Fate/EXTELLA revival at the Xazaria 作:くりふぉと。
エクステラでの闘いが終わり、エクステラリンクのように幼女化せずに、別の世界線での歴史の中に漂流したアルテラの話です。
ワタシ……私は何だ?
私は……
自分の
それを探る為に、意識の方向をあらゆる方向に向ける。
知識の倉庫を駆け巡るような。
そうして得た結論は、『ただ、戦う存在』ということだけだった。
「――――!」
無論、その結論について悲観的に思わない。
戦うとは、未来を切り開くことだ。
戦わずに、目の前の課題から目をそらし、逃げることなど、ただ愚かな家畜と同じだ。
私は人間、いや、本質は人間ですらない。
そう、私は――――
人間が作り出した文明を否定する、太陽系外の宇宙をただ流れる遊星、ウェルバーの尖兵だ。
思い出す。
地球という、人類がただ唯一生存する星を見守る塊。
月だ。
月の中に存在する、ムーンセルオートマトン。
そこで私は戦っていたはずだ。
そこでも、ただひたすら戦いだった。
御旗を振るフランスの聖女、雷鳴を轟かすほどの豪快なチャリオットを従え小アジアを荒らしたマケドニアの征服王、そして人類史最古と呼ばれる文明勃興の地ウルクにて王の原点としての地位を築いた尊大な黄金の王。
彼らの性質、主義は様々だろうが、結局は力でねじ伏せた。
従わぬのならその存在を消すまでだったが、意外にも彼らは従った。
ただの下僕では納まらない存在であることは記憶している。
そして――――
私の虜。
ムーンセル、月の聖杯戦争の勝利者でありながら、太陽系知的生命の破壊の尖兵である私に対して、私の宿命を汲み、言葉では表し難い時間を共に過ごした気がする。
虜である奴に何の意味があったのだろう。
所詮力でねじ伏せてきた相手で一時の恭順を態度さえ示していればよかったものの、私の奥底で眠る願望をすくいあげようとした、あのねぎらいは、連続する私の意識、記憶の中で何よりも代え難いモノだ。
にも関わらず。
あの、瞬間に戻ることは出来ない。
あの、不思議な感覚を体感することは出来ない。
もう、私の虜は行ってしまった。
行ってしまった。
遥か遠くに、といった距離で図れるものではなく、そもそも私が知覚できる世界には届かないものなのだ、とこの胸にその喪失感が突き刺さる。
――――ああ。
今は私は何を私の存在理由としよう。
そもそも、私は月での戦いで消滅したのではなかったのか。
この意識は、なぜ自分を知覚できる――――――?
土の匂いだった。
次に感じたのは、大地に生える草原だった。
一面、どこまでも広がる青い空。
私の魂がここを知っている、告げている。
ここは――――
「これは……セイバーか」
「――?!」
見慣れた光景をただ、一人で眺めているという状況だと勝手に錯覚していた。
背後に男。
まず彼は斬るべき敵なのか、との思考が働くも、何も手を出してきそうにない。
彼が発した言葉……セイバー……聖杯戦争に紐づくワード。
セイバー。英霊を地上に召喚する時に与えられるクラスの1つだ。
ということは、彼はマスター、私はサーヴァント……?
「なぜ喋らない?」
「……どうやら私をサーヴァントとして呼ぶにあたりエラーが起きたらしい。私も些か混乱している」
「ふーん?」
マスター、らしい男は少年の面影が残っている。
確かに、その衣装に武具は、その大地の様式い相応しいものだ。
が、その中でもとりわけ高貴な者だけに許されたもののようだった。
「アンタを呼ぶときに、ちゃんと触媒も用意したんだ。
だから、君のことは分る。
そうだろう? フン族帝国の王さま」
「お前は誰だ」
「俺の名前はブラン! この国の次の王さ」
「この国?」
「そう。
……俺たちは元々、大地を荒らしまわった支配者の傭兵だった。
元々は名乗りを上げたての、一部族に過ぎない。
しかし、東の中央国家を自称する、宋や北魏の奴らが力を増し、その帝国の力は弱っていった。
その中で傭兵集団で頭角を現していた部族集団が国を成した。
その時期当主が僕ってわけだ」
えへん、とわざとらしい演技をする。
どこまで本気で喋っているのか。
「しかし、戦いの日々は終わらない。
北にはルス人。南にはアラブとトルコ。西には一つの場にしかとどまることしかできない白い原住民ども。
だから、とにかく略奪だ。
首都の
早くコーカサスを越えて何かして巨大な湖を治めたいなぁとかそんなことを考えている毎日さ」
彼の顔には野心しかなかった。
とにかく世界を支配してやろう、という意思が、どこかふざけた態度からおもむろに出ている。
「下らない」
――え?
「……と思っただろう? 君の心の内を呼んだ」
「でもまあ、僕は本気なんだ。――――そして君のことも」
?
「君がここに召喚された理由、ここにいる理由は、あるんだ。
かつてアンタが蹂躙した土地に、今度はサーヴァントとして顕現したんだ。
ここに、何の因果がないわけがない。
やりたいことはただ一つ。ただ、新たな歴史を築くんだ」
「新たな歴史だと?」
「ああ。僕には秘密がある。まだ誰にも話したことがない。
これからお前には明かすからお前にだけは秘密ではなく共有すべき前提になる」
ブランという男は続けて話す。
「俺はな、この世界で生まれる前の記憶がある。
いわゆる転生者、というヤツだ」
転生者……。
「聞いたことがある。南方の宗教――――西の蛮族が信仰するキリスト、イスラム、ユダヤ教にも属さない……仏の教えというヤツか」
「君の言っているのは輪廻転生のことを言っているのかな? その概念も仏教が解いている一つに過ぎない。前世、俺は敬虔な信徒……というわけではないけれど、世界を憂いていたんだ」
「そうか」
「あの世界では、生活水準、利便性、飢餓の心配は消え失せた。一般人……民は文字を書いたり読むことができる。学ぶ機会もある。だが、相変わらず嘘、欺瞞、怠惰がまかり通り、偽りの情報で民が富を虐げられている世界なんだ。自由を獲得しているようで、偽りの常識で結果的に世界に対して無知を強いられている」
「……言葉上での意味は理解は出来るが、お前の話は難しい。それが何だというのだ?」
「この地から西の人間どもは数百年後には技術を身につける。
やがてこの大地を動き回る術を見つけ、一瞬でこの星を亡ぼす兵器を開発しこの地球を支配するようになる。
産業革命だとか近代化って言葉があってね。とにかくそこからおかしくなった。
技術発展のスピードが異常なほど早くなった。
それを喜ばしいと思う者はいるだろう。
でもね、それは文明の破滅を早めるんだ。
それを扱うだけの高い精神性を、まだ人類は持ち得ていない。
だから争い、自滅の道へ向かってしまう」
「破滅を早めるのを防ぎたいから、そのきっかけとなる地、文明を破壊するだと?
――――それは矛盾している。
結局、その文明の破壊者がその代わりをするだけではないのか?」
「それは違うよ。
ただ、まだ未体験のIFの世界――――新しい世界が見れる可能性があるのなら、それを見たいだけなんだ。
牧歌的な生活。
食事を楽しみ、それを感謝し、おいしい空気を味わい、体が汚れれば水を浴び、男女は適齢期に結婚し、次代の生命を築き上げていく。
もちろん、外敵が全く存在しない、というのは不自然な状態なんだ。その存在は許そう。
そういった障壁に立ち向かって、体を動かし頭を使い、より良い明日へ向かっていく。
こんな当たり前が許されない世界なんて……おかしいんだ……おかしいんだよ、アルテラ」
「アルテラ……とは私のことを言っているのか?」
「ああ。生前、歴史を学んだことがあってね。そこで過去に起きた歴史を学ぶ機会があったんだ。僕のいた東の果てを越えた国でもマイナーだったけど……ここ、ハザール国の地を統治していた国、フン族の王アッティラという王がいた」
「……」
「後世に伝わる書物では、アッティラの風貌はこう。低身長で褐色で丸い鼻、ただそんな醜くくも堂々と振る舞う王としての気質は確かにあったと」
「君のその孤高な、泰然とした振る舞いには確かにそれに合致すると思う。……あと褐色なところも」
なめまわすような視線に、命の奪い合いとはまた別の、寒気を感じる。
「おいじろじろ眺めるな」
「……サーーセン。でもそんな露出度が高すぎるアルテラも悪……話が脱線したから元に戻すよ。一部合致するところがあれど、君はそんな記述と大きく異なる。身長もそうだけど、君は女の子だ」
「王に性別が関係あるのか?」
「女性が王様になっちゃいけない、ってことを言いたいんじゃない。ただ君は、僕が知る歴史の世界線からはは外れた世界で進んでいったんだろう。
本質は同じでももう目の前にいる存在はアッティラ王ではない。
だから違う名前で呼びたいなって。
だからアルテラ。
それでね。本来違う世界線で生きた者同士がこうして同じ時間軸に相対するのがなんか感無量だと思ってね。
何が言いたいかというと、そんなこともこうして現実に起きているわけだから、僕らが手を組めば何か新しい世界が開けるんじゃないかって思ったってだけさ」
「新しい世界、だと?」
「そう。アルテラ。僕は君と一緒に世界を見たい。ただ一方的に僕の願いに付き合わせるつもりはない。だから聞く。アルテラ、君の願いは何だ?」
そう質問を振られ、口を動かそうとするも、その答えがすんなり出てこない。
「私、私は――――」
そう。
私はあの遊星の尖兵として月、ムーンセル世界へと侵攻した。
その際に、サーヴァントとしての力を発揮する為に我が虜を奴隷として従えていた。
最初はただ、その機能を発揮してもらうだけの存在としてしか見ていなかった。
最低限の会話をなすつもりが、いつの間にか彼と言葉を交わす時間が、私にとって大事な時間になった。
ただ、もうその彼は存在しない。
どの時代、空間、次元に身を置けば会えるのかなど見当もつかない。
ただ、心の中を優しく撫でられるような、そして安寧を与えてくれる存在が隣にいてくれる。
それを疑似的にでも、そんな感覚を欲しているのだろう。
「理解はしているけれど、言葉には出せない。いや出したくないならそれでもいい」
……このブランという王は私の心を見透かしているようだった。
もしその上でしつこく追及するのならその首を刎ねて殺してやるところだった。
サーヴァントの私になら、いかに彼が武功で名を上げている人間でもそれは造作のないことだ。
「その答えが出るまでは、僕の隣で探し求めればいい。必ず見つけ出させるって約束するよ」
……。
必ず、ときた。無根拠だとしか思えない。
いや、口に出してそれを何が何でもつかみ取る、という野心家の性故の言葉だろうか。
それを礎にこのハザールという国で王の座を掴みとったと言われれば、その言葉は受け止めることが出来る。
「分かった。お前と共に突き進もう。新たなるマスター」