東方悠幽抄   作:アグサン

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 今回は紅魔館の主であるレミリアお嬢様が登場します。レミリアってかわいい性格なのか、カリスマに溢れているのか…… 非常に悩ませてくれるおぜう様です。それと、自分はパチュリーが大好きです。いいですよね、日蔭の少女。
 それでは、東方悠幽抄、第十一話です。感想、批評、誤字脱字の指摘などなど、気軽に感想をくださって結構です!


第十一話「お嬢様は吸血鬼」

 ――――紅魔館にようこそ、人間。

 

 紅魔館のエントランスで私たちを出迎えたのは、背中に羽根の生えたナイトキャップを被った少女であった。

 彼女は、先ほど庭先で咲夜さんを打ち破り、紅魔館に足を踏み入れた私たちを、階段の上から見下ろしていた。

 私は小太刀に手をかけ、警戒しつつ、階段の上にたたずむ少女に声をかけた。

 

「吸血鬼のお嬢様って、やっぱりあなたのことだったのね」

 

 咲夜さんがお嬢様と呼んでいたのは、思った通り、宴会で私にひどいことを言ったあの少女であった。

 そんな私の言葉を聞いた吸血鬼の少女は首をかしげた。

 

「そうだったかしら? まったく覚えてないわね」

 

 私はその態度にムッとして、言い返してしまった。

 

「ひどいお嬢様ね。宴会の時は全く相手をしてくれなかったのに…… あなたのメイドさんがやられた仕返しかしら?」

 

 私は咲夜さんの話題をあげることで、吸血鬼の少女を挑発してみた。

 しかし、そんな私の挑発もどこ吹く風で、吸血鬼の少女は言葉を続けた。

 

「やられた咲夜が悪いのよ。そんな過ぎたことなんてどうでもいいわ」

 

 彼女は言葉を言い終わる前に階段から飛び立ち、ゆっくりと私の前に舞い降りた。

 そして、彼女はその薄い胸に手を当てた。

 

「ちゃんと会話したのは初めてだから、一応自己紹介をしておいてあげるわ。この紅魔館の主人であるレミリア・スカーレットよ。覚えなさい」

 

 ずいぶんと高圧的な態度で挨拶をされた。

 私は相手がどんなに無礼でも礼儀は欠くわけにはいかないと考えているので、スッと背筋を正した。

 

「私の名前は藤見悠子。よろしくおねがいしますわ、レミリアお嬢様」

 

 私はわざとらしくスカートの端を持ち上げ、ちょっと皮肉のこもった挨拶をした。

 

「うんうん、丁寧な子ね」

 

 しかし、私の皮肉に対して、レミリアは満足そうに頷いた。

 私は少し呆れてしまった。

 

(私の皮肉が……)

(悠子、この吸血鬼は間違いなく『天然』よ)

(幽々子、あなたは鏡を見ながら自分に問いかけてみるといいわよ……)

(ふふっ、あなたは面白いことを言うわね。鏡に映らないのは目の前の吸血鬼の方よ)

 

 愉快そうに笑う幽々子に対して、私は心の中で密かにため息をついた。

 私の中の亡霊さんにも皮肉は通じないようだ。

 そして、目の前にいる吸血鬼も間違いなく自分勝手で、天然だ。

 某亡霊さんにそっくりだ。

 

 ――そんなことを考えていて、急に黙りこんでしまった私を気にする風もなく、レミリアは言葉を続けた。

 

「それで、何の用事かしら? 私とお話でもしたいの?」

「ええと……」

 

 咲夜さんのときと同じく、『ただ、会え』と言われているだけの私は答えに窮してしまった。

 そんな私に再び幽々子が声をかけた。

 

(悠子、こう言いなさい。『新しいお茶が――)

(さっきから言ってるけど、それ意味がわからないから! 幽々子は少し黙ってて!)

(……反抗期なのかしら、しくしく)

 

 私は幽々子の言葉を無視して、会話を続けた。

 

「えっと、あなたと――そう! あなたとお話したくてここに来たのよ! 宴会の時は大して話せなかったしね」

 

 そう答えた私にレミリアは少し驚いた顔をした。

 そして、ニコリと笑った。

 

「あら、嬉しいわ。私、いつの間にか有名になっていたのね。異変の一つくらい起こしてみるものね」

 

 物騒なことを言いながら、レミリアは納得したように頷いた。

 そして、嬉しそうに言った。

 

「まあ、そんなところでつっ立っているのもアレだし、こちらへいらっしゃい。お茶くらいは出してあげるわ」

 

 レミリアは階段を上り、館の奥へと進んで行った。

 私はこの広い館で彼女を見失わないように、急いで後を追いかけた。

 

 

 ◆

 

 

 ――――ほらこっちよ、早くしなさい。

 

 レミリアに案内された客間のような部屋には、すでに紅茶が用意されていた。

 そして、テーブルには、手元の本に目を落とした紫色の服を着た少女がすでに座っていた。

 本を読むことに集中しているのか、私がここに入ってきたことに全く気付いていないようであった。

 

「さあ、座って。紅茶でも飲んでくつろぎなさい」

 

 先に部屋に入って席に腰掛けていたレミリアは、私に席を勧めてきた。

 私はおとなしく、本を読んでいる少女の前に腰を下ろした。

 すると、その少女はスッと本から私に視線を移した。

 

「あなた、宴会で見たことあるわ」

 

 そうボソッと呟き、再び本に視線を戻した。

 私はその態度につい幽々子に愚痴ってしまった。

 

(なかなか愛想の無い子ね……)

(馬鹿丁寧なだけのあなたも、たいして愛想は無いでしょ?)

 

 幽々子の言葉にムッときた私はすぐさま心の中で言い返した。

 

(そんなことを言うのでしたら、さぞかし愛想がよろしいのでしょうね。幽々子お嬢様??)

(ふふっ、褒め言葉として受け取っておくわ。それに、あなたを見つめている吸血鬼のお嬢様は、愛想が良さそうよ)

 

 やっぱり幽々子には敵わなかった……

 そして、愛想が良さそうなレミリアお嬢様へと顔を向けた。

 本に熱中している少女に対して、レミリアはニコニコと笑い、こちらを見ていた。

 

「パチェは人見知りだからね。 ――コホン、紹介するわ! 私の親友である魔女・パチュリー・ノーレッジよ」

 

 レミリアはビシッとパチュリーさんを指差した。

 パチュリーさんはビクッとして、サッと本で顔を隠した。

 

「よろしく」

 

そして、呟くように挨拶をした。

私も自己紹介をした。

 

「えっと、私は藤見悠子よ。よろしくね、パチュリーさん」

 

 すると、本の向こう側からため息が聞こえた。

 ――人見知りと言うよりも、ただ単に関わり合いたくないだけのようであった。

 

 全く興味なさそうなパチュリーさんに対し、レミリアは私に興味津々のようであった。

レミリアは喜々嬉々として私に話しかけてきた。

 

「コホン―― えっと、あなたは私のファンなの?」

「えっ、ええ…… まあ、そんな感じね」

 

 そんな私の返事を聞いて、レミリアは嬉しそうに笑った。

 

「ふふふ、ファンだからって勝手に家を尋ねて来てはダメよ」

 

 レミリアに釘を刺されてしまった。

 紫さんに、あらかじめ言ってから来てくれ、と言いつつ同じことをやっているあたり良くないな、とは思っていた。

 そんなことを思っていると突然、レミリアは身を乗り出した。

 

「そうそう、ここに辿り着いたということは、咲夜を打ち破ってきたんでしょ? あなた、さぞかし強いんでしょうね」

「まあ一応、人里では認められていると思うわ。今は寺子屋で子供たちに剣術を教えているから」

「へぇ~ 悠子先生か。凄いのね」

 

 レミリアは感心したように頷いた。

 そして、剣術という言葉を聞き、私の横に立てかけてある刀に興味を示した。

 

「どこでその剣を?」

「えっと、それに関しては教えられません」

「あら、残念」

 

 レミリアは残念そうな仕草をとり、私の目を見据えた。

 

「それでは、妖怪と戦った経験もあるのかしら?」

 

 レミリアは笑みを絶やさず、そんな質問をしてきた。

 私はその言葉にドキッとした。

 

「何故、そう思うの?」

「私に対する恐れをあなたから感じないわ。 ――それに、霊夢と仲良しで宴会に誘われたってことは、白黒の魔法使いと同じでそっち関係なんでしょう?」

 

 レミリアはそう得意そうに言った。

 一方、私はレミリアの指摘に非常に驚かされていた。

 彼女は、先ほど交わした会話と宴会の話から、私の生業を推理して見せたのだ。

 ただの天然、わがままお嬢様だと思っていたのに、実は違う。

 彼女からはちょっとした『カリスマ』のようなものを感じられた。

 レミリアは私の心情の変化を知ってか知らずか、面白い提案をしてきた。

 

「それでは、私とも手合わせ願えないかしら? 最近、弾幕ごっこもしていなくて、体がなまってしまっているのよね」

 

 私は先ほどの思考を隅に置き、レミリアの提案にすぐさま返事をした。

 

「ええ、構わないわ。その弾幕ごっこ、受けて立つわ」

 

 その返事に驚いたのは、今まで黙っていた幽々子であった。

 

(どうしたのよ、悠子。ずいぶん乗り気じゃない)

(このお嬢様、つかみどころがない。だから、私は彼女を斬る。『真実は斬って知るもの』よ、幽々子)

(妖夢師匠の受け売りね。大丈夫なの?)

(大丈夫よ、きっと。なんたって私は、あの博麗の巫女公認で、咲夜さんを打ち破ったんだから!)

(……その意気よ、悠子)

 

 私の言葉を聞いた幽々子は、静かにそう言った。

 レミリアは私の二つ返事に満足したらしく、意気揚々と言葉を続けた。

 

「なら、決まりね! さあ、時計台へ行くわよ!」

 

 そう言って、レミリアは素早く席を立ちあがり、私とパチュリーさんの手をつかんで駆けだした。

 

「ちょっと、待って、レミリアッ!?」

「えっ、ええっ!? 何で私も行かないといけないのよ、レミィ~~」

 

 私とパチュリーさんの情けない声が紅魔館の廊下に響いた――

 

 

 ◆

 

 

 ――――ええと、私の親友であるレミィと人里の剣術の先生こと悠子の試合を始めます。

 

 覇気のないパチュリーさんの声が紅魔館の時計台に響き渡った。

 

「うんうん、やっぱりこうでなくちゃね」

 

 レミリアは満足そうに頷いていた。

 

「こういうことは咲夜にやらせればいいじゃない……」

 

 パチュリーさんが不満そうに言った。

 

「今、咲夜には別の用事を言いつけているから、ダメ」

 

 そして、私の方を向いた。

 

「あなた、自分専用のスペルカードって持ってるの?」

「いや、まだ持っていないけど……」

 

 そう答えた私に、レミリアは薄く笑った。

 

「それだったら、ここは私闘ということで、スペルカードルール無視で遊ばない?」

「私もスペルカードルールの詳しいところはまだ理解していないから、それで構わないわよ」

 

 私が了解の返事をすると、幽々子が警告してきた。

 

(やめなさい、悠子。相手は人外の吸血鬼よ)

(大丈夫よ、幽々子。私だって他の妖怪の力を使えるんだから)

 

 私は幽々子に自信ありげに言った。

 ――そんな私の返事を聞いたレミリアは、愉快そうに笑った。

 

「はははっ、わかったわ! それじゃ、パチェ~ 開始の合図お願いね」

「ふぅ…… やればいいんでしょ、レミィ」

 

 部屋の隅で再び本を読もうとしていたパチュリーさんは、パタンと本を閉じ、ため息をつきながら立ちあがった。

 

「それじゃ、行くわよ。よ~い、スタート~」

 

 パチュリーさんの気の抜けた声が響いた。

 私はそれと同時に小太刀に手をかけた。

 

「スペルカードルールに従わない決闘なんて、『吸血鬼異変』以来ね!」

 

 そう言った瞬間、レミリアの姿が視界から消えた――!?

 そして、驚く暇もなく私は腹部に凄まじい衝撃を受けた!

 

「がっ!?」

 

 私の体は吹き飛ばされ、時計台の壁に叩きつけられた。

 壁からずり落ちた私に、レミリアは続けざまに蹴りを加えてきた!

 私は反射的に体を転がし、その攻撃を避けた。

 ――凄まじい轟音と共に時計台の壁面が崩れ落ちた。

 

 先ほどの、のどかな雰囲気とは打って変わった攻撃に、私は言葉を失った。

 ――レミリアの一連の攻撃が私には全く見えなかった。

 衝撃でえぐれた時計台の前で息をつくレミリアへパチュリーさんが声をかけた。

 

「デーモンロードウォークとロケットキックアップの連携ね。素晴らしいわ、レミィ」

 

 私はその言葉を聞きながら、小太刀を杖にして立ちあがった。

 そのとき、腹部に強烈な痛みが走った。

 

(あっ、内臓のどっか逝ったかも……)

(痛いわよ、悠子~)

(あたしだって痛いわ…… だけど、一矢くらい報いないとね!)

 

 私は小太刀を中段に構えた。

 闇で視界を奪い、瞬間移動で現世斬を叩きこんでやる!

 私はそう決意し、ルーミアの力を内側から引き出した。

 

「いくわよ!!! 夜符『ナイトバード』!!!」

 

 私の周囲は一瞬にして闇に覆われ、一寸先も見えなくなった。

 これで、レミリアには何も見えないはず!

 そのまま私は瞬間移動し、レミリアの背後に移動した!

 腰を低く落とし、一撃で斬り裂く――

 

「人符『現世――」

「遅い!」

 

 レミリアの姿が視界から再び消えた!?

 『現世斬』が確実に当たる、と確信していた私は見事に空振りし、体勢を崩してしまった。

 次の瞬間、背中に衝撃を受け、今度は胸から床に叩きつけられた。

 

「ぐがっ!?」

 

 凄まじい衝撃が体全体に走った。

 私は呻き声をあげ、立ち上がることができなくなった。

 

「今度はトリックスターデビルね」

 

 パチェさんがボソッとした呟きがどこからか聞こえてきた。

 そして、私の集中が途切れたところで周囲の闇が霧散した。

 そこには、月に照らされた吸血鬼、レミリア・スカーレットの姿があった。

 レミリアは私を見下ろしながら、言い放った。

 

「いくらあなたが『一瞬だけ』速く動けても、『その一瞬よりも圧倒的に速く動ける』私には関係ない」

 

 その言葉を聞き、私の見立てが甘かったことを悔いた。

 ――コフッ、ゼェハァ。

 なんとかして立ち上がろうとしたが、肺をやられたのか呼吸が乱れてうまくいかない。

 レミリアは、そんな私の背中を強く踏みつけた!

 

「がはっ?!」

 

 私の口から血が吐き出された。

 レミリアは私が苦しむ姿を見ても、口もとを釣り上げた。

 そしてあろうことか、彼女はスッと私の顔に手を伸ばして血をすくい、ペロリと舐めた。

 

「ふふっ、なかなかいい味しているじゃない」

 

 レミリアは愉快そうに笑った。

 私は呼吸が乱れ、意識が朦朧としており、それどころではなかった。

 

(呼吸すると滅茶苦茶痛い…… 内臓ホントにヤバいかも……)

(だから言ったじゃない、止めなさいって! なんで何もしていない私がこんな痛い思いをしなくちゃいけないのよ!)

 

 幽々子は私に非難の声を向けた。

 しかし、私はそれ以上考える事も出来なくなってきていた。

 レミリアは私を見下しながら言った。

 

「もうわかったでしょ。これが『吸血鬼』と『ただの人間』の差よ」

 

 レミリアはそう言い、私をそこに捨て置き、背を向けた。

 そして、小さく呟いた。

 

「スペルカードルールさえ無ければ、紅霧の時にあんな『紅白』なんかに負けなかったわ」

 

 その後ろ姿からは悔しさが滲み出ていた。

 その背中が凄く――遠い。

 結局、私は最後までレミリアに一太刀もあびせる事が出来なかった。

 レミリアはそのまま私に目もくれず紅魔館の中に戻って行った。

 パチュリーさんは、私の顔をチラリと見て、ため息をついた。

 そして、ゆっくりと近づいてきてボロボロになっていた私に声を掛けた。

 

「実は今日のレミィは機嫌が悪いのよ。その内あなたの知り合いが来ると思うからそれまで寝ているといいわ」

 

 パチュリーさんはそう意味深な言葉を残し、紅魔館の中へと戻って行った。

 私の意識はそこで途切れた――

 

 

 ◇

 

 

 ――――満身創痍(ゲームオーバー)よ、悠子。そして、幽々子。

 

 紫は紅魔館の時計台に姿を現した。

 そこには、時計台を見上げる悠子の、いや幽々子の姿があった。

 幽々子は紫の出現に気付き、スッと振りかえった。

 そして、頬をプウッと膨らませながら、紫を睨みつけた。

 

「ゆかり~、遅いわよ~ あなたがもっと早く来てくれたら、こんなことにはならなかったのに!」

 

 そう言って、幽々子はボロボロになった悠子の体を見せつけた。

 紫は口元を扇子で隠しながら、クスクスと笑った。

 

「人間臭くなったわね、幽々子」

「血まみれなのは仕方ないじゃない。それに体は普通の人間だからね」

 

 そんな幽々子に紫は厳しい目を向けた。

 

「動いたのはあなたでしょ。自業自得ではなくて?」

「そうは言っても、まさか吸血鬼のストレス発散に利用されるとは思わなかったわよ。それにしても、冷たい友人ね」

 

 幽々子はジトッとした目で紫を見た。

 紫はそんなことを意も介さずに話を続けた。

 

「あなたはこの子の能力を買いかぶりすぎなのではなくて?」

「ただ単に興味があるだけよ。それに私自身が体を使えれば問題なかったんだけどね」

 

 幽々子はそう言って、悠子の胸に手を当てた。

 紫は少し呆れた風に呟いた。

 

「幽々子のやり方はいつもぬるいのよ」

「そうかしら?」

「そうよ。だから、いつも潰してみたくなるのよ」

「あら、怖い友人ね」

「あなたほどではなくてよ」

 

 幽々子と紫は互いに口もとを隠しつつ、笑いあった。

 そして、紫は幽々子に背を向けた。

 

「明日、宴会の時間に神社に来なさい。炙り出すわ」

「あら、どうやって?」

「秘密よ」

「いけずね」

 

 幽々子は紫をなじった。

 紫は気にした風もなく、スキマへと消えて行った。

 紅魔館の時計台には、ボロボロになった悠子、もとい幽々子のみが残された。

 

「私としては、目的を達成できたし満足なんだけどね。 ――うーん、それにしてもまだ体が痛いわ。とりあえず、寺子屋で会ったあの仙人にでも直してもらおうかしら?」

 

 幽々子はそう呟き、紅魔館を後にした――

 

 

 ◇

 

 

 ――――そこの通りすがりの吸血鬼さん。ちょいとお時間良いかしら?

 

 そろそろ、虎の刻(午前4時頃)。

 咲夜の用意した紅茶を飲み終わり、寝室に向かっていたレミリアは、廊下で胡散臭いスキマ妖怪に声をかけられた。

 

「誰よ? 今日の私は少し満足して、寝る気満々なのに」

 

 レミリアはそう言って、大きく欠伸をした。

 紫はそんな吸血鬼を見て、微笑んだ。

 

「夜遊びもたいがいにしないとね。ところで話が変わるけど、あなた、ちょっと私の相手をしていただけないかしら?」

 

 レミリアは紫の言葉を聞き、目を見開いた。

 

「幻想郷の賢者と? 冗談。私は基本、勝ち戦しかしないわ」

 

 そう答えたレミリアに、紫は引き下がらなかった。

 

「ふふっ、あなたが『従者』の仇を取ったように、私は『親友』の仇を取らなくいけなくなったの。察してくださる?」

「――ふん、そういうこと。あんたこそ、私と戦う覚悟はできているんでしょうね?」

「私はいつでも準備万端ですわ」

 

 紫の言葉にレミリアはほくそ笑んだ。

 

「あら、そう! 今日はもっと楽しい夜になるかもね!」

 

 レミリアはそう叫び、紫に飛びかかった――

 

 

 ――紅魔館の時計台で、レミリアが咲夜によって発見されたのは、日の出を迎えた後であった。




 レミリアお嬢様は太陽の光で溶けていなくなる前に咲夜さんに見つけてもらってよかったですね!
 さて、次回は『真夏の宴会編』もとい『萃夢想編』(紅魔館にかなりフォーカスされていましたが……)完結です。楽しみにしていてください。
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