Muv-Luv The alteration   作:詩仙堂黒猫

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第一話「Rebirth of Dream」
01-01:運命の改変


BETA(ベータ)

 

人類に敵対的な地球外起源種という意味のBeings of the Extra Terrestrial origin which is Adversary of human raceの略称で、もっと噛み砕いた言い方をすれば宇宙人である。

この”世界”においては、BETAとは人類の脅威的存在であり、すでに火星や月はBETAによって支配されており、西暦1973年に地球へのBETA来襲以後、25年間にも渡って人類への侵略行動を取っており、西暦1998年の段階ではユーラシア大陸の7割近くがBETAによって制圧されていた。

 

だが

 

それでも、地球に住む多くの人間にとっては、それはどこか遠くの対岸の火事のように感じていた。

自分たちには関係しない何処か異国のことのように。

 

その考えこそが泡沫のような幻想だと知らずに。

 

 

―――1998年

 

日本帝国に住む者にとってこの年は、忘れられない、いや忘れてはいけない激動の一年である。

年の初めの1月に朝鮮半島からの国連軍と大東亜連合軍の撤退支援を目的とした光州作戦があり、その際に後に「光州作戦の悲劇」と呼ばれる綾峰中将事件が発生。

これを受け(経緯などの詳細は省くが)綾峰中将は敵前逃亡の罪に問われ、投獄・銃殺刑となった。この事件により軍部の一部に遺恨を残す事になる。

 

年の半ばになる7月、ついにBETAが日本本土への侵攻を開始する。

九州沿岸部、遅れて中国地方日本海沿岸部と散発上陸したBETAの挟撃に対して奮戦するも本土防衛軍西部地方面部隊は壊滅、それは側面支援の拠点になる筈だった四国にも影響し、なすすべなく蹂躙を許す事となった。

わずか1週間足らずで九州、中国、四国地方を西日本の半分を制圧したBETAに対抗するべく、日本帝国軍・在日米軍・国連軍の三者共闘による防衛線を京都前面に構築する。

以後、帝国政府による京都放棄と東京への遷都の決定、それに伴い最後まで残存した斯衛軍第二連隊の離脱する8月15日まで攻防戦が繰り広げられる事になる。

この時、京都上空においてオーロラが発生するという異常気象も観測された。

 

京都制圧後、北陸へ侵攻するBETAは佐渡島に上陸。ここにハイヴの建設を開始した。

これが後にH:21「佐渡島ハイヴ」と呼ばれる甲21号目標の誕生であった。

このことを受け、近畿及び東海地方全域に避難命令が出され、約2500万人もの国民の避難を余儀なくされた。

 

そして10月。

凄まじい勢いで進攻していたBETAが、ハイブ建設の影響からか長野付近にて停滞する。

その頃、日本に対して一方的に日米安保条約の破棄を決定した米国は、在日米軍の即日撤退をさせた。

しばらくして進攻を再開したBETAは東海から西関東を制圧するも、不可解な事に帝都直前で転進する。

その後、伊豆半島を南下したところで、進攻が停滞する事になる。

 

この少し前、南下しているBETAから分隊規模が横浜へ進攻していた。

 

この事は、横浜沿岸第二防衛線にて警邏船撃沈の報によって発見されるまで誰も知る由も無かった。

 

 

この日、横浜はBETAに襲撃を受け、帝国陸軍白陵基地もろとも陥落する事になる。

 

 

それは10月21日深夜の事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは突然のことだった。

寝ようとしてたときに、基地の方から警報が聞こえてきた。

みんなで避難しようとして、外に出た時に

 

――――悲鳴が聞こえてきた。

 

知ってる人の声にも聞こえた。

知らない人の声にも聞こえた。

私は怖くなって、眼を閉じながら

お父さん、お母さんに手を引かれて逃げたんだ。

けど

いろんな人の怒る声や叫び声、悲鳴は私の耳に入ってきた。

 

こわい

 

こわいよ

 

しばらくしたら、急にお父さんたちが立ち止まった。

こわかったけど、眼を開いてみると

 

 

坂の上にある基地が燃えていた。

 

 

そこで、どれくらい見ていたのかわからない。

たぶん、数分も経っていないと想った。

後ろから、叫ぶ声が聞こえてきたから。

 

「逃げろ」って

 

気がついたら、みんなで走って逃げていた。

 

夢中で走った

 

少しでも遠くにって。

 

けど

 

それでも

 

逃げた先に、赤や白い化け物が現れれるのが見えた。

先に逃げていた人たちの悲鳴や叫び声が聞こえた。

私もここまでかなって思った時、お父さんが言ったんだ。

「元気でな」って

お父さんはそういうと、近くにあった大きな車に乗って

化け物の方に向かって走り始めたんだ。

 

 

それが、お母さんに手を引かれて逃げた私が見た、お父さんの最後の姿だった

 

 

あれから何処に向かって逃げたんだろう?

どれくらい走ったんだろう?

そんな事も気にならないほどに走って逃げた。

 

気が付いた時には、軍人さんたちがみんなを車に乗せている所についていた。

私は夢中で走っていた疲れが急にきて、ついたところで足が痛くて限界だった。

先にお母さんが軍人さんに話しかけていた。

 

これで助かる

 

そう思った、その時

 

後ろから銃撃音と叫び声が聞こえた。

 

その音を聞いた軍人さんが、急いで車に乗り込むのが見えた。

車が走り出そうとするのがわかった。

私は乗り遅れないようにあわてて走り出そうとして、転んだんだ。

上手く足があがらなくてもつれたからだ。

 

 

私の名前を呼び声が聞こえた

 

前を見ると

 

誰かが車の近くにいたお母さんの体を荷台に引っ張りあげるのが見えた。

 

お母さんの叫ぶ声、泣いている顔

 

それらを乗せて、車は走り出した

 

 

どれくらい地面に転んでいたのか、わからない

 

 

ただ

 

 

自分の後ろに

 

 

何かがいるのだけはわかった

 

 

お父さん、お母さん・・・

 

やだ、やだ、やだ、こないで。

 

しにたく、しにたくないよ。

 

だれか、誰か助けてよ。

 

その時だった。

横からこっちに向かって走ってくる車の音が聞こえたのは。

 

「耳を塞いでおけ!」

 

男の人の叫ぶ声が聞こえたかと思った直後、銃撃音と凄い爆発が鳴り響いた。

背中を凄く熱い風と砂埃が吹き付ける。

おもわず飛ばされそうになったし、少し痛かった。

おまけに耳がきーんとするよ。

風と巻き起こった埃が止むと、目の前に誰かがしゃがんでいた。

 

「ほら、お嬢ちゃん。行くぞ」

 

そう言って手が差し出される。

その手を取って、私は立ち上がる。

目の前にいた男の人は、私より少し上と思う軍人さんだった。

ただ、この街では見たことが無い人だと思った。

基地の軍人さん、全員知ってるわけじゃないけど。

よく見ると基地の軍人さんの制服と違うし。

軍人さんには違いないとも思うけど。

少し茶の入った黒髪に黒い瞳、ガッチリとした体ではないけど細く引き締まった体つき。

笑っている顔だけど、どこかこうかっこいいと思った。

美青年とか、そうじゃなくてこう頼りにしたくなるお兄さんって感じかな。

うん、やっぱりこの街の人じゃないと思った。

だって、こんなにかっこいい人いたら、おばちゃんたちが噂話してるもんね。

 

「さて、行くか」

 

軍人さんはそう言うと、私の手を取って歩き出した。

え?え?

どこに行くのかと思って、軍人さんに聞くと

 

「あ?逃げるに決まってるだろ?」

 

当たり前のように言ってきました。

 

「それともここに一人でいたいのか?」

 

私は慌てて首を横に振って、否定しました。

こんなところに一人は嫌だよ。

そう思いながら、軍人さんを見ると少し笑っていました。

ぶぅーーーいじわるさんだよ、この人。

少しでもかっこいいと思った私の心を返せだよ。

軍人さんは、まあ怒るなと言いながら私の手をひいて、乗ってきたと思われる車に私を乗せました。

車の後部席には長い筒のような物やゲートの衛兵さんが肩にかけていた銃が乗っていました。

あと、何故かズダ袋のようなものがあった。

これだけあっても、私たち無事に逃げられるのかな・・・

そんな不安が顔にでも出ていたのか、軍人さんは励ますように言いました。

 

「大丈夫、頼りになる奴が来る」

 

そう言うと、私たちを乗せた車は走り出しました。

 

 

 

あれから、時間がどれ位経ったんだろう。

軍人さんの運転する車で、私の住んでいた柊町から遠く離れて、新しく帝都になった東京方面に向かう道を走っている。

 

この間の進攻によってところどころが破壊された悪路を猛スピードで。

 

 

 

後ろに

 

 

 

白やら赤の化け物のおまけ付きで

 

 

きゃあぁぁぁぁぁぁあ!!

軍人さん!!

急いで!いそいで!

また来るよぉぉぉ!!

 

「ちっ、しつこいゴキブリどもだ」

 

軍人さんはそう言うと手に持っていた手榴弾のピンを抜いて、横から後ろに向かって放り投げる。

数秒後、爆発音が響く。

 

怖くて後ろを向けないけど、ミラーにはまだ赤いのが1匹追いかけてくるのが見えた。

まだいるよぉぉぉ!

泣きそうになるのを我慢して軍人さんを見ると、腕時計を見ていた。

 

「・・・後1分ほどか」

 

何が?

何が、1分なの?

1分経ったら何が起きるの!?

ねえ、答えてよ!

 

「7・・・6・・・5」

 

軍人さんが何かを数えるように、運転しながら腕時計を見て呟いていました。

うぅ、聞いてないよ・・・

それよりも、はやく!はやく!

もっと加速して!!

あ、あいつが来ちゃうよ!

あ!

 

「3」

 

ついに化け物が近くまで追いついてくる。

 

「2」

 

化け物が手を振り上げる

 

「1」

 

化け物のお腹についている口が開く

あ・・・もう、駄目だ

そんな事を感じた時

 

「0」

 

時計の針が12時丁度―――10月22日0時になったその瞬間。

轟音と共に凄い雷が、手を振リおろし、口で車を噛み砕こうとした赤い化け物に落ちるのを、私はバックミラーごしに眼を閉じて頭を伏せる直前に見た。

直後、何かが振動で車が跳ね上がり、急ブレーキをかけるのを私は感じた。

それと同じくして何かを踏み潰す音も。

 

うぅぅ、何なんだよ・・・あたまがぐらぐらするよぉ・・・

 

・・・あれ、生きてる?

 

『くっ・・・こ、此処は?』

 

誰の声・・・?

眼をゆっくりと開けると、そこには

 

 

星空に浮かぶ月の光に輝くような鮮やかな銀色が眼に入った。

 

 

それは銀色に塗装された戦術機だった。

 

 

化け物は銀色の戦術機が踏み潰したようで、足元で潰れたトマトみたいになっていた。

 

「遅いぜ、タケル!」

 

軍人さんは戦術機に向かって叫びます。

これがさっきから言っていた頼りになる人なのかな?

そう思った時、戦術機から声が響いてきました。

 

『カズヤ、カズヤか!それに何でオレがこの機体に乗って・・・』

 

カズヤってこの軍人さんの事かな?

それより戦術機の人、どうしたんだろう。

何か混乱しているような感じがする。

 

「そんなことは後で説明する。それより」

 

軍人さんは戦術機の後ろを指して言った。

 

「団体さんのご来店だぜ、相棒」

 

えっ?

・・・・

あーーーー!!

まだ遠いけど、見えたよ・・・・

また白いのが、白いのが。

いっぱい、いっぱい来るよぉぉぉぉ!!

は、はやく逃げないと。

 

「と言う訳で頑張れ」

 

軍人さーーーーーん!?

丸投げしたよ、この人!

ひどいよ、酷すぎるよ!

混乱している戦術機の人、ええっと、衛士さんでいいか。

かわいそうだよ、そして、それよりはやく逃げようよ!

 

『何を無茶振りしてんだ、カズヤ!』

 

そうだよ!

もっと言っちゃえ、衛士さん。

そして逃げようよ、軍人さん。

 

「何言ってるんだ、タケル。俺の隣には純夏嬢がいるんだぞ?」

 

わ、私!?

何でそこで私の名前がでてくるの?

あれ、それより、私名前おしえったっけ?

私が何か関係あるの?

 

『!!そうか、そういう事か、解った!』

 

えっ!?

それで解った?何が解ったの?

私には何がなんだかわからないよ。

 

『うぉぉぉぉぉ、もうやらせね!もう純夏はてめえらにやらねぞぉぉ!!』

 

!?

私の名前を叫びながら、手に持っていた大きな銃であの白い化け物たちを蜂の巣にしていく銀色の戦術機。

すごいよ、あれだけの化け物があっという間に・・・

この人が、この戦術機があの時、あの場所に居れば・・・

 

・・・・・・

 

・・・考えても、もうどうしようもない事だよね。

 

それに、この衛士の人。

会ったことないのに何故かすごく真っ直ぐって感じがした。

信じたくなる。

だから、

この人、ううん、この人たちに逆恨みするのは違うよね。

 

そうだよね、お父さん?

 

 

けど不思議だよ。

 

知らない人に名前を呼ばれているに嫌な感じがしない。

逆に何故か、顔が熱くなっていくのがわかる。

どんな人なのかな、衛士の人。

たしか軍人さんはタケルとか言っていたよね。

フッと私は、目の前にいる軍人さんの名前をちゃんと知らない事に気がついた。

そういえば、お礼を言うのも名前を聞くのもを忘れていたよ。

私が慌てて、助けてくれたお礼を言って、改めて名前を聞くと軍人さんは苦笑いしながら教えてくれました。

 

「カズヤ、クスノキカズヤだ。で、あいつは」

 

私たちを守るようにBETAと戦っている戦術機の方を指差しながら

親しみを込めるようにこう言いました。

 

「シロガネタケルだ。よく知ってるだろ?」

 

シロガネタケル?

聞いた事がない名前だけど、私が「知っている」って?

知り合いとか親戚にいたっけ?

少なくとも同級生とかでは聞いた事がないな。

私が不思議そうな顔をしてるのに気が付いた軍人さん改めカズヤさんは、最初は疑問そうに顔を顰めて、突然何かに気が付いたようにもう一度訊いてきました。

 

「本当に・・・シロガネタケルを知らない?聞いたことも無い?」

 

私はその言葉に頷きました。

だって、少なくとも私の知り合いにはお父さんやお母さん以外にこんなにも、なんというか情熱的に想ってくれる人はいなかった。

特に男の人の知り合いではいなかった筈だ。

私はそう感じた事を思いながら、自然と頬に手を添えていた。

それはまるで顔の火照りで紅くなっているのを隠すように。

 

だから、私は見ていなかった。

 

目の前のカズヤと名乗った彼の顔を。

 

驚愕と悲しみに彩られた顔を。

 

「・・・・・・武」

 

その視線がやりきれない感情を籠めて、銀色の戦術機―――その衛士である白銀武を見ている事を。

 

私は知らなかった。

 

 

 

 

 




 次回予告



鑑純夏は言う

シロガネタケルを知らないと

武は問う

何故と

和哉は答える

それが代償だと


次回


Muv-Luv The alteration

01-02:改変の代償
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