時空管理局side
時空管理局はブリタニア帝国の先兵である伊吹りおんを逮捕するために第97管理外世界に二隻の次元航行艦と多数の武装隊員を送り込んでいた。しかし、りおんが抵抗して武装隊員を殺害したことで、管理局は仲間の敵討ちを兼ねてアルカンシェルでりおんを始末することにした。
元々、管理局は九兵衛からブリタニア帝国の脅威を伝えらえていた事から二隻の次元航行艦にはアルカンシェルが搭載されていたので、アルカンシェルは問題なく発射できたものの、何とりおんが生身でアルカンシェルを抑え込んでしまった。
そして、これに慌てた管理局はアルカンシェルの第二射を打ち込んだ。さすがのりおんもこれには対抗できずに始末することができた。
管理局にとっては武装隊員の全滅や第97管理外世界の崩壊など予想外の事があったが、管理局にとっては無事に事件解決という形で落ち着いた。勿論、被害がないわけでないが、武装隊員の損失はアルカンシェルを抑え込むような規格外が相手ならばむしろ軽微といえた。
第97管理外世界の壊滅は管理局にとってはどうでもいいことだった。といってもさすがに管理局が一つの世界をアルカンシェルで滅ぼしましたと公表するのは外聞が悪いので、ロストロギアの暴走によって滅亡したことにした。逆にいえばそれだけで済むほど軽い存在だったのだ。
こうして、ブリタニア帝国の先兵を排除して次元世界の平和は守られて、めでたしめでたし……、とはいかなかった。突如として超大規模次元震が各地で発生して次元世界の大半が崩壊したからだ。また、辛うじて残った世界にしても謎の武装勢力に攻撃を受けており、次々に滅亡していった。
勿論、管理局も何もしていないわけではないが、敵勢力の質と量は管理局の次元航行艦隊を圧倒しており、管理局の戦力ではまったく相手にならずに一蹴されていた。
「いったい何がどうなっている!?」
いきなりの次元世界崩壊の危機というか現在進行形で崩壊しつつある現状に管理局高官たちが叫ぶ。
『ブリタニアの攻撃だよ』
そんな彼にいつの間にか現れて九兵衛がそう言う。その場にいた管理局高官たちの視線が九兵衛に集まった。
「ブリタニアだと、これがブリタニア帝国の攻撃だというのか!」
『まあこの手口だと、おそらくブリタニア帝国軍ではなくて、三千世界監察軍の連中が攻撃しているんだろうね』
ブリタニアの正規軍ではなく監察軍によるものだとしても、この際大差ない。
「バカな。これでは虐殺ではないか。こんな非道は許される事ではない!」
次元世界そのものを破壊するなど正気の沙汰ではない。
『そうでもないよ。そもそも連中にとってはこれは僕たちのエネルギー確保を妨害するための通商破壊作戦にすぎないんだ。つまり彼らは商船のかわりの世界を破壊しているだけだよ』
「通商破壊戦だと、なぜいきなりこんなことを…」
『それは君たちが伊吹りおんを殺したからだよ。元々、監察軍ではこの次元世界を破壊することは検討されていたけど、それに反対して防いでいたのが彼女なんだよ。そのりおんがいなくなったらこうなるのは当然だろう。まあ、僕としては君たちがりおんを始末してくれたのは好都合だったけどね』
「なんだと、そのようなことなど聞いてないぞ」
「貴様は我々を騙していたのか!」
九兵衛の言ったことは初耳でとんでもない事である為、それを来た高官たちは色めきたった。
そう、彼らは九兵衛からりおんがブリタニアの先兵で、放置しておけばブリタニアがこの次元世界に進出して来るとしか聞いていなかった。当然ながら、りおんを排除したことでこのような事態をまねいてしまうなど考えもしなかったのだ。
『やれやれ、君たちはお互いの考えの相違から問題が起こるといつも騙したなんていうね。本当に訳が分からないよ』
九兵衛はまるで厄介な者に呆れているような態度だ。
『まあ、この世界における僕たちのノルマは達成できた。後は君たちの問題だ』
そういって九兵衛は出て行った。
「おのれ!」
その、あまりにも身勝手な九兵衛に高官たちが怒るが、最早そんなことをしても意味がなかった。彼らは現状を何とかするためにブリタニアに和睦を呼び掛けたが、返ってきたのが『バカめ』という返答だった。
「『バカめ』だと! あいつらふざけているのか!」
高官たちは激怒するが、彼らにはもう打つ手はない。その後、バイド艦隊の攻撃を受けて管理局本局が破壊されて次元世界そのものが破壊されるのであった。
おまけ
とある世界、そこでは九兵衛たちがいた。九兵衛たちは『魔法少女リリカルなのは』の並行世界の一つでエネルギー収集をしていたが、監察軍にそれを察知されてしまい、監察軍が行った通商破壊戦によって次元世界ごと掃討されてしまった。
しかし、九兵衛たちはその世界から目標値のエネルギーを得ることに成功していた。また彼らはそれ以外の下位世界でも活動しており、それらの世界からエネルギーを得ていた為、今回の損失も大した問題にはならなかった。とはいえ、創造主に提供するエネルギーは順調に集まっているものの、創造主の依代となる機体の用意に関しては難航していた。
実は彼らは第二次ベヅァー戦争の際に、スペースコロニー・メンデルで監察軍の機体を回収していた。その機体はジュデッカと同時期に開発されていたが、未完成の機体だった。九兵衛としてはそれを完成させようとしたが、彼らの技術力ではそれが困難だったのだ。
しかし、彼らにとってそれは問題にならなかった。いくら機体の製造が難しくとも時間を掛ければ何とかなるものなのだ。九兵衛たちはその機体を眺めながら作業を進めるのであった。
解説
■伊吹りおん
本作の主人公で、『魔法少女リリカルなのは』の世界の転生したトリッパー。14歳の少女。魔法が主体の世界なのに『機動戦士ガンダムSEED』の空間認識能力というニュータイプ染みた能力だったので世界と能力があっていなかったが、専用のTA-ユニットでその能力を有効利用できるようになった。第二の故郷を守ろうとしたが結果として管理局のアルカンシェルによってその世界ごと抹殺されてしまった。
■未完成の機体
監察軍がジュデッカと同時期に開発していた機体であるが、開発が難航して遅れてしまい先にジュデッカの機動実験を迎えたため、監察軍では完成することなくその存在を忘れられてしまっている。今後の伏線。
あとがき
これで『マギカではなくリリカル』は終わりです。今回は次のベヅァーとの戦いの伏線として書いてみました。しかし、九兵衛の「後は君たちの問題だ」は無情ですね。管理局から見れば「我々を騙して利用した挙句これか」と言いたいでしょう。とはいえ、トリッパーたちから見れば自業自得でしかありませんけど。