東方賢者槍   作:赤辻康太郎

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や、やっと書けた。しかし時間かかった割には低クオリティorz

ともかく第四話、今回は(一応)戦闘回です。


第四話  戦い

第四話 戦い

 

 

「さて、先ずは小手調べと行きますか!」

 

 初めて見る魔物だと言うのに、魔理沙は臆することも慌てる事もなく、ミニ八卦炉を構えたまま箒に跨り空を舞う。臨戦態勢だと言うのにルドガーは「器用なことするなあ」と思ってしまった。適度に緊張が解けている証拠だろう。魔理沙は更に器用な事に箒から両手を話し、懐からカードを取り出す。

 

「魔符『スターダストリヴァリエ』!」

 

 魔理沙がキーワードを唱えると、魔理沙を中心に魔法陣が展開し、そこから無数の星がオタオタの一体に向かって降り注ぐ。

 

「キュアアアーーー!!」

 

 いきなりの攻撃に、オタオタは為す術なく全弾命中。辺りに朦々と土煙が舞う。

 

「ちょっと魔理沙! やり過ぎよ!」

「これくらいが丁度良いんだって」

 

 攻撃が命中したのに気を良くしたのか、アリスの小言を笑って流す魔理沙。流石に気絶位はさせただろうと思っての余裕だったが、

 

「……そう簡単にはいかないようだぞ」

 

 ルドガーの一言でその楽観視は打ち砕かれる。

 

「キュ?」

 

 煙が晴れ、現れたオタオタの姿は、気絶どころか傷一つ付いていなかった。

 

「な!?」

「嘘でしょ?」

 

 予想以上にダメージが通ってなかったのには魔理沙とアリスも驚きを隠せない。

 

幻想郷には外の世界とも、ルドガーの世界とも異なる闘い方がある。その名を『弾幕ごっこ』、『スペルカードルール』と言う。これは妖怪の賢者である八雲紫が考案した、『人と妖の差』を埋めるための決闘法である。

幻想郷には人間と妖怪や神が共存している。これは幻想郷の創造主たる八雲紫の思想なのだが、これには一つ欠点があった。それは『圧倒的な実力差』である。妖怪や神は人から畏れ崇められる存在。それはその存在が面妖、神秘的と言う意味に限らず単純に人より力強いと言う意味も含んでいる。更に妖怪の中には人を襲い、食らう種族もいる。それに対抗する為、人は陰陽術や対魔の術などを考案してきた。だが、それで贖えるのは一部の『力を持った人間』のみ。力を持たぬ人は慄き、駆逐されるのみであった。これを是としなった八雲紫は、人と妖怪、神の差を埋めるべく新たな勝負の方法を編み出した。それが『弾幕ごっこ』ひいては『スペルカードルール』である。

『弾幕ごっこ』とは自身の持つ霊力、妖力、魔力、気等の精神エネルギーを『弾』として飛ばし相手を攻撃する決闘法である。そして、その決闘法のルールこそがスペルカードルールである。

『スペルカードルール』とは、予め技の名前と命名しておいた名前を体現する技をいくつか考えておき、それを契約書となるカードに封じ、所持し、決闘の際に使用するルールである。決闘前に使用枚数を提示し、使用の際にはカード名を『宣言』する。勝敗は戦闘不能になるか、スペルカードを全て攻略されるかによって決まる。当然体力が尽きれば負けになるし、提示したカードを全て攻略された場合も負けとなる。このルールが適応されて以来、幻想郷では異変の解決だけでなく、人と妖怪とのいざこざや妖怪同士の喧嘩の時にも使用されるようになり、『妖怪が人を襲い、人間は妖怪を退治する』という関係が形骸化され、疑似的な決闘と言う形で保たれるようになった。

 

魔理沙のスペルカード『スターダストリヴァリエ』は大抵の妖怪相手ならダメージを与えられるし、場合によっては一撃で気絶させる事も出来る。だが、眼の前の魔物には一切通用していない。避けられることは合っても、受けて傷一つ付けられなかったのは、流石の魔理沙も初めてだった。

 

 「どうなってんだよ!?」

 

 魔理沙がゲコゲコのノビールパンチ(魔理沙命名)を躱しながら悪態を吐く。その後も、魔理沙は自分の得意なスペルカードを放つが、その全てが通じていなかった。

 

「……これは、スペルカードルールが通じていないと思った方がよさそうね」

 

 緊迫した面持ちでアリスが零す。アリスも得意のスペルカードで応戦していたが、結果は魔理沙同様、一切のダメージを与えられていない。

 

「せい! はあっ!」

 

 ただ一人、ルドガーだけがオタオタとゲコゲコにダメージを与えている。しかし、確実に削れてはいるものの、未だ決定打を与えられずにいた。

 

「どうしたんだよ? こいつらお前の世界じゃ雑魚だったんだろ?」

 

 そう。ルドガーの居た世界で、オタオタとゲコゲコは魔物の強弱では最下層に位置している。元々これらの魔物は比較的大人しい部類で、縄張り(テリトリー)に侵入するか余程の空腹時でない限り人を襲うことはない。ルドガーも幾度となく闘い、その度に打ち倒して来た。だが、今はその時とはある『一点』で状況が違う。そしてそのルドガーも意識していなかったその一点が、致命的な欠点になっていた。

 

 (まさかアローサルオーブがないのがこんなに辛いとは……!)

 

アローサルオーブ。それはルドガーの世界に存在する不思議な宝珠。元々リーゼマクシアに存在していたリリアルオーブと言う宝珠が断界殻の消失によりその機能を失ったため新たに開発されたものである。機能は双方とも身体能力の向上と、オーブの所有者同士の『絆』を深めることが出来る。更にその機能によって『共鳴術技』と言う特殊技能を使用することも出来る。

ルドガーも時計がないのに気がついた時にアローサルオーブがない事には気づいていた。しかし魔物の存在がないと油断していた事と、なくても何とかなると己の力を過信していたのが、今になって影響を与えている。

 

「くっ!」

 

 ゲコゲコの攻撃をいなし、ルドガーもアリスと魔理沙と合流。三人固まって態勢を立て直すが、退治するオタオタ達は警戒こそしているものの、勝てる相手と確信したのか、止まりながらも徐々にその距離を詰めていく。

 

「……魔理沙。アンタルドガー連れて飛んで先に博麗神社に行きなさい」

「なっ! お前らは如何するんだよ?」

「……」

 アリスの提案に眉を吊り上げて抗議する魔理沙。ルドガーは黙ったままだが気持ちは魔理沙と同じ。アリスを一人にはさせたくない。

 

「……じゃあはっきりと言ってあげる。今の貴方達は足手纏いなの」

「それはお前だって……!」

「いいえ。スペルカードでの闘い方『しか』知らないアンタは邪魔以外の何者でもないの」

「っ!」

 

 魔理沙の眼を真っ直ぐ睨んで宣告するアリス。魔理沙も睨み返し言い返すが、最後の一言には返す言葉が浮かばず。唇を噛んだ。事実、魔理沙は魔法の知識があるが、実戦的な魔法の類はまだまだ未発達。スペルカードの元になった魔法も使える事には使えるが、オタオタ達と渡り合えるほどの威力を完璧にコントロールする自信はない。

 

「それにルドガー。貴方私達に言ってないことあるでしょ?」

「……どうしてそう思うんだ?」

 

 今度はルドガーにアリスの矛先が向けられる。ルドガーは惚けたフリをするが、アリスには効かなかった。

 

「簡単よ。貴方の動き、かなりぎこちなかったわ。まるで『自分の動きが出来ていない』みたいに」

 

 そこまで見抜かれていて、ルドガーにこれ以上隠す必要もない。二人にアローサルオーブの事を簡潔に話す。

 

「はあ!? 何でそんな大事な事黙ってたんだよ?」

「俺も魔物がいるなんて思わなかったんだよ」

「まあ、そうでしょうね」

 

 憤怒する魔理沙と対照的に、かえって冷静になるアリス。アリスの言う通り、このままの現状では魔理沙だけでなくルドガーも足を引っ張りかねない。

 

「んで、そういうお前はどうなんだよ?」

「あら? 忘れたの? 『白黒の』」

「……っ!」

 

 魔理沙の問いに、アリスはその眼光を鈍く光らせる。白黒のと言った時、アリスの雰囲気が変わったようにルドガーは感じ、魔理沙は背筋を凍らせた。

 

「私は『魔法使い』よ? 魔法を齧っただけの貴女とはキャリアもスキルも違うの」

 

 分かったならさっさと行きなさい。アリスは氷のような視線を二人にぶつけると、オタオタ達に向き合い一歩前へ。魔理沙は帽子を深くかぶり直すとルドガーに箒に跨るよう指示する。

 

「……アリス、すまない」

 

 ルドガーは悔しそうに呟き、箒に跨る。病み上がりで碌に動けない上にアローサルオーブ未所持による身体能力の低迷。自分の世界の魔物なのに、幼気な少女一人に託さなければいけない現実と事実が、ルドガーの心に深く圧し掛かる。

 

「直ぐに終わらせて私も神社に向かうわ」

「おう。早く来いよ」

 

 一言だけ言うと、魔理沙は箒に魔力を篭めてルドガーと共に宙を舞う。

 

「飛ばしていくぜ! 振り落されるなよ!」

 

一瞬の間の後、急加速し空を走る。正に弾丸。その疾風が目指すは博麗神社。

 

「……行ったようね」

 

 魔理沙達が居なくなった空を見て、アリスはポツリと呟く。その後正面を向くと。少し距離を置いて魔物の群れ。けたたましく不快な和音を奏でるのは、獲物が減った事に腹を立てているのか、はたまた相手が減った事による余裕の表れか。

 

「さて。これをスペルカード『以外』で使うのも久しぶりね」

 

 アリスが両腕を左右に勢いよく広げ、指を繰る。その数瞬後、アリスの後ろに人形が現れた。その数8体。アリスの前で構える上海人形と蓬莱人形と合わせて10体。両の指の数。

 

「歌劇『殺戮演武』」

 

 アリスの宣言と指に合わせ、人形達が獲物を構える。

 

「Shall we dance?」

 

 

――博麗神社――

 

 

 一方、魔理沙とルドガーの目的地である博麗神社では、一人の少女がルドガー達の時と同様に魔物と対峙していた。違いは魔物が毛むくじゃらで鋭い牙と爪を持つ狼のような姿であることと、既にその魔物が『事切れて』いること。

 

「ったく。面倒かけるんじゃないわよ」

 

 魔物の死体に向かって悪態を吐く少女。少女の服、赤い巫女服にそれと分離した大きな袖、頭に付けた赤い大きなリボンは、汚れ所々破れてボロボロになっている。今まで少女が、ルドガーの世界でウルフと呼ばれる魔物と戦っていた証拠だ。

 

「異変かしらね。けど、こんな異変アイツが放って置くわけないから多分そろそろ――」

「おーい! 霊夢―!」

「ん?」

 

 少女が自分を呼ぶ声に空を見上げると、見知った少女が後ろに見慣れぬ男性を自慢の箒に乗せて此方に向かって来るのが見えた。

 

「どうしたのよ、魔理沙。それにそっちの人は?」

「コイツはルドガー。異世界からの外来人さ」

「は?」

「魔理沙。この子が?」

「そうさルドガー。コイツが『博麗霊夢』。博麗神社の不良巫女だ」

「シバクわよ」

 

 魔理沙のざっくばらんでほんの少しの悪意を篭めた紹介に、霊夢は眉尻を上げる。

 

 

「……まあいいわ。で、外来人連れて何の用よ?」

「ああ。実は――」

 

魔理沙はルドガーの事と先程の出来事を手短に説明する。霊夢は魔理沙の話に時折「ふむふむ」と相槌を打つ。

 

「成るほどね。じゃあ、アッチのもアンタのトコの魔物?」

「あっち?」

 

 魔理沙が霊夢の示す方に視線を注ぐと、ぼろ雑巾の様に横たわっているウルフがいた。ルドガーもそれを見て「そうだ」と肯定。

 

「ふーん。じゃあ、この異変はルドガー、アンタが原因ってことね」

「おいおい、いくらなんでも短絡的すぎるだろう?」

 

 霊夢の推理に右手を扇ぐ様に振って否定する魔理沙。しかし矢面に立たされたルドガーは黙ったままだ。

 

「……原因、かどうかは分からないが、関わりはある、とは思う」

「まあ、その辺も聞いてみましょうか」

「聞くって……ルドガーはこっちに来たばっかりだって言っただろう?」

「ルドガーじゃないわよ」

 

 霊夢は魔理沙の指摘を軽く否定すると、辺りを少しキョロキョロと見渡し、

 

「居るんでしょう? 『紫』」

「あら? バレてましたか」

 

 霊夢の呼び掛けに、頭に直接響くような声が聞こえてきた。

 

 (この声、何処かで……?)

 

 ルドガーはその声に驚くと同時に、何処かで聞いたことのあるような既視感を感じた。ルドガーがその疑問に戸惑っていると、

 

 

――  ――

 

 

「!!?」

 

 音もなく、いや何とも形容しがたく、それでいて認識できているのか出来ていないのか分からない音と共に霊夢の少し上空に亀裂が走り、スキマが開いた。開いた空間の中には無数の眼が存在し、その眼を背景に一人の妙齢の女性が佇んでいる。紫のドレスに流れる様な長い金色の髪。ナイトキャップ風の帽子を被り口元を小振りな扇子で隠したその姿は、年頃の少女の様にも、洗練された女性の様にも見える。何とも胡乱な姿である。

 

「『この様に向き合うのは』初めてですね」

 

 開口一番。にこやかにルドガーに話しかけると、ソレは名を名乗った。

 

「初めましてルドガー・ウィル・クルスニクさん。私は八雲紫――」

 

 その二の句は、ルドガーも、そして霊夢も魔理沙も予想だにしない一言だった。

 

「この異変の『元凶』です」

 

 




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