悪役にされた俺の末路 作:盾長
左翼担当の艦隊が陣地にまで引き返し、陣形を整えつつ上空に佇む敵艦隊との交戦に備えた。再編中、何度か敵艦隊が陣形を崩しにやってきたが数的優位によってこれを退ける事に成功。今のところ、損害はゼロに近い。
「しっかし、敵さんも数が多い事。全体で何隻居るんだろうね?」
「ガトランティスの売りは多分その数にあるんだろうね」
「ガトランティス? 何だそれ?」
「今上空で佇んでいる敵艦隊の総称さ」
「……何で貴方がそんな事を知っているの?」
……そうか、ガトランティス自体この世界には居ないんだっけ。
「僕が居た世界では結構有名な軍事組織なんだ。おそらくこの部隊はガトランティスの前衛艦隊なんじゃあないかな」
「前衛だけで……こんなに」
空はガトランティスの艦艇で埋め尽くされている。今、勇者達が戦っているのはガトランティスの駆逐艦ククルカン級。
ガトランティスの主兵装である輪胴砲塔は独特なデザインを持ち、発射するときは必ず回転しながら敵に対し攻撃を加える。
ククルカン級……もとい、ガトランティスの艦艇はその機動力を用いた戦法が大の得意で戦場を縦横無尽に駆け回る。
勇者達はみんな高く飛び跳ねて持てる武器を艦艇にぶつけているが、大抵はその機動力を用いられ回避されている。
そんな光景を地上で眺めていた俺は、不意に思いつた台詞を勇者雪花に提案した。小惑星郡を盾とした陣形も完成されつつある。
「なぁ雪花。俺と一緒に戦わないか?」
「……はい?」
「どう言う事?」
投げかけられた予想外の質問に、二人の勇者は動揺し始めた。そして、その動揺はこの状況を静かに見守っていた自称神様にも大きく響いてやってきた。
『何を言っている! 壇上! 貴様は正気か!? 相手はあの勇者様だぞ!?』
「だからこそだ。相手はあのガトランティス。多分神様は不利になりつつある僕のために彼らを召喚したんだろうが……生憎僕は彼らと共に戦う気はなくてね」
『ワシと対峙する……そう言いたいのか! 壇上!?』
脳内に直接やってくる言葉に、俺も自分が持つ心の声で精一杯の返事を返す。
第二のプラン。それは、今この場に居る勇者達と共同戦線を張り突如として現れた強大な軍事国家“ガトランティス”と戦う事。
まぁ、彼女達が僕の案に賛同し一緒に戦ってくれればの話だが。
「彼らは今や我ら空中艦隊の戦力を裕に超えたのだ。あんな数で攻め入られたら命が幾つあっても足りやしない。脅威度は今や勇者から突然飛来したあのガトランティスに変更されつつある」
「だから貴方は私達と一緒に戦ってそのガトランティスと言う敵を撃退したい……と言うわけ?」
「そう言う事。それに、僕を味方にしてくれれば今後方で展開している多数の空中艦隊もセットでついてくるけど……どうかな?」
「向こうで戦っている戦車部隊はどうするの? まだ、私達の仲間と戦っている状態でしょ?」
「後退させる。最も……もう間に合わないとは思うけどね」
20両近く居たティーガー戦車隊は既にスクラップと化し、その多くが戦場で燃え尽きていた。自慢の主砲塔も力をなくしたように下を向き車体は酷い有様で放置されている。現在、11両の車両が戦闘を続行しているが生存する確率は極めて低い。
後続にて支援射撃を実施していた自走砲部隊は、既に戦線から撤退しガトランティスに対し可能な限りの有効弾を与えつつある。
だが、その自走砲部隊も幾つかは撤退中に木の根から落下し大破した。不正地であるが故に起きた悲しい事故である。
「タマっち先輩!」
「杏!? どうしてこんな所に!? 確か戦車と戦っていたはずじゃあ……」
「向こうの動きがおかしいなと思って此処まで駆けつけてきたの……それで……そちらの方は……?」
「例の戦車隊を指揮していた敵司令官様だ。だけど今は仲間になりたいと言って千影と交渉しているところだぞ」
「仲間になりたいって、どう言う事ですか!?」
やはり、戦車部隊はもう既に壊滅したのかも知れない。