悪役にされた俺の末路 作:盾長
かくして作戦は始動し、艦隊は時間稼ぎと言う目的を遂行するため実弾を用いた射撃を開始する。事前に、自称神様から樹海に傷をつけると現実世界にも影響を及ぼすと聞く。
そのため、地面には届かぬようあらかじめ全ての弾頭は地面に到達する前に起爆するようにセットされている。主砲から放たれた実弾は全て空中で炸裂しているのだ。
当然、地面に当たらないようにセットされているため地上に居る勇者達には傷一つさえつかない。だが、現実世界に影響が出てしまうのなら仕方があるまい。戦艦に積まれている主砲の大きさは大体30cm以上。もしくは未満。
これらの主砲弾が、はたして地面に弾着した時。どれほどのエネルギーが発生するのかなんて実験でもしなければ到底分かりえない。俺は、現実世界に現れる影響を恐れてわざと主砲の威力を下げたのだ。
「空中で炸裂している……だと?」
「……妙ね」
地上で、10人以上はいるであろう勇者達が空中で炸裂していく主砲弾の花火を注意深く見物していた。上空で炸裂するため、容易に艦隊へ近づけないのであろう。俺にとっては願ってもいないチャンスだった。
これが一秒でも長く続けば実質、無駄に戦艦を失わずに済むし到着するであろう新兵器を無事に回収する事が出来るかも知れない。
虫が良すぎるかも知れないが、俺はこのご都合主義的な展開が今後も更に続くよう願った。そして、その新兵器を回収するため俺は特務機動艦隊に対し飛行甲板を空けるよう指示を出した。
万が一、勇者らが機動艦隊の輪の中に入ってくるのであらば甲板上に待機している艦上攻撃機「電龍」を発艦させ、これを守らせる任務に就かせようとしていた。
だが、みた限りでは此処まで勇者はやってこない。
俺は慢心し、甲板上の艦載機を全て艦内に入れて新兵器の到着を待った。
艦隊は以前として主砲を撃ち続け上空に色鮮やかな薄い花火を描き続けていた。
「地上からの迎撃は難しそうね」
「でも見た感じ、下から容易に攻撃が出来そうですけどね……そこら辺はどうなんでしょうか?」
「下から……そうね。上がダメなら下から攻撃を仕掛けるのもありかも知れないわ」
「なるほど……考えたな銀」
「じゃあアタシ、ちょっと下から攻撃してみます!」
「銀がいくタマも行くぞ」
変化は突然起こった。艦隊にはアラームが鳴り響き、旗艦を含めた全艦が動揺し始めた。空中で描かれる濃厚な防空網はあっさりと無視され、今やがら空きとなっている艦隊下部から勇者達が熾烈な猛攻撃を加えてきたのだ。
勿論、下への攻撃手段を艦隊は有していた。が、下へ爆弾を投下すれば必ず現実世界に影響が出る。
俺は思わず、艦隊下部への攻撃を躊躇してしまった。
勇者の一部が血気盛んに艦隊の下へ潜り込み、人間とは思えないようなジャンプを繰り出して手に持つ双剣のような物を戦艦に突き刺した。
丸みを帯びた盾のような物も変わった軌道で飛行を繰り返し、付近に布陣する戦艦を悉く粉砕していく。
また、遠方より濃厚な弾幕を平気で飛び越えてくる槍のような物や弓矢のような物が最前列に布陣する艦を一瞬でなぎ払った。
この最前列に居る艦の中に旗艦「バトル・オブ・ブリテン」も存在し、同艦は槍のような物を受けて大破。一時間後に爆沈した。
当然、旗艦の爆沈は俺の下にも届き戦況の変化にようやく気づいた。
「艦載機を急ぎ発艦させよ……主力艦隊の援護に回るのだ……」
一度収容してしまった艦載機を再び発艦させるのはまさに愚の骨頂とも言えよう。機動部隊各艦は慌しく艦上戦闘機の整備を短時間で済ませ甲板上に並べた。
甲板の点検も同時進行で行い、艦橋付近にある信号機を用いて発艦の合図を出す。
赤から青へと変わった信号機を確認すると、艦上戦闘機「電龍」は一機、また一機と樹海の上空に舞い上がる。
しかし、この作業中。妙な情報が主力艦隊に所属する戦艦「摂津」からもたらされた。聞けば、勇者が一人だけこの混乱の中、姿をくらませたのだと言う。
俺がその奇妙な情報をスマホで確認している中、突如として空母「カレイジャス」が大爆発を起こした。
艦載機が並ぶ甲板が炎に包まれ、カレイジャスは空中に漂う火の玉となった。
「グット……先ずは一隻ね……」
俺の目の前に鞭のような物を持った一人の少女が物音立てず、その場に立って居た。
どうやら俺は絶対絶命のピンチに立たされたようだ。
・艦上攻撃機「電龍」(でんりゅう)。
零戦のような外観を持つ新型艦上戦闘機。艦隊の主力戦闘機である。武装は20mm機銃を4丁。爆弾を三発搭載可能。ジェット機ではなく純粋なプロペラ機である。
・戦艦「摂津」
大阪の旧国名を関したこの戦艦は「バトル・オブ・ブリテン」の準同型艦に当たる。31cm連装砲を5基搭載し、船体も「バトル・オブ・ブリテン」より大型化した。しかし、外観が良く似ていると言う事もあり、本艦は一応、準同型艦として記録されている。
・スマホ
彼が持つスマホは艦隊と直接通信回路が繋がっており、実は今までの指揮は全てこのスマホを通じて行われていた。整備や点検。攻撃指示などその実用性は幅広く、メール等で戦艦とのやり取りも実現させた。
このアプリ。もしくは機能の作者は自称神様であり、本人曰くこの手のシステムは過去最高傑作なのだと言う。常にアップグレードが行われつい最近、樹海のワールドマップが配布された。