「ハイエルフ」……エルフの中でもとりわけ魔力が高かったり、特別な能力を持っていたり、特別な魔法が使えたりするエルフのことを指す。
最近はエルフと人間が婚約するのが珍しいことではなくなってきており、ハイエルフは年々減少傾向にあるとされる。……らしい
「で、俺がハイエルフだと何か問題が?」
「いえ、システム上問題は有りません。ちゃんと登録自体はできますよ。」
「なら良かった。」
ホッと胸を撫で下ろす。
「ただ少し……いえ、かなり珍しい種族になりますから取り乱してしまいました。申し訳ありません。」
「ん、別にいいさ。特に不快に思った訳でも無いしな。で、他に問題とかは無いか?」
「ステータスが全体的にかなり高めですね、あと魔法適性が無いようです。エルフなのに珍しいですね。」
それを聞いてがっくりと肩を落とす。
「魔法が使えないのか?」
「ええ、使える魔法は一切無いと思われます。」
「そうか……」
正直少年を助けるために魔法系の職業に就こうと思っていたのだが……
「でも、魔法適性が無い、ということは何か特別な能力があるということではないでしょうか?」
残念そうにする俺に受付嬢がフォローを入れる。
「なるほど、それは何なのかわからないのか?」
「現時点では分かりません。なにかのきっかけで能力が覚醒するかもしれませんね。」
「なるほど……ついでに、魔法適性が無い奴って何割ぐらいなんだ?」
「一割くらいですね。」
「一割か……なんともいえないな……それで他には?」
「あとは、え〜と実戦経験が、ほぼ無いのでしょうか?Fと出ていますね。」
「あぁ、実戦なんてしたことはない。」
それを聞いた男が茶化す。
「おい、聞いたか?実戦経験ゼロだってよ!これはとんだお嬢様だぜぇ〜っ!」
「うるせぇ、死ね」
あくまで大人の対応で流す。
「あ?いくら美人でも言って良いことと悪いことがあるぞ?」
受付嬢が止めに入る。
「まあまあお二方、落ち着いてください。」
「はっ、しゃあねぇな、受付嬢とお前の顔に免じて許してやるよ。」
「それで、実戦経験は無いと駄目なのか?」
男を完全に無視して話を進める。
「実戦経験がFでは冒険者証は仮のものとなってしまいます。ギルドで実戦形式の訓練をすることを薦めます。」
「あぁ、元よりそのつもりだ。」
「では、ここで住み込みで働きながら訓練するコースか、お金を払って通うコース、どちらがよろしいでしょうか」
「住み込みコースで頼む。」
「はい、承りました。では、そのように手配させていただきます。明日の朝にここへ来てくださいね。」
という流れで住み込みで働くことになった。
そういえばスティルはどうしているのだろう。
周りを見渡すとスティルはまた男たちに囲まれていた。
だが、剣呑な雰囲気ではないようなので何もせず見ていると、スティルが俺の視線に気付き、こちらへ向かってくる。
「冒険者登録は終わりました?」
「あぁ、訓練は明日からだそうだ。」
「では、とりあえず今日は宿をとって休みましょうか。」
「そうしたいが、俺は今金が無いんだ……」
「1泊分くらい僕が出しますよ。」
「すまないな、いつか絶対ちゃんと返すからな。」
2人で宿屋に向かった。
宿屋には人の良さそうな女将がいて、行きつけなのか入ると、
「おやおやスティルじゃないか、美人さん連れて今夜はお楽しみかい?」
なんてからかわれたりしていた。
それに対してスティルは
「違いますよ!ただのパーティメンバーです!」
と言って反論していた。
「冗談だよ!2人で2部屋で良いね?」
料金表を見て、気になった俺は
「ちょっと待ってくれ、相部屋の方が安いんじゃないか?」
こう聞いたが、スティルが食ってかかってきた。
「いやいやいや!同じ部屋はまずいでしょう!?」
「だが、こっちの方が安いぞ。」
そんなやり取りを見て女将はニヤニヤしていた。
「たしかに相部屋の方が安いねぇ……どうするんだいスティル?」
「いや……でも……」
と食い下がるスティル。
「スティルは何もしないだろう?」
と挑発にも似た態度をとる俺。
「はぁ……わかりましたよ。では相部屋をお願いします。」
「了解!相部屋1部屋ね!」
部屋に着くと普通サイズのベッドが2つに机が2つ。
中々にシンプルな宿屋のようだ。
「じゃあ、俺こ〜っち!」
と右のベッドに飛び込む。
「じゃあ僕はこっちですね。」
と荷物を置き、左のベッドに座るスティル。
俺はというと随分と久しぶりに感じるベッドだからか、早くも睡魔が襲ってきていた。
「眠い〜。」
「まだ夕方ですよ?寝るには早いのでは……もう寝てるし……」
結局、俺は次の日の朝まで寝ていた。
そんなこんなで転生1日目が終わったのであった。