実を言えば、真佳は堺仁ほどの心配はしていなかった。
それでも堺仁の気が済むのならばと、しぶしぶと戒莉の行方を捜す手伝いをすることを承知した。
そうは言っても、何から手をつけてよいものか、全く分からない。
そうして、ふっと気付く
―― 俺って、戒莉のこと全然知らないわ……
立ち回り先も知らないし、交友関係も知らない。
女の趣味も、食べ物の好き嫌いも。
分かっているのは、あの容姿と、剣の腕、珊揮に気に入られているということに過ぎない。その剣の腕が異様に立つのを知ったのも、つい半月前のことだ。
考えあぐねた果てに、真佳は、珊揮を訪ねてきたという女の持ち物を調べてみることにした。
その小さな包みは、女の財産のほとんどであったかもしれない。
少しの着替えと、手紙が何通か、そして安物の首飾り。
手紙はおそらく馴染みの客から貰ったものだろう、内容のほとんどが『お前のことが忘れられない。また会いたい』とか、『お前は私の運命の女』だとか、『いつかお前を迎えに行きたい。待っていて欲しい』とかいった言葉が連なっていた。言葉とは、こんなにも意味の無いものだったかと、真佳はぼんやりとそれらを眺めた。あまりにも定型文であったので、もしや何かの暗号かとも思ったが、その思考は長いこと保つことは出来なかった。
そして大きな石の首飾りも、客からの贈り物であったのかもしれない。どんよりした緑色の石は、あまり綺麗だとも思えない。若い娘が好んで身につけるものではないだろう。
こんな手紙や首飾りでも、女には大切なものなのだろうと思うと、少し切ない。
そんな風にシミジミと首飾りの石をひっくり返してみると、石をはめ込んだ金属の土台に針の先ほどの窪みがあった。
真佳がよくよくそれを観察してみると、それは偶然できた疵ではないようだ。
あたりを探して、縫い針を調達した。そうして、そっとその窪みを針で押してみた。
ぱかっと、石が外れた。石は中をくり貫かれており、そこに小さく畳んだ紙切れが押し込まれているのが分かった。
それまであまり真剣に調べをしていなかった真佳の目に、光が点った。
真佳は、石からそっと紙切れを取り出すと、破らぬように注意深く広げた。
そこに描かれていたのは、どうも何かの建物の間取りのようだった。割と大きな屋敷らしい。しかも小さな紙に書かれている割に、緻密なものだ。これさえあれば、この屋敷に初めて行ったとしても、自由に中を歩き回れそうな気すらする。
真佳は、この紙片にとんでもなく危険な匂いを感じている自分に溜息を吐いた。
ここにきて、もしかしたら戒莉は面倒なことに巻き込まれているかもしれない、という可能性を考えざるを得なくなってきた。
「しまった……」
真佳の口から、それが思わず零れた。