悪役にされた俺の末路 作:盾長
警報が鳴り止んだ頃、視界一面に広がるのは木の根が覆う摩訶不思議な世界。人はこれを樹海と呼ぶ。神樹様と呼ばれる向こう側(勇者達)の神様が香川本土を守るために創造したのがこの世界だそうだ。
木の根は大小様々で遮蔽物や茂みなどは一切ない。
スマホのディスプレイには幾つかの光点があるが、これは両軍の位置や状況を表している。青が我々で、赤い光点が彼女ら勇者と言う事になる。赤い光点は僕に取って敵を意味する。そしてこの青い光点を操作するのが僕の仕事だ。
今回の作戦概要として先ず上げられるのは自称神様が定めたあるポイントの奪取にある。今回の作戦内容はポイントを目指してひたすら前進する事にある。
樹海全体に太鼓の音が鳴り渡り、これを作戦開始の合図とした。太鼓の音と共に、戦車隊の先鋒を務めるドイツの「Ⅳ号戦車」が16キロでポイント目掛けて前進する。樹海は複雑な地形ゆえ当初予定していた速度を出し切れずにいた。今の所、16キロが最大速度となっている。これが整地されていれば38キロは出ていたはずだ。
最初の奪取ポイントとして挙げられたのは通称「101高地」と呼ばれる小高い丘が選ばれⅣ号は丘を目指して突進する。
Ⅳ号はこの戦いに20両が参戦し、「第一戦車中隊」として勇者達と最初の一戦を交わす事になる。
Ⅳ号ら第一戦車中隊が101高地を目指して前進する頃、別方面から30両の戦車部隊が作戦に乗っ取って101高地目指して前進した。
Ⅲ号突撃砲で編成されたこの部隊は「突撃中隊」として101高地を目指す。別方向から進軍するのにはわけがある。
この突撃中隊は、右翼から101高地を目指すわけだが、途中道を逸れて別地点に設けら「102中継地」奪取へ向かわせる。50両で攻めるように見せかけて本隊は別の奪取ポイントへ強襲をかけるのだ。
102中継地は木の根のワールドにこそ変わりはないものの、他の土地より平たく戦車にとっては理想的な戦場になる事間違いない。
101高地及び102中継地奪取が今作戦の第一歩だ。
「マスター、101高地へ向かう第一戦車中隊が先回りしていた勇者の先遣隊と交戦に入りました。指示をお願いします」
こいつは俺のスマホにいつの間にか導入されていた会話型AIだ。作戦の進捗状況などを逐一報告してくれる便利な奴。女性のような声で俺は勝手に「マスター」と呼んでいる。正直、言われて嫌な思いはこれっぽっちもない。寧ろ続けてどうぞ。
話が逸れたが、先ほど先鋒として突撃していったⅣ号を中心とする第一戦車中隊20両が勇者の先遣隊と交戦を始めたそうだ。
相手の勇者は五人。そこへ20両のⅣ号が攻撃を開始する。
機動力に勝る勇者達は巧みな動きでⅣ号を次々と撃破してゆく。撃破されたⅣ号は跡形もなく吹っ飛ぶか、沈黙するかで判断される。
最も、判別がややこしいため大半は木っ端微塵に破壊される。正直、どうやって鉄の塊である戦車を剣や鞭で破壊しているのか。それが気になって仕方がない今日この頃。
現状、105高地の戦況は五対十一。Ⅳ号は勢いよく爆散し、これではマズいと思った俺は102中継地を目指していたⅢ号突撃砲のうち10両を増援に向かわせた。
指定されたⅢ号は方向を転換し、背後に立つ101高地目掛けて突撃を開始する。
これで102中継地に向かうⅢ号突撃砲は20両となり、戦力は当初より大幅に低下する見込みとなった。
「持ってくれよ……突撃砲」
目の前をゆっくりと前進する重戦車郡を眺めながら俺は突撃砲に一途の祈りを託した。彼ら突撃中隊が目指す102中継地は目前に迫っている。
現状設定(暇な方だけどうぞ。
・第一戦車中隊:Ⅳ号戦車20両。(現在九両大破)目的地101高地。
・突撃中隊:Ⅲ号突撃砲30両。(現在10両が101の増援として派遣されている)
・第二戦車中隊:中戦車で編成された主力部隊。総数50両(現在作戦待機中)
・第一重戦車大隊:重戦車で編成された主力部隊。総数100両(現在前進中)
後方支援部隊
・第一航空艦隊:Il-2が35機。(現在上空待機中)
・第一自走中隊:自走砲を中心に50両。(現在作戦待機中)
・第一列車部隊:80cm列車砲一両(現在移動中)
・第一後方支援中隊:Ⅳ号突撃砲13両(現在作戦待機中)
・第一装甲中隊:M20による装甲車部隊。総数30両(現在作戦待機中)
以上車両293両、航空機35機が今作戦の全戦力である。
また、今作戦は「冬の雄たけび作戦」と命名され現在発動中。
ポイントを奪取もしくは占領する事で壇上君に支払われる給料が上がったり下がったりする模様。
ゆえに壇上君は是が日でもこの作戦を成功に導かないと行けないのである。
なお、指定されたポイントは総計5箇所。1箇所あたり10万円が支給される。