海の底から出現する、正体不明の無数の艦艇群。人はそれを、深い海に棲む艦艇……「深海棲艦」と呼称した。
駆逐艦級から巡洋艦、航空母艦や超弩級戦艦まで、多彩を極める深海棲艦の攻撃により、人類は制海権を喪失。各国は次々と国交を寸断され、世界中が恐怖と絶望に陥った。
その最中、在りし日の艦艇(いくさぶね)の魂を宿す者たち、「艦娘」が現れる。
現代兵器ですら敵わなかったという深海棲艦に、唯一対抗できる力を持つ艦娘たち。彼女たちの存在は、それまでただ耐え忍ぶだけであった人類に希望と勇気を与え、その未来を明るく照らした。
彼女たちは人類の制海権を奪回するために、今まで幾度となく戦い、その度に傷つきながらも、諦めることなく今も戦い続けている。
恐らくは、これからも。
最初の艦娘が表れてから、二年が過ぎた頃。
何らかの力によって、過去の因果を繰り返す艦娘たち。その中で唯一、運命の軛ともいえる因果を断ち切る力を持った艦娘、特型駆逐艦一番艦、吹雪。
彼女がその力を得るに至るまで。彼女が因果を断ち切る中。彼女がソロモン海で、"彼女"に出逢うまで。
その裏には、出逢いと別れ、それぞれの艦娘が抱いた思い……沢山の物語があった。
今まで決して語られることのなかった、艦娘たちの過去や、吹雪のいない場所での出来事。
ここでその全てを語ることは残念ながらできないが、その一端に触れ、記憶を紡ぐことで、その物語は永遠となるだろう。
これは、艦娘によるとある一大反抗作戦が開始される以前より、幾多の海を戦い抜き、数多の海を駆け抜けた、深海棲艦との戦いで活躍し続けた艦娘たちの、それぞれ唯一無二の物語。
その中でできた繋りと絆を、今ここに伝えていこう。
あの物語の、裏側を。
「オラオラ、どんどん来やがれ! 全艦ぶった斬ってやるぜぇ!」
「睦月型だからって、ボクらを舐めてちゃ痛い目見るよっ!」
「僕はもう……皆が悲しむのを見たくない……僕が、皆を守らなきゃならないんだ」
「皆で一緒に一番になろう! それが、いっちばん楽しいよ!」
「俺達は"愚連隊"だ。悪党なら悪党らしく、カッコつけて行こうぜ」
「ガンガン行くのがあたし達のやり方よ! 覚えておきなさい!」
「だーかーらーっ、前髪はやめてくださーいー!!」
「妹たちが見てるんだもの。ネームシップの私が、いいとこ見せないとねっ!」
「今できることをするのみです。それが艦娘としての使命」
……おや? 私は誰か、と?
……名乗る程の者ではないよ、私は。
私はただ、彼女たちの軌跡を見てきた…………ただの、語部だ。