八雲紫のおっぱいを揉ませてもらうために土下座する話 作:織葉 黎旺
「えんやっさーほいやっさー」
「何をやっているんだ」
白装束でお祓い棒を持ち、マヨヒガで適当に踊ってたら、訝しげな顔をした藍さんが現れた。
「や、これは、そのですね……」
まさかいるとは思わなかったので、普通に恥ずかしい。が、まあ藍さんならいいかと真実を話す。
「いま、俺は雨乞いをしています」
「雨乞い……? それは何故」
「そりゃあ勿論、紫さんと相合傘したいからですよ!!」
「ああ……お前はそういう男だったな」
聞いた私が馬鹿だった、と言わんばかりの溜息が聞こえてきた。むしろアンタの主のことをこれだけ想っているのだから、喜んでほしい。
「心がけは立派だが、本気で雨乞いがしたいのなら、巫女である霊夢にでも頼めばよかったんじゃないか?」
「…………!」
「気づかなかったのか……」
哀れみの視線を感じる。本職に頼まず、民間療法的な雨乞い(謎の踊りと無数のふれふれ坊主)に頼ったのは間違いだったか。っていうか、守矢の神様にでもお願いしてくればよかった。
「うわー、無駄な努力した~」
「そんなに雨を降らせたいなら、ひとついい方法がある」
「?」
ニヤリと、何か
*
「やあ、どうも紫さん」
「
「まあまあまあ。俺は人生とか、恋の迷路だとかに迷い続けてる男ですから」
何を言っているんだと言わんばかりの、胡散臭いお手上げのジェスチャーを示して、彼女は「それで? 迷った結果そんな堅苦しい和服になったのかしら?」と俺の服を指さして揶揄った。
「ああ、それはほら。礼儀というか、形式なので」
沈黙。聡明な彼女が一切何も反応しない時は、言葉の意味を咀嚼し、意図を読み取ろうとしているサインだ。
「またせたな」
「いえいえ、ちょうどいいところですよ」
紫の瞳孔が開く。閉じる。口が小さく開く。閉じる。なんというか、検算しているような顔だった。
「紫様。わざわざご足労いただきありがとうございます」
紫の手元にある手紙を一瞥して、藍さんは微笑む。
「いえ、それはいいのだけれど……一体これは?」
「はい、結婚式です」
「けっ──結婚?」
お、珍しい反応。撮っておけばよかった。
「はい、ちょっと彼と結婚しようと思いまして。ということで紫様、仲人お願いします」
「わかったわ」
その一言で動揺をおくびにも出さないようになり、速やかに結納の進行を行ったのは流石大妖怪といったところか。しかしその代償か、式が終わる頃には紫の顔には見るからに疲労の色が映っていた。
「結婚おめでとう。私は、少し風に当たってくるわ」
「あ、紫さん!」
スタスタと歩き出した彼女を引き留めようとしたところ、藍さんに肩を掴まれ首を振られる。まだ焦らせ、と。なるほど。いい性格をしている。
「………………」
「あ、ようやく見つけた」
木漏れ日の差す林道の間。いつもの傘を差してすたすた歩く彼女に声をかければ立ち止まって、こちらに少し振り向く。
「あら、ただの散歩なのだから付いてくることないのに。貴方は藍のところにいてあげなさいな」
「いえいえ、大丈夫ですよ。目的は無事達したので」
ほら、そろそろですよ──そう言って、彼女の腕を引く。
「何が────」
──ぱら、ぱら、と。ノックするような雨音が聞こえた。
「──ああ、そういうこと」
「そう。狐の嫁入りです」
抜けるような青空。そこに点在する雲から、まばらに雨が傘を叩く。比例するように強まってくる。彼女の腕を取り、傘に潜り込む。
「こんなことのために、藍に協力してもらったの?」
「いえ、むしろあの人の提案っすよ。俺はあくまで共犯です」
狐の嫁入りとは、言うまでもなく天気雨のことで、これが見える日には不思議な嫁入り行列が見えるとか何とかそんな言い伝えがあるが、格式高い九尾の狐である八雲藍の嫁入りともなれば、それは
「もしかして、ちょっと寂しくなりました?」
「いえ、むしろせいせいしていたところよ」
凛とした横顔、胡散臭い笑顔。そんな彼女の頬に、そっと雨水が伝った。