悪役にされた俺の末路   作:盾長

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ヴィクトリアス防衛戦

「……エクスキューズミー。貴方はどなた?」

「……」

 

 

 

 どうやら、俺の存在にも気がついてしまったらしい。カレイジャスが燃える中、二人の間に妙な空気が流れている。薄い黄色? のような変わった服装をしている彼女が狙っているのは間違いなく航空機を離発着させるこの空母郡であろう。

 

 うち一隻はあのうねる鞭のような物で大破。……いや、中破か? いずれにしても大損害を被った。これは此方に対する先制攻撃としてみて良いのだろうか。発端を開いたのは此方だが機動部隊に傷を与えたのはあの少女だ。

 

 向こうは此方とコンタクトを取ろうとしているようだが、今はそんな余裕がない。残存する5隻をいかに守るかで精一杯だ。

 

 

 

「……艦載機発艦はまだか」

「ワッツ? 艦載機?」

 

 

 

 残存する5隻の飛行甲板には直掩機が並び、その主力は艦上戦闘機「海電」である。高性能な万能機。機動力も高く旋回性能ではどの艦載機よりも郡を抜いている。だが、その分デメリットもある。

 

 海電のデメリットは整備性や信頼性に欠け、特に空中で無茶な飛行を行うと空中分解してしまうと言う致命的な欠点がある。整備製が悪く発艦に時間を要すると言うのも大きなデメリットの一つだ。

 

 海電のモデルは勿論、帝国海軍のゼロ戦。海電発艦まで俺は時間を稼がなければならなかった。

 

 普通なら彼女との会話を試みる物なのだが、此処まで距離が近いとかえって話しづらくなる。だから彼女との戦闘を選んだ。

 

 こっちには一応、先に攻撃されたと言う大義名分がある。

 

 

 

「全艦砲撃開始ッ! 海電発艦までの時間を稼げ!」

「アンビリーバボー! いきなり撃ってきたわ!?」

 

 

 

 護衛を担当する駆逐艦らが母艦の前に出て驚愕する彼女相手に射撃を開始した。だがこれはまだ警告射撃。空中で炸裂する例の弾を用いてわざと外すように指示した。できれば本格的な戦闘は避けたい。

 

 こんな至近距離じゃあ俺もつい射撃に躊躇してしまう。相手は同じ人間でしかも女子。戸惑うのも無理はないだろう。

 

 前に出すぎている駆逐艦を下がらせ、代わりに装甲のある巡洋艦を前衛に配置した。問題は巡洋艦の装甲で何処まで持つのかだが。

 

 

 

「そう。そっちがその気ならこっちも本気で行かせてもらうわ!」

「何……突っ込んでくるだと……?」

 

 

 

 警告を受ければ普通、一歩ぐらい下がるのかと思ってはいたのだが彼女は下がるどころか一気に距離を積めてきた。俺は彼女が繰り出す鞭の攻撃に辛うじて身を交わす事が出来たがこの先には艦載機を順次発艦させている空中母艦の群れがある。

 

 マズい。非常にマズい。一応、それなりの陣形を整えているとはいえ対人戦闘は全く想定していない。

 

 距離が縮む中、彼女が狙いを定めたのは一番前に布陣している英空母ヴィクトリアスだ。あの鞭を食らったらカレイジャスのような火達磨になってしまう。

 

 

 

「何をしている!? 弾幕が薄いぞ! 構うなッ! 当てるつもりで撃てッ!」

 

 

 

 躍起になって声を上げた途端、薄かった弾幕は瞬く間に濃くなった。周囲を囲っている駆逐艦や前衛を務めていた巡洋艦が主砲や対空砲をとにかく無茶苦茶撃った。

 

 当てるつもりで撃っているはずなのだが何故か彼女のほぼ手前で爆発している。そして爆発するたびに何かがチラッと出現している。何だコイツは。

 

 

 

「貰ったッ!」

「……ッ!?」

 

 

 

 気を取られている間、彼女の鞭はヴィクトリアスを射程内に収めた。もうダメかと思ったその時。彼女に捨て身覚悟で突っ込んだ戦闘機が居た。

 

 いや、もう捨て身。特攻に近い。超至近距離で特攻を仕掛けたのは発艦したての海電そのものだった。

 

 海電の捨て身をもろに受けた彼女は一旦陣形から離れついに艦のレーダー上からロスとした。捕捉できる範囲にはもう居ないらしい。

 

 この戦闘。俺はただ見守る事しか出来なかったのだが、海電の捨て身攻撃により辛うじて空母ヴィクトリアスの防衛に成功したようだ。

 

 一時的な戦闘が終了した後、機動艦隊の一部を成す駆逐艦からある報告がスマホのチャット欄に「ひら分」で表記された。

 

 

 

「新兵器をレーダーで捕捉しました」

 

 

 

 彩雲作戦の醍醐味である新兵器の到着。それは俺の士気を高めるには充分すぎる要素だった。俺は無言でガッツポーズを決めた。

 

 そして、その新兵器は想像を上回る大部隊であった。

 

 だがちょっと待って欲しい。

 

 新兵器が航空機と言うのは聞いていたのだが……これは何かの冗談なのだろうか。

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