悪役にされた俺の末路 作:盾長
勇者達と共に戦う事になってから、既に二週間は経過した。俺も勇者部の一部員として部活動に可能な限り参加してきたもののやはり、勇者部の緩い日常は中々慣れない物だ。夏凛が疼くのも思わず納得してしまう。
慢心せぬよう、俺は時々こうして瀬戸内海奥深くの海底に創造された“瀬戸内海海底基地”に足を運び今後の戦局を見据えている……つもりだ。
「……消耗戦になるだろうな。よろしく頼むぞ、信濃」
無数に広がる数多のドックの一つに、その巨体を密かに隠す巨大戦艦の姿があった。旧海軍の大和型戦艦をモデルに設計、建造されたこの戦艦は俺の切り札。
信濃型中核戦艦は51cm三連装電磁衝撃砲を三基九門搭載し、艦首にはお馴染みの艦首統括速射砲を装備。無数の対空砲から新たに増設された九連装対空噴進砲も両舷に二基ずつ搭載している。
ガトランティス航空機には勿論、勇者達が時折話す“バーテックス”と言う脅威にも本艦はある程度耐えうる最新鋭艦としてその初陣を飾るであろう。
「バーテックスか……」
それはある日突然空から飛来してきたと言う未知なる生命体。その巨体に似合わぬ大きな口を用い、若葉曰く多くの罪無き人々を貪り、食ったと言う。また、その中核である白い塊は“星屑”と呼ばれ人類の多くはこの種によって食い散らかされたと言っても過言ではない。
若葉から受けたこの禍々しい未知なる生物に対抗するため、信濃型以降の艦船は建造されたのである。主砲である51cm三連装電磁衝撃砲は“星屑”を文字通り粉々にするためだけに設計された新兵器。
その新の実力は、まだ俺の知らぬところにある。
「こんな所に居たのか、探したぞ」
「……なんだ、若葉か。出来る事なら勝手に立ち入らないでくれるかな? 此処は軍事機密の塊のようなところだからね」
「先ず最初にこの基地を案内して、自由に足を運んでも構わないと公言したのはお前だろう、壇上。まぁ良い、風さんがお前を呼んでいる」
「……フム……部長さんの依頼について窺おうか」
「風さんは一週間ほど前に行方不明になった子猫の捜索用として、壇上から数隻駆逐艦や哨戒艇のような、小さく小回りの効く艦艇を投入して欲しいと」
「子猫を探索するために態々哨戒艇を勇者部に派遣するのか……てか、それだけ人員が要るのなら別に派遣しなくても良いんじゃね?」
「艦艇には人が立ち入れないような山岳部の捜索が勇者部より熱望されている」
「はいはい、そうですかそうですか。じゃあ適当に足回りの良い高速艇か部長さんの言う小柄な哨戒艇を後で派遣しますよっと」
「後からじゃあなくて、出来れば今すぐ派遣して欲しいのだが受諾の件は了解した。直ぐに風さんへその旨のメッセージを飛ばそう……ウム?」
若葉が部長宛のメッセージを送信するため、自身のスマホを取り出したその時。彼女の目線はスマホの機動すらしていない真っ暗な画面ではなく、基地内にある別の造船ドックに向いていた。
「どうした? 送らないのか、その旨を?」
「ウム……いや、何……また前回此処を訪れた時よりも入渠中の戦艦が増えたなと主ってな。と言うよりドックその物が増えた気がする」
「んあ……? あぁ、あれかい。あれは別に、若葉が気にするような代物じゃあないよ。対バーテックス戦用に建造された新鋭艦だ」
「……名称を窺っても構わないか?」
「……そんなに気になるのかい? 仕方ないなー、別に隠す必要もないから今日だけ特別に教えるとしよう。俺は“あの戦艦”を単純に『天鈿女命(アメノウズメ)型前衛ドリル戦艦』と呼んでいる」
ー追記ー
・天鈿女命型前衛ドリル戦艦とは。
・防衛艦隊が所有する新たに建造された最新鋭艦の事。その特筆すべき点は、艦首の推進回転ドリルの存在であろう。壇上は来るバーテックス戦に備え、砲では貫通不可能と判断した時にだけ突出しバーテックスに対しその巨大なドリルを射出する。
・当艦のモデルは勿論ドレッドノート級前衛航宙艦。
・射出後、艦首はくっきりと大きな穴が開く事になるがこれは後に艦首統括速射砲として再利用できる。また、艦首ドリルは使い捨て兵器であり仮にバーテックスを貫通しなかった場合は二百隻単位の姉妹艦を持って無理やり穴を抉じ開けるといったとんでも戦法で対処する。
・そのため、既にこの種の軍艦は四百隻余りが建造されドリルもその倍以上が日々生産されている。二百隻を持って第一突撃艦隊を編成し現在は第二突撃艦隊まで存在する。
・その総旗艦は防衛艦隊の総旗艦トロイア。当艦についても後ほど詳しいスペックを公開する予定である。またこの世界線ではアンドロメダがまだ存在しない。
・艦名のアメノウズメとは日本神話に登場する日本最古の踊り神である。このため同クラスの艦名は日本の神々や世界の神々が命名されている。