原作通り、私の住む海鳴市にジュエルシードが落下した。結局、海鳴市の魔女を駆逐することはできなかった為に、ジュエルシード回収を優先することにした。
本来ならば、事前に海鳴市の魔女を駆逐してからジュエルシードの回収に取り組みたかったのだが、こればかりは仕方がない。今優先すべきなのは魔女よりもジュエルシードだ。さっさと回収して、この世界から持ち出さないといけない。
ジュエルシードの厄介なところは発動しないと感知できない点だ。おかげで海鳴市を探し回る羽目になってしまった。それでも事前に配置しておいた監視用の機材で大まかな落下場所は把握できているので、そこを中心に探していけば何とかなるだろう。
「ジュエルシードを渡してください」
そんな風に時間を掛けて地道に四つのジュエルシードを探し出した頃に、金髪の少女からそんな言葉を言われた。勿論彼女が誰なのかは言うまでもありません。他の転生者とかいう落ちではなく、原作ヒロインの一人フェイト・テスタロッサです。
しかし、これは拙い。これが管理局であったのならばジュエルシードを渡すのは問題ないだろうが、フェイトに渡すとプレシアの手にジュエルシードが渡ってしまうのだ。
プレシアの目的は死んだ娘を生き返らせる為にアルハザードに行くことであるが、その手段が問題です。大規模次元震を引き起こすから地球を含めた近隣世界が崩壊の危機に晒されてしまいます。
私としては魔女とある意味ゾンビとなっている魔法少女や我らトリッパーの敵である九兵衛以外はなるべく戦いたくはないのですが、そうもいってられないでしょうね。
この世界には守りたいものが多い、家族に友人、そして仮初とはいえ第二の故郷となったこの世界は私にとって大切な存在なんです。故にそれを脅かすプレシアには同情するが敵対するしかない。
「断るわ!」
一瞬でTAーユニットを展開した私はフェイトと戦う事にした。
「こいつ魔導師か」
「いえ、魔力がないから違う。これは…」
私がTAーユニットを展開したことで驚いているようだ。管理世界の常識で言えば魔導師と思うかもしれませんが、魔力反応が一切ないし、かなりメカメカしいからね。
まあ、それも無理はない。ミッドチルダの魔導師は杖たるデバイスが機械仕掛けでできておりやたら科学的な存在であるが、一応魔術師と呼べる存在だったのに、私の場合はパワードスーツそのものですからまるっきり別者なんですよ。
「はあっ」
私のレイザーブレイドとフェイトの大鎌がぶつかるが、私がパワーの差を利用してはじき返した。私とフェイトは機械と魔法という、手段は異なるものの身体能力をブーストしている。
しかし、その増幅率には差が存在する。AAAランクの魔導師のブーストなどTAーユニットによる身体能力向上の足元にも及ばないうえに、そもそも9歳のフェイトと14歳の私では素の筋力に大差があるのだ。
力負けしていることに気付いたフェイトは自慢の高速機動に切り替えてきた。スピードなら負けないという事だろうが甘いね。そもそもTAーユニットの元になったISは超音速戦闘を可能としていた。当然ながらTAーユニットを装備している私も超音速戦闘が可能なのだ。
フェイトは魔導師の中でもスピードに長けているといっても所詮は亜音速にも届かない速度に過ぎず、スピードでは到底相手にならないのだ。
「そんな。早すぎる」
「くそっ、なんだよ。こいつは」
フェイトとアルフは二人がかりでも私の動きについてこれずにいる。
「さて、そろそろ終わりにしましょう」
フェイトは邪魔なのでここで始末するとしましょう。正直言って人を殺すことに抵抗はあるが、この非常時に彼女たちを拘束し続けるという手間をかけるわけにはいかない。そしてここで取り逃がしても彼女がプレシアの手先として動く以上、この世界にとって危険分子でしかないのだ。
「!?」
そんな私にピンク色の砲撃魔法が直撃した。最もそれは私の周囲に展開している随意領域(テリトリー)によって弾かれていた。
「……なんのつもりかしら?」
私は砲撃魔法を打ち込んできた乱入者、高町なのはにいら立ちを隠せずにそう訊ねる。
「わ、私はフェイトちゃんとお話がしたくて来たんです」
そう、とんちんかんな事を言うなのはに呆れる。
「つまり、彼女と話すのに邪魔だから私に砲撃を打ち込んだのですか。随分とおかしなことをするのね。まあ、魔法という力に溺れて増長しているのかしら」
力に溺れて暴走する者ならいくらでもいる。頭が痛いことにトリッパー仲間にも転生特典という強大な力に溺れて暴走する者がいるのだからそれも仕方ないだろう。
それでも攻撃されたからにはなのはごとフェイトを倒すという選択肢もある。私は今更原作を守るつもりなど諸共ないから原作ヒロインだろうが、邪魔ならば排除することに抵抗などない。
しかし、そこまでやってしまうと、後で時空管理局が来た時に彼らまで敵に回る恐れがある。となると、ここは引いた方が賢明だろう。
「付き合いきれないわね。まあいいわ。そんなに彼女と話したければ好きなだけ話しておきなさい」
そういって私はTA-ユニットの機動力を活かして高速でその場を離脱した。