Muv-Luv The alteration   作:詩仙堂黒猫

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01-10:はじまりの篝火

1998年10月31日 青山練兵場

 

この日、明治神宮外苑に位置する青山練兵場は異様な雰囲気にあった。

BETAによる横浜陥落から10日ほどしか過ぎていないのであるから、警備が物々しいのは仕方がない。

だが、それでは片付けられぬ程の緊張感を警備の兵たちは醸し出していた。

実はこれには、横浜陥落の報から数日も立たずに軍部関係各所に一つの連絡が回ったことにあった。

それは、御前試合を行うというこの状況下においてもっとも異例の通達であった。

何故今、皇帝の代理として式部長官、政威大将軍たる煌武院悠陽並びに五摂家の主だった面々が揃い行うのか、様々な憶測や推測が飛び交った。

その渦中の人物の一人、武は本日何度目になるか忘れたため息を、準備された帝国軍の不知火の中でついていた。

すでに帝国軍の強化装備に身を包み、機体の状態確認も終わらせてまもなく始まる模擬戦の事を考えていた。

しかし、その表情は格好に合わずどこか腑抜けていた。

 

「今更ながら、和哉はどこまで考えているのかな」

 

武はそうぼやく様な呟きを口に出しながら、こうなった経緯を思い返す。

 

 

「あと模擬戦前に、武と一騎打ちをやらせて頂きたいと願います」

 

あの時、和也の口から出た言葉の真意を理解できなかった。

何か企みがあるだろうぐらいしか考えつかなかった。

だから、武は小声で呼びかける。

 

「和哉」

 

その声に応えるように和哉は武の方へ顔を向けて言う。

 

「武、これはいい機会でもあるんだ。こっち(・・・)に来てからまだやっていないだろう」

 

和哉は武の耳元に顔を寄せると、背後に控える真耶に聞こえないように注意しながら呟く。

 

「それに・・・相手に侮られていての勝利など欲しいか?」

 

 

武はあの時告げられた言葉を思い返しながら、再びはぁと深く息を吐く。

 

「わかってはいる、わかってはいるけど・・・なんか上手く乗せられたような気がするんだよな」

 

和哉から武へ伝えられた模擬戦に関することは少ない。

模擬戦に不知火を使用する事も実は前日になるまで知らなかったくらいだ。

同じくそれが御前試合と通達されていることは知る由もない。

その代わり、昨日まで簡易であるが士官教育、基本教練と戦術学を朝から晩まで受けていた。

正確には知識の誤差や武の認識で語弊がないかの確認作業であったが。

さすがに戦闘技術訓練までは許可が下りなかったが、最低限帝国軍士官候補生として問題ないとされている。

 

「まあ、本気でやりあうってことは理解したけどね」

 

模擬戦に不知火を使用する理由はひとつ、全力でこいという和哉からの無言の合図なのだろう。

また、シュミレータによる公開戦闘をしないのもそういう事なのだろう。

例えハイヴ攻略をさせたとしても二人の本当の実力を把握はできないだろう。

なぜならばシュミレータによるハイヴ攻略、すなわちヴォールク・データ攻略は和哉、武の二人にとってできて当たり前の事でしかない。

細かな経緯は省くが、この二人は前の世界でヴォールクによるハイヴ最下層到達まで機体損耗率80%以上での攻略をラスト・ガーディアンへの入隊最低条件となるほど当たり前の事にさせたのだ。

それゆえに、前の世界では入隊後には仮想訓練で地獄を知ってもらうためにハイヴ内のBETA出現数を3倍に設定したノーマル、出現数5倍に加え戦略思考を持ったBETAがでるハード、ハードにBETAの耐久性、移動速度を2倍にしたナイトメアなど戦略難易度を設けた訓練データを作成したのだ。

これらを作成した経緯としては、和哉が現実に起こりうる可能性が高いものにいつ何時だろうが対処できるようにという危機管理と、これ以上の地獄を戦い抜いてもらうために絶望を知らなければいけないという前提を基にしていた。

もっとも、これらのデータ攻略は所詮訓練程度にしかならないだろうというのが和哉の予想であった。

実際に実戦を経験した者たちは、このデータ攻略を慢心する事なく日々精進に励めるぐらいに思っていた。

本題がずれたが前述のとおり、この時点でのシュミレータによる結果など二人は全力を出し切る事無く終わらせる事ができるので、二人の実力を把握することは難しい。

また、それの結果を全部の衛士が信用することはないだろう。

データを改竄したのでは?とか所詮は仮想訓練に過ぎないなど様々な意見が出るだろう。

ならば、実践を持って実力を見せるのが一番手っ取り早いのである。

その事は武も理解しているのだ。

これ以外に自分達の衛士としての力を見せつける方法がないという事を。

それゆえにこの時代において前線において現役の戦術機を選んだ。

その中でも1998年現在において武の操縦に持ちそうな機体は不知火ぐらいだ。

一応、候補外であるが不知火・壱型丙も存在するが元々生産数が少ない上に現在配備されている部隊はBETA進攻最前線がほとんどだ。

ただでさえ不知火を使わせて貰っているだけでありがたいというのに、最前線から貴重な戦力を減らすなど愚の骨頂である。また不知火・壱型丙は難があれど性能は高いので衛士の技量を知るのには不向きな機体といえる。

吹雪の間接部などを強化改良する案もあったが、1週間程度で部品を新造できれば前線で戦っている衛士や整備兵も苦労はない。

和哉の推算だとメーカーを巻き込めば製造で約1週間、改修作業で約1週間の見積もりで2週間、自分たちだけでやれば部品強化で約1ヶ月、改修で約1ヶ月で約2ヶ月ぐらいだと予測している。

だが、これは大きな問題が発生しないという前提であるので、最低でも余計に1週間は多く見積もった方がいいだろう。

本当ならば篝火を使えれば問題ないだろうが、前提と諸事情によりこの勝負(・・・・)では使うことができない。

よって、今回の一騎打ちには起動時間が85時間以下(・・・・・)の予備機の不知火が使用されている。

新品同様の不知火はこの時期のこの状況下では無理な要求で、その辺を把握している和哉が最低限の条件として提示してきたのがこれである。

85時間以下と限定されている理由は戦術機の整備状況と各部の損耗率にある。

実戦配備されている戦術機には常に部品の消耗という現実があるため、整備兵に暇はない。

特に横浜陥落から一週間ほどしか経っていない現状ではBETA襲撃に備え、予備機も起動できるようにしておかなければいけない。

そんな中で、85時間とはギリギリの妥協点である。

100時間を目安とした「フェイズ点検」と呼ばれる計画整備の中では大掛かりで時間が掛かる。

これは耐久期間を超えた部品の交換など細かな部分の作業も行う為で、この作業中の機体の代換機で使用されるのが予備機である。

そこで「フェイズ点検」を目前にした90時間までならばよほどの事がない限りは、日常的に行う計画整備の範囲で問題は解決できているという理由で和哉が要求したのだ。

もっとも実際に実弾を浪費する訳ではなく、統合仮想情報演習システム「JIVES」と模擬刀並びに模擬弾を使用した一騎打ちではあるが。

 

『状況開始まで残り90秒』

 

考え込む武へ管制室から開始への秒読みが告げられる。

その声を合図にに百面相していた武の表情が一変する。

 

「やるか(・・・今回はどう攻めるべきか)」

 

武は開始と同時に取るべき初手とそれに対して和哉がどう対処するか瞬時に考える。

また、それに対しての自機に掛かる負担をおおよそであるが推算する。

 

『状況開始まで残り60秒』

 

互いの不知火に施されている武装仕様は強襲前衛。

その他の条件は和哉も同じ。

 

「(長々と戦っていては不知火が持たないだろう・・・)」

 

『状況開始まで残り30秒』

 

だが、武が3次元多角形機動を前提に戦うのなら話は変わる。

和哉の”本気”と雌雄を決めるには、この不知火での長時間3次元多角形機動の連続仕様は不利である。

 

「(なら・・・)」

 

ならば取るべき手段はただひとつ。

 

『カウント入ります、10・・・・9・・・・8』

 

短時間による決着、ただそれだけである。

 

「出し惜しみはしない!」

 

『状況開始』

 

武の不知火は開幕の合図と同時に噴射滑走による3次元多角形機動を駆使して突貫してくる。

さらに武は3次元多角形機動最中に87式突撃砲を前面―――和哉の不知火に向けて掃射する。

和哉は突撃砲による掃射を最低限の半身ずらしながらの数回のステップで回避していく。

そこへ追撃とばかりに突貫してくる武の不知火による長刀の横薙ぎを和哉は長刀を斜めに構えながら、踏み込んで迎え受ける。

火花が散り、金属音が鈍く響きながら武の斬撃を刀身を擦るよう、されど刀身に負担をかけないように流す和哉。

噴射滑走の勢いで押し潰すように斬ろうとする武の長刀を和哉の不知火は上半身と長刀の動作で受け流したのだ。

横薙ぎを受け流された武は、そのまま不知火を和哉の後方へと駆け抜けさせる。

駆け抜けると同時に担架システムの87式突撃砲を起動させ、背面に向けて掃射する。

その掃射を危なげもなく横に退く事で避ける和哉。

機体を急旋回し、再び長刀を構えて飛び込んでくる武。

和哉が長刀を再び受けの構えをしたままで担架を起動して87式突撃砲を前面に掃射する。

武も長刀を構えたまま担架を起動し87式突撃砲を前面に掃射する。

互いの流れ弾によって土埃が盛大(・・・)に巻き起こると同時に金属音が大きく響いた。

だが、響いただけである。

それ以上何もなかった。

徐々におさまっていく土埃の中から姿を現したのは和哉の不知火だけであった。

観客席に動揺の声が広がっていく。

それを余所に和哉は空を仰ぎ見た。

そこには雲ひとつない青空と輝く太陽、そしてそれを背にした武の不知火があった。

空高く、太陽を背にした武が急降下してくる。

武の不知火が長刀を振り上げ、上段の構えで駆け落ちてくる。

 

「はぁぁぁぁあああああ!」

 

最悪でも相打ち狙いの悪手になるが、ここ以外に勝機はないと踏んだ武の一撃

 

『そいつは』

 

だが

 

『悪手だ』

 

それに対して慌てる事無く、和哉の不知火が上半部を捻らせながら右手(・・)に構えた長刀を一歩踏み込んで突き出した。

 

 

わずか半歩の差

 

されど、それが今回の試合の決め手となった。

 

『楠木機、左腕損傷、小破』

 

武機の正面からの一撃を左肩から受けた事で左腕大破と引き換えに

 

『白銀機、管制部致命的損傷、大破。状況終了』

 

「くそ、今回はオレの負けか・・・」

 

和哉機の片手突きによる一撃が武の不知火管制部を貫いたのである。

 

『いいとこまで押したけどな』

 

しょげる武の耳に和哉の声が聞こえる。

 

「そういえば、これで何回目だろうな」

『確か四桁は超えていたはずだ』

 

勝敗とかは一々覚えておくのは面倒だから忘れたな、と和哉が疲れたように言う。

武は心の中で嘘をつけと思った。

和哉が、記憶と言うものを”重視”する人間なのは長い付き合いの中で理解した事だ。

そんな人間が些細事とはいえ”相棒”との付き合いを忘れていないだろうに静かに溜息をつく。

 

わずか5分足らずの勝負

 

将校や士官の多くは武の機動に注目していた。

だが、見るべきところを見ている者はいた。

この流れを見ていた左官の一人は隣に座る同僚に言う。

 

「凄いですな」

「ああ、あれあいつらの機体じゃないんだよな」

 

同僚は確認する様に問いかける。

 

「ええ、90時間以下の予備機を回したという話ですが」

「それにしては違和感(・・・)を感じさないな」

「そうですね」

 

その会話を黙って聞いていた彼らの上司たる将校が口を開く。

 

「両方とも大したもんだが、特にあの小僧、楠木だったかな。あいつのあの動きは完成された動きだ」

 

武の機動を完全に予測したような片手突き。

 

「あの最後の切り替え、おまえの部隊(ところ)で何人ぐらいできる?」

「・・・おそらくですが、モノにできそうなのは2、3人でしょうね」

 

将校は普通ならそうだろうなとどこか面白気に笑いながら呟く。

 

「さて、次は何を見せてくれるかね」

 

 

 

「いやはや、見所を見逃してしまいましたか」

「巌谷か、遅かったの?それに・・・楠木、おぬしは此処にいていいのか」

 

式部長官や政威大将軍の特別席の側に五摂家の関係者が一同に揃い座る特別観覧席。

そこへ所用の関係で遅れてきた巌谷とインカムを着けた和哉が現れる。

和哉は紅蓮の隣に、その和哉の隣に巌谷が座った。

紅蓮の隣に座った和哉は相手として用意された部隊の方を見たまま口を開く。

 

「いやいや、こちらの相手は武一人でやってもらいますので」

「貴殿は白銀一人で十分だと言いたいのか」

 

自分たちを馬鹿にしているのかと睨む様な眼差しの斑鳩に、和哉は苦笑しつつ答える。

 

「まあ、その代わり」

 

含みのある済ました笑顔を浮かべながら口を開く。

 

「枷なしの全力でお相手する様に伝えました」

「枷?」

 

枷と称するには仰々しいかもしれませんが、と和哉は付け足しながら口を開く。

 

「国連軍衛士である白銀武少佐ではなく」

 

和哉はその疑問に答えるように戦場の方を見ながら言う。

 

「ラスト・ガーディアン第二連隊長・白銀武”中佐”としてお相手するという事です」

 

その言葉に紅蓮と五摂家の面々は和哉の視線の先を見る。

大地を揺るがすか事無く、されど雄雄しく銀色に輝く戦術機が降り立つのが見えた。

篝火が今、表舞台に舞い降りた。

 

 

「たった一機だと・・・我々を愚弄しているのかっ!」

『崇宰殿、落ち着かれよ』

 

真耶の嗜めるような通信が入る。

 

『崇宰殿ならば先ほどの試合を見て、彼らの実力を分かりましょう』

「うっ・・・むぅ、確かに(これではいかんな、この有様ではとても次期当主として・・・いやいや、今は余計な事を考えるな、雅成)」

 

この男は崇宰雅成(たかつかさまさなり)。

五摂家が一、崇宰家現当主・崇宰憲明の息子である。

斑鳩頼成の二つ下で、若くして五摂家の一”斑鳩”を背負った彼を兄貴分として慕っている。

 

(親父殿が目にかけたくなるような男だ・・・一人といえども侮ってはいかん)

 

武は久々に乗った愛機ともいえる篝火の中で考えていた。

(和哉は”教導”してやれ、なんて言ったけど・・・どんな風にするか)

武は和哉から言われた意味を考えてみるが、まあいいやと晴れ晴れした顔で言い切った。

 

「最初から篝火、いやEXSの真価を見せるで問題ないか」

 

武はそう考えをまとめると、行動に移す事にした。

 

 

この試合の事はその場にいた将校が後にこう語った。

 

「疾風や地を走る雷光の如くとはああいう事をいうのだろう」

 

勝負はまさに一瞬だった。

開始を告げる音とともに篝火が吠えた(・・・)のだ。

瞬きをする間に再起動した篝火が噴射滑走によって距離を縮め、瑞鶴の中を舞うように駆け抜けたかと思えば全機に撃墜判定が立った。

篝火の両腕部の長刀を展開させながら駆け抜けて、全機を切り裂いたのだ。

無論、全ての瑞鶴が迎撃をしなかった訳ではない。

噴射滑走への反応が遅れた前衛の2機を同時に腹部から切り払った。

後衛にいた月詠機が迎撃を取ろうと長刀を振るも、武は右椀部の長刀で流すように相殺しながら回りこみ、左椀部の長刀を管制部に突き刺し、切り払った。

コマが廻るかの様なその勢いで崇宰機の一撃も流し避けるとともに腹部を切り払う。

これを流れるように行ったのだ。

 

篝火は全ての排熱口から緊急冷却による蒸気が上げながら片膝を突くように停止していた。

リミッター解除による副作用、オーバーヒートであった。

そのオーバーヒート状態の篝火の中では武が呻いていた。

 

「う、うぇえ・・・気持ち悪い」

 

何のことはない、自業自得の加速と回転による酔いであった。

 

この光景を見て将校はしばらく呆気にとられていたが、我にかえると腹を抱えて笑い出す。

慌てて部下が声を掛けると片手を上げて制し、息を整えて話し出す。

 

「白銀って小僧は示現流を齧った程度だろうが、悪くないな(・・・・・)」

「では九州絡みの生き残りでしょうか?」

「いや、それにしては混ざりすぎてるな」

 

将校はまぁどちらにしろと言葉を口にして、独り言の様に呟く。

 

「いいねぇ、あいつら・・・」

 

特別招待席に招かれた彼女らにもそれは今までの常識を覆すかの様な光景であった。

護衛としてついてきた部下の目をパチクリさせた様子に白いコートを軍服の上に着た女性、香月夕呼は目を細めながら言う。

 

「あんた、何面白い顔してるの?」

「え、あ、いや、中佐」

 

部下のその様子を夕呼ははいはいと軽く流しながら淡々と言う。

 

「本当にバケモノね・・・あの戦術機も衛士も」

 

あの戦術機の一連の動き、おそらく中も外も相当弄ってあるのが理解できた。

現行の戦術機ではあの動きを再現出来ない、夕呼はそう結論づけた。

そしてそれを操る衛士とそれを開発したであろう者。

それが夕呼がここにいる理由。

 

「どんな奴なのかしらね」

 

胸のポケットから招待状を出していじりながら口にする。

 

「シロガネとクスノキって二人は」

 

 

その噂された二人のうち、和哉は頭を抱えたい衝動を抑えながら頭をかいてごまかしていた。

 

「本当に本気でいったか・・・まったく少しは加減しろって」

 

和哉はインカムから入ってきた篝火の機体状況報告を聞きながら、苦笑しながら言う。

 

「楠木殿、それはどういう意味ですかな?」

「ああ、勘違いさせるような発言でしたね。すいません、別に手加減しろって意味ではないですよ」

 

その言葉に聞き捨てならぬといった雰囲気を出す斉御司に対して、和哉は飄々とそれだけ答えるとインカムに向かって何か呟くように話していた。

インカムから返ってきた内容に少し思案した和哉は、両隣に聞こえる程度の声量で呟くように言う。

 

「紅蓮大将、巌谷中佐。例の件をできるだけ早くでお願いしたいのですが」

「うむ、予算の方は問題ない。巌谷、そっちはどうだ?」

「はい、こちらの方も問題ありません。逆にいつからだと聞かれるくらいですので」

 

両者からの返答に、和哉はどこか嬉しそうに「そうですか」と返す。

その様子を見た斉御司と九條は面白そうに目を細めながら微笑みながら口を開く。

 

「何やらわしらに内緒で動いているようだが、教えてもらえるかの」

「それに聞きたいことが少し増えましたね・・・白銀殿が中佐なら、楠木殿は何(・)なのでしょうね」

(やれやれ・・・ここからが大変だ・・・)

 

和哉は少しだけこれからの苦労を考え、心の中でぼやいた。

 

 

模擬戦終了より2時間後

 

何とか解放された和哉と軍服に着替えた武の二人は青山練兵場の近くにある保養施設の中を並んで進んでいた。

 

「おまえは少し後先考えろ。内部駆動系消耗率60%って少しは整備の事も考えろ」

「いや、全力でいけって言われたから・・・」

 

二人がいまこの場所にいるのは、この保養施設の一室にある客人を待たせているからであった。

 

「武さん!」

 

突然、背後から声をかけられた武が振り向くと、そこには満面の笑みを浮かべた鑑純夏がいた。

白のトップスの上に紺色のカーディガンを着た外出する為にオシャレしたのだろう。

和哉はかわいさをアピールしてきたなとどこかうんうんとうなづきながら口には出さない。

武は何故、純夏が此処にいるのか解らずに困惑しているのが見ていて分かる。

この模擬戦は公開と名は付いているが、実際には一部の招待客を除いてはほぼ帝国軍関係者のみにしか参加していない。

その一部もだいたい軍事企業関連なので、一般人の純夏がここにいるのか理由が思いつかないようだ。

 

「武さん、本当に凄いんですね」

「え、あっ、ああ、うん、ありがとう」

 

純夏は興奮した様子で武を褒め称える。

武はそれを困惑の表情で受け止めながら、和哉の方に助けを求める視線を送る。

 

「純夏ちゃん。悪いが俺たちは、この後もまだ仕事が残っているんだ」

 

和哉は苦笑をしながら、純夏に声をかける。

 

「あっ、ごめんなさい。私、つい、その」

「大丈夫、会えて嬉しかったんだろ?」

「は、ハイ」

 

しどろもどろになりながら謝る純夏に優しく語りかける和哉。

その言葉に嬉しそうに笑顔で答える純夏。

武は和哉の言葉と純夏の態度にに妙な違和感を感じた。

だが、その違和感が何なのかよく解らない為、首を傾げるも気にしないことにした。

 

「ではすまないが、俺たちは時間が押しているから、また後で」

「はい、お仕事頑張ってください」

 

和哉に挨拶した純夏は武の方へ向き直ると口を開く。

 

「武さん」

「うん?」

 

純夏はどこか嬉しそうにそして少し緊張しながら、武に頭を下げながら言う。

 

「不束者ですが、今後ともよろしくお願いします」

「え?」

 

それではまたと言いながら二人に対して頭を下げて去っていく純夏。

彼女を待っていた軍服姿の女性が和哉達に軽く頭を下げ、外へ向かい純夏を連れて歩いていく。

武は呆然としたようにその後姿を見送る。

 

「さて、武。俺たちも急ぐぞ」

「あ、ああ、うん」

 

頭の中で整理が追いつかない武は生返事を返す。

 

「ああ、武」

「えぇう?」

 

歩きながら和哉が武に話しかける。

まだ状況の整理ができていなかった武はへんな返事をしてしまう。

 

「純夏嬢はまだ15になったばかりだ」

 

確かに今は1998年なのだから。純夏は7月で15歳になっているはずだ。

それがどうかしたのか、という顔で和哉の言葉を待つ武。

和哉は、その武に何でもないよう事のように

 

「何をとは言わんが、はじめてぐらいはやさしく(・・・・)してやれよ」

 

爆弾を置いていった。

それだけ言うと和哉は再び歩き出す。

ただ、突然の言葉に武は完全に思考が追いつかなかったらしく、その場で立ち往生してしまう。

しばらくした後、武は叫んでしまう。

 

「どういうことなんだ!?」

 

武の心からの絶叫が辺りに空しく響いた。

 

 

 

 

かくして役者は集う

 

 

世界の未来の運命

 

その運命の行き先を握る者は2人

 

 

この2人が未来への篝火となりえるかどうか

 

これより問われる




次回予告

旅人と魔女は出会う

魔女は明日を知る為に

旅人は未来を得る為に

ならば、カズヤ


おまえは何を為すのだろう

次回

Muv-Luv The alteration

01-11:篝火のシンカ
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