ゲーム序盤から隠しボスがいるのですが   作:岸寄空路

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始まったばかりなのに詰んでる気がする

「嘘だろ……!?」

 

 目の前の光景に天王寺(てんのうじ)光哉(こうや)は思わず動きを止め驚愕の声を上げる。それでも可能な限り顔に出さず、咄嗟に声も誰にも聞かれない声量に抑えた。

 

「ん? どうかしたのか?」

「……いや、何でもない」

 

 隣を歩く少女に気づかれないように関心の無さそうな表情を作りごまかした。だが想定外の事態を前にした緊張からか暑いわけでもないのに額から汗が流れ落ちていた。それでも一時的に冷静さを取り戻した自身の見間違いであって

 

「……見間違いじゃない」

 

 本当なら人目を憚らずに「おかしいだろ!?」と叫び回りたい。そう思ってしまうほど光哉は校門に向かって歩く同い年の男の姿に動揺していた。

 

 なぜ光哉がこうもパニックを起こしているのか、その理由は光哉が転生者と言われる存在だからだ。前世ではどこにでもいるオタク系男子高校生だったが、雨の日の登校中に落雷に遭い命を落とした。その時点でも不運なのだが転生してもそれは続く事になる。

 もし神がいるのであれば光哉はこう文句言っただろう。

 

「気づいたら『グリッチ』の主人公の天王寺光哉に転生していたってだけでも罰ゲームなんだぞ! そのうえ学園に俺以外にいないはずの男子生徒がいるとかどうすればいいんだよ!?」

 

 なぜ光哉――彼にとって天王寺光哉に転生したことが罰ゲーム扱いなのか。それは彼の言う『グリッチ』が関係している。

 

 『グリッチ』とは正式名称『グリム・ウィッチーズ』と言い、ヒロインである魔法少女達と絆を深めていきながら世界中に現れるモンスターと戦うRPGのタイトルだ。ヒロインの個別ルートとハーレムルートなどの恋愛要素も有り、キャラクターデザインも萌え絵と言われるもので発売前の評価も「RPG要素が有るだけのよくあるギャルゲー」程度の認識だった。

 

 何も知らないプレイヤーとっては。

 

 そして天王寺光哉に転生した彼もまた転生する前の世界では何も知らない『グリッチ』のプレイヤーの一人であった。そういう意味ではこの時点で彼の不幸は始まっていたのかもしれない。

 

 なぜならこの『グリッチ』というゲームは所謂「地雷ゲー」と呼ばれるものだからだ。

 

 それでも攻略を進めるプレイヤーも当然いた。その内の一人が天王寺光哉に転生した彼だった。それ故に――

 

「元のストーリーも碌なものじゃなかったのに! 神様は俺の事が嫌いなのか!?」

 

 攻略ヒロインの一人から離れて誰もいない場所で叫ぶのを咎められる者はいないだろう。

 

「ゲーム知識を利用して『誰からも告白されないバッドエンド』ルートを選ぼうと思っていたのに……」

 

 光哉が語ったルートは『グリッチ』の中で一番平和なルートであり、他のルートだとハーレムルートしかまともなルートが無い。なぜなら個別ルートそのものが地雷だからだ。それ故に光哉は一番平穏なバッドエンドにしようと考えていたのだが、先程の光景を見てその目論見が崩れかけていた。

 なぜなら――

 

「なんで隠しボスにそっくりな奴がいるんだよ!?」

 

 光哉が見たという隠しボスそっくりの男、いったい何者なのか。事の始まりは一ヶ月前に遡る。

 

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