マギカではなくリリカル   作:ADONIS+

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シドゥリ暦3807年

 

 第二次ベヅァー戦争から三百年がすぎたこの時期、監察軍はある問題を抱えていた。それはある下位世界で確認された九兵衛の存在であった。

 

 そもそもの切っ掛けは伊吹りおんが転生した『魔法少女リリカルなのは』の世界に『魔法少女まどか☆マギカ』に登場するキュゥべえモドキだけでなく魔女や魔法少女まで存在したことだ。

 

 この異常なクロスオーバー状態を監察軍は何物かの干渉によってリリカルなのはの世界にマギカ要素を挿入したのだろうと判断していた。勿論、監察軍が知る限りトリッパーはそんなことをしていないから、原因究明のためにその世界を縄張りにしていた伊吹りおんの許可を受けて、該当世界を調査することにしたのだった。

 

 だが調査の結果、九兵衛は破壊神ベヅァーがエネルギー確保の為に作り上げた奉仕種族であるという驚くべき結果が判明した。あの世界の九兵衛は魔法少女が持つソウルジェムが絶望に染まる際に放出するエネルギーをベヅァーに供給していたのだ。

 

 いうまでもないが、監察軍の最大の目的はベヅァーに対抗することだ。ベヅァーのエネルギーを中和するためにトリッパーを揃えているし、トリッパーたちの支援もその為に行われているのだ。

 

 せっかく苦労してベヅァーのエネルギー補充を妨害しているのに代替えエネルギーを用いて補充などされてはたまったものではない。

 

 この事態に監察軍は大慌てとなり、該当する次元世界そのものを破壊するという強硬論まで出てきたほどであった。というのも、九兵衛は地球だけでなく、管理世界や管理外世界を問わず次元世界全域に蔓延っていたからだ。

 

 こうなると、次元世界そのものを一掃したほうが手っ取り早いのは確かだが、これに伊吹りおんが反対した。これは当然ながらりおんが第二の故郷としているその世界の地球も殲滅対象になっていたし、それ以外にもいくら九兵衛が蔓延しているからといって無辜の民がいる世界をまとめて殲滅するなど非人道的すぎるからだ。

 

 このりおんの人道主義といえる主張は強硬派にとっては苦々しいものであったが、仮初とはいえ新たなる故郷や家族を大切にする彼女の主張は、多くのトリッパーも好意的に受け止められていた。

 

 これによって監察軍の意見が割れる結果となったが、最終的には該当世界は伊吹りおんの縄張りであったことから彼女の意見が認められた。その結果として、りおんがTA-ユニットを用いて地道に九兵衛を駆除していくという非効率で場当たり的な対処になってしまった。

 

 しかし、その状況も九兵衛の甘言に乗った管理局によってりおんが地球ごと抹殺されたことによって一変してしまうのであった。

 

 彼女を知る監察軍のトリッパーたちは、必死に地球を守ろうとしていたりおんが地球諸共抹殺されたことに不快感を示したのだ。その為、管理局に対して報復するべきという意見がでていた。

 

 

 

 

 

「ふむ、それでは時空管理局は九兵衛に加担して我々と敵対する道を選んだわけだね。レディ」

 

「はい、トレーズ様」

 

 監察軍本部にて総司令官トレーズ・クシュリナーダは、副官のレディ・アンから一連の報告を受けていた。時空管理局がアルカンシェルで地球ごとりおんを殺害したことを知った監察軍は、その優れた技術で短時間で事の真相を突き止めていた。

 

「しかし、九兵衛に加担するとは、彼らはその意味が理解できているのかな?」

 

 九兵衛は数多の下位世界を滅ぼそうとするベヅァーに仕える奉仕種族で、対して我々監察軍はそんなベヅァーから下位世界を守るために活動している組織だ。つまり、九兵衛に加担した上に我々に敵対してトリッパーを殺害するなど、ベヅァーに味方するに等しい行いだったりする。

 

「治安維持組織と称している割には時空管理局は覇権主義的な組織ですから我々のような存在を許せなかったのでしょう。それに九兵衛が彼らを上手くあおったと思われます」

 

「そうか。だが理由はなんであれ、このような結果になった以上、我々もそれ相応の行動をするべきだな」

 

 こうまでされたらこれまでのような穏健路線はとれないし、あの世界に蔓延する九兵衛を無視するわけにはいかない。

 

「ゆえに〝虚無の使い魔″を動員しよう」

 

「あの四人を使うのですか。確かにあの四人ならば殲滅戦向きですが、そうなるとあの次元世界はひとたまりもありませんが、本当によろしいのですか?」

 

「ああ、この際、徹底的にやるべきだろうね」

 

 かくして、トレーズは監察軍を率いる総司令官としてある命令を出すのであった。それは時空管理局のみならず次元世界そのものの運命すら決定付けるものであった。

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