悪役にされた俺の末路 作:盾長
あれから数刻が経過したが、101高地の戦況は絶望的と判断しても良い。現に101高地は勇者の増援が目撃され、101高地で奮闘していたⅣ号戦車は軒並み破壊。もしくは大破したと言う。間に合わなかったⅢ号突撃砲は勇者の待ち伏せによって10両中8両が撃破された。
残りの2両は全速力で離脱したがその損害はあまりにも大きい。2両は101高地を諦め、本隊である突撃中隊20両と合流しこれで合計22両となった。
こうして、Ⅳ号を中心に編成された第一戦車中隊20両はその全てが大破。壮絶な最期を迎え全滅から二十分後に部隊が解体された。
Ⅳ号の犠牲からしばらくして、102中継地を目指す突撃中隊と既に足を踏み入れていた勇者との間で最初の戦闘が勃発する。
101高地を諦めた俺は至急、上空で作戦待機する第一航空艦隊に102中継地を爆撃せよと命令を発し、ソ連のIl-2が編隊を組み空を爆走する。ついで密かに射程圏内へと移動させていた第一自走中隊50両に102中継地への支援射撃を命令する。
種類が異なる50両の自走砲が一斉に砲撃をはじめ102中継地は煙で見えなくなる。だが、これが仇となったのか、自走砲が駐留するポイントに勇者数名が潜り込みこれに壊滅的な打撃を与える事となる。
発砲地点を観測されていた自走砲部隊はなすすべもなくその全てが破壊され、継続的な支援砲撃は不可能となった。
一方、壊滅した自走砲部隊と連携して地上への爆撃を行った第一航空艦隊は帰還中、大空を飛ぶ船のような物に乗った勇者と遭遇する。
爆弾層を空にしたIl-2隊長機は独断でその勇者と戦闘をはじめ、うち半数は生きて帰らなかった。制空権は既に掌握していたはずだったのだが性能は相手が勝り隊長機はその船のような物体に自ら体当りを仕掛け未帰還となる。
当時35機のIl-2がこの爆撃に参加したのだが、生きて帰った機は13機とその半分にも満たなかった。
「おぉ、繋がった繋がった。どうじゃ、ポイントは一つぐらい確保できたかのう?」
電話中、俺が立っている地点から少し離れた場所になんとも言いがたい流れ弾が飛んできた。これは勇者が放った物ではない。恐らく味方からの誤射であろう。戦局は相変わらず苦しい状況に置かれている。
「ダメです。一つも取れません。せめてもう少し爆撃機を此方に向かわせてください。爆撃機がダメなら戦闘機でも良いです。空軍が圧倒的に足りません」
こうして居る間にも102中継地を含めた各地の戦場では1両、また1両と前線へと赴いた戦車が破壊されてゆく。戦車が足りなくなった現在、戦場での主力は火力の足りない装甲車や命中率が極端に低い80cm列車砲が必死に応戦している。
既に装甲車は16両が葬られている。その大半は駆けつけた青い勇者によって真っ二つにされたと言う。
「それはお主の指揮能力がイマイチ足りていないからではないかのぉ。ワシが手当てし部隊はどれも精鋭揃いじゃったはずじゃが?」
「中戦車はほぼ全滅。突撃砲も残り僅かです。現状、無傷で戦場に向かっているのは作戦の要となる重戦車部隊のみですよ。彼らが壊滅すれば本作戦は確実に失敗します。当然、失敗すれば僕の命はありません」
「命がないと言うのは少し盛りすぎじゃあないかのぉ?」
「収入源のない人間なんて風前の灯です。食費が尽き始めた現状を打破するにはやはり、空軍の支援が必要不可欠です」
「重戦車部隊が健在なんじゃろぉ? なら何とか」
「空軍の支援がどうしても必要不可欠なんです! 神様も空軍の重要性ぐらい良く理解して居るんでしょう!? せめて後40機近くのジェット戦闘機の使用を認めて頂きたい。それが嫌なら60機の爆撃機をお願いします。旧式でも構いません」
「そんなの承認してしまったらワシの身体が持たんだろう! 絶対に認められんわい! 言っとくが、お主が兵器を自在に操れるのもワシの体力あってこそなのじゃぞ」
数に制限がある理由はこれの事だった。これらの兵器は全て神様の体力から搾り取られて自由自在に行動している。いわば神様の体力が彼ら兵器の燃料。ガソリンなのだ。確かに無茶を言っているとは思うが、戦力増強が認められなければ本作戦は間違いなく失敗する。そして収入はゼロだ。
「ではせめて数十機の運用を許可させてください」
「現戦力で精一杯じゃ。壇上よ、現有戦力で対処しなさい。以上!」
「あっ、ちょっと待てよ!」
一方的に切られてしまった。最後は我を忘れ敬語ではなく暴言を吐いてしまった。増援は認められず現有戦力は常に減る一方だ。
前線で奮闘していた装甲車50両は電話時間中に全滅し80cm列車砲は後退を余儀なくされている。Ⅳ号突撃砲は80cm列車砲の後退を支援するためその殿を務めている。壊滅は時間の問題だろう。
突撃中隊までもが壊滅した今、俺が持つ現有戦力は非常に限られた物となった。
俺にとって希望の光となりうる部隊は最早、激戦区へと向かう重戦車100両のみとなった。俺はこの重戦車に最後の望みを託す。
重戦車が激戦区へ向かう中、再び半壊した第一航空艦隊に出撃命令が下った。
・「冬の雄叫び作戦」の戦況。
・第一戦車中隊20両:壊滅(Ⅳ号戦車)
・突撃中隊30両:30両中22両が健在(Ⅲ号突撃砲)
・第二戦車中隊50両:50両全てが健在(車両は多種に渡る)
・第一重戦車大隊100両:100両全てが健在。現在激戦区へ向け進撃(車両は多種)
・第一航空艦隊35機:35機中13機が残存。現在再度出撃命令が発令された。(Il-2)
・第一自走中隊50両:勇者の猛攻にあい壊滅。残存数0。
・第一列車部隊:80cm列車砲が現在後退中。
・第一後方支援中隊13両:数を減らしながら列車砲の後退を支援。(Ⅳ号突撃砲)
・第一装甲中隊30両:勇者との激戦を交え16両が大破。(M20)
この16両は若葉によって撃破される。残存数は現時点で14両。
こうして現有戦力は車両が約146両。列車砲1両。航空機13機となった。
既に100両近くの車両が破壊されている。……これ負けるんじゃね?