フランドールは『ありとあらゆるものを破壊する』ことができる。
このことは紅魔館で暮らす者たちやある程度紅魔館と関わっている者は皆知っている。
だが最近、フランドールの能力が少し変わってきている事は誰にも知られていない。
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とある日の事。
紅魔館で咲夜はケーキを魔理沙に振る舞っていた。
なぜこんなことになっているかと言えば、前日の騒動が原因だった。
魔理沙は咲夜に助けられたお礼に一つだけ何でもすると言ってしまったのだ。
咲夜の返答は紅魔館で持て成されること、である。
「…咲夜。これって」
「フランドール様の大好物、とだけ」
目の前には妙に赤いベリーソースの掛かったレアチーズケーキが一つ。
咲夜は薄く笑みを浮かべている。魔理沙は苦い顔をしながら口をヒクつかせていた。
魔理沙は震える手でフォークを握り、ケーキを一口大に切る。
「なあ、咲夜。これの原材料はなんだ?」
「蔓苔桃(クランベリー)、木苺、砂糖たっぷり塩少々。あとは秘密」
秘密ってなんだよ!と叫びたいところをぐっとこらえる魔理沙。その頬に一筋の汗が流れる。
その時、魔理沙の背後にある扉が開け放たれた。
「あ、魔理沙だー」
現れたのはフランドール。眠たいのか目を擦りながら魔理沙の元に歩み寄った。
「おはようございます、フランドール様」
「うん、おはよう咲夜。それって私の好きなヤツ?」
フランドールの言葉を聞いたときに魔理沙はひらめいた。このケーキこいつに押し付ければいいんじゃね?と。
思い立ったが吉日。魔理沙はさっそくフランドールにケーキを売り込むことにした。売値は当然ゼロ。
「よおフラン。このケーキ食わないか?私はあいにく腹いっぱいでな」
「いいの?じゃあ…あーん」
フランドールが魔理沙の前で大口を開けてじっとしている。その意図に気が付いた魔理沙は今までに見せたことの素早さ、かつ繊細さでフランドールの喉を突かないように口に放り込んだ。
もぐもぐと咀嚼するフランドールを見て咲夜は困ったような、可愛いものをみるような、不思議な笑みを浮かべる。
「んー、やっぱコレね。血抜きブラッドケーキ」
「は?」
魔理沙の口から気の抜けた声が漏れた。
「おいフラン、血抜きブラッドケーキって何だよ」
「え?魔理沙知らないの?これは血の入ってないブラッドケーキなのよ」
「それって酒を使ってない焼酎くらい矛盾してるぜ」
「私もそう思ってるんだれど、お姉さまがそう呼べって。犬にネコって名前を付けるくらい変よね」
二人してやれやれと首を振った。イタズラの失敗した咲夜は少し残念そうに笑みを浮かべる。内心ホッとした魔理沙は何となく視線を泳がせ、いつからかあった紅茶の入ったカップを手に取った。
そういえば最初に色の薄い紅茶を出されたなーと思いながら魔理沙は口を付けた。
「あ、それはフランドール様の分で魔理沙の分はあっち…」
咲夜が言い終わらない内に、紅魔館の一角で超小規模の紅霧事件が発生した。
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「もー、魔理沙ったら私のお茶を飲んだと思ったら吹いちゃって。何がしたいのかしら」
フランドールは咲夜の手によって汚れひとつなく超小規模紅霧事件を脱した後、紅魔館の中を散策していた。
この館から出ることの無いように姉に強く言われているため、フランドールは娯楽に飢えているのだ。
「ふっふっふ…小悪魔もワルねぇ」
「いえいえパチュリー様ほどでは」
そんなときに聞こえてきた誰かの声。それはフランドールの好奇心を刺激するのには十分であった。
彼女は声の聞こえてきた方にある扉を押し開けた。魔術的に施錠されているにも関わらず無理に押したせいで扉は真ん中から真っ二つに折れてしまっている。そう、フランドールにとって扉を壊すなど夜起きて歯磨きをするよりたやすい事なのであった。
「うひゃいっ!?」
「なっ!何奴っ!」
中に居た魔法使いが誰何の声をあげる。そこは図書館であり、中に居るのは当然パチュリーと小悪魔であった。
フランドールはパチュリーと小悪魔の間にあるテーブルに乗った白い塊に興味深々。パチュリーへの返事もそこそこにその白い塊に近づく。
「あ!駄目よフラン!」
しかしパチュリーの制止はあと一歩遅く、フランドールはその白い塊を手のひらで触れてしまった。ネチャリとした不快感がフランドールの手に伝わる。
「ん…なにこれ」
「トリモチですよフラン様…」
フランドールは手を持ち上げても離れない白い塊を不思議そうに見る。小悪魔はため息を吐きながらも律儀に答えた。
そう、これは呪術的に強化された、いわばスーパートリモチ。燃やそうが凍らせようが、吸血鬼のパワーをもってしようが取り除くことは難しい、パチュリーと小悪魔の合作捕獲用具であった。対象は本泥棒である。
しかしそんな事をフランドールが知る由も無い。彼女は愚かにも、もう片方の手で取ろうとして両手をくっつけた格好のままどうしようも無くなっていた。
「ぬぐぐ、取れないよパチュリー」
「…はぁ、この子はまったく」
そういって呆れながらも解呪薬を取り出そうとしたパチュリー。しかしまたも一歩遅かった。フランドールが自らの能力を使ってスーパートリモチを粉砕してしまったのだ。
バチーン!と小気味よい音を立てながらフランドールの手が離れる。彼女の手に着いた部分だけ取ってしまおうと思っていたパチュリーはあんぐりと口を開けたまま固まってしまった。
それに気が付いたフランドールはパチュリーに問いかけた。「どうしたの?」と。しかし返事はない。
「ええと…パチュリー様はお疲れのようですのでそっとしておいてあげてください」
「…?うん、わかった」
そして図書館に興味を失ったフランドールはパチュリーを一瞥した後、立ち去った。そして小悪魔は大きなため息を吐く。
その手の上には香霖堂からの請求書。呪術を掛けるうえで色々と試した際に使い込んだ金額が綴られており、それはパチュリーのポケットマネーとほぼ同額。
その上呪術は色んな効果が重複して訳の分からない雁字搦めになっているため、再び同等の効果の物を作ろうと思えばこれと同額掛かるのだ。
最悪な事にフランドールが壊したのはオリジナルのスーパートリモチ。魔法によって増殖させようにも元が無くてはコピーは作れない。
たかが凄いトリモチの為に散財し、その上トリモチは粉みじん。パチュリーが真っ白になるのもやむなきことであった。
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さて、そんな事件を起こしたとは露ほども知らないフランドールは姉であるレミリアと共にお菓子を食べていた。
傍らには咲夜が立ち、淀みのない動きで紅茶を淹れる。
「それでね、魔理沙ったらお茶を口に含んだと思ったらいきなり吹き出しちゃって」
「ふふふ、それは可笑しいわね」
「でしょ!?もー魔理沙ってば何考えてんのかほんとわかんない!でさでさ、さっきパチュリーの所に行ってみたら白くてべたつく何かがね…」
はしゃぎながら話すフランドールに合わせて微笑むレミリア。彼女はフランドールの変化を大変好ましく思っていた。
狂気に駆られなくなったのは魔理沙と友達になってからのことではあったが、すべてが魔理沙のおかげという訳ではない。
それはレミリア。フランドールの運命を見定めながら、フランドールの能力を誰も気が付かないほど緩やかに変化させているのだ。
「そういえばフラン、美鈴の管理している花壇の話なのだけれど…」
彼女は運命を操る指揮者。フランドールの能力が『あらゆるものを
フランドールが
咲夜の悪戯
魔理沙の咽
パチュリーのトリモチと財布
小悪魔の安息
美鈴の花壇←NEW
トリモチを使いすぎると泥棒に羽が生えるらしいですよ。