悪役にされた俺の末路 作:盾長
頭上には数隻のククルカン級襲撃型駆逐艦が、縦一列で俺目掛け突っ込んでくる。
襲撃型……と言う名前に相応しい戦法だ。
回転式の大小異なる四つの砲塔から、カシミア・グリーン色のレーザー光線が放たれた。
レーザーが地面へ直結し、射線から一応は当らないと言う確証が持てるが、身震いだけはどうしても敏感に発生してしまう。
今、自分が狙われていると思うと鳥肌が立ってたまらない。
空中艦隊は前衛に張り巡らせ、後方に置いている艦は殆どない。
居たとしても待機していたオライオン級が二隻居るかどうかだ。
そもそも、「待機しろ」と言う命令は俺から発せられていない。
頭上を警戒せよ……なんて命令もなおさら。
ならば、自分で警戒するしかなかったんだ。
なのに、
今回ばかりは、真っ先に気がついた高嶋友奈に感謝するべきだろう。
「クソッ……前が見えねぇ……」
視界をやられた、
それだけは直ぐに実感する。
もくもく、と漂う着弾時の黒煙を腕でなぎ払いながら、真っ暗で何も見えなくなっている頭上を反射的に見上げた。
すると、
そこには複数の爆発音が地響きのように耳を劈き、付近で破裂する。
勇者の誰かが、数隻居たククルカン級を仕留めたのだろう。
おそらく、高嶋じゃあない、誰かが。
「壇上君、大丈夫!?」
「あぁ? あぁ……大丈夫だ」
「怪我はなさそうね」
真っ黒な黒煙を突っ切ってやってきたのは、高嶋と、それに動向する千影だ。
高嶋は俺の心配をし、
千影が負傷の有無を確認した後、周囲の警戒を始める。
次第に黒煙は晴れ、上空には何も居ない事が明確になってくると、俺は安心して艦隊の指揮に移行する。
戦線は相変わらず膠着しているが、一応優位には立っている。
艦艇数は劣勢ながら、やはりその搭載兵器が充分な威力を発揮しているのだろう。
オライオン級から放たれる天色の光線がガトランティス艦艇を貫く。
数百隻から成る前線艦隊に綻びが目立ち始めた頃。
起死回生の一撃が瀬戸内海底基地より、大規模な空間ワープをやってのけた。
出撃体勢が整っていた新鋭各艦が樹海へ向けて旅立つ。
出力を最大にし目的地を樹海へ固定するのだ。
「みんな! 空を見て!」
「どうしたの? 友奈!?」
「風先輩、アレを見てください!」
友奈が指差すのは、不思議な色で彩られた樹海の空。
しかし、その一部にはまるで空間を無理やり捻じ曲げたかのような「穴」が無数出現し、前衛の増援艦隊が間もなく到着する。
ほぼ無理やり。
急ピッチで建造された改オライオン級を始め、その発展型であるアンドロメダ級、さらには艦隊旗艦として建造された前衛武装航宙艦「春藍」の姿もあった。
海底から樹海への大ワープを行った事で、上空に副作用として発生する無数の空間の歪みが、後遺症として空の随所に点在する。
春藍を含めた最新鋭艦はそこから這い出てきたのだ。
中にはアンドロメダ級を簡易的な構造にし、戦時急増艦として建造された瓜二つの「桜型前衛航宙艦」の姿もある。
桜型の外観はアンドロメダ級とさほど変わらない。
しかし、不要と判断された機材や空間は全てカットされ、瀬戸内海海底地下基地にて大量建造されたのだ。
桜型は艦首統括速射砲を艦首に二基装備し、これはアンドロメダ級とほぼ変わらない。
代わりに、アンドロメダ級も五隻量産され、五隻とも今回の戦に参加した。
戦艦型としてアンドロメダ、アルデバラン、アキレスが就役。
空母型もアポロノームとアンタレスが就役し、その外観は勇者達を驚かせた。
「艦橋の上に何かがくっついている」
「また奇抜なデザインね……」
「変な格好……」
と、散々言われているがその性能は勇者の度肝を抜くだろう。
アポロノーム型(そう呼んでいるだけ)は実に180機の艦載機を保有し、一度に48機もの艦載機を射出するのだ。
そして、俺は当然その空母を重視した。
アンドロメダの戦時急増艦として建造された桜型にも、アポロノームを意識した空母型が存在する。
性能を重視した俺は外観など気にしない。
アポロノームを簡易的に設計、建造した橘型もこの戦に参加。
十四隻もの姉妹艦が即席で作られ、十四隻とも当然参加している。
ちなみに、戦艦型の桜型も十八隻が建造され樹海にやってきた。
アンドロメダとアポノーム両者を前に出し、改オライオン級がその後に続く。
桜型が改オライオン級の背後から大ワープを敢行し、
橘型もそれに続いた。
戦力は、
一気に向上した。
瀬戸内海海底地下基地が遂にその刃をガトランティスに向けたのだ。
無数……と言う表現が良く合う新鋭増援艦隊が今、樹海の空に現れる。
ー追記ー
・桜型および橘型は旧海軍の桜型駆逐艦を艦名に取る最新鋭艦。アンドロメダの重要性を良く理解した壇上が大量生産向けに設計、建造したのが当艦。十八隻の桜型とアポロノームの準姉妹に当る橘型が十四隻。何れもこの戦いに参加する。
・改オライオン級。
もはや名前など存在しない。全て肩番号で呼ばれる(一番艦からO-1001)。外観はドレッドノート級とさほど変わらないが、建造に必要な手間をコレでもかと削ったのが当艦。塗装は緋色で全身赤塗り。オライオン級と比べ竣工までの間手抜き工事が目立っているためエンジン不良は頻繁に発生し、その稼働率は全体の四十五パーセント。
「改」と言うよりは「不」と改めた方が良い同艦は、エンジントラブルを起こさなかった二百六十隻が戦場に狩り出された。後は武装面での事故が起こらない事を願うまで……。