃破に専念せよ!」

 

 

 ペンシルベニアを失った後続の二隻は俺の指示に従い、主砲の標準を三人の勇者達から上空に展開する第三勢力に切り替える。

 

 そして戦艦グナイゼナウ及び戦艦クイーン・エリザベスの二隻は上空の敵に対し前部の砲塔を用いて応戦した。

 

 グナイゼナウの主砲弾は攻撃を仕掛けてきた敵の駆逐艦らしき艦艇を撃破。続けて後続に控える二隻の同艦種を葬り去る。一方、クイーン・エリザベスの方は多少外すも冷静に照準を定め同様の敵駆逐艦一隻を撃沈する大戦果を挙げた。

 

 

「何!? 敵が勝手に爆散しただと!?」

 

「若葉ちゃん! あれはね、後ろの船? が攻撃したんだよ」

 

「艦(ふね)……だと?」

 

 

 困惑する三人を尻目に、二隻の最新鋭戦艦は迫る敵駆逐艦の撃破に集中した。以後我々は彼らを“敵”と認識し、全ての戦線から持てる限りの全戦力をこの場に投入した。

 

 勇者達と消耗戦を重ねていった左翼担当の空中艦隊は彼らの出現を察知し、勇者らと応戦しつつ現場空域から一隻ずつ離脱した。

 

 また巡洋艦クラマを旗艦とした水雷戦隊も樹海への突撃を諦め、俺への増援艦隊として進路を変更。時期に到達する予定である。

 

 だが、艦隊が速やかに戦線を離脱していく中、思うように戦線を離れられない部隊が存在した。

 

 それが、右翼戦線を支えるドイツ重戦車大隊及びその支援に当る自走砲部隊または駆逐戦車部隊だ。

 

 また、道が整備されていないため容易に撤退しずらく、勇者に後ろを見せたらもれなく撃破あるいは行動不能にされてしまう。

 

 

「戦車部隊はしらばく時間がかかりそうか……しかし、盾となる小惑星郡がいればまだ勝機はあるか?」

 

「若葉ッ! すまない、遅くなった!」

 

「球子か……いや、大丈夫だ。奴らは今、丁度現れた所だ」

 

「ちょっと何よアレ!? 幾ら何でも多すぎでしょ!」

 

「でもまだ何とかなりそうだよ、“アイツら”の動きが変だなとは思っていたけどまさかこんな事になっていたなんてね。秋原雪花、ほどほどに戦うよ」

 

「ほどほどじゃあ勝てない戦力なんですがそれは……」

 

 

 左翼の空中艦隊と激戦を交わしていたと思われる多くの勇者達が到着した。同時に、戦っていた空中艦隊も臨戦態勢を整え敵との対峙に備える。

 

 そして、若葉は対象を早くも切り替え上空に未佇む多数の敵に対し人間とは思えないような瞬発力で空高く跳ね上がった。いや、人間じゃあねぇわ。

 

 他の勇者達も若葉に続けといわんばかりに人離れしたジャンプ力を俺にまざまざと見せ付ける。

 

 だが、二人の勇者だけはまだその場に突っ立ったまま此方を見つめていた。

 

 槍を構えた紫色の勇者“秋原雪花”とさきほどから俺を疑ったままでいるクール系勇者“千影”である。まだ、彼女の本名は知らない。

 

 

「みんな飛び跳ねていっちゃったけど……援護に向かわなくても良いの?」

 

「こちとら装備が飛び道具なんでね」

 

「もしかしてそれ、使い捨て用の槍なの? 投槍?」

 

「いやいや、しっかりとブーメランみたいに戻ってくるよ。それを上手い事キャッチしてもう一度敵に向かって投げる訳」

 

「何それ強そう」

 

 

 俺と秋原……いや雪花と呼ぼう。雪花とのやりとりを、千影は鎌のような武器を握ったまま此方にキツい睨みをきかせていた。

 

 どうやら俺はまだ、彼女に疑われているらしい。

 

 ……しかし、勇者達とコミュニケーションを取るようになってからあの自称神様からの連絡がずっと途絶えたままだ。

 

 ……もしかして、この自称神様。女の子相手にはコミュ障だったりするのかな?




 暇だったので次話を投下! ……次回は一週間後になるかも知れません(汗

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